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接道2m未満の土地は再建築不可?相続税の40%評価減を解説

2025-12-09
目次

「うちの土地、道路に接している部分が狭いけど、家は建て替えられるのかな?」「相続した土地が接道2m未満で、相続税評価はどうなるんだろう?」そんな疑問をお持ちではありませんか?土地と道路の関係は、建物を建てる上でも、税金の計算上でも非常に重要です。特に、道路に接している部分(間口)が2mに満たない土地は、さまざまな制約を受ける可能性があります。この記事では、接道2m未満の土地に建物が建てられないのか、そして相続税評価で使える「40%評価減」の仕組みについて、優しく解説していきますね。

接道2m未満の土地に建物が建てられない「接道義務」とは

まず、土地に建物を建てる際の基本的なルールから見ていきましょう。実は、どんな土地にでも自由に建物を建てられるわけではないんです。そこには「接道義務」という大切な決まりが関係しています。

建築基準法の「接道義務」

建物を建てる土地は、建築基準法という法律で定められた「道路」に2m以上接していなければならない、と決められています。これを「接道義務」と呼びます。もし、この条件を満たしていない土地だと、原則として新しい建物を建てたり、今ある建物を建て替えたりすること(再建築)ができません。このような土地を「再建築不可物件」と呼ぶこともあります。

なぜ「幅4m以上の道路に2m以上」接する必要があるの?

なぜこのような決まりがあるのでしょうか。一番の理由は、防災や安全のためです。もし火災が起きたとき、消防車がスムーズに入って消火活動ができなければ大変ですよね。また、救急車が家の近くまで来られなかったり、災害時に安全に避難できなかったりする事態を防ぐためです。緊急車両(消防車や救急車)の幅は約1.9mなので、最低でも2mの間口が必要とされているんです。また、接する道路の幅が4m以上必要なのも、緊急車両がすれ違ったり、活動したりするためのスペースを確保するためなんですよ。

「再建築不可」になるとどうなる?

接道義務を満たしていない「再建築不可」の土地は、具体的に次のようなデメリットがあります。

  • 新しい家を建てられない
  • 今の家を取り壊して建て替えることができない
  • 増築など大規模なリフォームが制限されることがある
  • 売却しようとしても、買い手が見つかりにくい
  • 金融機関の住宅ローン審査が通りにくい

このように、土地の活用方法が大きく制限されてしまうため、資産価値も低く評価されがちです。

建て替えを可能にする方法はあるの?

「じゃあ、接道2m未満の土地はもうどうしようもないの?」と不安に思うかもしれませんが、建て替えを可能にする方法が全くないわけではありません。ただし、時間や費用、そして隣地の方との交渉が必要になることが多いです。

隣地の土地を一部購入・交換・借地する

最も分かりやすい解決策は、隣地の一部を買い取らせてもらい、接道部分を2m以上にする方法です。例えば、間口が1.8mしかない場合は、隣地から幅0.2m分の土地を購入することで接道義務をクリアできます。また、自分の土地の一部と隣地の一部を等価交換したり、工事期間中だけ土地を借りたりする方法もあります。しかし、いずれの方法も隣地所有者の同意がなければ実現できませんし、交渉は簡単ではありません。

セットバックで道路の幅を確保する

接している道路の幅が4m未満の場合に使われる方法です。道路の中心線から2mの位置まで自分の敷地を後退させることで、道路の幅を確保します。これを「セットバック」と呼びます。セットバックした部分は道路とみなされるため、自分の土地でありながら建物を建てたり塀を作ったりすることはできなくなります。敷地が狭くなるというデメリットはありますが、これにより再建築が可能になる場合があります。

「43条但し書き道路」の許可を得る

建築基準法第43条には「但し書き」として、例外的に建築を認める規定があります。これは、敷地の周りに広い公園や広場があるなど、安全上・防火上支障がないと特定行政庁が認めた場合に、建築審査会の同意を得て建築許可を得る方法です。条件が厳しく、必ず許可が下りるわけではありませんが、一つの可能性として覚えておくとよいでしょう。

相続税の「40%評価減」とは?

さて、ここからは相続税の話です。接道義務を満たさない土地は活用が難しく資産価値が低い、と説明しました。その価値の低さは、相続税を計算する際の土地評価にも反映されるんです。それが、キーワードにある「40%評価減」の正体です。

この評価減は、専門的には「無道路地の評価」と呼ばれます。接道義務を満たしていない土地は、税金の計算上「無道路地」として扱われるのです。

評価減の正体は「無道路地」の評価

国税庁では、道路に接していない宅地(接道義務を満たしていない宅地を含む)を「無道路地」と定義しています。無道路地は、そのままでは建物を建てられないため、通常の土地よりも価値が低いと判断されます。そのため、相続税評価額を計算する際に、その価値の低さを反映させるための減額が認められているのです。

無道路地の定義
該当する土地 道路に全く接していない土地、または建築基準法の接道義務(幅4m以上の道路に2m以上接する)を満たしていない土地
評価方法 通常の評価額から、通路開設費用に相当する額を控除する。ただし、控除額は通常の評価額の40%が上限。

なぜ評価額が下がるの?

無道路地の評価額が下がる理由は、その土地を利用するために「通路を開設する必要がある」と考えられるからです。もしその土地に建物を建てるなら、隣地の一部を買い取るなどして道路までの通路を確保しなければなりません。その通路を開設するためにかかるであろう費用分を、土地の評価額から差し引いてあげましょう、という考え方なんです。

評価減は最大40%!計算方法を解説

無道路地の評価では、この「通路開設費用相当額」を差し引きます。そして、その控除額の上限が、通路を開設しない場合の土地の評価額の40%と定められています。つまり、通路開設費用がどれだけ高額になっても、減額できるのは最大で40%まで、ということになります。これが「40%評価減」と言われる理由です。必ず40%減額されるわけではなく、「最大で」40%という点がポイントです。

無道路地の評価額はどうやって計算するの?

