後期高齢者医療保険に加入されている方にとって、病院の窓口で支払う医療費の負担割合は生活費に直結する重要なポイントですよね。実は、株式投資をされている方が損益通算のために確定申告をすると、この負担割合が上がってしまうケースがあるのです。ここでは、負担割合が決まる収入基準の仕組みや、確定申告書の確認箇所、そして株式投資の確定申告が及ぼす影響について、わかりやすく解説していきます。
後期高齢者医療保険の窓口負担割合はどう決まる?
病院の窓口で支払う医療費の負担割合は、基本的には1割ですが、所得に応じて2割や3割に上がる仕組みになっています。毎年8月1日を基準日として、前年の所得をもとに新しい負担割合が判定されます。
負担割合(1割・2割・3割)の判定基準
負担割合の判定は、主に住民税課税所得をもとに行われます。住民税課税所得が145万円以上の方は原則3割負担となり、28万円以上145万円未満の方などで一定の要件を満たすと2割負担、それ以外の方が1割負担となります。
課税所得や年金収入など具体的な金額要件
2割負担になるかどうかは、課税所得に加えて年金収入やその他の合計所得金額を合算した金額で決まります。具体的な基準額は以下の表の通りです。
| 負担割合 | 具体的な判定基準 |
|---|---|
| 3割負担(現役並み所得者) | 同一世帯に住民税課税所得が145万円以上の被保険者がいる場合 |
| 2割負担(一定以上所得のある方) | 住民税課税所得が28万円以上で、単身世帯なら年金収入等200万円以上、複数世帯なら320万円以上 |
| 1割負担(一般・非課税者) | 上記のどちらにも当てはまらない方、または住民税非課税世帯の方 |
判定の基準日と適用期間について
負担割合の判定は毎年見直されます。具体的には、毎年8月1日にその年度の住民税課税所得(前年1月から12月の所得)を基準に判定され、翌年7月31日までの1年間適用されます。もし過去にさかのぼって所得の修正申告をした場合は、負担割合も変更され、差額の支払いが発生することがあるので注意しましょう。
確定申告書のどこを見れば収入基準がわかる?
自分の負担割合がどうなるか予測するためには、確定申告書の数字を確認するのが一番の近道です。ここでは、申告書のどの項目を見ればよいのかをご説明します。
住民税課税所得(課税標準)の確認方法
まず最も重要な基準となる住民税課税所得ですが、これは所得税の確定申告書第一表の右側にある「課税される所得金額」の欄とおおむね一致します。ただし、所得税と住民税では基礎控除の金額(所得税は48万円、住民税は43万円)などの違いがあるため、完全に同じ金額にはなりません。正確な金額を知りたい場合は、お住まいの市区町村から6月頃に届く「住民税納税通知書」の「課税標準額」を確認してください。
年金収入やその他の合計所得金額の確認箇所
2割負担の判定に使われる年金収入やその他の合計所得金額についても、確定申告書第一表で確認できます。年金収入は、左上の収入金額等の「公的年金等」の欄を見ます。ここには公的年金等控除を差し引く前の総額が記載されています。遺族年金や障害年金などの非課税年金はここには含まれません。その他の所得については、所得金額等の欄にある事業所得や不動産所得などを確認します。
特定口座の株式譲渡損益と確定申告の基本
証券会社で口座を開設する際、「特定口座(源泉徴収あり)」を選んでいる方が多いと思います。この口座を使った場合の確定申告の仕組みをおさらいしましょう。
源泉徴収ありの特定口座は申告不要が原則
特定口座(源泉徴収あり)で取引をしている場合、利益が出てもその都度20.315パーセントの税金が天引きされているため、原則として確定申告は不要です。申告しなければ、この株式譲渡で得た利益は、後期高齢者医療保険の判定基準となる所得には一切含まれません。
損益通算や繰越控除を利用するための確定申告
