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家を継ぐ人がいない…!大切な財産を守るための相続対策ガイド

2025-09-04
目次

「自分には子どもがいないし、家や財産を継いでくれる親族もいない…」そんなお悩みを抱えていませんか?少子高齢化が進む現代、家を継ぐ人がいないという問題は、誰にでも起こりうる身近な悩みになっています。もし何も対策をしないまま亡くなってしまうと、大切に築いてきた財産は最終的に国のものになってしまうかもしれません。そうなる前に、ご自身の希望通りに財産を活かすための方法を知っておきましょう。この記事では、家を継ぐ人がいない場合の相続対策について、優しく分かりやすく解説していきますね。

家を継ぐ人がいないと財産はどうなるの?

まず、相続を引き継ぐ人が誰もいない状態を法律用語で「相続人不存在(そうぞくにんふざい)」と言います。この状態になると、残された預貯金や不動産などの財産は、最終的に「国庫に帰属」つまり国のものになります。実際に、最高裁判所の統計によると、2021年度には約647億円もの遺産が国庫に帰属したというデータもあるんですよ。せっかくの財産ですから、ご自身の意思で有効に使いたいですよね。そのためにも、誰が相続人になるのか、どんなケースで相続人がいなくなってしまうのか、基本から知っておくことが大切です。

相続人になれる人の範囲とは?

法律(民法)では、誰が財産を相続できるか「法定相続人」として順番が決められています。この範囲に誰もいなければ、「相続人がいない」ということになります。まずは、誰が相続人になる可能性があるのか確認してみましょう。

相続の順位 法定相続人
常に相続人 配偶者(夫または妻)
第1順位 (子が亡くなっている場合は孫)
第2順位 父母(父母が亡くなっている場合は祖父母)
第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)

配偶者は常に相続人となり、それ以外は第1順位から順番に相続権が移っていきます。例えば、子や孫がいなければ第2順位の父母へ、父母もいなければ第3順位の兄弟姉妹へと権利が移る仕組みです。この第3順位の甥や姪まで誰もいない場合に、相続人不存在となります。

相続人が全員「相続放棄」した場合

法定相続人がいたとしても、全員が相続を放棄するケースもあります。例えば、故人に多額の借金があった場合、相続人はプラスの財産だけでなくマイナスの財産(借金)も引き継がなくてはなりません。そのため、財産を一切受け取らない代わりに借金の返済義務もなくなる「相続放棄」という手続きを選ぶことがあるのです。法定相続人全員が相続放棄をすると、結果的に相続人が誰もいない状態となり、相続人不存在として扱われます。

「特別縁故者」ってどんな人?

相続人はいないけれど、生前にとてもお世話になった人や、特別な関係だった人に財産を渡したい、というケースもありますよね。そんな時に認められる可能性があるのが「特別縁故者(とくべつえんこしゃ)」です。例えば、内縁の妻や夫、長年にわたって介護や身の回りのお世話をしてくれた人などがこれにあたります。ただし、特別縁故者として認められるには、家庭裁判所に申し立てを行い、厳しい審査をクリアする必要があります。自動的に財産が渡るわけではないので、注意が必要ですね。

財産を希望通りに残すための生前対策

ご自身の財産を国に渡すのではなく、お世話になった友人や、応援したい団体などに確実に届けたい場合、元気なうちから準備しておくことが何よりも大切です。ここでは、そのための具体的な方法を3つご紹介します。

最も有効な「遺言書」の作成

ご自身の意思を最も確実に実現できる方法が「遺言書」の作成です。遺言書があれば、法定相続人ではない人にも財産を譲る「遺贈(いぞう)」ができます。友人や知人、NPO法人や自治体など、自由に相手を指定できますよ。遺言書にはいくつか種類がありますが、代表的なものを比べてみましょう。

