税理士法人プライムパートナーズ

市街化調整区域の宅地評価で固定資産税評価額をそのまま使えない理由

2026-02-27
目次

市街化調整区域内にある宅地を相続した際、「倍率方式だから固定資産税評価額に倍率を掛けるだけで簡単」と思っていませんか?実は、市街化調整区域の宅地評価において、固定資産税評価額をそのまま使ってはいけないケースが多く存在します。そのまま計算してしまうと、相続税を納めすぎてしまうかもしれません。この記事では、なぜそのまま使ってはいけないのか、正しい評価方法や注意点について詳しく解説します。

倍率方式とは?基本的な計算方法をおさらい

倍率方式とは、路線価が定められていない地域の土地を評価する際に用いる計算方法です。市街化調整区域内の土地の多くは、この倍率方式で評価されます。基本的な計算式は、固定資産税評価額に国税庁が定める評価倍率を乗じて算出します。評価倍率は、国税庁のホームページにある評価倍率表で確認でき、例えば宅地の倍率が1.1倍であれば、固定資産税評価額に1.1を掛けた金額が相続税評価額となります。しかし、市街化調整区域の場合は、この基本の計算式をそのまま適用できるとは限らない点に注意が必要です。

市街化調整区域内の宅地評価で固定資産税評価額をそのまま使えない理由

市街化調整区域は、原則として建物の建築が厳しく制限されている地域です。そのため、自由に建物を建てられる市街化区域の土地と比べて、土地の利用価値が著しく下がります。しかし、市区町村が算出する固定資産税評価額には、この建築制限というマイナス要因が十分に反映されていないことがあります。もし、建築制限が考慮されていない固定資産税評価額にそのまま倍率を掛けてしまうと、実際の価値よりも不当に高い評価額となり、結果として相続税を多く払い過ぎてしまうのです。

建築制限によるしんしゃく割合の適用

市街化調整区域内の宅地を評価する際、建物の建築制限の度合いに応じて評価額を減額できるしんしゃく割合という仕組みがあります。周辺の状況や法的な制限によって、評価額を最大50パーセント減額することが可能です。具体的には、原則として全く建物を建てられない地域であれば50パーセント、店舗など特定の用途なら建てられる地域であれば30パーセントの減額が適用されます。このしんしゃく割合を適用することで、適正な相続税評価額を算出することができます。

状況 適用されるしんしゃく割合
原則として建物の建築ができない地域 50パーセント
特定の用途の建物のみ建築が許可される地域 30パーセント
市街化区域に隣接し建築制限がない地域 0パーセント(適用なし)

近傍標準宅地の評価額を用いるケース

雑種地などの評価において、周辺の土地が宅地である場合(宅地比準方式)は、評価対象地の固定資産税評価額ではなく、近隣にある標準的な宅地の1平方メートル当たりの固定資産税評価額を基に計算を行います。手元にある固定資産税納税通知書に記載された評価額をそのまま使ってしまうと、誤った計算結果になってしまいます。必ず市役所などで近傍標準宅地の評価額を確認し、そこから1平方メートル当たりの宅地造成費を差し引いた上で計算を進める必要があります。

土地の現況と登記上の違いに要注意

土地の評価において最も重要なルールのひとつが、登記簿上の地目(土地の種類)や面積ではなく、亡くなられた日時点の現況で評価するという点です。

地目が異なる場合

登記簿上は「畑」となっていても、実際には駐車場としてアスファルト舗装されている場合、現況は「雑種地」となります。市街化調整区域の畑の固定資産税評価額は非常に低く設定されていますが、雑種地として評価する場合は宅地に準じた高い評価額になることがあります。逆に、登記簿上が「宅地」でも、実際には長年放置されて原野のようになっている場合は、現況に合わせて低い評価額で計算できる可能性があります。