一方で、株式投資で損失が出てしまった場合、他の証券会社で出た利益と相殺する損益通算や、引ききれなかった損失を翌年以降に持ち越す繰越控除を利用するためには、あえて確定申告をする必要があります。確定申告をすることで払いすぎた税金が還付されるというメリットがあります。
株式の確定申告が後期高齢者医療保険に与える影響
税金が戻ってくるなら確定申告をした方がお得に思えますが、後期高齢者医療保険に加入している方は少し慎重になる必要があります。
申告することで総所得金額等が増加するリスク
確定申告を行うと、特定口座の譲渡所得や配当所得が総所得金額等に合算されてしまいます。たとえ損益通算によって最終的な所得が0円やマイナスになったとしても、売却したことによる収入金額自体は計上されるため、基準収入額適用の申請時などに影響が出る可能性があります。
医療費の窓口負担が1割から2割や3割へ上がるケース
株式の利益や売却収入を申告した結果、住民税課税所得が28万円や145万円を超えてしまったり、収入要件を満たさなくなったりすると、医療費の窓口負担割合が1割から2割や3割へと跳ね上がることになります。日常的に病院に通っている方の場合、この医療費の増加分が、還付される税金額を上回ってしまう逆転現象が起きることがあります。
確定申告すべきかどうかの判断ポイント
では、最終的に確定申告をするべきかどうかは、どのように判断すればよいのでしょうか。ポイントを整理しました。
税金の還付額と医療費の負担増を比較する
まずは、確定申告をすることで戻ってくる税金の還付額を計算します。次に、申告によって負担割合が1割から2割、あるいは3割に上がった場合の年間医療費の増加額を予測します。この2つを天秤にかけて、世帯全体での支出が少なくなる方を選ぶことが重要です。
国民健康保険料や介護保険料への影響も考慮する
影響が出るのは医療費の窓口負担だけではありません。確定申告をして所得が増えることで、後期高齢者医療保険料そのものや、介護保険料の算定基準にも影響を与え、月々の保険料が値上がりする可能性があります。これらも含めて総合的にシミュレーションを行いましょう。
まとめ
後期高齢者医療保険の負担割合は、確定申告書に記載される住民税課税所得や年金収入などをもとに毎年判定されます。特定口座(源泉徴収あり)の株式譲渡損益は原則申告不要ですが、損益通算のために確定申告を行うと、所得金額が増加して医療費の負担割合が1割から2割・3割へと上がってしまうリスクがあります。目先の税金の還付額だけでなく、医療費の負担増や各種保険料への影響をしっかり比較検討してから、確定申告を行うかどうかを判断するようにしましょう。
参考文献
後期高齢者医療保険と確定申告のよくある質問まとめ
Q.後期高齢者医療保険の負担割合はどうやって決まりますか?
A.前年の住民税課税所得や年金収入、その他の合計所得金額を基準に判定され、所得等に応じて1割、2割、3割のいずれかに決まります。
Q.確定申告で自分の住民税課税所得はどこを見ればわかりますか?
A.確定申告書第一表の「課税される所得金額」が目安となりますが、正確な金額は市区町村から送付される住民税納税通知書の「課税標準額」で確認できます。
Q.特定口座(源泉徴収あり)の株式譲渡益は確定申告が必要ですか?
A.税金がすでに天引きされているため原則として確定申告は不要です。ただし、他の口座の損失と相殺(損益通算)したい場合などはあえて確定申告を行うことができます。
Q.株式の損失を申告すると医療保険の負担割合に影響しますか?
A.損益通算のために確定申告をすると、計算上は総所得金額等や収入金額に含まれるため、判定基準を超えて負担割合が上がってしまうリスクがあります。
Q.負担割合はいつの所得をもとに、いつ切り替わりますか?
A.毎年8月1日に切り替わります。判定には、前年の1月1日から12月31日までの所得が使われます。
Q.税金の還付と医療費の負担増、どちらを優先すべきですか?
A.還付される税金額と、医療費の負担割合増加や各種保険料の値上がり分を総合的にシミュレーションし、世帯全体での手残りが多くなる方を選択することが大切です。