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容積率が違う土地の評価方法を解説!相続税が安くなるケースも?

2024-11-27
目次

ご家族から土地を相続したとき、その土地が一つの容積率ではなく、複数の異なる容積率の地域にまたがっていることがあります。このような土地は、評価が少し複雑になりますが、正しく評価することで相続税を節税できる可能性があります。この記事では、容積率の異なる土地の評価方法について、具体例を交えながら分かりやすく解説していきますね。

そもそも「容積率」って何?土地の評価に関係あるの?

土地の評価を理解する上で、まず「容積率」という言葉を知っておくことが大切です。容積率が土地の価値に大きく関わってくるため、相続税評価でも重要なポイントになります。なぜ一つの土地に異なる容積率が存在するのか、その仕組みから見ていきましょう。

容積率とは?敷地面積と延床面積の割合

容積率とは、その土地の面積(敷地面積)に対して、どれくらいの広さ(延床面積)の建物を建てられるかを示す割合のことです。例えば、100㎡の土地で容積率が200%なら、延床面積の合計が200㎡までの建物を建てることができます。この容積率が高いほど、より大きなビルやマンションなどを建てられるため、土地の利用価値が高く、一般的に評価額も高くなる傾向にあります。

なぜ1つの土地に容積率が違う場所があるの?

土地の容積率は、都市計画法に基づいて自治体が定める「用途地域」ごとに決められています。例えば、「商業地域」は高い容積率が設定され、「第一種低層住居専用地域」は低い容積率が設定される、といった具合です。この用途地域の境界線が、ちょうど一つの土地の真ん中を通ってしまうことがあります。幹線道路沿いは「商業地域(容積率400%)」、その一本裏の土地は「住居地域(容積率200%)」といったケースが典型例で、このような場合に「容積率の異なる土地」が生まれるのです。

容積率の異なる土地の相続税評価の基本

相続税を計算する際、土地の評価は路線価方式(道路に面した土地の1㎡あたりの価格)で行うのが一般的です。しかし、容積率が異なる土地の場合、単純に路線価だけで計算すると、実際の価値よりも高く評価されてしまうことがあります。そこで、その差を調整するための特別な評価方法が用意されています。

評価額の減額調整ができる仕組み

路線価は、基本的にその道路に面している部分の高い容積率を基準に設定されています。しかし、土地の奥まった部分が低い容積率の地域にかかっている場合、土地全体を高い容積率の価値で評価するのは不公平ですよね。そこで、このような土地の利用価値の低下を考慮して、評価額を減額できる仕組みがあります。具体的には、以下の計算式で評価額を調整します。
(正面路線価で計算した評価額)-(正面路線価で計算した評価額 × 減額割合)
この「減額割合」を正しく計算することが、節税の鍵となります。

減額割合の計算方法

減額割合は、少し複雑ですが以下の式で計算します。
減額割合 = {1 - (加重平均容積率 ÷ 正面路線価が適用される地域の容積率)} × 影響度
「加重平均容積率」とは、土地全体の実質的な容積率のことで、各地域の容積率を面積に応じて平均したものです。例えば、400%のエリアが300㎡、200%のエリアが200㎡ある土地なら、「(400% × 300㎡ + 200% × 200㎡) ÷ 500㎡」で計算します。そして、この減額割合に「影響度」という数値を掛け合わせます。

地区区分ごとの「影響度」とは?

「影響度」とは、容積率の違いが土地の価格にどれくらい影響を与えるかを示す数値です。商業地のように収益性が重視される場所では影響が大きく、住宅地では影響が比較的小さくなります。この影響度は、土地がどの「地区区分」にあるかによって、以下のように定められています。

地区区分 影響度
高度商業地区・繁華街地区 0.8
普通商業・併用住宅地区 0.5
普通住宅地区 0.1

評価に使う容積率の注意点「指定容積率」と「基準容積率」

減額割合の計算に使う容積率には、実は2つの種類があります。それは「指定容積率」と「基準容積率」です。この2つを比べて、より低い(厳しい)方の数値を計算に使うというルールがあるため、注意が必要です。

指定容積率とは

指定容積率は、都市計画によって定められた、その地域本来の公式な容積率です。お住まいの市区町村の役所(都市計画課など)で確認したり、自治体のホームページに掲載されている都市計画図で調べたりすることができます。

基準容積率とは

基準容積率は、土地の前にある道路の幅によって制限がかかる場合の容積率です。特に、前面道路の幅員が12m未満の場合に適用されます。道が狭い場所に大きな建物が建ちすぎないようにするためのルールで、以下の式で計算します。
基準容積率 = 前面道路の幅員(m) × 法定乗数
法定乗数は、用途地域によって決まっています。

用途地域 法定乗数
第1種・第2種低層住居専用地域など、住居系の地域 4/10
商業地域・工業地域など、その他の地域 6/10

どちらの容積率を使うの?

