相続手続きや不動産の名義変更などで「戸籍」や「戸籍の附票」という言葉を耳にしたことはありませんか?普段あまり馴染みのない言葉なので、何が違うのか、何のために必要なのか、よくわからない方も多いかもしれません。この記事では、戸籍と戸籍の附票の基本から、取得方法、住民票との違いまで、わかりやすく解説していきます。
そもそも戸籍って何?
まず、日本の公的な身分証明制度の根幹である「戸籍」について、基本から見ていきましょう。
日本国民の身分関係を記録・証明するもの
戸籍とは、日本国民一人ひとりの出生から死亡までの身分関係(親子関係、婚姻・離婚、養子縁組など)を登録し、公に証明するためのものです。戸籍は、夫婦と未婚の子を一つの単位として作られ、本籍地の市区町村役場で管理されています。住民票が「どこに住んでいるか」を証明するのに対し、戸籍は「誰が誰とどのような関係にあるか」を証明する、という点が大きな違いです。
戸籍謄本と戸籍抄本の違い
戸籍の証明書には「戸籍謄本(こせきとうほん)」と「戸籍抄本(こせきしょうほん)」があります。現在はコンピュータ化により、それぞれ「戸籍全部事項証明書」「戸籍個人事項証明書」というのが正式名称です。この二つの違いは、証明される範囲にあります。
証明書の種類 | 内 容 |
戸籍全部事項証明書(戸籍謄本) | 戸籍に記録されている全員分の身分事項を証明するもの |
戸籍個人事項証明書(戸籍抄本) | 戸籍に記録されている人のうち、特定の一人または複数人の身分事項を証明するもの |
相続手続きでは、亡くなった方(被相続人)との関係を証明するために、戸籍に記載されている全員の情報が必要になることが多いため、基本的には「戸籍全部事項証明書(戸籍謄本)」を取得します。
戸籍の取得方法
戸籍謄本(全部事項証明書)は、本籍地の市区町村役場で取得できます。窓口で直接請求するほか、郵送で請求することも可能です。請求できるのは、原則として本人、配偶者、直系の親族(父母、祖父母、子、孫など)です。代理人が請求する場合は、委任状が必要になります。また、2024年3月1日から始まった「広域交付制度」を利用すれば、本籍地以外の市区町村役場でも戸籍謄本を取得できるようになりました。これについては後ほど詳しく解説しますね。
住所の履歴書「戸籍の附票」とは?
次に、戸籍とセットでよく耳にする「戸籍の附票」について解説します。これは、住所の移り変わりを証明する重要な書類です。
戸籍に紐づく住所の記録
戸籍の附票(こせきのふひょう)とは、その戸籍が作られてから現在までの住所の履歴を記録した書類です。戸籍は本籍地の役所で管理されていますが、戸籍の附票も同じく、戸籍と一緒に本籍地の役所で保管されています。住民票には現在の住所と一つ前の住所しか記載されていませんが、戸籍の附票を見れば、その本籍地になってからの住所の変遷がすべてわかる仕組みになっています。
戸籍の附票は何に使うの?
戸籍の附票は、過去の住所を証明する必要がある場面で役立ちます。特に相続手続きでは、亡くなった方の不動産の名義変更(相続登記)を行う際に必要になるケースが多いです。不動産の登記簿には所有者の住所が記載されていますが、引っ越しを繰り返していると、登記簿上の住所と亡くなった時の最後の住所が異なることがあります。このような場合に、戸籍の附票を取得して住所のつながりを証明し、登記名義人が亡くなった方本人であることを示す必要があります。その他、自動車の廃車手続きやローンの手続きなどで、過去の住所証明として求められることもあります。
戸籍の附票の取得方法
戸籍の附票も、戸籍謄本と同様に本籍地の市区町村役場で取得します。請求できる人や必要なものも、基本的には戸籍謄本と同じです。注意点として、結婚や転籍(本籍地を移すこと)で新しい戸籍が作られた場合、附票の記録もその時点からスタートします。そのため、それ以前の住所履歴が必要な場合は、前の本籍地で「除かれた戸籍の附票(除附票)」を取得する必要があります。また、戸籍の附票の保存期間は、法令の改正により、2019年6月20日以降に除票となったものは、除かれてから150年間保存されることになりました。しかし、それ以前に保存期間(5年間)が経過して破棄されてしまったものについては取得できない場合があるので注意が必要です。
混同しやすい!戸籍と住民票の違い
「戸籍」と「住民票」、どちらも公的な証明書ですが、その役割は全く異なります。違いをしっかり理解しておきましょう。
