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換価分割とは?遺産分割協議書の書き方と税金を優しく解説

2026-05-02
目次

ご家族が亡くなられた後、遺産を分ける話し合い(遺産分割協議)が必要になります。預貯金のように分けやすい財産ばかりなら良いのですが、「実家」などの不動産が遺産の大部分を占める場合、「どうやって公平に分ければいいの?」と悩んでしまいますよね。そんなときに役立つのが換価分割(かんかぶんかつ)という方法です。この記事では、換価分割とは何か、メリット・デメリット、手続きの流れ、そして気になる税金の問題や遺産分割協議書の書き方まで、分かりやすく丁寧にご説明しますね。

遺産分割の3つの方法と換価分割の位置づけ

遺産の分け方には、主に3つの方法があります。それぞれの特徴を知ることで、換価分割がどのような場面で役立つのかがよく分かりますよ。

現物分割|財産をそのままの形で分ける

現物分割(げんぶつぶんかつ)は、最も一般的な方法です。「長男は土地Aを、次男は預貯金Bを」というように、遺産をそのままの形で各相続人が受け取ります。手続きがシンプルで分かりやすいのがメリットですが、財産の価値がバラバラだと、どうしても不公平感が出やすいというデメリットがあります。

代償分割|一人が相続し、他の人にお金で精算する

代償分割(だいしょうぶんかつ)は、特定の相続人(例えば、実家に住み続けたい長男)が不動産などをすべて相続する代わりに、他の相続人に対して法定相続分に見合うお金(代償金)を支払う方法です。事業用の資産や自宅など、分けたくない財産がある場合に有効です。ただし、財産を受け取る側に、代償金を支払えるだけの自己資金が必要になるのが大きな課題です。

換価分割|売却して現金で分ける

そして今回ご説明する換価分割は、不動産などの遺産を売却して現金に換え、その現金を相続人同士で分け合う方法です。物理的に分けられない財産でも、現金にすることで1円単位で公平に分割できるのが最大のメリットです。誰もその不動産に住む予定がない場合や、相続税の納税資金を確保したい場合に特に向いています。

分割方法 特徴
現物分割 財産をそのままの形で分ける。シンプルだが不公平になりやすい。
代償分割 一人が財産を相続し、他の相続人に自己資金で代償金を支払う。
換価分割 財産を売却して現金化し、その現金を公平に分ける。

換価分割のメリット・デメリット

換価分割は公平に分けられる便利な方法ですが、良いことばかりではありません。実際にこの方法を選ぶ前に、メリットとデメリットの両方をしっかり理解しておきましょう。

換価分割の4つのメリット

1. 公平に分割できる
最大のメリットは、やはり公平性です。財産を現金化することで、相続人の人数や相続分に応じて、1円単位できっちり分けることができます。「兄さんの方が多くもらった」といった感情的なトラブルを防ぎやすくなります。

2. 自己資金が不要
代償分割と違い、誰かが多額の自己資金(代償金)を用意する必要がありません。相続人の中にまとまったお金を持っている人がいなくても、公平な分割が可能です。

3. 納税資金を確保できる
相続税は、原則として相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内に、現金で一括納付しなければなりません。遺産が不動産ばかりで手元に現金がない場合でも、換価分割で得た売却代金を納税資金に充てることができます。

4. 相続トラブルを避けやすい
「誰が実家を継ぐか」「どうやって管理していくか」といった将来の問題をまとめて解決できます。不動産を共有名義にすると将来の売却時に全員の同意が必要になるなど、かえってトラブルの種になることもありますが、換価分割ならその心配がありません。

換価分割の3つのデメリット

1. 希望の価格やタイミングで売れない可能性がある
不動産は、必ずしも希望通りの価格で売れるとは限りません。特に相続税の納税期限が迫っていると、焦ってしまい相場より安く売却せざるを得ないこともあります。また、買主が見つかるまで時間がかかる可能性も考慮しておく必要があります。

2. 売却に費用がかかる
不動産を売却する際には、不動産会社に支払う仲介手数料(一般的に売却価格の3%+6万円+消費税が上限)、登記費用、印紙税などの諸経費がかかります。手元に残る現金は、売却価格からこれらの費用を差し引いた金額になります。

