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奥行価格補正で使う地図はどこで?
法務局オンラインでの取得方法

2025-06-12
目次

相続税の土地評価で、評価額を下げられる可能性のある「奥行価格補正」。この補正を正しく適用するためには、土地の正確な「奥行距離」を知る必要があります。でも、「その奥行きって、どんな地図で調べればいいの?」「わざわざ法務局まで行かないとダメ?」と悩んでいませんか?実は、必要な地図はご自宅のパソコンからオンラインで取得できるんです。この記事では、奥行価格補正の検討に使える地図の種類と、法務局のオンラインサービスを使った取得方法を、初心者の方にも分かりやすく解説しますね。

奥行価格補正とは?なぜ正確な地図が必要なの?

まずは、奥行価格補正がどのような制度で、なぜ地図が重要になるのかを見ていきましょう。この仕組みを理解すると、正確な地図を手に入れる大切さがきっと分かりますよ。

奥行価格補正で相続税評価額が変わる仕組み

奥行価格補正とは、土地を評価するときのルールのひとつです。道路から奥に長い土地や、逆に奥行きがとても短い土地は、標準的な形の土地と比べて使いにくいと判断されることがあります。そういった使いにくさを評価額に反映させて、相続税評価額を減額できるのが、この奥行価格補正なんです。

路線価が定められている地域(路線価地域)の土地は、基本的に「路線価 × 地積(面積)」で評価額を計算しますが、奥行価格補正を使うと計算式は以下のようになります。

評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 地積

この「奥行価格補正率」は、国税庁が土地の地区区分(普通住宅地区、商業地区など)と奥行距離に応じて定めています。例えば「普通住宅地区」の場合、奥行きが10m~24mの範囲が標準とされ補正率は1.00(評価額は変わらない)ですが、10m未満と短かったり、24m以上と長かったりすると、補正率が1.00未満になり、その分だけ評価額が下がる仕組みになっています。

正確な「奥行距離」の把握が節税の第一歩

「奥行価格補正率」は、奥行距離によって細かく定められています。そのため、実際の奥行距離がわずか数十センチ違うだけで、適用される補正率が変わり、最終的な相続税額に影響が出てくることも少なくありません。だからこそ、思い込みやおおよその測量ではなく、信頼できる公的な地図を使って、正確な奥行距離を把握することが、適切な評価と節税への大切な第一歩になるのです。

奥行距離の確認に使える地図の種類と特徴

奥行距離を調べるために使える公的な地図は、主に法務局で取得できます。それぞれ精度や特徴が違うので、どの地図を使えば良いか知っておきましょう。下の表に主な地図をまとめました。

図面の種類 特徴
地積測量図 土地の正確な形状や寸法、求積方法が記載された図面。精度は高いですが、全ての土地に備わっているわけではありません。
公図(地図に準ずる図面) 土地のおおまかな位置や形状、隣地との関係がわかる図面。古いものが多く、現況と違う場合もあるため精度は劣ります。
14条地図 不動産登記法第14条に基づき、高い精度で作成された地図。信頼性は非常に高いですが、全国的な整備率はまだ約半分です。

奥行価格補正を検討する際には、まずは最も精度の高い情報が期待できる「地積測量図」があるかを確認するのがおすすめです。

最も信頼性が高い「地積測量図」

地積測量図は、土地の登記申請(分筆や地積更正など)の際に法務局へ提出される図面で、土地の形状、各辺の距離、座標値、面積などが詳しく記載されています。土地家屋調査士が測量して作成するため、非常に信頼性が高いのが特徴です。この図面があれば、正確な間口や奥行距離を読み取ることができます。
ただし、地積測量図の提出が義務化されたのは1960年(昭和35年)からなので、それ以前から一度も分筆などをしていない土地には存在しない場合があります。また、古い時代に作成されたものは、現在の測量技術と比べて精度が劣ることもあるので注意が必要です。

土地の位置関係を把握する「公図」

公図は、法務局に備え付けられている、土地の区画(筆)や地番を示した地図です。「地図に準ずる図面」とも呼ばれ、隣の土地との位置関係や大まかな形状を把握するのに役立ちます。
ただし、その多くは明治時代の地租改正の際に作られたものが元になっており、実際の土地の形や面積と異なっていることも少なくありません。そのため、公図だけで奥行距離を判断するのは少し心もとないかもしれません。地積測量図がない場合に、参考資料として利用するのが良いでしょう。

高精度な「14条地図」

14条地図は、不動産登記法第14条の規定に基づいて作成された、極めて精度の高い地図です。国の地籍調査事業などによって、しっかりとした測量基準に基づいて作られているため、境界の位置を正確に復元できるほどの信頼性があります。お持ちの土地の地域に14条地図が整備されていれば、それを基に奥行距離を判断するのが最も確実です。
しかし、この14条地図の整備はまだ全国で完了しておらず、整備されている地域は全体の約半分にとどまっているのが現状です。

法務局オンラインサービスで地図は取得できる?

