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役員賞与の届け出は必須?損金にする「事前確定届出給与」を解説

2025-04-16
目次

役員への賞与は、従業員の給与とは違って原則として会社の経費(損金)にすることができません。でも、ある手続きをきちんと行うことで、役員賞与も経費として認められ、結果的に会社の節税につながる方法があるんです。それが「事前確定届出給与」という制度です。今回は、この役員賞与の届け出について、手続きの流れや大切なポイントを、専門用語をなるべく使わずにわかりやすくお伝えしますね。

事前確定届出給与とは?

「事前確定届出給与」とは、かんたんに言うと「いつ、誰に、いくら支払うか」を事前に税務署に届け出て、その通りに支払う役員賞与のことです。この手続きを踏むことで、通常は経費にできない役員賞与を、会社の経費(損金)として計上できるようになります。会社の利益を圧縮できるので、法人税の節税につながる大切な制度なんですよ。

そもそも役員賞与はなぜ損金にならないの?

「どうして役員の賞与だけ、手続きが必要なの?」と疑問に思いますよね。これは、役員が自分の給与を自由に決められる立場にあるため、決算前に利益が出そうだからと賞与をたくさん出して、意図的に会社の利益を減らし、税金を不当に安くすることを防ぐためなんです。法人税法では、こうした利益調整を防ぐために、役員への給与には厳しいルールが設けられているというわけです。従業員への賞与は会社の業績に応じて支払われる経費として認められますが、役員の場合は扱いが異なるんですね。

損金にできる役員給与の3つの種類

役員への給与で、経費(損金)として認められるものには、実は3つの種類があります。今回のテーマである事前確定届出給与はそのうちの一つです。

定期同額給与 毎月決まった日に、決まった金額を支払う役員報酬(お給料)のことです。事業年度開始から3ヶ月以内であれば金額を変更できますが、それ以降は原則変更できません。
事前確定届出給与 毎月の給与とは別に、ボーナスのように臨時で支払う給与のことです。事前に税務署へ届け出た金額と支払日に、その通りに支払う必要があります。(今回のテーマです)
業績連動給与 会社の業績に応じて金額が決まる給与のことです。主に上場企業などで使われる制度で、導入には複雑な要件があります。

この中で、多くの中小企業にとって活用しやすいのが「定期同額給与」と「事前確定届出給与」になります。

「事前確定届出給与」のメリット・デメリット

この制度には、もちろん良い点と注意すべき点があります。しっかり理解しておきましょう。

メリット

  • 節税効果が高い:役員賞与の全額を経費(損金)にできるため、法人税の負担を軽減できます。
  • 役員のモチベーション向上:頑張りに応じた賞与を支給できるため、役員の意欲を高めることにつながります。

デメリット

  • 手続きが厳格:事前に税務署への届け出が必要で、提出期限も厳しく定められています。
  • 柔軟な変更ができない:届け出た金額や支払日を1円でも1日でも変更すると、全額が経費にできなくなります。
  • 資金繰りへの影響:会社の業績が思ったより悪化しても、届け出た通りの金額を支払わなければならないため、資金繰りを圧迫する可能性があります。

事前確定届出給与の手続きの流れ

では、具体的にどのようなステップで手続きを進めればいいのでしょうか。一つずつ見ていきましょう。

STEP1: 賞与の支給日と金額を決める

まず最初に、どの役員に、いつ、いくらの賞与を支払うのかを具体的に決めます。この内容は、株主総会などで決議する必要があります。誰が聞いてもわかるように、「〇年〇月〇日に、A取締役に100万円を支給する」といった形で明確に定めます。決議した内容は、後から確認できるように必ず「株主総会議事録」を作成し、大切に保管しておきましょう。これは税務調査の際にも重要な書類になります。

STEP2: 「事前確定届出給与に関する届出書」を作成する

次に、税務署に提出するための書類を作成します。この「事前確定届出給与に関する届出書」は、国税庁のホームページからダウンロードできます。書類には、会社の基本情報に加えて、株主総会で決議した日や、賞与を支給する役員の氏名、役職、支給日、そして支給金額などを正確に記入します。書き方に迷ったら、国税庁のサイトにある記載要領を参考にしてくださいね。

STEP3: 税務署へ提出する

書類が完成したら、会社の所在地を管轄する税務署に提出します。提出方法は、税務署の窓口へ直接持っていく方法、郵送する方法、そしてインターネット経由で提出できる「e-Tax」があります。提出期限に遅れないように、余裕を持って準備を進めましょう。

最も重要なポイント!届け出の提出期限

この制度を利用する上で、何よりも大切なのが提出期限を守ることです。期限は会社の状況によって異なりますので、ご自身の会社がどれに当てはまるか、しっかり確認してください。

通常の提出期限

すでに事業を行っている会社の場合、提出期限は以下のうち、どちらか早い日となります。

  1. 株主総会などで賞与の支給を決議した日から1ヶ月を経過する日
  2. その事業年度が始まってから4ヶ月を経過する日

例えば、3月決算の会社(事業年度が4月1日から)が5月25日に株主総会を開いて役員賞与を決めた場合、①は6月25日、②は7月31日です。この場合、早い方の6月25日が提出期限となります。

新設法人の場合の提出期限

新しく会社を設立した法人の場合は、設立の日以後2ヶ月を経過する日が提出期限です。設立当初は慌ただしいですが、忘れないように注意しましょう。

期限を1日でも過ぎたらどうなる?

