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小規模宅地の特例は併用できる?東京の実家と大阪の子の家ケースを解説

2025-04-30
目次

相続税の負担を大きく軽減できる可能性がある「小規模宅地の特例」。この特例は、亡くなった方(被相続人)が住んでいたご自宅の土地だけでなく、その方と生計を一にしていたご家族が住んでいた土地も対象になる場合があります。では、例えば「東京で暮らしていた親」と「大阪で暮らす子」のように、親子が離れて暮らしていた場合、この特例は使えるのでしょうか。また、東京と大阪、両方の土地に特例を適用することは可能なのでしょうか。今回は、このような具体的なケースをもとに、小規模宅地の特例の適用関係について、分かりやすく解説していきます。

小規模宅地の特例とは?制度の基本をおさらい

まず、小規模宅地の特例がどのような制度なのか、基本から確認しておきましょう。この特例は、亡くなった方やその方と生計を共にしてきたご家族の生活基盤となる土地を守るために設けられた制度です。ご自宅や事業で使っていた土地の評価額を最大で80%も減額できる、非常に節税効果の大きな制度であり、相続税対策を考える上で欠かすことのできない重要なポイントです。

特例の対象となる宅地の種類と減額割合

小規模宅地の特例の対象となる土地は、その利用状況によって主に4つの種類に分けられます。それぞれ限度面積と減額割合が定められていますので、全体像を把握しておきましょう。

宅地の種類 限度面積と減額割合
特定居住用宅地等 330㎡まで80%減額
特定事業用宅地等 400㎡まで80%減額
特定同族会社事業用宅地等 400㎡まで80%減額
貸付事業用宅地等 200㎡まで50%減額

特定居住用宅地等とは?2つのパターン

今回のケースで重要となるのが「特定居住用宅地等」です。この特定居住用宅地等には、実は2つのパターンがあります。ご自身の状況がどちらに当てはまるかを確認することが大切です。

パターン1:被相続人の居住の用に供されていた宅地等
これは、亡くなった方ご自身が住んでいたご自宅の土地のことです。今回の例で言えば、「東京にある親のご実家」がこれに該当します。

パターン2:被相続人と生計を一にしていた親族の居住の用に供されていた宅地等
これは、亡くなった方と生計を共にしていたご家族(親族)が住んでいた土地(被相続人名義)のことです。今回の例では、「大阪にある子の自宅」がこれに該当する可能性があります。

「主として」居住の用に供していた「一の宅地」が対象

ここで非常に重要なルールがあります。それは、特定居住用宅地等として特例の対象になるのは、「主として」その居住の用に供していた「一の宅地等」に限られるという点です。例えば、被相続人が自宅のほかに別荘も所有していた場合、主に生活の拠点としていた自宅の土地しか特例の対象にはなりません。この「一の宅地」というルールが、今回のケースを理解する上での最大の鍵となります。

東京の実家と大阪の子の家、特例は使える?

それでは本題である、「被相続人(親)が東京在住、生計を一にする子供が大阪在住」というケースで、小規模宅地の特例がどのように適用されるのかを具体的に見ていきましょう。

結論:2つの宅地で特例の併用はできない

結論から申し上げますと、被相続人が住んでいた東京の宅地と、生計を一にする子供が住んでいた大阪の宅地の両方で「特定居住用宅地等」の特例を適用することはできません。

なぜなら、先ほどご説明した通り、特定居住用宅地等の特例が適用できるのは「主として居住の用に供されていた一の宅地等」に限られているからです。つまり、「被相続人の居住用宅地」と「生計を一にする親族の居住用宅地」は、どちらも「特定居住用宅地等」という同じカテゴリーに含まれるため、この2つの中からどちらか一方の宅地を選択して特例を適用することになります。

どちらの宅地で特例を適用すべきか?

では、東京と大阪、どちらの宅地で特例を適用するのが有利なのでしょうか。これは、それぞれの宅地の評価額や面積などを比較して判断します。一般的には、評価額が高く、減額される金額が大きくなる方の宅地を選択するのが賢明です。

比較ケース 減額効果のシミュレーション
東京の実家(評価額8,000万円) 8,000万円 × 80% = 6,400万円の評価減
大阪の子の家(評価額5,000万円) 5,000万円 × 80% = 4,000万円の評価減

上記の例では、評価額の高い東京の実家で特例を適用した方が、相続税の課税対象額をより大きく減らせるため有利になります。どちらの宅地を選択するかは、相続人全員でよく話し合って決めることが大切です。

重要な要件「生計を一にする」の考え方

今回のケースで大阪にある子の自宅を特例の選択肢に入れるためには、大前提として「被相続人と生計を一にしていた」という要件を満たす必要があります。この「生計を一にする」とは、具体的にどのような状態を指すのでしょうか。

お財布が一緒かどうかがポイント

「生計を一にする」とは、分かりやすく言うと「お財布が一緒で生活している」状態を指します。これは必ずしも同居していることを意味しません。たとえ東京と大阪のように離れて暮らしていても、親が子の生活を経済的に支えている実態があれば、この要件を満たす可能性があります。

