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役員退職金の税金はいくら?計算方法と注意点をわかりやすく解説

2025-02-24
目次

会社の発展に貢献してきた役員の皆様、本当にお疲れ様でした。退職にあたって受け取る役員退職金は、これまでの功労に報いる大切な資金ですよね。でも、まとまった金額になるからこそ、「税金はいくらかかるんだろう?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか。実は、役員退職金は税制上とても優遇されているんです。このブログでは、役員退職金に関する税金の仕組みや計算方法、注意点などを、わかりやすく丁寧にご説明していきますね。

役員退職金と税金の基本

役員退職金は、長年の功績に対する報奨金という側面が強いため、給与や賞与とは異なる特別な税金の計算方法が用意されています。まずは、その大きな特徴を3つおさえておきましょう。

退職所得は税制上有利な「分離課税」

通常、給与や事業所得などは合算して税額を計算する「総合課税」ですが、退職金は他の所得とは切り離して税金を計算する「分離課税」が適用されます。これにより、他の所得が多くても税率が急に上がってしまうのを防げるんですよ。

大きな控除が受けられる「退職所得控除」

退職金には、勤続年数に応じて大きくなる「退職所得控除」という非課税枠があります。この控除額が非常に大きいため、税金の負担を大幅に軽くしてくれるんです。勤続年数が長ければ長いほど、控除額も増えていきます。

課税対象額が半分になる「2分の1課税」

退職金の金額から退職所得控除を差し引いた後、さらにその金額を2分の1にしてから税率をかける決まりになっています。これも、税負担を軽減するための大切な仕組みです。ただし、後ほどご説明しますが、このルールが適用されないケースもあるので注意が必要ですよ。

役員退職金の税金計算シミュレーション

それでは、実際に役員退職金の税金がどのように計算されるのか、ステップに沿って見ていきましょう。ここでは、勤続年数30年、役員退職金5,000万円を受け取るケースでシミュレーションしてみますね。

ステップ1:勤続年数を確認する

まず、税金計算の基礎となる勤続年数を確認します。1年未満の端数がある場合は、1年に切り上げて計算します。今回の例では、勤続年数は30年です。

ステップ2:退職所得控除額を計算する

次に、勤続年数を使って退職所得控除額を計算します。計算方法は勤続年数が20年以下か20年超かで異なります。

勤続年数 計算式
20年以下 40万円 × 勤続年数 (※80万円に満たない場合は80万円)
20年超 800万円 + 70万円 × (勤続年数 - 20年)

今回のケースは勤続30年なので、20年超の計算式を使います。
800万円 + 70万円 × (30年 - 20年) = 1,800万円
退職所得控除額は1,800万円となります。5,000万円のうち、まず1,800万円が非課税になるということですね。

ステップ3:課税退職所得金額を計算する

次に、税金がかかる対象となる金額(課税退職所得金額)を計算します。ここで「2分の1課税」のルールが登場します。
(退職金収入額 - 退職所得控除額) × 1/2 = 課税退職所得金額
(5,000万円 - 1,800万円) × 1/2 = 1,600万円
税金がかかるのは、1,600万円ということになります。1,000円未満の端数は切り捨てます。

ステップ4:所得税・住民税を計算する

最後に、課税退職所得金額に所得税率をかけて所得税を計算します。所得税は累進課税なので、金額に応じて税率が変わります。住民税の税率は一律10%です。

【所得税の計算】
課税退職所得金額1,600万円の場合、所得税率は33%、控除額は153万6,000円です。
1,600万円 × 33% - 153万6,000円 = 374万4,000円
さらに、復興特別所得税(所得税額の2.1%)がかかります。
374万4,000円 × 2.1% = 78,624円
所得税の合計:374万4,000円 + 78,624円 = 382万2,624円

【住民税の計算】
1,600万円 × 10% = 160万円

【税額合計】
382万2,624円 + 160万円 = 542万2,624円
退職金5,000万円に対して、税額は約542万円となり、手取りは約4,458万円になるという計算ですね。

要注意!2分の1課税が適用されない「特定役員退職手当」

先ほど、退職金の税制優遇として「2分の1課税」をご説明しましたが、実はこれが適用されないケースがあります。それが「特定役員退職手当」に該当する場合です。

勤続年数5年以下の役員が対象

役員としての勤続年数が5年以下の方が受け取る退職金は、「特定役員退職手当」と呼ばれます。この場合、退職所得控除を差し引いた後の金額が、そのまま課税対象となり、2分の1にはなりません

例えば、役員勤続年数5年で退職金1,000万円を受け取る場合を考えてみましょう。
退職所得控除額:40万円 × 5年 = 200万円
課税退職所得金額:1,000万円 - 200万円 = 800万円
この800万円がまるまる課税対象となります。もし2分の1課税が適用されれば課税対象は400万円でしたので、税負担が大きく変わることがわかりますね。これは、短期間で役員になり高額な退職金を受け取ることで税負担を不当に回避することを防ぐためのルールなんです。