面積が異なる場合

登記簿上の面積と、実際の面積が異なっていることも珍しくありません。昔の測量技術で登記された土地は、実際の面積よりも小さく登記されている縄伸びや、逆に大きく登記されている縄縮みが起こっている場合があります。明らかに面積が異なる場合は、実際の面積を測量して評価額を計算しなければなりません。固定資産税評価額は登記簿上の面積を基に計算されているため、実際の面積と異なる場合は、1平方メートル当たりの価額を算出した上で、実際の面積を掛けて調整を行います。

倍率方式で適用できる各種補正

路線価方式だけでなく、倍率方式の土地であっても、土地の形状や利用状況に応じた補正を適用して評価額を下げることができます。固定資産税評価額に倍率を掛けて終わりではなく、以下のような減額要素がないか必ず確認しましょう。

地積規模の大きな宅地の評価

面積が広い土地は、開発して分割分譲する際に道路などの公共公益的施設用の土地が必要になるため、価値が下がります。三大都市圏で500平方メートル以上、それ以外の地域で1,000平方メートル以上の地積を持つ宅地は、地積規模の大きな宅地の評価を適用でき、面積に応じて評価額を大きく減額できます。

セットバックが必要な宅地の評価

建築基準法では、建物を建てる際に幅4メートル以上の道路に接している必要があります。現在接している道路の幅が4メートル未満の場合、将来建物を建て替える際に、道路の中心線から2メートル下がるセットバックという敷地提供をする必要があります。このセットバックが必要な部分については、利用価値がないものとして評価額を70パーセント減額することができます。

まとめ

市街化調整区域内の宅地評価において、固定資産税評価額にそのまま倍率を掛けて計算してしまうと、しんしゃく割合などの重要な減額要素を見落とし、相続税を納めすぎてしまう危険性があります。土地の現況確認や近傍標準宅地の調査、各種補正の適用など、正しい評価を行うためには専門的な知識が不可欠です。少しでも不安がある場合は、そのまま計算せずに、相続税の専門家に相談して適正な評価額を算出してもらいましょう。

参考文献

国税庁:No.4606 倍率方式による土地の評価

国税庁:No.4628 市街化調整区域内の雑種地の評価

国税庁:No.4609 地積規模の大きな宅地の評価

市街化調整区域内の宅地評価のよくある質問まとめ

Q. 倍率地域にある土地の評価は、固定資産税評価額に倍率を掛けるだけでいいですか?

A. 市街化調整区域内の場合はそれだけでは不十分です。建物の建築制限を考慮したしんしゃく割合による減額や、土地の形状による補正を適用できるケースが多く、そのまま計算すると評価額が高くなりすぎる可能性があります。

Q. しんしゃく割合とは何ですか?

A. 市街化調整区域内において、建物の建築が制限されていることによるマイナス要因を評価額に反映させるための減額割合です。制限の厳しさに応じて、評価額から30パーセントまたは50パーセントを減額することができます。

Q. 固定資産税の課税明細書の評価額をそのまま使ってはいけないのはどんな時ですか?

A. 例えば雑種地を評価する際、周辺が宅地であるため宅地比準方式を用いる場合です。この場合、対象地自身の固定資産税評価額ではなく、近隣にある標準的な宅地の1平方メートル当たりの固定資産税評価額を用いて計算する必要があります。

Q. 登記簿上は畑ですが、現在は駐車場として使っています。どちらで評価しますか?

A. 土地の相続税評価は、亡くなられた日時点の現況で行うのが原則です。したがって、登記簿上が畑であっても、駐車場として利用されている場合は雑種地として評価額を計算しなければなりません。

Q. 倍率方式の土地でも、広すぎる場合は評価額が下がりますか?

A. はい、三大都市圏で500平方メートル、それ以外で1,000平方メートル以上の要件を満たせば「地積規模の大きな宅地の評価」を適用でき、面積に応じて評価額を減額することが可能です。

Q. 前の道路が狭いのですが、これも評価額に影響しますか?

A. 幅が4メートル未満の道路に接している場合、将来建て替えの際にセットバック(道路としての敷地提供)が必要になります。このセットバックが必要な部分については、評価額を70パーセント減額して計算することができます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /
士業の先生向け専門家AI
士業AI【税務】
\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /