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故人のFXポジション、相続どうする?手続きと注意点をわかりやすく解説

2026-02-08
目次

ご家族が亡くなられ、遺品を整理しているとFX取引をしていたことがわかるケースは少なくありません。もし、まだ決済されていない通貨のペア、いわゆる「FXポジション」が残っていたら、どうすればいいのでしょうか?「手続きが複雑そう…」「大きな損失が出たらどうしよう…」と不安に思いますよね。この記事では、FXポジションを相続する際の手続きの流れから、相続税の計算方法、そして知っておかないと損をしてしまう可能性のある注意点まで、一つひとつ丁寧に解説していきます。ご安心ください、この記事を読めば、落ち着いて対処できるようになりますよ。

FXポジションの相続、基本的なルール

まず、FXポジションの相続で最も大切な基本ルールからご説明しますね。実は、FXのポジションは株式などとは少し違い、そのままの形で相続することはできないんです。

FX口座は凍結され、ポジションは強制決済される

ご家族(被相続人)が亡くなったことを相続人がFX会社に連絡した時点で、その方のFX口座は直ちに凍結されます。これにより、誰もその口座で新しい取引をしたり、既存のポジションを操作したりすることはできなくなります。そして、相続手続きが進む中で、FX会社が適切なタイミングで保有しているすべてのポジションを強制的に決済します。つまり、相続人が「このドルはもう少し上がりそうだから持っておこう」といった判断をすることはできない、ということですね。

相続するのは「決済後の現金」

強制決済された後、口座には何が残るでしょうか?それは、もともと入っていた証拠金と、決済によって確定した損益を合算した「日本円の現金」です。相続人が引き継ぐのは、この最終的に残った現金ということになります。多くの場合、相続人の代表者がそのFX会社に新しく口座を開設し、その口座へ資金を移管する形で手続きが進められます。

FXポジションの相続手続き【5ステップで解説】

では、実際にどのような流れで手続きを進めていけば良いのでしょうか。ここでは、一般的な5つのステップに分けて具体的に解説します。FX会社によって多少の違いはありますが、大まかな流れは同じですので、ぜひ参考にしてくださいね。

ステップ1:FX会社へ連絡

まず最初に行うことは、故人が口座を持っていたFX会社へ電話で連絡することです。口座名義人が亡くなったこと、そして相続手続きを開始したい旨を伝えます。この時、故人の氏名、生年月日、住所などを聞かれますので、すぐに答えられるように準備しておくとスムーズです。

ステップ2:必要書類の準備

FX会社への連絡後、相続手続きに必要な書類一式が郵送されてきます。同封されている案内に従って、書類に記入するとともに、ご自身で取得する必要がある公的書類を準備しましょう。一般的に必要となる書類は以下の通りです。

書類名 取得場所
被相続人(故人)の出生から死亡までの戸籍謄本 故人の本籍地の役所
相続人全員の戸籍謄本 各相続人の本籍地の役所
相続人全員の印鑑登録証明書 各相続人の住民票がある役所(発行後3ヶ月以内など有効期限に注意)
遺産分割協議書(遺言書がない場合) 相続人全員で作成・署名・捺印

戸籍謄本は、故人が生まれてから亡くなるまでの連続した履歴がわかるものが必要になります。本籍地を何度も変更している場合は、それぞれの役所で取得する必要があり、少し手間がかかることもあります。

ステップ3:書類の提出

FX会社から送られてきた「相続手続依頼書」などに必要事項を記入し、相続人全員で署名・実印を捺印します。そして、ステップ2で準備した戸籍謄本などの公的書類と一緒にFX会社へ返送します。

ステップ4:FX会社による決済と資金の移管

提出した書類に不備がなければ、FX会社側で手続きが進められます。この段階で、残っていたFXポジションが強制決済され、口座残高が確定します。その後、遺産分割協議書などの内容に従って、指定された相続人代表者の口座へ資金が移管(送金)されます。

ステップ5:手続き完了のお知らせ

資金の移管が完了すると、FX会社から「相続手続き完了のお知らせ」といった通知が届きます。これをもって、一連の相続手続きは完了となります。

相続税はどう計算する?FXポジションの評価方法

FXポジションは現金となって相続されますが、相続税を計算する際の「財産評価額」は、実際に受け取った金額と異なる場合があり、ここが非常に重要なポイントです。

評価の基準は「亡くなった日の終値」

相続税の計算で使う財産の評価額は、相続開始日(=被相続人が亡くなった日)の最終価格(終値)を基準に計算されます。実際にFX会社がポジションを決済するのは、相続手続きが進んでからなので、亡くなった日から数週間後、あるいは数ヶ月後になることもあります。この間に為替レートが大きく変動していても、相続税評価額はあくまで「亡くなった日」のレートで計算されるのです。

ポジションの損益評価

具体的な評価方法は、ポジションが利益(含み益)を持っていたか、損失(含み損)を抱えていたかによって変わります。

状況 相続税評価
含み益がある場合 証拠金に、亡くなった日の終値で計算した含み益を加えた額がプラスの財産として評価されます。
含み損がある場合 証拠金から、亡くなった日の終値で計算した含み損を差し引きます。もしマイナスになれば、その分は債務(マイナスの財産)として他の財産から控除できます。

