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弔慰金の相続税は原則非課税!課税されるケースと計算方法を解説

2025-03-29
目次

ご家族が亡くなられた際に、故人の勤務先から「弔慰金(ちょういきん)」が支払われることがあります。これは遺族の生活を支える大切なお金ですが、「これって相続税の対象になるの?」と不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。結論から言うと、弔慰金は原則として相続税がかかりません。ただし、一定の金額を超えると課税対象になるケースもあるため、正しい知識を身につけておくことが大切です。この記事では、弔慰金の基本的な意味から、相続税がかかる場合とかからない場合の違い、具体的な計算方法まで、わかりやすく解説していきますね。

弔慰金とは?基本的な知識を押さえよう

まずは、「弔慰金」がどのようなお金なのか、基本的なところから確認していきましょう。似たような言葉である「香典」や「死亡退職金」との違いも知っておくと、理解が深まりますよ。

弔慰金ってどんなお金?

弔慰金とは、亡くなった方(被相続人)を弔い、ご遺族を慰めるという気持ちを込めて、故人の勤務先だった会社などから支払われるお金のことです。多くの企業では、福利厚生制度の一環として弔慰金の規定が設けられています。これは、遺されたご家族の経済的な負担を少しでも軽くするという目的も持っています。

弔慰金は誰が受け取るの?

弔慰金を誰が受け取るかについては、法律で明確に決まっているわけではありません。一般的には、会社の慶弔規定などに基づいて、配偶者や子といった法定相続人が受け取ります。規定に受取人の順位が定められていることが多いので、勤務先の担当の方に確認してみるとよいでしょう。弔慰金は、遺産分割の対象にはならず、受け取った人の固有の財産となります。

香典や死亡退職金との違い

弔慰金と混同されやすいものに「香典」と「死亡退職金」があります。それぞれの違いを整理しておきましょう。

種類 内   容
弔慰金 故人の勤務先から遺族へ支払われるお金。福利厚生の一環で、故人を弔い遺族を慰める目的。原則非課税ですが、上限があります。
香典 通夜や葬儀の参列者から喪主(遺族)へ渡されるお金。葬儀費用の助け合いの意味合いが強く、社会通念上相当な金額であれば非課税です。
死亡退職金 故人が受け取るはずだった退職金を、代わりに遺族が受け取るもの。遺族の生活保障の意味合いがあり、相続税の課税対象ですが、非課税枠が設けられています。

弔慰金と相続税の関係|原則は非課税です

弔慰金の大きな特徴は、原則として相続税がかからない点です。では、なぜ非課税なのでしょうか。また、いくらまでなら非課税になるのか、その具体的な金額について見ていきましょう。

なぜ弔慰金は相続税の対象外なの?

相続税は、亡くなった方が生前に所有していた財産(預貯金、不動産など)を受け継ぐ際にかかる税金です。しかし、弔慰金は故人の財産ではなく、会社から直接ご遺族に対して支払われるものです。そのため、そもそも「相続財産」には当たらず、相続税の課税対象にはならない、というのが基本的な考え方です。

ここまでなら非課税!弔慰金の非課税枠

弔慰金は原則非課税ですが、あまりに高額になると実質的な退職金(死亡退職金)と変わらなくなってしまいます。そこで、税法では公平性を保つために非課税となる上限額、いわゆる「非課税枠」を設けています。この非課税枠は、故人の亡くなった理由によって変わります。

死亡の理由 非課税限度額
業務上の死亡(仕事中の事故など) 死亡時の普通給与の36ヶ月分(3年分)
業務外の死亡(病気やプライベートの事故など) 死亡時の普通給与の6ヶ月分