会社側の注意点

役員退職金に関する税金は、受け取る役員側だけでなく、支払う会社側にも重要なポイントがあります。

適正な金額でないと損金にできない

会社が支払う役員退職金は、適正な金額であれば会社の経費(損金)として計上でき、法人税の節税につながります。しかし、不相当に高額だと判断された部分は、損金として認められない可能性があります。適正額の判断は、一般的に「功績倍率法」という計算方法が用いられます。

計算式 最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率

功績倍率は役職によって異なり、社長であれば3.0倍程度が一般的とされていますが、会社の規模や業績、同業他社の水準なども考慮されるため、専門家と相談して決めることが大切です。

支給には株主総会の決議が必要

役員退職金を支給するためには、定款に定めがある場合を除き、原則として株主総会の決議が必要です。金額や支給時期、支給方法などを決議し、その証拠として議事録をきちんと作成・保管しておくことが、税務上のトラブルを避けるためにも非常に重要になります。

手続きの流れと必要書類

最後に、役員退職金を受け取る際の一連の流れと、必要な書類について確認しておきましょう。

受け取る側:会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出

退職金を受け取る役員は、会社に対して「退職所得の受給に関する申告書」という書類を提出する必要があります。この書類を提出することで、会社側が適切な税額を計算して源泉徴収してくれます。もし提出しないと、退職金の額面に対して一律20.42%という高い税率で源泉徴収されてしまい、後から自分で確定申告をして精算しなくてはならなくなるので、忘れずに提出しましょう。

支払う側:源泉徴収と「退職所得の源泉徴収票」の発行

会社は、受け取った「退職所得の受給に関する申告書」に基づいて所得税・住民税を計算し、退職金から天引き(源泉徴収)して国や市区町村に納付します。そして、退職者本人には「退職所得の源泉徴収票」を交付します。この書類は、退職金の金額や源泉徴収された税額が記載された大切な証明書になります。

まとめ

いかがでしたでしょうか。役員退職金に関する税金は、退職所得控除や分離課税など、他の所得に比べて大きな優遇措置が設けられています。正しい計算方法を理解し、適切な手続きを踏むことで、大切な退職金を手元にしっかり残すことができます。特に、勤続年数が税額に大きく影響すること、勤続5年以下の場合は2分の1課税が適用されないこと、そして会社側は損金算入のために適正額の算定と株主総会決議が不可欠であることを覚えておきましょう。ご自身の状況に合わせて、計画的に準備を進めていってくださいね。

参考文献

国税庁 No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)

国税庁 No.2732 退職手当等に対する源泉徴収

国税庁 No.2737 役員等の勤続年数が5年以下の者に対する退職手当等(特定役員退職手当等)

国税庁 No.5208 役員の退職金の損金算入時期

役員退職金に関する税金のよくある質問まとめ

Q. 役員退職金は必ず支払わなければならないのですか?

A. いいえ、法律上の支払い義務はありません。役員退職金は、定款での定めや株主総会の決議によって支払われるものです。そのため、会社の業績や規定によっては支払われない場合もあります。

Q. 役員退職金の適正額は、どうやって決めるのが一般的ですか?

A. 「功績倍率法」という計算方法が一般的です。これは「最終報酬月額 × 役員在任年数 × 功績倍率」で計算します。功績倍率は社長で3.0倍、専務で2.4倍程度が目安とされていますが、会社の状況に応じて総合的に判断されます。

Q. 役員としての勤続年数がちょうど5年の場合、税金の計算はどうなりますか?

A. 役員勤続年数が「5年以下」の場合に2分の1課税が適用されません。したがって、ちょうど5年の場合も適用対象外となり、退職所得控除を引いた後の金額がそのまま課税対象となります。

Q. 役員退職金を受け取ったら、自分で確定申告をする必要がありますか?

A. 原則として不要です。会社に「退職所得の受給に関する申告書」を提出していれば、会社が源泉徴収で納税を済ませてくれるためです。ただし、医療費控除を受けたい場合や、申告書を提出しなかった場合は確定申告が必要です。

Q. 役員が在職中に亡くなった場合の死亡退職金は、税金の扱いが違いますか?

A. はい、異なります。死亡退職金は所得税ではなく、相続税の課税対象となります。ただし、「500万円 × 法定相続人の数」までは非課税となる生命保険金とは別の非課税枠が適用されます。

Q. 退職金を分割で受け取ることはできますか?その場合、税金は変わりますか?

A. 分割で受け取ることは可能ですが、税金の扱いが変わる可能性があります。年金形式で受け取る場合は「雑所得」となり、毎年確定申告が必要になります。一般的に、一時金で受け取る「退職所得」の方が税制上有利になるケースが多いです。

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社名
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対応責任者
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