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手許現金を申告しないとバレる?相続税のペナルティと税務調査を解説

2025-12-30
目次

ご家族が亡くなられた後、故人がご自宅に保管していた現金、いわゆる手許現金が見つかることがありますよね。「これくらいなら申告しなくても大丈夫かな?」「税務署には分からないのでは?」なんて、少し考えてしまうかもしれません。でも、その考えはとても危険なんです。実は、手許現金の申告漏れは、税務署に高い確率で指摘されてしまいます。この記事では、なぜ手許現金を申告しないとバレてしまうのか、そして申告しなかった場合にどんなペナルティがあるのかについて、優しく、そして詳しく解説していきますね。

手許現金とは?相続税の対象になるお金の範囲

まず、「手許現金(てもとげんきん)」とは、銀行などの金融機関に預けられていない、文字通り手元にある現金のことを指します。これは相続税の課税対象となる大切な相続財産の一部なんですよ。具体的にどんなものが含まれるのか、一緒に見ていきましょう。

財布の中の現金やタンス預金

故人が日常的に使っていたお財布の中に入っている数千円、数万円といった現金も、立派な相続財産です。また、ご自宅のタンスや金庫、引き出しの奥などに保管していた、いわゆる「タンス預金」も、もちろん手許現金に含まれます。金額の多い少ないにかかわらず、相続が始まった時点(亡くなられた時点)で故人が所有していた現金は、すべて申告の対象になるんです。

貸金庫に保管していた現金

ご自宅だけでなく、銀行の貸金庫に現金を保管されているケースもあります。この貸金庫の中にある現金も、手許現金として相続財産に含めて申告する必要があります。遺品整理の際には、貸金庫の契約がなかったかもしっかりと確認することが大切ですよ。

相続開始直前に引き出した預金

特に注意が必要なのが、故人が亡くなる直前に預金口座から引き出された現金です。ご家族が葬儀費用や入院費の支払いのために、事前にまとまったお金を引き出しておくことはよくありますよね。しかし、そのお金は亡くなられた時点ではまだ支払われておらず、故人の財産であることに変わりはありません。そのため、この「直前引き出し預金」も手許現金として、きちんと相続財産に計上しなくてはならないんです。これは税務調査で非常に厳しくチェックされるポイントなので、忘れないようにしましょう。

なぜ手許現金の申告漏れは税務署にバレるのか?

「現金なら記録が残らないからバレないはず」と思ってしまうかもしれませんが、税務署の調査能力は私たちが想像している以上なんです。税務署はさまざまな方法で資産の流れを把握しており、手許現金の存在を突き止めることができます。その理由を具体的に見ていきましょう。

預金口座の履歴は10年分チェックされる

税務署は、法律に基づいて金融機関に照会をかける権限を持っています。税務調査の際には、故人だけでなく、そのご家族の預金口座についても、過去10年程度にさかのぼって入出金の履歴を徹底的に調べることができるんです。もし、数百万円といった大きな金額が引き出されているのに、その使い道がはっきりと説明できない場合、「そのお金は手許現金として自宅に保管されているのではないか?」と疑われてしまいます。

KSK(国税総合管理)システムで資産情報を把握

税務署は、「KSK(国税総合管理)システム」という強力なデータベースを持っています。このシステムには、個人の確定申告の内容や給与、不動産の売買履歴など、お金に関するあらゆる情報が一元管理されています。そのため、故人の生前の収入や資産状況を把握した上で、「このくらいの収入があった方なのに、申告されている相続財産が少なすぎる」と判断されると、隠している財産、特に手許現金がないかどうかの調査対象になりやすいのです。

故人の生活状況からの推測

税務調査官は、申告された財産の内容を見て、「この資産だけで、故人はどのような生活を送っていたのだろうか?」と考えます。例えば、預金も不動産もほとんどないのに、特に不自由なく暮らしていたように見える場合、「生活費はどこから出ていたのか?申告されていない手許現金があったのではないか?」と推測します。特に、相続財産として手許現金を「0円」で申告すると、不自然だと判断され、厳しく問いただされる可能性が高くなります。

手許現金の正しい申告方法と注意点

では、手許現金はどのように申告すれば良いのでしょうか。ここでは、間違いやすいポイントを中心に、正しい申告方法と注意点について解説します。

相続開始時点の金額を正確に把握する

最も大切なのは、相続が開始した時点(故人が亡くなった日)に、手許現金がいくらあったのかを正確に把握することです。遺品整理の際に家中を探し、見つかった現金をすべて合計します。もし、亡くなられた後に病院への支払いや葬儀費用などでその現金の一部を使ったとしても、計算の出発点はあくまで「亡くなった日にあった金額」です。使った分を差し引いて申告するのではなく、まずは総額をきちんと計上しましょう。

葬儀費用で支払った現金の扱い

葬儀費用は、相続財産から差し引くことができる「債務控除」の対象になります。ここでよくある間違いが、「手許現金から葬儀費用を払ったから、その分は申告しなくていい」と考えてしまうことです。

正しい計算方法は、

  1. まず、相続開始時点にあった手許現金の全額を相続財産として計上する。
  2. その上で、支払った葬儀費用を「債務控除」として、相続財産全体から差し引く。

という二段階の手順になります。例えば、手許現金が300万円あり、そこから葬儀費用として200万円を支払った場合、相続財産には300万円を計上し、別途200万円を控除項目として申告します。この流れを守らないと、財産を少なく見せようとしたと疑われかねないので注意が必要ですよ。