※「普通給与」とは、基本給に扶養手当などを含んだ月々の給与のことです。賞与(ボーナス)は含まれないので注意してくださいね。

要注意!弔慰金に相続税が課税されるケース

弔慰金が先ほどの非課税枠を超えてしまった場合はどうなるのでしょうか。ここからは、相続税が課税されるケースについて、具体的な計算例を交えながら解説します。

非課税枠を超えた分は「死亡退職金」扱いに

受け取った弔慰金が非課税枠を超えた場合、その超えた部分の金額は「死亡退職金」と同じ扱いになります。死亡退職金は「みなし相続財産」として、相続税の課税対象に含まれるのです。つまり、「弔慰金の非課税枠を超えた金額」が、自動的に死亡退職金の計算に加えられる、と考えると分かりやすいでしょう。

死亡退職金にも非課税枠がある

弔慰金の非課税枠を超えた分が死亡退職金扱いになったとしても、すぐに全額が課税対象になるわけではありません。死亡退職金には、それ自体に大きな非課税枠が設けられています。この非課税枠を超えた分だけが、最終的な相続税の課税対象となります。

死亡退職金の非課税枠 = 500万円 × 法定相続人の数

法定相続人が1人でもいれば、最低500万円の非課税枠があるということです。このおかげで、多くの場合、弔慰金が非課税枠を多少超えても相続税がかからないケースがほとんどです。

【具体例】弔慰金にかかる相続税の計算方法

言葉だけだと少し難しいので、具体的な例で計算の流れを見てみましょう。

ケース1:業務外の死亡で弔慰金のみ400万円受け取った場合

  • 故人の普通給与:月額50万円
  • 受け取った弔慰金:400万円
  • 法定相続人:1人(配偶者のみ)

1. 弔慰金の非課税枠を計算
業務外の死亡なので、「50万円 × 6ヶ月 = 300万円」が非課税枠です。

2. 非課税枠の超過額を計算
400万円(受取額) – 300万円(非課税枠) = 100万円
この100万円が「死亡退職金」として扱われます。

3. 死亡退職金の非課税枠と比べて課税対象額を判断
死亡退職金の非課税枠は「500万円 × 1人 = 500万円」です。
死亡退職金扱いの100万円は、非課税枠500万円の中に収まるため、相続税の課税対象額は0円となります。

ケース2:業務上の死亡で弔慰金と死亡退職金の両方を受け取った場合

  • 故人の普通給与:月額40万円
  • 受け取った弔慰金:1,500万円
  • 受け取った死亡退職金:2,000万円
  • 法定相続人:2人(配偶者と子1人)

1. 弔慰金の非課税枠を計算
業務上の死亡なので、「40万円 × 36ヶ月 = 1,440万円」が非課税枠です。

2. みなし相続財産となる金額を計算
弔慰金の超過額:1,500万円 – 1,440万円 = 60万円
これに元々の死亡退職金を足します。
60万円 + 2,000万円 = 2,060万円

3. 死亡退職金の非課税枠と比べて課税対象額を計算
死亡退職金の非課税枠は「500万円 × 2人 = 1,000万円」です。
2,060万円(みなし相続財産) – 1,000万円(非課税枠) = 1,060万円
この1,060万円が、他の相続財産と合算されて相続税の計算対象となります。

弔慰金の相続税申告|手続きと書き方のポイント

もし弔慰金が課税対象になった場合、相続税の申告が必要です。ここでは、申告手続きの基本と申告書の書き方のポイントを簡単にご紹介します。

申告はいつまでに、どこでするの?

