税理士法人プライムパートナーズ

孫への収益物件遺贈、納税資金は親から借入!贈与税を避ける方法

2025-10-03
目次

お祖父様からお孫さんへ収益物件を遺贈する。とても素晴らしいことですが、同時に高額になりがちな相続税の納税資金という現実的な問題が立ちはだかります。特に、お孫さんがまだ若く、自己資金が十分でない場合、納税は大きな負担となりますよね。そんなとき、「親が子(孫)に納税資金を貸してあげよう」と考えるのは自然なことです。しかし、この親子間のお金の貸し借りは、やり方を間違えると「贈与」とみなされ、思わぬ贈与税がかかってしまうリスクがあるんです。この記事では、お孫さんが遺贈で受け取った収益物件の納税資金を、親御さんから借りる際の具体的な留意点や、税務署に贈与とみなされないための適切な方法を、優しく解説していきます。

親子間の貸し付けが「贈与」と見なされるリスク

「家族なんだから、細かいことは気にしなくても…」と思ってしまうかもしれませんが、税金の世界ではそうはいきません。親子間のお金の貸し借りであっても、それが「貸付」なのか「贈与」なのかは、税務署が厳しくチェックするポイントです。もし「贈与」と認定されてしまうと、借りた金額に対して高額な贈与税が課せられる可能性があります。まずは、なぜ贈与と見なされてしまうのか、そのリスクについてしっかり理解しておきましょう。

なぜ贈与と見なされるの?税務署の視点

税務署は、当事者間の「貸したつもり」「借りたつもり」という気持ちではなく、客観的な事実に基づいて判断します。例えば、以下のようなケースは贈与とみなされる可能性が非常に高くなります。

  • 金銭消費貸借契約書がない
  • 利息を設定していない(または極端に低い)
  • 返済期間や毎月の返済額が決められていない
  • 実際に返済した実績がない
  • 借主(孫)に返済能力がない

国税庁のホームページにも、「実質的に贈与であるにもかかわらず形式上貸借としている場合や『ある時払いの催促なし』又は『出世払い』というような貸借の場合には、借入金そのものが贈与として取り扱われます」と明記されています。つまり、返済の約束があいまいなものは、貸付ではなく贈与と判断されてしまうのです。

贈与と認定された場合の贈与税額

もし、親から借りた納税資金が贈与と認定されたら、どれくらいの税金がかかるのでしょうか。例えば、相続税の納税資金として2,000万円を親から借り、これが贈与と認定された場合を考えてみましょう。(※親から子への贈与で、子が18歳以上の場合の特例贈与で計算)

(2,000万円 – 110万円(基礎控除))× 40% – 190万円 = 566万円

なんと、約566万円もの贈与税がかかってしまうのです。本来であれば払う必要のなかったはずの税金を、親子間の安易な資金移動によって支払うことになっては、元も子もありませんよね。

今回のケース特有のリスク

ご相談のケースでは、「お孫さんは資産管理会社の株式を保有し、親御さんはその会社の役員」という状況です。これは、単なる親子関係だけでなく、会社を介した関係性もあるため、税務署はより一層、取引の客観性や合理性を重視する可能性があります。お金の流れが不透明だと、「個人間の貸付」なのか「会社を通じた利益供与」なのか、疑義が生じやすくなります。だからこそ、誰が見ても「正当な個人間の貸付」であると証明できる準備が不可欠になるのです。

贈与税を回避!金銭消費貸借契約書の作成ポイント

親子間の貸し付けを贈与とみなされないようにするための最も重要な対策は、「金銭消費貸借契約書」をきちんと作成することです。これは、第三者である税務署に対して、「これは贈与ではなく、返済義務のある正式な借金ですよ」と証明するための強力な証拠となります。口約束ではなく、必ず書面で契約を交わしましょう。

契約書に必ず記載すべき項目

契約書には、以下の項目を漏れなく記載してください。誰が見ても明確にわかるように、具体的に定めることがポイントです。

記載項目 ポイント
貸主・借主の情報 氏名、住所を正確に記載し、双方が署名・捺印します。実印を使用し、印鑑証明書を添付すると、より証明力が高まります。
貸付金額 貸し借りする金額を明記します。改ざん防止のために、「金壱阡萬円也」のように漢数字の大字(だいじ)で記載するのが望ましいです。
貸付日 実際にお金を貸し付けた日付を記載します。
利息(金利) 年率で金利を定めます。無利息は贈与と見なされるリスクを高めるため、適正な利率を設定することが重要です(詳しくは後述します)。
返済期間・返済期日 「いつからいつまで、毎月何日に、いくら返済するのか」を具体的に定めます。「元利均等返済」や「元金均等返済」など、返済方法も明記しましょう。
遅延損害金 返済が遅れた場合のペナルティについても定めておくと、契約の信憑性が高まります。

