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投資信託の換価分割、確定申告は誰の口座で決まる?判断基準を解説

2025-05-17
目次

ご家族が亡くなり、遺産の中に投資信託が見つかるケースは少なくありません。「この投資信託、どうやって分けたらいいんだろう?」「売却して現金で分けたいけど、税金や確定申告ってどうなるの?」と、お悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に、投資信託の換価分割(かんかぶんかつ)を行う場合、確定申告が必要になるかどうかはとても気になるところですよね。この判断は、実は「誰の」「どの種類の」口座で売却したかによって決まります。今回は、投資信託の換価分割における確定申告の要否について、その判断基準を分かりやすく解説していきます。

投資信託の換価分割と確定申告の基本

まずは、換価分割とは何か、そして確定申告がどのような場合に関わってくるのか、基本的なポイントを押さえておきましょう。

換価分割とは?公平に分けるための方法

換価分割とは、相続財産をそのままの形で分けるのではなく、一度売却して現金に換えてから、その現金を相続人同士で分け合う方法です。投資信託や不動産のように、物理的にきれいに分けにくい財産の場合によく用いられます。例えば、1,000万円の価値がある投資信託を2人の相続人で分ける場合、売却して得た1,000万円を500万円ずつに分けるといった形です。この方法なら、誰か一人が多くの財産をもらうといった不公平感がなく、スムーズに遺産分割を進めやすいというメリットがあります。

確定申告が必要になるのはどんなとき?

投資信託を売却して、購入したときよりも高い価格で売れた場合、その差額は「譲渡所得」という利益になります。この譲渡所得に対して所得税と住民税がかかるため、原則として確定申告が必要になります。ただし、どのような証券口座で売却したかによって、確定申告が不要になるケースもあります。つまり、「利益が出たから必ず確定申告が必要」というわけではないのがポイントです。

判断の鍵は「誰の」「どの種類の」口座で売却したか

ここが最も重要なポイントです。確定申告が必要かどうかは、亡くなった方(被相続人)の口座の種類で決まるわけではありません。実際に投資信託を売却した「相続人」の証券口座の種類によって判断されます。亡くなった方の口座は、その方が亡くなった時点で凍結されてしまい、直接売却することはできません。そのため、一度相続人の口座に投資信託を移してから売却するという手順を踏むことになります。この「移管先の口座」が何なのかが、確定申告の要否を分けるのです。

確定申告の要否を左右する証券口座の種類

証券口座には、税金の取り扱いが異なるいくつかの種類があります。それぞれの口座の特徴を理解することが、確定申告の要否を判断する上で欠かせません。

特定口座(源泉徴収あり)

この口座は、投資信託などを売却して利益が出た場合に、証券会社が自動で税金を計算し、売却代金から差し引いて(源泉徴収して)納税まで済ませてくれる口座です。そのため、この口座で取引を完結させれば、原則として確定申告は不要です。相続人の方がこの口座に投資信託を移管して売却すれば、手続きの手間が最も少なくて済みます。

特定口座(源泉徴収なし)

この口座では、証券会社が1年間の損益を計算して「年間取引報告書」を作成してくれます。しかし、税金の源泉徴収は行われません。そのため、年間の取引で20万円を超える利益が出た場合は、ご自身で確定申告をして税金を納める必要があります。手間はかかりますが、他の投資の損失と相殺(損益通算)したい場合などに利用されます。

一般口座

この口座は、年間の損益計算から確定申告・納税まで、すべて自分で行う必要がある口座です。いつ、いくらで投資信託を購入したか(取得費)なども自分で管理しなければなりません。利益が出た場合は、もちろん確定申告が必要です。相続手続きで注意が必要なのは、専門家に遺産整理を依頼した場合などに、この一般口座で売却されるケースがある点です。

口座の種類 確定申告の要否(利益が出た場合)
特定口座(源泉徴収あり) 原則不要
特定口座(源泉徴収なし) 必要(年間20万円超の利益の場合)
一般口座 必要

誰の口座で判断?被相続人と相続人の口座

相続手続きにおいて、亡くなった方の口座と、それを受け継ぐ相続人の口座の役割は明確に異なります。この違いをしっかり理解しておきましょう。

被相続人の口座では売却できない

金融機関は、口座名義人が亡くなったことを知ると、その方の口座を凍結します。これは、相続人が確定するまで財産が勝手に引き出されたりしないようにするためです。したがって、亡くなった方の証券口座に入っている投資信託を、その口座のまま売却することはできません。まずは、遺産分割協議で誰がその投資信託を相続するかを決め、その相続人の証券口座へ移管(名義変更)する手続きが必須となります。

相続人の口座の種類が確定申告の要否を決める

投資信託を相続人の口座に移管した後、いよいよ売却(換価)します。このとき、確定申告が必要かどうかは、移管先である相続人の口座が「特定口座(源泉徴収あり)」なのか、それ以外の口座なのかによって決まります。
もし、相続人の方が「特定口座(源泉徴収あり)」をお持ちであれば、その口座に投資信託を移管してから売却するのが最もシンプルな方法です。証券会社が税金の計算から納税まで代行してくれるため、面倒な確定申告の手間を省くことができます。

注意!遺産整理で「一般口座」扱いになるケース

相続手続きをスムーズに進めるために、司法書士や信託銀行などの専門家に遺産整理業務を依頼することがあります。この場合、思わぬ形で確定申告が必要になることがあるので注意が必要です。

遺産整理業務受任者や遺言執行者の口座は「一般口座」

司法書士や遺言執行者が、相続財産を一時的に管理するために開設する専用の証券口座は、制度上「特定口座」を作ることができません。そのため、必ず「一般口座」として開設されます。被相続人が「特定口座(源泉徴収あり)」で投資信託を保有していたとしても、この遺産整理用の口座に移された瞬間に「一般口座」の扱いになってしまうのです。

どういう流れで確定申告が必要になる?