遺言書の種類 特   徴
自筆証書遺言 自分で手書きで作成する遺言書です。費用がかからず手軽ですが、形式に不備があると無効になるリスクがあります。法務局で保管してもらう制度(費用3,900円)を利用すると、紛失や改ざんを防げます。
公正証書遺言 公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。費用はかかりますが(財産額に応じて数万円〜)、専門家が関与するため無効になる心配がほとんどなく、最も確実な方法と言えます。

大切な財産を確実に届けたいと考えるなら、公正証書遺言を作成しておくことを強くおすすめします。

元気なうちに財産を渡す「生前贈与」

亡くなるのを待たずに、生きている間に財産を渡しておくのが「生前贈与」です。毎年110万円までなら贈与税がかからない「暦年贈与」という制度がよく知られていますね。ただし、亡くなる前の一定期間内に行われた贈与は、相続財産に加算されてしまうルールがあります。この期間は2024年から段階的に延長され、最終的には亡くなる前7年間の贈与が対象となりますので注意しましょう。一度に大きな金額を贈与したい場合は、別の税制度(相続時精算課税制度)などを検討する必要があるため、専門家への相談が安心です。

認知症対策にもなる「家族信託」

ご自身の財産管理を、元気なうちに信頼できる家族や親族に託す契約が「家族信託」です。例えば、「自分が認知症になったら、この不動産の管理を甥に任せる。そして自分が亡くなったら、その不動産はお世話になった〇〇さんに渡す」といったように、財産の管理と承継先を柔軟に決めることができます。認知症などによる資産凍結のリスクを防ぎながら、スムーズな財産承継を実現できるのが大きなメリットです。

家や土地などの不動産はどうすればいい?

現金と違って、不動産は管理に手間や費用がかかり、簡単に分けることもできません。継ぐ人がいない場合、放置すれば空き家問題にもつながってしまいます。そうなる前に、具体的な対策を考えておきましょう。

売却して現金化しておく

最もシンプルで分かりやすいのが、生前に家や土地を売却して現金に変えておく方法です。現金であれば、遺言書で「誰にいくら」と分けやすく、相続トラブルも防ぎやすくなります。また、毎年の固定資産税の支払いや、建物の修繕・管理といった負担からも解放されるという大きなメリットがありますよ。

賃貸物件として活用する

もし不動産が便利な場所にあるなら、賃貸に出して家賃収入を得るという選択肢もあります。得られた家賃収入をご自身の生活費に充てたり、将来その不動産と家賃収入を誰に引き継いでもらうかを遺言書で指定したりすることも可能です。ただし、不動産会社への管理委託費用や、空室のリスクなども考慮しておく必要がありますね。

寄付するという選択肢

生まれ育った故郷の自治体や、社会貢献活動を行う公益法人などに不動産を寄付することもできます。「自分の財産を社会のために役立ててほしい」という想いを形にできる素晴らしい方法です。ただし、どんな不動産でも受け付けてもらえるわけではないため、寄付したいと考えている団体や自治体に、事前に相談してみることが大切です。

お墓の承継はどうする?

財産だけでなく、お墓を継ぐ人がいないという問題も非常に深刻です。管理する人がいなくなると、お墓は荒れ果て、最終的には「無縁墓」として撤去されてしまうこともあります。ご先祖様やご自身が安らかに眠るためにも、お墓の将来について考えておきましょう。

「墓じまい」をして永代供養へ

今あるお墓を片付けて、更地にして墓地の管理者に返すことを「墓じまい」と言います。墓じまいをした後のご遺骨は、お寺や霊園が責任をもって供養・管理してくれる「永代供養墓」などに移すのが一般的です。墓じまいには、行政手続きや石材店への依頼などが必要で、費用も数十万円から150万円程度かかることもあります。親族がいる場合は、事前に相談して理解を得ておくことも大切ですよ。