項 目 | 戸 籍 |
証明する内容 | 出生、婚姻、死亡、親子関係などの身分関係 |
管理場所 | 本籍地の市区町村 |
編成単位 | 夫婦と未婚の子 |
項 目 | 住民票 |
証明する内容 | 居住地(どこに住んでいるか) |
管理場所 | 住所地の市区町村 |
編成単位 | 世帯 |
相続手続きでは、亡くなった方の身分関係を証明するために「戸籍」を、最後の住所地を証明するために「住民票の除票」をそれぞれ取得する必要があります。
戸籍関連の証明書と手数料一覧
戸籍関連の証明書にはいくつか種類があり、手数料も異なります。主な証明書と一般的な手数料をまとめました。
証明書の種類 | 手数料(1通あたり) |
戸籍全部(個人)事項証明書(戸籍謄本・抄本) | 450円 |
除籍・改製原戸籍謄本・抄本 | 750円 |
戸籍の附票の写し | 300円(市区町村により異なる場合があります) |
身分証明書 | 300円(市区町村により異なる場合があります) |
※手数料は市区町村によって異なる場合がありますので、請求先の役所にご確認ください。相続手続きでは、亡くなった方の出生から死亡までの連続した戸籍(除籍謄本や改製原戸籍謄本も含む)をすべて集める必要があり、通数が多くなることもあります。
便利になった!戸籍証明書の広域交付制度
これまで戸籍謄本などは本籍地の役所でしか取得できず、遠方の場合は郵送で請求する必要があり手間と時間がかかっていました。しかし、2024年3月1日から戸籍法の一部が改正され、戸籍証明書の広域交付制度がスタートしました。これにより、本籍地が遠くにある場合でも、最寄りの市区町村役場の窓口で戸籍謄本などを請求できるようになりました。ただし、請求できるのは本人、配偶者、直系の親族(父母、子、孫など)が窓口に直接出向く場合に限られます。郵送や代理人による請求は広域交付の対象外なのでご注意ください。また、コンピュータ化されていない一部の戸籍は対象外となります。残念ながら、戸籍の附票の写しは広域交付の対象外です。これまで通り、本籍地の市区町村へ請求する必要があります。
まとめ
今回は、戸籍と戸籍の附票について解説しました。
- 戸籍は、出生から死亡までの身分関係を証明するものです。
- 戸籍の附票は、戸籍に紐づいた住所の履歴を証明するものです。
- どちらも本籍地の役所で管理されています。
- 相続手続きや不動産登記など、さまざまな場面で必要になる重要な書類です。
- 戸籍謄本は広域交付制度で最寄りの役所でも取得可能になりましたが、戸籍の附票は対象外です。
これらの書類は、特に相続手続きにおいて、亡くなった方を特定し、相続人を確定させるために不可欠です。いざという時に慌てないよう、基本的な知識を持っておくと安心ですね。もし手続きでご不明な点があれば、専門家に相談することも検討してみてください。
[参考文献]
戸籍と戸籍の附票のよくある質問まとめ
Q. 戸籍ってなんですか?
A. 日本国民の出生、婚姻、死亡などの身分関係を記録・証明する公的な文書です。一つの戸籍は、原則として一組の夫婦と、その夫婦の未婚の子で構成されます。
Q. 戸籍謄本と戸籍抄本の違いは何ですか?
A. 戸籍謄本は、戸籍に記録されている全員分の内容を証明するものです。一方、戸籍抄本は、戸籍に記録されている人のうち、特定の一人または複数人分のみを証明するものです。現在はそれぞれ「全部事項証明書」「個人事項証明書」が正式名称です。
Q. 戸籍の附票(ふひょう)とは何ですか?
A. その戸籍が作られてから現在までの住所の履歴を記録したものです。戸籍とセットで本籍地の市区町村で管理されています。
Q. 戸籍の附票はどんなときに必要になりますか?
A. 住所の変遷を証明する必要があるときに使います。例えば、相続手続きや、不動産登記で登記簿上の住所と現住所が異なる場合、自動車の廃車手続きなどで必要になることがあります。
Q. 戸籍の附票の写しはどこで取得できますか?
A. 本籍地のある市区町村の役所で取得できます。窓口での請求のほか、郵送請求や、自治体によってはマイナンバーカードを利用したコンビニ交付サービスでも取得可能です。
Q. 自分の本籍地がわからない場合はどうすればいいですか?
A. お住まいの市区町村で「本籍地記載あり」の住民票の写しを取得することで確認できます。