収入印紙を忘れずに

金銭消費貸借契約書は、印紙税法上の課税文書にあたります。そのため、契約書に記載された貸付金額に応じた収入印紙を貼り付け、消印を押す必要があります。収入印紙が貼られていないからといって契約が無効になるわけではありませんが、税務調査で指摘されると、本来の印紙税額の3倍の過怠税が課せられてしまいます。必ず忘れずに対応しましょう。

契約書に記載された金額 印紙税額
1万円以上10万円以下 200円
10万円超50万円以下 400円
50万円超100万円以下 1,000円
100万円超500万円以下 2,000円
500万円超1,000万円以下 10,000円
1,000万円超5,000万円以下 20,000円

金利と返済期間の適切な設定方法

契約書を作成する上で、特に税務署が注目するのが「金利」と「返済期間」です。これらが社会通念上、不自然な内容になっていると、「本当に返済する意思があるのか?」と疑われてしまう原因になります。客観的に見て妥当な条件を設定することが大切です。

金利はどう決める?無利息はNG?

親子間だからといって無利息にすると、借主(孫)は利息分だけ得をした、つまり「利息相当額の贈与」を受けたとみなされる可能性があります。ただし、年間の利息相当額が贈与税の基礎控除額である110万円以下であれば、結果的に贈与税がかからないケースがほとんどです。

しかし、「貸付である」という事実をより確かなものにするためには、利息を設定することをおすすめします。では、どのくらいの金利が適切なのでしょうか。明確な決まりはありませんが、一般的には銀行の貸出金利(例えば、現在の住宅ローン金利などを参考に年0.5%~1.5%程度)を目安にするとよいでしょう。少なくとも、国が示す役員貸付金などの利率(令和4年中は年0.9%)を参考にするのも一つの方法です。極端に高すぎたり低すぎたりしない、常識的な範囲で設定しましょう。

返済期間はどう設定する?

「ある時払い」と見なされないためには、明確な返済期間と最終返済日を定めることが絶対条件です。返済期間の目安としては、貸主である親御さんの年齢から考えられる平均余命を一つの基準にするとよいでしょう。例えば、貸主である親御さんが65歳の場合、平均余命は約20年です。この場合、返済期間を15年~20年に設定すれば、現実的な計画として認められやすいでしょう。

また、今回は返済原資が収益物件からの賃料収入であるため、その収支計画に基づいた無理のない返済期間・返済額を設定することが重要です。空室リスクや将来の修繕費なども考慮した上で、現実的に返済可能な計画を立て、それを契約書に落とし込みましょう。

返済方法と記録の残し方

立派な契約書を作成しても、それだけでは不十分です。契約書通りにきちんと返済しているという客観的な証拠を残し続けることが、贈与認定を避けるための最後の砦となります。計画倒れにならないよう、実行と記録を徹底しましょう。

手渡しはNG!銀行振込で証拠を残す

返済は、絶対に手渡しで行ってはいけません。手渡しでは、返済したという証拠が一切残らないからです。必ず、借主(孫)の銀行口座から貸主(親)の銀行口座へ、銀行振込で返済を行いましょう。そうすることで、通帳に「いつ、誰から誰へ、いくら支払われたか」という動かぬ証拠が記録されます。これが、税務調査の際に「契約通りに返済を履行しています」と主張するための強力な武器になります。

賃料収入からの返済計画

返済原資が収益物件の賃料収入であることは、返済の合理性を説明する上で非常に有利な点です。事前に収益物件の賃料収入(満室想定と、空室率を考慮した実質収入の両方)や、管理費・修繕積立金・固定資産税などの経費をシミュレーションし、「この賃料収入から経費を差し引いた手残りの中から、毎月〇万円を返済に充てます」という具体的な返済計画を立てておきましょう。この計画が契約書の内容と一致していれば、返済の実現可能性が高いと判断されやすくなります。

資産管理会社との関係で注意すべきこと

今回のケースでは、お孫さんが株主である資産管理会社と、その役員である親御さんが関わってきます。この特殊な関係性を踏まえ、いくつか注意すべき点があります。お金の流れをシンプルかつ明確にしておくことが大切です。

