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成年後見人と家族の連絡はどれくらい?コミュニケーションの頻度と内容を解説

2025-10-29
目次

ご家族のために成年後見制度の利用を考えたとき、「選ばれた後見人さんと、ちゃんとコミュニケーションが取れるのかな?」「本人の様子はきちんと教えてもらえるの?」といった不安を感じる方は少なくありません。成年後見人は、ご本人の財産や生活を守る大切な役割を担いますが、ご家族との連携も同じくらい重要です。この記事では、成年後見人とご家族とのコミュニケーションの頻度や具体的な内容、そして良好な関係を築くためのコツについて、わかりやすく解説していきます。

そもそも成年後見人とのコミュニケーションは義務?

まず最初に知っておきたいのが、成年後見人がご家族へ報告することの法的な位置づけです。実は、法律で厳密に「家族へ定期的に報告しなさい」と定められているわけではありません。しかし、だからといって全く連絡がないわけではないので、ご安心ください。

法律で定められた後見人の報告義務

成年後見人の最も重要な義務は、ご本人の財産を適切に管理し、生活や医療、介護などに関する法律行為を代理すること(これを財産管理身上保護といいます)です。そして、その業務内容について、家庭裁判所に報告する義務を負っています。通常、年に1回、家庭裁判所へ財産目録や収支状況をまとめた「後見事務報告書」を提出し、監督を受けることになっています。これが法律で定められた正式な報告義務です。

家族への報告は義務ではない?

法律上、ご家族に対して定期報告をする直接的な義務はありません。しかし、多くの後見人(特に弁護士や司法書士などの専門職後見人)は、ご本人の意思を尊重し、より良いサポートを行うために、ご家族との情報共有が不可欠だと考えています。ご本人のこれまでの生活ぶりや価値観を一番よく知っているのは、ご家族だからです。そのため、義務ではなくても、円滑な後見業務を行うための協力関係として、ご家族とのコミュニケーションを大切にしているのが一般的です。

なぜ家族とのコミュニケーションが重要なのか

後見人とご家族のコミュニケーションは、ご本人にとってより良い生活環境を整えるために非常に重要です。後見人は、ご本人のこれまでの生活習慣や交友関係、大切にしていることなどを知りません。そうした情報をご家族から共有してもらうことで、ご本人の意思に沿った支援をしやすくなります。また、施設への入所や医療方針の決定など、重要な判断をする際に、ご家族の意見を参考にすることもあります。良好な関係を築くことで、不要な誤解やトラブルを防ぎ、チームとしてご本人を支えていくことができるのです。

成年後見人と家族のコミュニケーション頻度はどのくらい?

コミュニケーションの頻度は、ご本人の状況や後見人の方針によって様々ですが、一般的には「後見が始まった直後」と「生活が安定してからの平常時」で異なります。

後見開始直後のコミュニケーション

後見がスタートしたばかりの時期は、コミュニケーションの頻度が高くなる傾向にあります。後見人は、まずご本人の正確な財産状況(預貯金、不動産、保険など)を把握し、家庭裁判所に提出する「財産目録」を作成しなければなりません。この過程で、通帳の場所や契約書類の確認など、ご家族に協力を求めることが多く、最初の1〜2ヶ月は月に数回、電話や面談で連絡を取り合うことも珍しくありません。

安定期のコミュニケーション

ご本人の財産状況が把握でき、生活が安定してくると、連絡の頻度は落ち着いてきます。特に大きな変化がなければ、3ヶ月〜半年に1回程度の定期的な報告となることが多いでしょう。報告方法は、報告書を郵送したり、メールで近況を伝えたりと様々です。もちろん、何か特別な事情があれば、その都度連絡があります。

緊急時のコミュニケーション

ご本人が急病で入院されたり、事故に遭われたりといった緊急事態が発生した場合は、後見人は速やかにご家族へ連絡します。後見が始まる際に、緊急連絡先としてご家族の連絡先を必ず確認しますので、万が一の時でもすぐに情報が共有される体制になっています。

コミュニケーションの具体的な内容と方法

では、具体的にどのような内容が、どんな方法で伝えられるのでしょうか。後見人とのやり取りをイメージしてみましょう。

報告される主な内容

後見人からご家族へ報告される内容は、主に「財産に関すること」と「生活に関すること」の2つに分けられます。特に重要な決定事項については、事前の相談があるのが一般的です。

報告・相談の項目 具体的な内容の例
財産管理の報告 年間の収支報告、預貯金の残高、不動産の売却や高額なリフォームなどの大きな支出に関する事前相談
身上保護の報告 ご本人の健康状態、介護サービスの利用状況の変化、日々の生活の様子、施設での過ごし方など
重要事項の相談 入院や手術の同意、介護施設の入退所、高額な介護用品の購入など、ご本人の生活に大きな影響を与える事項の決定

主なコミュニケーション方法

コミュニケーションの方法は、後見人や状況によって使い分けられます。

  • 電話:急ぎの用件や簡単な確認事項に使われることが多いです。
  • メール:記録が残るため、報告や確認事項のやり取りに適しています。
  • 面談:後見開始時や、今後の大きな方針を決める際など、直接会ってじっくり話し合う必要がある場合に設定されます。
  • 報告書の郵送:年に1回や半年に1回など、定期的な財産状況や生活状況の報告として、書面で送られてくることが多いです。