「地図が必要なのはわかったけど、平日に法務局へ行く時間がない…」という方も多いのではないでしょうか。ご安心ください。今は自宅にいながらオンラインで必要な地図を取得できる便利なサービスがあります。

「登記情報提供サービス」で手軽にオンライン取得

法務局が提供している「登記情報提供サービス」を利用すれば、インターネットを通じて地積測量図公図などの図面情報をPDFファイルで取得することができます。わざわざ法務局の窓口へ足を運ぶ必要がなく、夜間や土日でも利用できる時間帯があるため(利用可能時間を確認してください)、とても便利です。
しかも、手数料も窓口で取得するより安く設定されています。

取得する情報 登記情報提供サービス(オンライン)
全部事項証明書(登記簿謄本) 332円
地図・図面(地積測量図・公図など) 362円

※上記は2024年5月現在の料金です。窓口での請求はそれぞれ600円、450円です。

登記情報提供サービスの利用方法と注意点

このサービスを利用するには、まず利用者登録が必要です。クレジットカードですぐに決済できる「一時利用」と、継続的に利用する方向けの「個人利用」「法人利用」があります。相続手続きで一度だけ利用する場合は、「一時利用」で十分でしょう。
一つ注意点として、このサービスで取得したPDFファイルは、あくまで登記内容の「確認」用です。法的な証明力はないため、金融機関への提出など、登記事項証明書(登記簿謄本)の原本が必要な手続きには使えません。ですが、奥行価格補正の計算のために奥行距離を確認する、という目的であれば、このサービスで取得した図面で全く問題ありません

地図を取得するための具体的な手順とポイント

それでは、実際に「登記情報提供サービス」を使って地図を取得する手順を見ていきましょう。事前にちょっとした準備をしておくと、スムーズに進みますよ。

ステップ1:取得に必要な「地番」を調べる

地図を取得する際に、私たちが普段使っている住所(住居表示)とは別に、法務局が土地を管理するための番号である「地番」が必要になります。この地番がわからないと、お目当ての土地の情報を探せません。
地番を調べる一番簡単な方法は、毎年市区町村から送られてくる「固定資産税・都市計画税 納税通知書」に同封されている「課税明細書」を確認することです。ここには、所有している土地の所在地番が一覧で記載されています。お手元になければ、権利証(登記識別情報)や、過去に取得した登記事項証明書でも確認できます。

ステップ2:サービスにログインして情報を請求する

地番がわかったら、「登記情報提供サービス」のサイトへ進みましょう。

  1. サイトにログインし、「不動産請求」のメニューを選びます。
  2. 都道府県や市区町村を選択し、先ほど調べた「地番」を入力します。
  3. 該当地の登記情報が表示されたら、「地積測量図」や「地図(公図)」など、取得したい図面のチェックボックスにチェックを入れます。
  4. 請求ボタンを押し、クレジットカード情報などを入力して決済すれば、PDFファイルがダウンロードできるようになります。

ステップ3:取得した地図から奥行距離を読み取る

無事に図面が手に入ったら、いよいよ奥行距離の確認です。
地積測量図には、各辺の長さがメートル単位で記載されていることが多いので、その数値をそのまま使えます。もし縮尺しか書かれていない場合は、定規で図面上の長さを測り、縮尺を掛けて実際の距離を計算します。(例:縮尺1/250の図面で、測った長さが4cmなら、4cm × 250 = 1000cm = 10m)
もし地積測量図がなく、公図しかない場合は、同様に縮尺から計算しますが、前述のとおり精度には注意してください。
土地がきれいな長方形でない「不整形地」の場合は、奥行距離の計算が少し複雑になります。国税庁は原則として「土地の地積 ÷ 間口距離」で計算した値を奥行距離とするよう定めています。計算に不安がある場合は、無理せず税理士などの専門家に相談するのが安心です。

まとめ

今回は、奥行価格補正を検討するために必要な地図の種類と、法務局のオンラインサービスでの取得方法について解説しました。

最後にポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 奥行価格補正の計算には、土地の正確な奥行距離がわかる地積測量図公図が必要です。
  • これらの地図は、法務局の「登記情報提供サービス」を使えば、自宅のパソコンからオンラインで手軽に取得できます。
  • 地図の請求には「地番」が必要なので、「固定資産税課税明細書」などで事前に調べておきましょう。
  • 正確な奥行距離を把握することが、適切な土地評価と相続税の節税につながります。
  • もし図面の見方や不整形地の計算で迷ったら、早めに税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

少しの手間で評価額が大きく変わる可能性もありますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。

【参考文献】

奥行き補正と地図に関するよくある質問まとめ

Q. 奥行き補正の検討に必要な地図は何ですか?

A. 主に「公図」や「地積測量図」が役立ちます。特に、土地の正確な形状や寸法、隣地との関係がわかる地積測量図は、奥行きを判断する上で非常に重要です。

Q. 奥行き補正に使う地図は法務局のオンラインサービスで取得できますか?

A. はい、取得可能です。「登記情報提供サービス」を利用すれば、オンライン上で公図や地積測量図をPDF形式で閲覧・取得できます。証明書が必要な場合は「登記・供託オンライン申請システム」を利用します。

Q. 「公図」と「地積測量図」の違いは何ですか?

A. 公図は土地の大まかな位置と隣接関係を示す図で、精度は必ずしも高くありません。一方、地積測量図は一筆ごとの土地の正確な形状、寸法、面積が記載された図面です。奥行き補正の正確な検討には地積測量図が不可欠です。

Q. 法務局オンラインで地図を取得する費用はいくらですか?

A. 「登記情報提供サービス」の場合、公図や地積測量図は1通あたり362円(税込)です。証明書として請求する場合は料金が異なりますので、法務局のサイトで最新の情報をご確認ください。

Q. 自分の土地の地積測量図が法務局にない場合はどうすればいいですか?

A. 古くからある土地などの場合、地積測量図が備え付けられていないことがあります。その際は、土地家屋調査士に依頼して土地の測量を行い、「地積更正登記」を申請することで、新たに地積測量図を作成・登記することができます。

Q. 「14条地図」とは何ですか?奥行き補正の検討に使えますか?

A. 14条地図は、不動産登記法第14条に基づいて作成された、法務局に備え付けられている中で最も精度の高い地図です。非常に信頼性が高いため、奥行き補正を検討する際の強力な資料となります。

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