「可愛い孫のために、財産をのこしたい」「でも、税金が高くなるのは避けたい」とお考えではありませんか?実は、孫への生前贈与は、相続税対策として非常に有効な手段なんです。この記事では、孫への贈与がなぜ相続対策になるのか、そして贈与税がかからずに財産を渡すための具体的な方法と注意点を、分かりやすく解説していきます。
孫への生前贈与が相続税対策になる4つのメリット
孫へ生前贈与をすると、金銭的な援助ができるだけでなく、相続税対策としても大きなメリットがあります。具体的にどのようなメリットがあるのか、一つずつ見ていきましょう。
相続財産そのものを減らせる
生前に財産を贈与することで、将来の相続財産を直接減らすことができます。相続税は、遺産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超えた部分に課税されます。生前贈与で財産を減らせば、課税対象となる遺産総額を抑え、結果的に相続税をゼロにしたり、税額を大きく減らしたりすることが可能です。
相続税の税率を下げられる可能性がある
相続税は、財産額が大きくなるほど税率が高くなる「超過累進課税」という仕組みです。生前贈与によって課税遺産総額を減らすことができれば、より低い税率が適用される可能性があります。例えば、税率30%の区分から20%の区分に下がれば、税負担は大きく変わります。
相続税の課税を一代飛ばせる
通常、財産は「祖父母→親→子(孫)」と二世代にわたって相続され、その都度相続税が課される可能性があります。しかし、祖父母から孫へ直接贈与することで、親の世代を飛ばして財産を移転できます。これにより、相続の回数を1回減らせるため、結果的に税負担を軽減できるのです。
孫は「生前贈与加算」の対象外になる
相続税法には、亡くなる前の一定期間内(※)の贈与を相続財産に持ち戻して計算する「生前贈与加算」というルールがあります。しかし、このルールは原則として「相続や遺贈によって財産を取得する人」が対象です。そのため、遺言で財産を受け取ったり、生命保険の受取人になっていたりしない限り、相続人ではない孫への贈与はこの加算の対象外となります。つまり、相続開始直前の贈与でも節税効果が期待できるのです。
※生前贈与加算の期間は、2024年1月1日以降の贈与から段階的に3年から7年に延長されます。
孫への贈与で使える非課税制度【暦年贈与】
孫への贈与で最も手軽で基本的な方法が「暦年贈与」です。これは、毎年110万円までなら贈与税がかからないという制度を活用する方法です。
毎年110万円まで非課税で贈与できる
贈与税には、贈与を受ける人(受贈者)一人あたり年間110万円の基礎控除があります。この範囲内での贈与であれば、贈与税はかからず、申告も不要です。例えば、孫が3人いれば、毎年合計330万円(110万円×3人)を非課税で贈与できます。これを長期間続ければ、大きな節税効果が期待できます。
暦年贈与の注意点:定期贈与とみなされないために
毎年同じ日に同じ金額を贈与し続けると、「定期贈与」とみなされる可能性があります。定期贈与とは、「1,000万円を10年間にわたって毎年100万円ずつ贈与する」というように、あらかじめまとまった金額を分割して渡す約束があったと判断されるものです。この場合、贈与総額(この例では1,000万円)に対して贈与税が課される恐れがあります。これを避けるために、以下の対策が有効です。
- 毎年、贈与契約書を作成する
- 贈与する日や金額を毎年少し変える(例:110万円、105万円など)
- 現金の受け渡しではなく、銀行振込を利用して記録を残す
暦年贈与の注意点:名義預金と判断されないために
祖父母が孫名義の口座にお金を振り込んでも、その通帳や印鑑を祖父母が管理していると「名義預金」と判断され、贈与が成立していないとみなされることがあります。名義預金は、亡くなった祖父母の相続財産として扱われ、相続税の対象になります。贈与を成立させるためには、以下の点が重要です。
- 贈与されたお金は孫(未成年者の場合は親権者)が自由に使える状態で管理する
- 通帳や印鑑は孫(または親権者)が保管する
- 贈与の事実を孫やその親に伝え、認識してもらう
孫への贈与で使える非課税制度【相続時精算課税制度】
まとまった金額を一度に贈与したい場合に検討したいのが「相続時精算課税制度」です。少し複雑ですが、うまく使えば大きなメリットがあります。
2,500万円まで贈与税がかからない特別な制度
相続時精算課税制度は、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与で選択できる制度です。この制度を使うと、累計2,500万円までの贈与には贈与税がかかりません。2,500万円を超えた部分には、一律20%の贈与税がかかります。そして、贈与者が亡くなった時に、この制度で贈与した財産を相続財産に加えて相続税を計算する仕組みです。
2024年から年間110万円の基礎控除が新設!