遺産整理を専門家に依頼した場合、一般的に次のような流れで手続きが進みます。

  1. 亡くなった方の「特定口座」から、遺産整理受任者名義の「一般口座」へ投資信託を移管する。
  2. その「一般口座」で投資信託を売却する。
  3. 売却して利益(譲渡所得)が出た場合、その利益は相続人が得たものとみなされる。
  4. 結果として、各相続人が自身の相続分に応じた利益について、確定申告を行う必要が出てきます。

専門家に任せていれば安心と思いがちですが、税金面ではこのような落とし穴があることを知っておきましょう。

代表相続人の口座で売却する場合の注意点

相続人のうちの一人が代表して、自分の証券口座で投資信託を売却し、その後、売却代金を他の相続人に分配する方法もあります。この場合、たとえ代表者が「特定口座(源泉徴収あり)」で売却したとしても、注意が必要です。税務上は、売却による利益は、遺産分割協議で定められた割合に応じて、各相続人が得たものと考えられます。そのため、代表者以外の相続人も、自分の持ち分に相当する利益について確定申告が必要になる可能性があります。手続きを始める前に、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

確定申告で知っておきたいポイント

もし確定申告が必要になった場合、損をしないために知っておきたい税金の計算ルールや特例があります。

取得費は被相続人のものを引き継ぐ

譲渡所得は「売却価格 − (取得費 + 譲渡費用)」で計算します。この「取得費」とは、その投資信託を最初に購入したときの価格のことです。相続で引き継いだ場合、相続人が取得したときの価格ではなく、亡くなった方が購入したときの価格を引き継いで計算します。もし購入時の価格が分からない場合は、売却価格の5%を「概算取得費」として計算することもできますが、一般的に税金の負担が大きくなる傾向があります。

相続税の取得費加算の特例

もし、その投資信託を相続した際に相続税を支払っているのであれば、ぜひ活用したいのが「取得費加算の特例」です。これは、相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(具体的には相続開始から3年10ヶ月以内)にその財産を売却した場合、支払った相続税額の一部を取得費に上乗せできるという制度です。取得費が大きくなる分、譲渡所得が圧縮され、所得税の節税につながります。

確定申告による社会保険料への影響

確定申告をして譲渡所得を申告すると、その年の合計所得金額が増えることになります。これにより、国民健康保険料や介護保険料が上がったり、病院で支払う医療費の自己負担割合(1割→2割など)が変わったりする可能性があります。一方で、「特定口座(源泉徴収あり)」で税金が源泉徴収され、確定申告をしなければ、これらの社会保険料には影響しません。これも特定口座を利用する大きなメリットの一つと言えるでしょう。

まとめ

投資信託の換価分割における確定申告の要否は、「誰が、どの種類の口座で売却したか」で決まります。亡くなった方の口座ではなく、実際に売却手続きを行う相続人の口座が基準となることを覚えておきましょう。
最も手間がかからない方法は、相続人が自身の「特定口座(源泉徴収あり)」に投資信託を移管して売却することです。これにより、原則として確定申告は不要になります。
一方で、司法書士などの専門家による遺産整理手続きや、代表相続人の口座で換価分割を行う場合は、「一般口座」での売却となり、利益が出ると各相続人が確定申告をする必要が生じます。その際には、「取得費の引き継ぎ」や「取得費加算の特例」といったルールをしっかり活用しましょう。ご自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶために、手続きを進める前に金融機関や税理士に相談することをおすすめします。

参考文献

投資信託の換価分割に関するよくある質問まとめ

Q. 投資信託の換価分割とは何ですか?

A. 換価分割とは、不動産や投資信託といった相続財産を売却して現金に換え、その現金を相続人同士で分け合う遺産分割の方法のことです。公平に分割しやすいメリットがあります。

Q. 投資信託を換価分割した場合、確定申告の要否は誰の口座で決まりますか?

A. 亡くなった方(被相続人)の口座ではなく、実際に投資信託を売却した相続人の証券口座の種類によって決まります。

Q. 確定申告が不要になるのはどんな場合ですか?

A. 相続人が自身の「特定口座(源泉徴収あり)」という種類の証券口座に投資信託を移管して売却した場合、証券会社が税金の計算から納税まで行ってくれるため、原則として確定申告は不要です。

Q. 遺産整理を専門家に頼むと確定申告が必要になることがあるのはなぜですか?

A. 司法書士などの専門家が遺産整理のために使用する証券口座は、制度上「一般口座」として開設されます。一般口座で売却して利益が出た場合、各相続人が確定申告をする必要があります。

Q. 売却益の計算で使う「取得費」はどうなりますか?

A. 亡くなった方がその投資信託を購入したときの価格(取得費)を引き継いで計算します。相続人が相続した時点での価格ではありません。

Q. 「相続税の取得費加算の特例」とは何ですか?

A. 相続税を支払った人が、相続開始の翌日から3年10ヶ月以内にその財産を売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に上乗せして、譲渡所得にかかる税金の負担を軽減できる制度です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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