別居の場合に「生計を一にする」と認められるケース

国税庁は、別居の場合でも「生計を一にする」と認められるケースとして、以下のような例を挙げています。

  • 勤務、修学、療養などの都合で別居しており、生活費、学資金、療養費などが常に送金されている場合。
  • 普段は別々に生活しているが、夏休みや年末年始など、余暇には親元で一緒に生活することを常としている場合。

例えば、東京の親が、大阪で一人暮らしをする子の家賃や生活費を毎月継続的に仕送りしていた、といった客観的な事実があれば、「生計を一にする」と認められる可能性は高まります。

単なるお小遣い程度の援助では不十分

注意点として、単に時々お小遣いを渡していた、たまに金銭的な援助をしていた、という程度では「生計を一にする」と認められるのは難しいでしょう。「その仕送りがなければ生活が成り立たない」といったレベルの、継続的で密接な経済的依存関係があることが重要です。そのため、銀行の振込履歴など、誰が見てもわかる客観的な証拠をきちんと残しておくことが大切になります。

特例を適用するための取得者の要件

小規模宅地の特例は、土地の状況だけでなく、その土地を誰が相続するか(取得者)によっても適用できるかどうかが決まります。それぞれのパターンで要件を確認しましょう。

被相続人の居住用宅地(東京の実家)を取得する場合の要件

亡くなった方が住んでいた東京の実家を相続する場合、取得者によって満たすべき要件が異なります。

取得者 主な要件
配偶者 特に要件はなく、無条件で適用できます。
同居していた親族 相続税の申告期限までその家に住み続け、土地も保有し続ける必要があります。
同居していない親族(家なき子) 過去3年以内に自分や配偶者などの持ち家に住んだことがない、など非常に厳しい要件(通称:家なき子特例)を満たす必要があります。今回のケースの大阪の子は持ち家があるため、通常はこの要件を満たしません。

生計一親族の居住用宅地(大阪の子の家)を取得する場合の要件

被相続人と生計を一にしていた子が、自分が住んでいる大阪の家(土地は被相続人名義)を相続する場合の要件は比較的シンプルです。

  • その子が、相続開始前から相続税の申告期限まで、引き続きその家に居住し、かつ、その宅地を申告期限まで保有し続けること。

この要件を満たせば、特例の適用対象となります。

特例適用における2つの重要な注意点

この非常に有利な特例ですが、適用を受けるためには必ず守らなければならない注意点があります。見落とすと特例が使えなくなってしまうため、しっかり押さえておきましょう。

相続税の申告が必須

小規模宅地の特例を適用した結果、計算上の相続税額がゼロになったとしても、相続税の申告手続きは必ず行わなければなりません。この特例は、申告をすることで初めて適用が認められる制度です。申告をしなければ特例は適用されず、後日、税務署から本来納めるべき税金とペナルティを請求される可能性があります。

申告期限までに遺産分割が確定していること

原則として、相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10か月以内)までに、誰がどの土地を相続するのかを遺産分割協議によって確定させておく必要があります。もし期限までに分割が決まらない場合は、「申告期限後3年以内の分割見込書」という書類を申告書に添付することで、3年以内に分割が確定すれば特例を適用できる救済措置があります。

まとめ

今回は、被相続人の自宅(東京)と、生計を一にする子の自宅(大阪)という2つの土地に対して、小規模宅地の特例が使えるかというテーマについて詳しく解説しました。

結論として、特定居住用宅地等の特例は2つの土地で併用することはできず、どちらか一方の有利な方を選択して適用することになります。子の自宅を選択肢に入れるためには、「生計を一にしていた」という事実を客観的な証拠で証明できるかが非常に重要です。小規模宅地の特例は要件が複雑で、ご家庭の状況によって判断が難しいケースも少なくありません。適用できるかどうかご自身で判断に迷う場合は、相続税に詳しい税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

小規模宅地の特例に関するよくある質問

Q. 小規模宅地の特例は、被相続人の家と子の家の両方に使えますか?

A. いいえ、使えません。特定居住用宅地等の特例は「主として居住の用に供していた一の宅地」に限られるため、どちらか一方を選択して適用することになります。

Q. 「生計を一にする」とは、同居していないとダメですか?

A. いいえ、同居は必須ではありません。別居していても、親から子へ生活費や学費などが常に送金されているなど、経済的に一体と認められれば「生計を一にする」に該当します。

Q. どちらの土地で特例を使うかは、どうやって決めればいいですか?

A. 一般的には、土地の評価額や面積を比較し、相続税の減額効果がより大きい方を選択すると有利になります。相続人全員での話し合いが必要です。

Q. 大阪に住む子が東京の実家を相続した場合、小規模宅地の特例は使えますか?

A. その子が「家なき子特例」の要件を満たせば適用できる可能性があります。しかし、大阪に持ち家がある場合は、この要件を満たさないため、原則として適用できません。

Q. 特例を使って相続税が0円になった場合、申告は不要ですか?

A. いいえ、申告は必須です。相続税の申告書を提出して初めて特例が適用されます。申告をしないと、特例は認められません。

Q. 「生計を一にしていた」ことを証明するには何が必要ですか?

A. 生活費などを送金していた事実がわかる預金通帳の履歴や、家賃の振込記録などが客観的な証拠となります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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