3. 譲渡所得税がかかる場合がある
不動産を売却して利益(売却益)が出た場合、その利益に対して譲渡所得税という税金がかかります。これは相続税とは別の税金で、確定申告が必要です。詳しくは後ほどご説明しますが、思わぬ税負担が発生する可能性があることは覚えておきましょう。

換価分割の手続きの流れ

実際に換価分割を行う場合、どのような手順で進めていけばよいのでしょうか。一般的な流れを5つのステップで見ていきましょう。

STEP1: 財産の価値を調べる

まずは、売却対象となる不動産などの価値を把握します。不動産会社に査定を依頼して、どのくらいの価格で売れそうか(実勢価格)を確認しましょう。同時に、相続税申告のために、土地であれば路線価、建物であれば固定資産税評価額を基にした相続税評価額も調べておきます。

STEP2: 遺産分割協議で全員の合意を得る

相続人全員で集まり、遺産分割協議を行います。ここで「この不動産を換価分割する」ということと、「売却代金をどのような割合で分けるか」について、相続人全員の合意を得ることが非常に重要です。一人でも反対する人がいると、換価分割は進められません。話し合った内容は、次のステップで作成する「遺産分割協議書」にまとめます。

STEP3: 相続登記をする(単独登記か共同登記か)

亡くなった方(被相続人)名義のままでは不動産を売却できないため、相続人の名義に変更する相続登記が必要です。このとき、登記の方法には「共同登記」と「単独登記」の2種類があります。

登記方法 内容と特徴
共同登記 相続人全員の共有名義で登記する方法です。公平性は高いですが、売却手続き(不動産会社との契約や売買契約など)の際に全員の実印や書類が必要となり、手間がかかります。
単独登記 相続人のうちの一人を代表者として、その人の単独名義で登記する方法です。売却手続きを代表者一人で進められるためスムーズですが、他の相続人から見ると不安に感じることも。後述する遺産分割協議書の書き方が非常に重要になります。

STEP4: 売却活動と売買契約

相続登記が完了したら、不動産会社と媒介契約を結び、本格的な売却活動を開始します。買主が見つかったら、売買契約を締結し、代金を受け取ります。このとき、売却代金は相続人個人の口座ではなく、専用の口座で管理すると後々のトラブルを防げます。

STEP5: 売却代金の分配

売却代金から仲介手数料などの諸経費を差し引いた後、遺産分割協議書で決めた割合に従って、各相続人に現金を分配します。これで換価分割の手続きは完了です。

換価分割における遺産分割協議書の書き方

換価分割を行う上で、遺産分割協議書の作成は最も重要なポイントの一つです。特に税金の問題をクリアにするために、書き方には注意が必要です。曖昧な内容だと、後から税務署に「贈与」とみなされてしまい、思わぬ贈与税がかかるリスクがあります。

必ず記載すべき重要ポイント

換価分割の場合、遺産分割協議書に以下の2点を必ず明記してください。これがないと、単独登記の場合に代表者から他の相続人へお金を渡した行為が「贈与」と判断されかねません。

  • 換価(売却)を目的とすること
  • 売却代金から諸経費を差し引いた残額の分配割合

【記載例】共同登記の場合

共同登記の場合は、比較的シンプルです。相続人全員が売却に関与することが前提となります。

(記載例)
相続人全員は、下記不動産を法定相続分(妻A 2分の1、長男B 4分の1、長女C 4分の1)の割合で共同して相続し、これを売却(換価)する。売却代金から諸費用を控除した残額を、上記の相続分の割合に応じてそれぞれ取得する。
【不動産の表示】
所在:〇〇市〇〇区…(以下略)

【記載例】単独登記の場合

単独登記の場合は、手続きを円滑にするための便宜的なものであることを明確にする必要があります。

(記載例)
1. 相続人 長男Bは、換価分割のため、下記不動産を単独で相続する。
2. 長男Bは、速やかに上記不動産を売却し、その売却代金から諸費用を控除した残額を、妻Aに2分の1、長男Bに4分の1、長女Cに4分の1の割合で分配する。
【不動産の表示】
所在:〇〇市〇〇区…(以下略)

換価分割でかかる税金【相続税・譲渡所得税・贈与税】

換価分割を検討する際、一番気になるのが税金の問題ですよね。「相続税」「譲渡所得税」「贈与税」の3つの税金について、それぞれどうなるのかを正しく理解しておきましょう。