貸付はあくまで「個人間」で

親御さんが役員を務める資産管理会社から、株主であるお孫さんへお金を貸す、という方法も考えられます。しかし、会社から個人への貸付は「役員貸付金」や「株主への利益供与」とみなされる可能性があり、税務上の論点がさらに複雑になります。そのため、今回はあくまで「親(個人)から子である孫(個人)へ」の貸付であることを明確にしましょう。契約書の当事者も個人名にし、お金の移動も必ず個人の口座間で行うようにしてください。会社の資金と個人の資金を混同しないことが鉄則です。

賃料収入の管理と返済

収益物件を資産管理会社が保有している場合、家賃収入はまず会社の売上として計上されます。お孫さんが返済に充てる資金は、その会社から役員報酬や配当といった形で、適正な手続きを経て個人に支払われたものの中から捻出することになります。つまり、「会社の家賃収入 → 会社から孫へ役員報酬・配当 → 孫の個人口座から親の個人口座へ返済」というお金の流れになります。この流れを税務上もきちんと説明できるように、会社の会計処理や個人の所得申告を正しく行っておくことが重要です。

まとめ

祖父から孫へ受け継がれた大切な収益物件。その相続税の納税資金を親御さんがサポートする際には、税務上のリスクをしっかり理解し、適切な手続きを踏むことが何よりも重要です。最後に、今回のポイントをもう一度おさらいしましょう。

  1. 親子間の貸付であっても「金銭消費貸借契約書」を必ず作成する。
  2. 金利や返済期間は、第三者が見ても納得できる社会通念上妥当な範囲で具体的に設定する。
  3. 返済の事績が何よりの証拠。毎月の返済は必ず銀行振込で行い、通帳に記録を残す。
  4. 返済原資となる収益物件の収支計画に基づいた、現実的な返済計画を立てる。
  5. 資産管理会社が関わる場合でも、あくまで「個人対個人の貸借」であることを明確にし、お金の流れを整理しておく。

これらのポイントを押さえることで、贈与税のリスクを大幅に減らすことができます。とはいえ、遺贈や相続税、親子間の金銭貸借は専門的な知識が求められる分野です。少しでも不安な点があれば、ご自身で判断せず、相続に詳しい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

祖父から孫への収益物件遺贈|親からの納税資金借入のよくある質問まとめ

Q.祖父から孫への遺贈で、親が納税資金を貸す場合、贈与税を避けるための注意点は何ですか?

A.贈与とみなされないためには、必ず「金銭消費貸借契約書」を作成してください。契約書には、貸付額、金利、返済期間、返済方法を具体的に明記し、実際に契約通りに返済している記録(銀行振込など)を残すことが重要です。形式的な契約だけでなく、実態が伴っていることがポイントになります。

Q.親子間の貸付の金利は、どのくらいに設定すれば良いですか?

A.無利息や市場金利に比べて著しく低い金利は、利息相当額が贈与とみなされるリスクがあります。客観的に妥当な金利を設定する必要があり、目安として国が定める基準年利率や、一般的な銀行の貸付金利などを参考にするとよいでしょう。金利設定に不安がある場合は、税理士などの専門家にご相談ください。

Q.返済期間はどのように決めれば良いですか?

A.遺贈された収益物件の賃料収入から、税金や経費を差し引いた手残りのキャッシュフローを算出し、無理なく返済できる現実的な期間を設定することが重要です。返済能力に不相応な長期間の設定は、返済の意思がないと判断される可能性もあるため、貸し手(親)の年齢も考慮して計画的に設定しましょう。

Q.返済は賃料収入から行いますが、税金面で気をつけることはありますか?

A.孫は、収益物件から得た賃料収入に対して所得税(不動産所得)の確定申告が必要です。親への返済額のうち、元本部分は経費になりませんが、支払った利息は不動産所得を計算する上で必要経費に算入できる場合があります。正しい経理処理と申告が重要です。

Q.金銭消費貸借契約書は自分で作っても大丈夫ですか?

A.ご自身で作成することも可能ですが、税務調査などで指摘を受けないためには、法的に有効な形式で作成することが不可欠です。貸付額、金利、返済期間、返済方法などの必須項目を漏れなく記載しましょう。後々のトラブルを避けるため、専門家に作成を依頼するか、公正証書として作成することをおすすめします。

Q.孫が資産管理会社の株主で、親が役員であることは何か影響しますか?

A.今回の貸付はあくまで「親(個人)」から「子(孫・個人)」へのものであることを明確にしましょう。会社と個人の資金を混同すると、税務上の問題が複雑になる可能性があります。返済原資が資産管理会社からの配当や役員報酬であっても、貸付契約そのものは個人間で行い、その事実を記録に残しておくことが大切です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。