ご家族が亡くなられた後、故人が株式を保有していたことがわかると、株式自体の相続手続きに加えて、配当金の受け取り手続きも必要になることがあります。特に、まだ受け取られていない「未受領配当金」は、手続きを忘れていると受け取れなくなってしまう可能性もあるため注意が必要です。ここでは、死亡後に行う配当金の受け取り手続きについて、流れや必要書類、税金の扱いなどを分かりやすくご説明しますね。
故人の配当金は誰がどうやって受け取るの?
まず、亡くなった方(被相続人)が受け取るはずだった配当金がどうなるのか、基本的なところから確認していきましょう。手続きの窓口は、故人が配当金をどのように受け取っていたかによって変わってきます。
未受領配当金とは?
未受領配当金とは、配当金を受け取る権利が確定したものの、株主本人が受け取らないまま亡くなられてしまった配当金のことです。特に「配当金領収証方式」という方法で受け取っていた場合、郵便局や銀行の窓口で現金化するのを忘れてしまい、未受領のままになっているケースが考えられます。この未受領配当金は、原則として相続財産となり、相続人が手続きをすることで受け取ることができます。
配当金の受け取り方法で手続き先が変わります
故人がどの方法で配当金を受け取っていたかによって、問い合わせや手続きの窓口が異なります。まずは、故人宛てに届いた「配当金計算書」や「配当金領収証」などの書類を探して、受け取り方法を確認してみましょう。
| 受け取り方法の種類 | 手続きの窓口 |
| 株式数比例配分方式 | 故人が口座を持っていた証券会社で手続きします。株式の相続手続きと同時に行えることがほとんどです。 |
| 登録配当金受領口座方式 | 株式を発行している会社の株主名簿管理人(信託銀行など)や、証券会社で手続きをします。 |
| 配当金領収証方式 | ゆうちょ銀行などで現金化するための領収証が送られてくる方式です。手続きは株主名簿管理人(信託銀行など)で行います。 |
| 個別銘柄指定方式 | 銘柄ごとに振込先を指定する方式です。こちらも株主名簿管理人(信託銀行など)や証券会社が窓口になります。 |
「特別口座」で管理されている株式の注意点
2009年の株券電子化より前に証券会社に株券を預けていなかった株式は、「特別口座」という専用の口座で管理されています。この特別口座で管理されている株式の配当金手続きは、証券会社ではなく、株主名簿管理人である信託銀行などで行う必要があります。故人が特別口座を持っていたか分からない場合は、証券保管振替機構(ほふり)に問い合わせることで確認できますよ。
未受領配当金の相続手続きの流れと必要書類
それでは、具体的に未受領配当金を受け取るための手続きはどのように進めればよいのでしょうか。株式自体の相続手続きとあわせて行うと、二度手間にならずスムーズです。
手続きの基本的な流れ
まずは証券会社や信託銀行(株主名簿管理人)に連絡し、相続が発生したことを伝えて手続きに必要な書類を取り寄せます。その後、戸籍謄本などを集めて書類に記入し、提出するというのが基本的な流れです。
1. 証券会社や信託銀行へ連絡し、相続手続きの書類を請求します。
2. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本など、必要書類を集めます。
3. 取り寄せた相続手続依頼書などの書類に、必要事項を記入し、相続人全員で署名・捺印します。
4. 記入した書類と収集した証明書類一式を、金融機関に提出します。
5. 書類に不備がなければ、1ヶ月ほどで手続きが完了し、指定した相続人の口座に配当金が振り込まれます。
手続きに必要となる主な書類
手続きには多くの書類が必要になります。金融機関によって若干の違いはありますが、一般的に必要とされる書類は以下の通りです。事前に準備しておくと、手続きが円滑に進みますよ。
| 書類の種類 | 備 考 |
| 金融機関所定の相続手続依頼書 | 金融機関から取り寄せます。相続人全員の署名と実印の押印が必要です。 |
| 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本 | 除籍謄本、改製原戸籍謄本など、連続した全ての戸籍が必要です。 |
| 相続人全員の戸籍謄本 | 現在の戸籍謄本(戸籍抄本でも可の場合があります)を用意します。 |
| 相続人全員の印鑑証明書 | 発行後3ヶ月や6ヶ月以内など、有効期限が定められていることが多いです。 |
| 遺産分割協議書 | 遺言書がない場合に必要です。相続人全員の実印が押印されているものを用意します。 |
| 被相続人宛ての配当金領収証 | 手元にある場合のみ提出します。払渡期間が過ぎていても手続きは可能です。 |
配当金と税金について知っておきたいこと
配当金を受け取ると、税金が関係してきます。相続税なのか、それとも所得税なのか、少し複雑に感じるかもしれませんが、故人が亡くなったタイミングによって扱いが変わる点を押さえておきましょう。
配当金は相続税の対象になる?