相続税|売却価格ではなく相続開始時の評価額で計算

まず、相続税ですが、これは亡くなった時点での財産の価値に対して課税されるものです。したがって、換価分割で不動産がいくらで売れたとしても、相続税の計算額そのものには影響しません。相続税は、あくまで亡くなった日の評価額(路線価など)を基に計算されます。
相続税には基礎控除額があり、遺産の総額が「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」以下であれば、相続税はかからず、申告も不要です。

譲渡所得税|売却益が出た時にかかる税金

換価分割で最も注意が必要なのが、この譲渡所得税です。これは、不動産などを売却して得た利益(譲渡所得)に対してかかる所得税と住民税のことです。
譲渡所得は、以下の式で計算されます。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

「取得費」とは、亡くなった方がその不動産を購入したときの代金などのことです。古い不動産で取得費が分からない場合は、売却価格の5%を概算取得費とすることができます。
「譲渡費用」は、仲介手数料など売却にかかった費用のことです。

この譲渡所得に対して、不動産の所有期間に応じた税率で課税されます。

所有期間 税率(所得税+復興特別所得税+住民税)
長期譲渡所得(売却した年の1月1日時点で5年超) 20.315%
短期譲渡所得(売却した年の1月1日時点で5年以下) 39.63%

ただし、一定の要件を満たせば「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」など、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例を使える場合があります。この特例が適用できれば、譲渡所得税がかからないケースも多くあります。

贈与税|遺産分割協議書が重要

最後に贈与税ですが、前述の通り、遺産分割協議書に「換価分割である旨」と「分配割合」がきちんと明記されていれば、原則として贈与税はかかりません。これは、あくまで遺産分割の一環としてお金が移動しているだけで、「贈与」ではないとみなされるためです。遺産分割協議書を正しく作成することが、余計な税金を防ぐための最大のポイントになります。

まとめ

換価分割は、不動産など分けにくい遺産を相続人全員が納得する形で公平に分割するための、とても有効な方法です。特に、誰も住む予定がない不動産や、相続税の納税資金を準備したい場合には大きなメリットがあります。
一方で、希望通りに売却できないリスクや、譲渡所得税という別の税金がかかる可能性も忘れてはいけません。そして、後々のトラブルや余計な税負担を避けるためには、遺産分割協議書を正確に作成することが何よりも大切です。
換価分割の手続きや税金の計算は複雑な部分も多いため、ご自身たちだけで進めるのが不安な場合は、相続に詳しい税理士などの専門家に相談しながら進めることをお勧めします。

参考文献

No.4173 代償分割が行われた場合の相続税の課税価格の計算|国税庁

遺産の換価分割のための相続登記と贈与税|国税庁

換価分割のよくある質問まとめ

Q.換価分割とは何ですか?

A.遺産である不動産などを売却して現金に換え、その現金を相続人間で分ける遺産分割方法のことです。分けにくい財産を公平に分割しやすいメリットがあります。

Q.換価分割で遺産分割協議書はどのように書けばよいですか?

A.相続人全員が換価分割に合意したこと、代表して売却手続きを行う人、売却代金の分配割合、売却にかかる費用(仲介手数料など)の負担者を明確に記載します。

Q.換価分割にはどのような税金がかかりますか?

A.遺産を相続する際の「相続税」とは別に、不動産などを売却して利益(譲渡所得)が出た場合に「譲渡所得税・住民税」がかかります。

Q.換価分割でかかる譲渡所得税を節税する方法はありますか?

A.相続税の申告期限から3年以内に売却した場合に使える「取得費加算の特例」や、被相続人が住んでいた家を売却する場合の「空き家の3,000万円特別控除」などの特例が利用できる可能性があります。

Q.換価分割のメリットとデメリットを教えてください。

A.メリットは、各相続人に現金を公平に分配できる点です。デメリットは、売却に手間や時間がかかること、仲介手数料などの費用が発生すること、売却益が出ると譲渡所得税がかかる点です。

Q.換価分割と代償分割の違いは何ですか?

A.換価分割は遺産を売却して「現金」で分ける方法です。一方、代償分割は相続人の一人が不動産などを現物で相続し、その代わりに他の相続人へ自己の財産から「代償金」を支払う方法です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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