コミュニケーションでよくあるトラブルと対処法

残念ながら、後見人とご家族の間でコミュニケーションに関するトラブルが起きてしまうこともあります。よくあるケースとその対処法を知っておきましょう。

「連絡が来ない」という不満

「後見人に選ばれたのに、全く連絡がない」という不満は、最もよく聞かれるトラブルの一つです。後見人は多くの案件を抱えて多忙であること、また法律上の報告義務は家庭裁判所に対してが主であることを理解しておく必要があります。もし連絡がなくて不安な場合は、待つだけでなく、こちらから「ご本人の最近の様子はいかがでしょうか?」と尋ねるメールを送ってみるのも一つの方法です。また、後見が始まる際に、連絡頻度の希望を伝えておくことも有効です。

「意見を聞いてもらえない」という不満

ご本人のためを思って伝えた意見が、後見人に採用されないケースもあります。後見人は、あくまでご本人の意思を最優先で尊重する義務があります。ご家族の意見とご本人の意思が異なる場合、後見人はご本人の意思に従う判断をします。そのため、ご家族としては「なぜ私たちの意見を聞いてくれないのか」と感じてしまうことがあります。意見を伝える際は、「私たちがこうしたい」ではなく、「以前、本人がこう言っていた」「本人の性格を考えると、こちらのほうが喜ぶと思う」というように、常にご本人の意思を主語にして伝えると、後見人も検討しやすくなります。

トラブルを未然に防ぐために

トラブルを防ぐ最善の方法は、後見人との信頼関係を築くことです。後見人はご本人を支えるパートナーであり、敵ではありません。後見人からの質問には誠実に答え、ご本人の情報を提供するなど、協力的な姿勢を示すことが大切です。不明な点や不安なことがあれば、遠慮せずに質問し、認識のズレをなくしていくよう努めましょう。

後見人とのコミュニケーションを円滑にするための3つのコツ

最後に、後見人との良好な関係を築き、スムーズなコミュニケーションを実現するための具体的なコツを3つご紹介します。

最初にルールを決めておく

後見が始まる最初の段階で、コミュニケーションに関する簡単なルールを決めておくことをお勧めします。例えば、「3ヶ月に一度、メールで簡単な収支と生活状況の報告をお願いします」「大きな支出が見込まれる場合は、事前に一度ご連絡いただけますか」といった具体的な希望を伝えてみましょう。お互いの期待値をすり合わせておくことで、後の「言った・言わない」のトラブルを防ぐことができます。

感情的にならず具体的に伝える

何か要望や不満を伝える際に、感情的になってしまうと、話がこじれてしまう原因になります。「何もしてくれない!」と責めるのではなく、「○○の件で困っているのですが、ご本人の財産から支出することは可能でしょうか?」というように、事実と要望を分けて具体的に伝えることを心がけましょう。冷静に、建設的な話し合いをすることが、問題解決への近道です。

協力的な姿勢を示す

後見人は、ご本人の財産や情報をゼロから把握しなければなりません。ご家族が持っている情報(昔の保険証券、お付き合いのあった銀行、ご本人の交友関係など)を積極的に提供することで、後見人の業務は格段にスムーズになります。「何か私たちに協力できることはありますか?」という姿勢を見せることで、後見人もご家族を信頼し、より密に情報共有をしてくれるようになります。

まとめ

成年後見人とご家族のコミュニケーションは、法律上の義務ではありませんが、ご本人の豊かな生活を守るためには不可欠な要素です。コミュニケーションの頻度や内容はケースバイケースですが、後見が始まる際に希望を伝え、お互いの認識を合わせておくことがトラブル防止の鍵となります。後見人を「監視する相手」ではなく、「ご本人を一緒に支えるパートナー」と捉え、協力的な姿勢で良好な関係を築いていくことが、最終的にご本人の幸せにつながります。これから成年後見制度の利用を検討される方は、ぜひこの点を心に留めておいてください。

参考文献

成年後見人と家族のコミュニケーションに関するよくある質問まとめ

Q.成年後見人からの連絡は、どのくらいの頻度でありますか?

A.法律で定められた定期報告以外、連絡頻度に明確な決まりはありません。通常は、財産状況の変動やご本人の身上に関する重要な出来事があった際に連絡があります。気になることがあれば、ご家族から積極的に連絡することも大切です。

Q.成年後見人には、どのような内容を報告・相談できますか?

A.ご本人の生活や財産に関することであれば、基本的に何でも相談できます。例えば、医療や介護の方針、財産の使い道、生活状況の変化などについて、気軽に報告・相談することが可能です。

Q.後見人から定期的な報告はありますか?内容はどんなものですか?

A.はい。後見人は家庭裁判所へ年に1回、財産目録や収支状況を報告する義務があります。この報告書の写しをご家族に共有してもらえるよう、事前に後見人と取り決めておくとスムーズです。

Q.後見人からの連絡が少ない、または来ない場合はどうすればいいですか?

A.まずは後見人に直接連絡を取り、状況を確認しましょう。それでも改善されない、または対応に不満がある場合は、後見人を監督する家庭裁判所に相談することができます。

Q.家族の希望はどの程度聞いてもらえますか?

A.成年後見人はご本人の意思を最も尊重しますが、ご家族の希望も重要な参考情報として考慮します。ご本人の利益になることであれば、積極的に意見を伝えることが大切です。

Q.後見人とのコミュニケーションで気をつけることはありますか?

A.ご本人のプライバシーに配慮しつつ、感情的にならずに具体的な事実や要望を伝えることが重要です。後見人との信頼関係を築くため、定期的に情報共有の機会を持つことをおすすめします。

事務所概要
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税理士 島本 雅史

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