2024年1月1日以降の贈与から、この相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除が新設されました。この110万円以下の贈与は、2,500万円の特別控除とは別枠で、贈与税もかからず、将来の相続税計算にも加算されません。これにより、暦年贈与と似たような使い方ができ、制度がより利用しやすくなりました。一度この制度を選択すると、同じ贈与者からの贈与は暦年贈与に戻れないため、慎重な判断が必要です。
目的が決まっているなら活用したい!贈与税の非課税特例
孫への贈与の目的がはっきりしている場合は、さらに大きな非課税枠が用意された特例を利用できます。これらは暦年贈与(110万円)とも併用可能です。
教育資金の一括贈与
30歳未満の孫へ教育資金を贈与する場合、最大1,500万円まで非課税になる特例です。入学金や授業料のほか、塾や習い事の費用(最大500万円まで)も対象になります。この特例を使うには、金融機関で専用の口座を開設する必要があります。
非課税限度額 | 受贈者1人あたり最大1,500万円 |
(うち学校等以外) | 最大500万円 |
対象者(受贈者) | 30歳未満の直系卑属(子・孫など) |
適用期限 | 2026年3月31日まで |
ただし、孫が30歳になった時点で使い残しがあると、その残額に贈与税がかかるなどの注意点があります。
結婚・子育て資金の一括贈与
18歳以上50歳未満の孫へ結婚や子育てのための資金を贈与する場合、最大1,000万円まで非課税になる特例です。結婚資金は300万円が上限です。こちらも金融機関での専用口座開設が必要です。
非課税限度額 | 受贈者1人あたり最大1,000万円 |
(うち結婚関連費用) | 最大300万円 |
対象者(受贈者) | 18歳以上50歳未満の直系卑属(子・孫など) |
適用期限 | 2027年3月31日まで |
贈与者が亡くなった時に残額があると、原則として相続税の課税対象になる点に注意が必要です。
住宅取得等資金の贈与
18歳以上の孫がマイホームを新築・取得・増改築するための資金を贈与する場合、一定の要件を満たせば最大1,000万円まで非課税になります。
非課税限度額 | 省エネ等住宅:1,000万円 上記以外の住宅:500万円 |
対象者(受贈者) | 18歳以上の直系卑属(子・孫など)で、合計所得金額2,000万円以下などの要件あり |
適用期限 | 2026年12月31日まで |
この特例で贈与した財産は、生前贈与加算の対象にならないというメリットもあります。
忘れてはいけない!孫への贈与の重要ポイント
孫への贈与を成功させるために、税金面以外にも気を付けたいポイントがあります。
そもそも非課税の「生活費・教育費」
実は、扶養義務者(祖父母も含まれる)が孫の生活や教育のために「その都度」必要な費用を支払うことは、そもそも贈与税の対象外です。例えば、孫の大学の入学金を直接大学に支払ったり、毎月の学費を負担したりする場合です。「4年間の学費をまとめて400万円渡す」といった場合は贈与税の対象になる可能性があるので、その都度支払うのがポイントです。
贈与契約書を作成する
口約束でも贈与は成立しますが、後々のトラブルや税務調査に備え、「誰が、いつ、誰に、何を贈与したか」を明確にする贈与契約書を作成しておくことが非常に重要です。特に暦年贈与を毎年行う場合は、その都度作成しましょう。
他の相続人の遺留分に配慮する
遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に認められた最低限の遺産の取り分です。特定の孫に多額の贈与をすると、他の相続人(自分の子など)の遺留分を侵害してしまう可能性があります。相続開始前1年以内に行われた孫への贈与は遺留分計算の対象になります。将来の家族トラブルを防ぐためにも、遺留分を侵害しない範囲で贈与を行うようにしましょう。
まとめ
孫への生前贈与は、可愛い孫の将来を応援できるだけでなく、効果的な相続対策にもなります。贈与には様々な方法があり、それぞれにメリットと注意点があります。
- 毎年コツコツ贈与するなら「暦年贈与」
- まとまった資金を贈与するなら「相続時精算課税制度」
- 教育や結婚、住宅購入など目的が決まっているなら「各種非課税特例」
どの方法がご自身の状況に合っているかを見極め、計画的に進めることが大切です。特に非課税特例は手続きが複雑で、期限も定められています。不明な点があれば、税理士などの専門家に相談することも検討しましょう。この記事を参考に、賢く、そして円満な財産承継を実現してくださいね。
参考文献
- No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁
- No.4103 相続時精算課税の選択|国税庁
- No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)|国税庁
- No.4405 贈与税がかからない場合|国税庁
- No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税|国税庁
- No.4510 直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁
- No.4511 直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税|国税庁
孫への生前贈与に関するよくある質問まとめ
Q.孫への贈与は、年間いくらまでなら税金がかかりませんか?
A.暦年贈与の基礎控除額である年間110万円までなら、贈与税はかからず申告も不要です。これは贈与を受ける人(孫)一人あたりの金額です。ただし、同じ年に他の人からも贈与を受けている場合は、その合計額で判断します。
Q.孫への贈与で気をつけるべきことは何ですか?
A.贈与の証拠として「贈与契約書」を作成し、銀行振込など記録が残る形で行うことが重要です。また、孫名義の口座でも祖父母が通帳や印鑑を管理していると「名義預金」とみなされ、相続財産に含まれる可能性があるので注意しましょう。
Q.亡くなる直前の孫への贈与も相続対策になりますか?
A.相続開始前3年〜7年以内(※)の贈与は相続財産に加算されますが、これは「相続または遺贈により財産を取得した人」への贈与が対象です。相続人ではない孫への贈与は、原則としてこの加算の対象外となるため、有効な相続税対策になります。ただし、孫が遺言で財産を受け取る場合は加算対象になるため注意が必要です。(※2024年1月1日以降の贈与から段階的に延長)
Q.孫の教育費としてまとまったお金を非課税で渡す方法はありますか?
A.「教育資金の一括贈与の特例」を利用すれば、金融機関で専用口座を開設することで、孫一人あたり最大1,500万円まで非課税で贈与できます。ただし、この制度は2026年3月31日までなのでご注意ください。
Q.まだ小さい孫(未成年)へ贈与する場合、どうすれば良いですか?
A.未成年の孫へ贈与する場合、親権者(通常は孫の親)の同意が必要です。贈与契約書には、孫本人と親権者の両方の署名・捺印をもらうと確実です。贈与された財産の管理は親権者が行うことになります。
Q.現金を手渡しで贈与しても大丈夫ですか?
A.税務署に贈与の事実を客観的に証明できないため、手渡しは避けるべきです。後々のトラブルを防ぐためにも、銀行振込で「誰から誰へ、いつ、いくら」送金されたか記録を残し、贈与契約書も作成しておきましょう。