相続税の申告と納税は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」に行う必要があります。申告先は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する税務署です。

相続税申告書「第10表」の書き方

課税対象となる弔慰金や死亡退職金がある場合は、相続税申告書の「第10表 退職手当金などの明細書」に詳細を記入します。
申告書の様式は、税務署の窓口や国税庁のホームページから入手できます。

書き方のポイントは以下の通りです。

  • 明細書の上部:勤務先の情報とともに、弔慰金については「非課税枠を超えた金額のみ」を記入します。死亡退職金は受け取った全額を記入します。
  • 明細書の下部:受取人ごとに、死亡退職金の非課税枠を適用した後の、実際に課税される金額を計算して記入します。

申告書の作成は少し複雑なので、もし不安な場合は税理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。

弔慰金を受け取る際のその他の注意点

最後に、弔慰金を受け取る際に知っておきたい、その他の注意点について触れておきます。

複数の会社から弔慰金を受け取った場合

状況によっては、複数の会社から弔慰金を受け取るケースもあります。この場合、税金の扱いが変わることがあるので注意が必要です。

  • 死亡時に勤務していた会社からの弔慰金:これまで説明した通り、相続税のルールで扱います。
  • 過去に勤務していた会社からの弔慰金:これは退職手当金等には該当せず、受け取った遺族の「一時所得」として所得税の課税対象になります。

国や自治体からの「公的な弔慰金」の扱い

弔慰金には、会社から支払われるものの他に、国や自治体から支払われる公的なものもあります。例えば、自然災害で亡くなった場合に支払われる「災害弔慰金」や、戦没者のご遺族に支払われる「特別弔慰金」などです。これらの公的な弔慰金は、受け取った金額にかかわらず、原則としてすべて非課税となります。

まとめ

今回は、弔慰金と相続税の取り扱いについて詳しく見てきました。最後にポイントをまとめておきましょう。

  • 弔慰金は原則として非課税で、相続財産には含まれません。
  • ただし、「業務上の死亡は給与の36ヶ月分」「業務外の死亡は給与の6ヶ月分」という非課税枠があります。
  • 非課税枠を超えた金額は死亡退職金扱いとなり、「500万円×法定相続人の数」の非課税枠をさらに超えた部分が相続税の課税対象となります。
  • 計算が複雑になったり、高額な弔慰金を受け取ったりした場合は、税金の専門家である税理士に相談すると安心です。

弔慰金は、故人が遺してくれたご家族への想いが形になった大切なお金です。税金の仕組みを正しく理解して、適切に手続きを進めていきましょう。

参考文献

国税庁 タックスアンサー No.4120 弔慰金を受け取ったときの取扱い

国税庁 タックスアンサー No.4117 相続税の課税対象になる死亡退職金

弔慰金の相続税に関するよくある質問まとめ

Q.弔慰金とは何ですか?香典との違いは?

A.弔慰金は、亡くなった方の勤務先などが遺族を慰める目的で支払う金銭で、故人の功労に報いる意味合いがあります。一方、香典は葬儀の参列者が故人へのお供えとして渡すものであり、性質が異なります。

Q.会社から受け取った弔慰金は相続税の対象になりますか?

A.弔慰金は原則として相続財産とはみなされず、相続税の対象にはなりません。ただし、一定の非課税限度額が定められており、それを超える部分は相続財産として扱われる場合があります。

Q.弔慰金の相続税非課税枠はいくらですか?

A.非課税限度額は、故人の死亡理由によって異なります。業務上の死亡の場合は「死亡時の普通給与の3年分」、業務外の死亡の場合は「死亡時の普通給与の半年分」が非課税限度額の目安となります。

Q.非課税枠を超えた弔慰金はどうなりますか?

A.非課税限度額を超えて支払われた部分は「死亡退職金」として扱われ、相続税の課税対象となります。ただし、死亡退職金には別途「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠があります。

Q.弔慰金と死亡退職金は違うのですか?

A.はい、異なります。弔慰金は遺族を慰めるためのもの、死亡退職金は故人が本来受け取るはずだった退職金です。税務上は明確に区別され、それぞれに非課税枠が設けられています。

Q.弔慰金を受け取ったら申告は必要ですか?

A.受け取った弔慰金が非課税枠の範囲内であれば、相続税の申告は不要です。しかし、非課税枠を超える部分がある場合や、他の相続財産と合わせて基礎控除額を超える場合は、相続税の申告が必要になります。

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