では、実際にどのように評価額を計算するのでしょうか。少し専門的になりますが、大まかな流れをつかんでおきましょう。

評価の基本ステップ

無道路地の評価は、以下の3ステップで行います。

  1. ステップ1:通路があると仮定して、土地全体の評価額を計算する
    まず、無道路地が道路に接していると仮定して、通常の土地と同じように路線価を使って評価額を計算します。このとき、土地の形がいびつな場合は不整形地補正などの各種補正も行います。
  2. ステップ2:通路開設費用相当額を計算する
    次に、道路から無道路地まで通路(幅2mと仮定)を開設した場合の、その通路部分の土地の価額を計算します。これは「前面道路の路線価 × 通路部分の面積」で求めます。
  3. ステップ3:ステップ1の評価額からステップ2の費用を差し引く
    最後に、ステップ1で計算した評価額から、ステップ2で計算した通路開設費用相当額を差し引きます。この差し引いた金額が無道路地の評価額となります。

ただし、ここで計算した通路開設費用相当額(控除額)が、ステップ1で計算した評価額の40%を超える場合は、控除額は40%が上限となります。

具体的な計算例を見てみよう

言葉だけだと難しいので、簡単な例で見てみましょう。

無道路地の評価計算例
前提条件 ・路線価:100,000円/㎡
・通路開設を想定した場合の土地評価額(ステップ1):20,000,000円
・想定通路の面積:奥行10m × 幅2m = 20㎡
計算 1. 通路開設費用相当額(ステップ2)
100,000円/㎡ × 20㎡ = 2,000,000円

2. 控除額の上限(40%)
20,000,000円 × 40% = 8,000,000円

3. 控除額の決定
通路開設費用(200万円)は上限(800万円)を下回るので、控除額は2,000,000円

4. 最終的な評価額(ステップ3)
20,000,000円 – 2,000,000円 = 18,000,000円

40%評価減が使えないケースに注意!

無道路地の評価減は非常に有効な節税策ですが、注意点もあります。適用できるかどうか、慎重に判断しましょう。

必ず40%減額されるわけではない

繰り返しになりますが、この評価方法は「最大で」40%の減額です。上記の計算例のように、通路開設費用相当額が土地評価額の40%よりも小さい場合は、その費用相当額しか控除できません。通路が短くて済むような土地の場合は、減額割合も小さくなります。

他人の土地を通れる権利がある場合

もし、他人の土地を通行できる権利(囲繞地通行権や賃借権など)が法的に確保されている場合は、無道路地として扱われない可能性があります。見た目は道路に接していなくても、実質的に通路が確保されていると判断されるためです。このあたりの判断は非常に専門的なので、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

まとめ

今回は、接道2m未満の土地と相続税の評価減について解説しました。最後にポイントを振り返ってみましょう。

  • 接道義務:建物を建てる敷地は、原則として幅4m以上の道路に2m以上接する必要がある。
  • 再建築不可:接道義務を満たさない土地は、原則として家の建て替えができない。
  • 無道路地の評価:接道義務を満たさない土地は、相続税評価上「無道路地」として扱われ、評価額が減額される。
  • 40%評価減:無道路地の評価減は、通路開設費用相当額を控除するもので、その上限が土地評価額の40%となっている。

ご自身の土地が接道義務を満たしているか、また、相続した土地が無道路地に該当するかどうかの判断は、専門的な知識が必要です。特に相続税の申告で無道路地の評価を適用する際は、正確な計算が求められます。もし不安な点があれば、お近くの市区町村の建築指導課や、相続に詳しい税理士に相談してみてくださいね。

参考文献

国税庁 タックスアンサー No.4620 無道路地の評価

一辺が2mに満たない土地の評価と活用に関するよくある質問

Q.一辺が2mに満たない土地には、本当に家を建てられないのですか?

A.はい、原則として建物を建てることはできません。建築基準法では、建物の敷地は幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならない「接道義務」が定められているためです。

Q.建物が建てられない土地は、相続税の評価額が安くなるのですか?

A.はい、安くなる可能性が高いです。道路に接していない土地は「無道路地」として評価され、利用価値が著しく低いため、相続税評価額が大幅に減額されます。

Q.無道路地評価で、具体的に40%も評価額が下がるのですか?

A.最大で40%減額される可能性があります。無道路地は、道路に出るための通路部分の価額を差し引いて評価します。この差し引ける金額の上限が、通路開設前の土地の評価額の40%と定められています。

Q.道路に接しているが、間口が2m未満の場合も評価は下がりますか?

A.はい、評価は下がります。接道義務を満たしていないため、原則として再建築ができません。この場合、「間口狭小補正」や「奥行長大補正」などが適用され、土地の使いにくさに応じて評価額が減額されます。

Q.間口が狭くて形もいびつな土地です。複数の評価減を同時に使えますか?

A.いいえ、原則として併用はできません。「間口狭小補正」と「不整形地補正」など、複数の補正が適用できる場合は、どちらか評価額がより低くなる(有利な)一方のみを適用するのが一般的です。

Q.建物が建てられない2m未満の土地は、どうすれば良いですか?売れないのでしょうか?

A.単独での活用は難しいですが、隣地の所有者に購入してもらうのが最も現実的な方法です。隣地と一体利用することで価値が生まれるため、売却できる可能性は十分にあります。他に、資材置き場や自動販売機の設置場所として活用するケースもあります。

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