評価額を計算する際には、まず各地域で「指定容積率」と、計算で求めた「基準容積率」を比較します。そして、いずれか小さい方の数値を、その地域の適用容積率として採用します。これを間違えると評価額が大きく変わってしまうため、非常に重要なポイントです。

【具体例で解説】容積率の異なる土地の評価額計算

それでは、具体的な例を使って評価額を計算してみましょう。

【設定】

  • 土地全体の面積:500㎡
  • 正面路線側(A地域):300㎡、商業地域、指定容積率400%
  • 奥側(B地域):200㎡、第1種住居地域、指定容積率200%
  • 前面道路の幅員:6m
  • 正面路線価:300,000円/㎡
  • 地区区分:普通商業・併用住宅地区(影響度0.5)

Step1:各地域の適用容積率を決定する

  • A地域(商業地域):基準容積率 = 6m × 6/10 = 360%。指定容積率400%より低いので、適用容積率は360%となります。
  • B地域(住居地域):基準容積率 = 6m × 4/10 = 240%。指定容積率200%の方が低いので、適用容積率は200%となります。

Step2:減額割合を計算する

  • 加重平均容積率:(360% × 300㎡ + 200% × 200㎡) ÷ 500㎡ = 296%
  • 正面路線の容積率:360%
  • 減額割合:{1 – (296% ÷ 360%)} × 0.5 = 0.0888… ≒ 0.089(小数点以下第3位未満を四捨五入)

Step3:最終的な評価額を計算する

  • 減額調整前の評価額:300,000円 × 500㎡ = 150,000,000円
  • 減額される金額:150,000,000円 × 0.089 = 13,350,000円
  • 最終的な土地の評価額:150,000,000円 – 13,350,000円 = 136,650,000円

このように、減額調整を適用することで、評価額を1,335万円も引き下げることができました。

減額調整ができないケースもあるので注意!

とても便利な減額調整ですが、残念ながら適用できないケースもあります。代表的な3つのパターンを知っておきましょう。

正面路線側の容積率が低い場合

道路に面した部分の容積率が200%で、奥まった部分が400%というように、奥の土地の方が容積率が高い場合があります。この場合、路線価はすでに低い方の容積率(200%)を基準に設定されていると考えられるため、減額調整は行いません。

容積率の境界線が道路と平行でない場合

土地の奥に向かって容積率が変わるのではなく、道路に沿って縦に容積率の境界線が入っているケースです。この場合、それぞれの部分が正面路線に接しており、路線価がそれぞれの容積率を反映していると考えられるため、減額調整の対象にはなりません。

減額調整で他の路線価を下回ってしまう場合

角地や二方路に面する土地で、正面路線の評価額を減額調整した結果、もう一方の道路(側面路線や裏面路線)を基準に計算した評価額よりも低くなってしまうことがあります。このような場合は、減額調整は適用せず、より高い評価額となる方の路線を正面路線とみなして再計算するというルールになっています。

まとめ

容積率の異なる土地の評価は一見複雑に感じられるかもしれませんが、その仕組みを理解し、正しく適用することで相続税の負担を大きく軽減できる可能性があります。今回のポイントをまとめます。

  • 1つの土地が異なる容積率の地域にまたがる場合、評価額を減額できる特例がある。
  • 評価に使う容積率は「指定容積率」と「基準容積率」のうち低い方を採用する。
  • 土地の状況によっては減額調整ができないケースもあるため、慎重な判断が必要。

この評価方法は専門的な知識や役所での調査が必要となるため、ご自身での判断は難しいかもしれません。相続財産にこうした土地が含まれている場合は、相続税申告に詳しい税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。適切な評価を行い、納得のいく相続手続きを進めていきましょう。

参考文献

容積率が異なる土地の評価に関するよくある質問まとめ

Q. 複数の土地にまたがって家が建っています。容積率が違う場合、土地の評価はどうなりますか?

A. 複数の土地を一体として利用している場合、全体を一つの土地(一画地)として評価します。容積率は、各土地の面積で加重平均して算出した「加重平均容積率」を使って評価額を計算します。

Q. 加重平均容積率とは何ですか?計算方法を教えてください。

A. 加重平均容積率とは、容積率の異なる複数の土地を一体評価する際に用いる平均の容積率です。計算式は「(A土地の面積 × A土地の容積率 + B土地の面積 × B土地の容積率)÷(A土地の面積 + B土地の面積)」となります。

Q. 容積率が違うと、なぜ土地の評価額が変わるのですか?

A. 容積率が高い土地ほど、より大きな建物を建てられるため、土地の利用価値が高いと判断されます。そのため、路線価が同じでも容積率が高い方が評価額は高くなる傾向があります。相続税評価では、この価値の違いを反映させるために容積率による補正が行われます。

Q. 相続税の土地評価で、容積率の異なる土地を一体評価するメリットはありますか?

A. メリット・デメリットは状況によります。加重平均容積率を計算することで、より実態に即した評価が可能になります。例えば、容積率の低い土地の影響で全体の評価額が下がることがあります。一方で、個別に評価した方が有利になるケースもあるため、専門家への相談が推奨されます。

Q. 正面路線価は容積率の高い方の道路を選ぶのでしょうか?

A. 必ずしもそうとは限りません。正面路線価は、原則として路線価に奥行価格補正率を乗じて計算した金額が高い方の道路を選びます。ただし、容積率の異なる地域にまたがる場合は、加重平均容積率を基に評価するため、単純に路線価だけで判断するわけではありません。

Q. 固定資産税の評価でも、容積率の異なる土地は一体で評価されますか?

A. 固定資産税の評価においても、土地の利用状況が一体不可分であると判断されれば、一体として評価されるのが一般的です。ただし、評価の基準や方法は市町村によって異なる場合があるため、詳細は管轄の市町村役場にご確認ください。

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