スワップポイントも忘れずに

FX取引では、通貨間の金利差によって「スワップポイント」が発生します。この未決済ポジションに付随するスワップポイントも相続財産の一部です。プラスのスワップポイントが貯まっていれば財産に加算し、マイナススワップであれば債務として財産から差し引いて評価します。

FXポジション相続の【最大の注意点】

手続きや評価方法を理解した上で、次にFXポジションの相続における最大のリスクとも言える注意点についてお伝えします。ここを知らないと、思わぬ負担を強いられる可能性があります。

「評価額」と「実際の受取額」のズレ

先ほど説明した通り、相続税評価額は「亡くなった日のレート」で決まりますが、実際に相続人が受け取る金額は「強制決済された日のレート」で決まります。このタイムラグが大きな問題を生むことがあります。

例えば、亡くなった日には100万円の含み益があったポジションが、手続きに時間がかかり、決済された日には為替の急変で20万円の損失になってしまったとします。この場合、相続税は100万円の利益があったものとして計算されるため、高い相続税を払ったのに、実際には財産がマイナスになってしまった、という悲しい事態も起こり得るのです。これは逆のパターンもあり得ますが、この価格変動リスクは相続人側ではコントロールできないため、最大の注意点と言えます。

決済で出た利益は相続人の所得になる

もう一つの重要なポイントは、強制決済によって生じた損益は、亡くなった方の所得ではなく、財産を引き継いだ相続人の所得として扱われることです。具体的には「先物取引に係る雑所得等」に分類されます。
もし、決済によって利益が出た場合、その年の他の給与所得などとは別に、利益額が20万円を超えると相続人自身が確定申告を行い、所得税を納める必要があります。相続税とは別に税金がかかる可能性があることを覚えておきましょう。

故人が生前にできる対策とは?

ここまで読んで、残された家族に負担をかけたくない、と思われた方もいらっしゃるかもしれません。FX取引をされている方が、ご自身の相続に備えてできる対策をいくつかご紹介します。

家族に取引口座の情報を共有しておく

最も簡単で効果的な対策は、どのFX会社で取引しているかを家族に伝えておくことです。エンディングノートなどにIDや会社名を書き残しておくだけでも、いざという時に家族が慌てず、スムーズに手続きを始めることができます。

余裕のある資金で取引する

相続発生後の価格変動によって、証拠金が不足し「追証(おいしょう)」が発生するリスクもゼロではありません。日頃からレバレッジをかけすぎず、証拠金維持率に十分な余裕を持たせた取引を心がけることで、残された家族が予期せぬ入金を迫られる事態を防ぐことができます。

高齢になったらポジションを整理する

ご自身の年齢や健康状態を考え、相続が現実味を帯びてきたら、少しずつポジションを整理して現金化していくことも有効な対策です。複雑な財産をシンプルな形にしておくことは、家族の負担を大きく減らすことにつながります。

まとめ

今回は、FXポジションの相続手続きについて詳しく解説しました。最後に大切なポイントをまとめておきましょう。

  • FXポジションはそのまま相続できず、FX会社によって強制決済される。
  • 相続するのは、決済後に残った現金
  • 相続手続きには、戸籍謄本などの書類が必要で、時間がかかることがある。
  • 相続税の評価額は「亡くなった日の終値」で計算されるため、実際の受取額とズレるリスクがある。
  • 決済で出た利益は相続人の所得となり、確定申告が必要な場合がある。

FXポジションの相続は、特有のルールやリスクが伴います。もし手続きに不安を感じたり、相続税の計算でわからないことがあったりした場合は、無理せず税理士などの専門家に相談することをおすすめします。早めに対応することで、心労も少なく、スムーズに手続きを進めることができるでしょう。

参考文献

国税庁 No.1521 外国為替証拠金取引(FX)の課税関係

FXポジション相続のよくある質問まとめ

Q.FXポジションは相続できますか?

A.いいえ、FXポジションそのまま相続できず、FX会社によって強制決済されます。

Q.FXポジションの相続手続きはどのように進めればよいですか?

A.まず被相続人(亡くなった方)が利用していたFX会社に連絡し、相続が発生した旨を伝えます。その後、戸籍謄本などの必要書類を提出し、指定された相続人代表者の口座へ資金が移管(送金)されます。

Q.相続したFXポジションを放置するとどうなりますか?

A.放置すると為替レートの変動によりロスカットが発生し、大きな損失を被るリスクがあります。相続が判明したら、速やかにFX会社に連絡し手続きを進めることが重要です。

Q.相続時に利益が出ている場合(含み益)、税金はどうなりますか?

A.証拠金に、亡くなった日の終値で計算した含み益を加えた額がプラスの財産として評価されます。決済で出た利益は相続人の所得となり、確定申告が必要な場合がある。

Q.相続時に損失が出ている場合(含み損)はどうなりますか?

A.含み損の場合、証拠金から、亡くなった日の終値で計算した含み損を差し引きます。もしマイナスになれば、その分は債務(マイナスの財産)として他の財産から控除できます。

Q.亡くなった家族がFX取引をしていたか不明な場合はどうすればよいですか?

A.被相続人のPCやスマートフォン、郵便物、メールの履歴などを確認し、FX会社との取引の痕跡を探します。取引報告書などが見つかれば、そこに記載されているFX会社へ問い合わせてください。

事務所概要
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税理士 島本 雅史

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