もし、提出期限をうっかり1日でも過ぎてしまったら、残念ながらその届け出は無効になります。つまり、その事業年度に支払った役員賞与は全額が経費(損金)として認められなくなってしまいます。災害などの特別な理由がない限り、期限の延長は認められない非常に厳しいルールなので、スケジュール管理は徹底してくださいね。

届け出内容の変更はできる?

一度届け出た内容は、原則として変更できません。しかし、会社の経営に大きな影響を与えるような特別な事情があった場合には、変更が認められることがあります。

変更が認められるケース

変更が認められるのは、主に以下の2つのケースです。

臨時改定事由 役員の役職が変わったり、入院などで職務内容が大きく変わったりした場合など、やむを得ない事情があるケースです。
業績悪化改定事由 取引先の倒産や災害などによって、経営状況が著しく悪化してしまったケースです。この場合は、賞与を減額するための変更のみが認められます。

「思ったより利益が出なかった」といった理由では、変更は認められないので注意が必要です。

変更手続きの方法と期限

上記の理由で内容を変更する場合は、「事前確定届出給与に関する変更届出書」を税務署に提出します。提出期限は、その変更理由が発生した日から1ヶ月以内など、事由によって異なります。変更が必要になった際は、速やかに手続きを行いましょう。

事前確定届出給与を利用する際の注意点

最後に、この制度をうまく活用するために、特に気をつけてほしい点をまとめました。

届出通りに支給しないと全額が損金不算入に!

これは何度もお伝えしている最も重要なルールです。届け出た支給日に、届け出た金額をきっちり支払う必要があります。例えば、「100万円で届け出たけど、業績が良かったから120万円支払った」という場合、120万円全額が損金不算入となります。逆に「100万円で届け出たけど、資金繰りが厳しくて80万円しか支払えなかった」という場合も、80万円全額が損金不算入になってしまいます。必ず、届け出た内容を忠実に守ってください。

不相当に高額な賞与は認められない

役員の働きや会社の規模、同業他社の水準などと比べて、あまりにも高額な賞与を支給した場合、税務署から「不相当に高額である」と判断され、高額な部分が経費として認められない可能性があります。節税も大切ですが、常識の範囲内で金額を設定しましょう。

社会保険料への影響も考慮しよう

毎月の役員報酬を低く設定し、その分を事前確定届出給与(賞与)で補うことで、社会保険料の負担を抑える方法があります。ただし、これは将来受け取る年金額が少なくなる可能性もあるということです。メリットだけでなく、デメリットも理解した上で、バランスを考えて金額を決めることが大切です。

まとめ

役員賞与の届け出である「事前確定届出給与」は、正しく活用すれば大きな節税効果が期待できる魅力的な制度です。しかし、そのためには厳格なルールを守る必要があります。特に、提出期限の遵守と、届け出た内容通りに支給することは絶対に守らなければならないポイントです。手続きに不安がある場合や、自社にとって最適な役員報酬の設計について相談したい場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。計画的に準備を進めて、賢く制度を活用してくださいね。

参考文献

役員賞与の届け出に関するよくある質問

Q.役員賞与の届け出は必ず必要ですか?

A.いいえ、必ずではありません。ただし、役員賞与を会社の経費(損金)にしたい場合に「事前確定届出給与」として届け出る必要があります。

Q.届け出の期限はいつまでですか?

A.原則として「株主総会の決議から1ヶ月」と「事業年度開始から4ヶ月」のいずれか早い日までです。新設法人は設立から2ヶ月以内です。

Q.届け出た金額より少なく支給しても良いですか?

A.いいえ、できません。届け出た金額と1円でも違うと、支給した全額が経費(損金)として認められなくなります。

Q.届け出は毎年必要ですか?

A.はい、事前確定届出給与を利用する場合は、事業年度ごとに届け出が必要です。

Q.届け出を忘れた場合、どうなりますか?

A.届け出を忘れた場合、その役員賞与は経費(損金)にできず、法人税の負担が増えることになります。

Q.従業員の賞与も届け出が必要ですか?

A.いいえ、従業員に支払う賞与は、役員賞与とは異なり届け出をしなくても経費(損金)として認められます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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