承継者のいらないお墓を選ぶ

これからご自身のお墓を考えるのであれば、承継を前提としない新しいタイプのお墓を選ぶのも良い方法です。例えば、樹木を墓標とする「樹木葬」や、屋内でご遺骨を管理する「納骨堂」などは、多くの場合、管理費を一括で支払えばその後の管理をお任せできます。生前に自分で契約しておくことで、将来誰にも迷惑をかけずに済み、安心できますね。

相続手続きの流れと注意点

もし対策をしないまま亡くなり、相続人がいないことが判明した場合、法律に則って以下のような手続きが進められます。少し複雑ですが、財産が最終的にどうなるのかを知るために、流れを理解しておきましょう。

「相続財産清算人」の選任

相続人がいない場合、まず家庭裁判所が遺産を管理・清算する「相続財産清算人(そうぞくざいさんせいさんにん)」を選任します。この申し立ては、お金を貸していた人(債権者)や特別縁故者などの利害関係者が行います。通常は、弁護士などの専門家が選任され、故人の財産を調査・管理し、借金の返済などを行います。

相続人捜索の公告と手続き期間

相続財産清算人が選任されると、官報(国の新聞のようなもの)で「相続人はいませんか?」と呼びかける公告が6ヶ月以上の期間行われます。同時に、債権者や遺贈を受ける人に対して、申し出るように促す公告も行われます。この期間内に相続人が現れなければ、「相続人不存在」が法的に確定します。

最終的に財産は国庫へ

決められた期間内に相続人が現れず、借金の支払いや特別縁故者への財産分与などを終えてもなお財産が残った場合、その財産は最終的に国庫に帰属し、国のものとなります。この一連の手続きには、少なくとも1年近くの時間がかかります。

まとめ

「家を継ぐ人がいない」という問題は、決して他人事ではありません。しかし、元気なうちから計画的に準備を進めることで、ご自身の希望を叶えることは十分に可能です。最も有効な方法は、あなたの想いを形にできる遺言書を作成しておくことです。そして、管理が難しい不動産やお墓についても、どうしたいのか方針を決めておくことが大切ですね。何から手をつけて良いか分からない、手続きが難しそうだと感じたら、一人で悩まずに弁護士や司法書士、税理士といった専門家に相談してみるのも良いでしょう。あなたの大切な財産を、最も望む形で未来につないでいきましょう。

参考文献

相続人の範囲と法定相続分|国税庁

贈与税がかかる場合|国税庁

家を継ぐ人がいない時の相続対策 よくある質問まとめ

Q. 家を継ぐ人がいない場合、その家はどうなりますか?

A. 法定相続人が相続するのが原則です。相続人が誰もいない、または全員が相続放棄した場合は、最終的に国のもの(国庫に帰属)となります。

Q. 相続人がいても誰も家を欲しがりません。相続放棄すべきですか?

A. 相続放棄は選択肢の一つですが、家だけでなく預貯金などプラスの財産も全て手放すことになります。また、次の順位の相続人に管理責任が移る可能性もあるため、慎重な判断が必要です。

Q. 家を継ぐ人がいない場合、生前にできる対策はありますか?

A. 生前のうちに売却する、賃貸に出す、遺言書で第三者(お世話になった人や団体など)に遺贈する、寄付するなどの対策が考えられます。早めに専門家へ相談することをおすすめします。

Q. 相続した家を売却する場合、税金はかかりますか?

A. 売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所得税と住民税がかかります。ただし、一定の要件を満たせば「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」などの特例を使える場合があります。

Q. 不要な土地を国に引き取ってもらう制度があると聞きました。

A. 「相続土地国庫帰属制度」のことです。相続した不要な土地を、一定の要件を満たし、審査手数料と負担金を納めることで国に引き取ってもらえる制度です。ただし、建物がある土地は対象外です。

Q. 兄弟はいますが遠方に住んでおり、誰も実家を継ぎたがりません。どうすれば良いですか?

A. まずは相続人全員で話し合い、売却して現金で分ける(換価分割)のが現実的な方法です。管理の手間や固定資産税の負担を避けるためにも、放置せず早めに対応を検討しましょう。

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