夫婦の共有の現金が混ざっている場合

ご夫婦の場合、生活費などを一緒の財布や貯金箱で管理していることも多いですよね。どちらか一方が亡くなられた際、その現金がどちらのものなのか分からなくなってしまうことがあります。このような場合は、合理的な基準で按分(あんぶん)して計算する必要があります。例えば、過去数年間のご夫婦それぞれの預金口座からの引き出し額の割合を算出し、その比率で手許現金を分ける、といった方法が考えられます。大切なのは、なぜそのように分けたのかをきちんと説明できるようにしておくことです。

手許現金を申告しなかった場合の重いペナルティ

もし、手許現金の申告漏れが税務調査で発覚してしまったら、どうなるのでしょうか。本来納めるべきだった相続税を支払うだけでなく、厳しいペナルティとして追加の税金が課せられてしまいます。

追加で課される様々な税金(加算税・延滞税)

申告漏れの内容に応じて、以下のようなペナルティの税金が課されます。正直に申告していれば払わずに済んだお金なので、とてももったいないですよね。

ペナルティの種類 内容と税率
過少申告加算税 申告額が少なかった場合に課される。追加で納める税額の10%~15%
無申告加算税 申告期限までに申告しなかった場合に課される。納めるべき税額の15%~20%
延滞税 納税が遅れたことに対する利息。最大で年8.7%(2024年時点)。

悪質な場合は「重加算税」の対象に

ペナルティの中でも特に重いのが「重加算税」です。これは、意図的に財産を隠したり、事実を偽ったりした「仮装・隠蔽」があったと判断された場合に課せられます。手許現金をわざと申告しなかった場合は、この重加算税の対象となる可能性が非常に高いです。税率は、過少申告の場合は35%、無申告の場合は40%と、非常に高額になります。

最悪の場合は刑事罰も

脱税の金額が非常に大きい場合や、その手口が悪質だと判断された場合には、税金上のペナルティだけでなく、「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金」といった刑事罰が科される可能性もあります。脱税は犯罪であるということを、しっかりと認識しておく必要があります。

申告漏れに気づいたら?すぐにやるべきこと

相続税の申告が終わった後に、「あ、あのタンス預金を申告し忘れていた!」と気づくこともあるかもしれません。そんな時は、決して放置せず、すぐに行動することが大切です。

税務調査の前に「修正申告」を

税務署から調査の連絡が来る前に、自分から間違いを訂正する「修正申告」を行えば、ペナルティが軽くなることがあります。自主的に修正申告した場合、本来課されるはずだった「過少申告加算税」が免除されるんです。税務調査の通知を受けた後に修正申告をしても、加算税は軽減されません。「気づいた時点ですぐに」行動することが、余計な税金を払わないための鍵となります。

困ったときは専門家(税理士)に相談

「手許現金の正確な金額がわからない」「修正申告のやり方が複雑で不安」など、少しでも困ったことがあれば、相続を専門とする税理士に相談することをおすすめします。専門家であれば、正確な財産の計算から申告書の作成、税務署への対応まで、すべてを安心して任せることができます。早めに相談することで、問題をスムーズに解決できますよ。

まとめ

いかがでしたでしょうか。手許現金は、金額の大小にかかわらず、必ず申告が必要な大切な相続財産です。申告しなくてもバレないだろうという甘い考えは、税務調査によって覆され、結果的に重加算税などの重いペナルティにつながってしまいます。故人が大切に残してくれた財産で、ご家族が後々苦労することがないように、正直に、そして正確に申告することが何よりも大切です。もし相続手続きに少しでも不安な点があれば、一人で悩まずに、ぜひ専門家に相談してみてくださいね。

参考文献

手許現金・タンス預金の申告漏れに関するよくある質問まとめ

Q. 手許現金(タンス預金)を申告しないと、税務署にバレるのでしょうか?

A. はい、バレる可能性は非常に高いです。税務署は亡くなった方の過去の所得や資産状況、お金の動きを詳細に把握しています。不動産の購入記録などから手許現金を推測し、申告漏れを指摘することがあります。

Q. 税務調査では、手許現金はどのように調べられるのですか?

A. 税務調査では、自宅の金庫や引き出しなど、現金を隠しやすい場所を調べることがあります。また、過去の銀行口座の入出金履歴から、不自然に引き出された現金がないかなども確認されます。

Q. 申告しなかった手許現金が見つかった場合、どのようなペナルティがありますか?

A. 本来納めるべき税金に加え、過少申告加算税や延滞税が課されます。意図的に財産を隠したと判断された場合は、さらに重い重加算税が課されることもあります。

Q. 生前に現金を手渡しで贈与すれば、申告しなくても大丈夫ですか?

A. いいえ、大丈夫ではありません。年間110万円を超える贈与には贈与税がかかります。また、相続開始前一定期間内の贈与は相続財産に加算されるため、結局は相続税の対象となります。

Q. 亡くなった家族のタンス預金を見つけました。どうすればいいですか?

A. 亡くなった方のタンス預金は相続財産の一部です。他の預貯金などと同様に相続財産として計上し、相続税の申告に含める必要があります。隠すと後でペナルティが課されるリスクがあります。

Q. 申告漏れを指摘されないためには、どうすれば良いですか?

A. 手許現金も含め、すべての財産を正確に把握し、正直に申告することが最も重要です。不明な点があれば、税理士などの専門家に相談し、適切な手続きを行うことをお勧めします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
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対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。