配当金が相続税の課税対象になるかどうかは、「配当基準日(権利が確定する日)」と故人が亡くなった日(相続開始日)の関係によって決まります。
| 故人が亡くなったタイミング | 税金の扱い |
| 配当基準日より前 | 相続人の「配当所得」となり、所得税の対象になります。相続税はかかりません。 |
| 配当基準日の翌日以降、配当金の支払日まで | 「配当期待権」や「未収配当金」として、相続税の課税対象になります。 |
| 配当金の支払日以降 | 故人の預貯金など、本来の相続財産として扱われ、相続税の対象になります。故人の準確定申告の対象にもなります。 |
受け取った配当金の確定申告は必要?
配当金は、通常20.315%の税金が源泉徴収された上で支払われるため、相続人が受け取った場合でも原則として確定申告は不要です。ただし、他の所得とあわせて確定申告をすることで「配当控除」という制度が使え、税金が還付されるケースもあります。ご自身の所得状況に応じて、申告するかどうかを検討してみてくださいね。
配当金の相続手続きに関するよくある質問
ここでは、配当金の相続手続きでよくある質問や、知っておきたい注意点についてお答えします。
配当金の受け取りに期限はありますか?
はい、あります。配当金を受け取る権利(配当金支払請求権)は、多くの会社が定款で「除斥期間」という独自の期限を定めており、一般的に3年~5年となっています。この期間を過ぎると配当金を受け取れなくなってしまいますので、相続が発生したらできるだけ早く手続きを進めることが大切です。
配当金は遺産分割協議の対象になりますか?
法律上、未受領配当金は「可分債権」といい、遺産分割協議がなくても各相続人が法定相続分に応じて受け取れる権利があるとされています。しかし、実務上は、他の遺産とあわせて遺産分割協議の対象とし、「株式を相続する人が配当金も一緒に受け取る」という形で処理することがほとんどです。相続人間でのトラブルを避けるためにも、誰がどのように受け取るのかをきちんと話し合っておきましょう。
故人の口座に配当金が振り込まれてしまった場合は?
金融機関に死亡の連絡をする前に、故人名義の口座に配当金が振り込まれてしまうこともあります。この場合、その配当金も相続財産の一部となりますので、特別な返還手続きなどは不要です。遺産分割の際に、その預金残高に含めて誰が相続するかを話し合うことになります。
手続きが難しいと感じたら専門家への相談も一つの手です
ここまでご説明したように、配当金の相続手続きは、戸籍謄本を集めたり、多くの書類に記入したりと、時間と手間がかかります。特に相続人が複数いる場合や、他の相続手続きもあって忙しい場合には、大きな負担に感じられるかもしれません。もし、ご自身で手続きを進めるのが難しいと感じたら、司法書士や税理士といった相続の専門家に相談するのも良い方法です。手続きを代行してもらうことで、時間を節約できるだけでなく、ミスなく正確に手続きを終えることができますよ。
まとめ
故人が残してくれた大切な資産である株式と配当金。手続きを忘れてしまうと、受け取れるはずだった配当金がもらえなくなってしまうこともあります。この記事を参考に、まずは未受領配当金の有無を確認し、期限内に手続きを完了させましょう。相続手続きは複雑で分かりにくいことも多いですが、一つひとつ丁寧に進めていくことが大切です。もし不安なことや分からないことがあれば、一人で抱え込まず、専門家の力も借りながら、着実に手続きを進めてくださいね。
参考文献
死亡後の配当金受け取り手続きに関するよくある質問まとめ
Q.亡くなった家族名義の配当金はどうなりますか?
A.故人名義の配当金は相続財産の一部となり、相続人が受け取ることができます。所定の手続きが必要です。
Q.死亡後の配当金の受け取り手続きはどこに連絡すればいいですか?
A.故人が利用していた証券会社、または株式を発行している企業の株主名簿管理人(信託銀行など)に連絡し、相続手続きを進める必要があります。
Q.「配当金領収証」が故人名義で届きました。どうすれば換金できますか?
A.故人名義の配当金領収証は、そのままでは換金できません。発行元の信託銀行などに連絡し、相続人であることを証明する書類を提出して、相続人名義で再発行してもらう必要があります。
Q.相続手続き中に配当金の権利が確定した場合、どうなりますか?
A.相続手続き中であっても、配当金の権利は相続人に引き継がれます。株式の名義変更が完了次第、相続人が配当金を受け取ることができます。これを「未受領配当金」と呼びます。
Q.故人が受け取っていない過去の配当金(未受領配当金)も受け取れますか?
A.はい、受け取れます。ただし、一般的に配当金の支払い開始日から3~5年程度の除斥期間(時効)が定められていることが多いため、早めに株主名簿管理人へ確認・請求することが重要です。
Q.受け取った配当金は相続税の対象になりますか?
A.亡くなった日(相続開始日)より後に権利が確定した配当金は、相続財産ではなく、相続人の所得(配当所得)となり所得税の対象です。相続開始日時点で未払いの配当金は「未収配当金」として相続税の対象となります。