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暦年課税と相続時精算課税の違いとは?あなたに向いている制度を解説

2026-01-24
目次

大切なご家族に財産を引き継ぐための生前贈与を考えたとき、「暦年課税」と「相続時精算課税」のどちらを選べばいいのか、迷ってしまう方はとても多いですよね。どちらの制度を選ぶかによって、将来負担する税金の金額が大きく変わってくる可能性があります。さらに、2024年からは税制改正によってルールが大きく変更されました。この記事では、それぞれの制度の仕組みやメリット、あなたに向いているのはどちらの制度なのかを、具体的な金額を交えながら優しくわかりやすく解説していきます。

暦年課税と相続時精算課税の基本的な仕組み

生前贈与を行う際の税金の計算方法には、大きく分けて暦年課税相続時精算課税の2種類があります。まずは、それぞれの基本的なルールについて確認していきましょう。

暦年課税とは?

暦年課税とは、1年間(1月1日から12月31日まで)にもらった財産の合計額が、基礎控除である110万円以下であれば贈与税がかからないという最も一般的な制度です。特別な手続きや届け出をしなくても、贈与を受ければ自動的にこの暦年課税が適用されます。110万円を超えた部分に対してのみ、10%から最高55%の累進課税という形式で贈与税が計算されます。年齢や関係性の制限はなく、誰から誰へ贈与しても利用できるのが特徴です。

相続時精算課税とは?

相続時精算課税とは、贈与する年の1月1日時点で60歳以上の父母や祖父母から、18歳以上の子どもや孫へ贈与する場合に選択できる特別な制度です。この制度を利用すると、累計で2,500万円までの特別控除枠が使え、その金額までは贈与税がかかりません。2,500万円を超えた分については、金額に関わらず一律20%の贈与税がかかります。ただし、財産をあげた人が亡くなった際、過去にこの制度で贈与した財産をすべて相続財産に足し戻して相続税を計算するという決まりがあります。名前の通り、相続の時にまとめて精算する制度となっています。

2つの制度の比較表

暦年課税と相続時精算課税の違いをわかりやすく2列表でまとめました。どちらの制度が自分に合っているか、比較してみてくださいね。

比較する項目 制度の内容
暦年課税の非課税枠 もらう人1人につき年間110万円まで
相続時精算課税の非課税枠 贈与する人ごとに累計2,500万円+年間110万円
暦年課税の対象者 年齢や関係性の制限なし(誰でも可能)
相続時精算課税の対象者 60歳以上の父母・祖父母から18歳以上の子・孫へ
暦年課税の申告手続き 年間110万円を超えた場合のみ申告が必要
相続時精算課税の申告手続き 制度を選択する初年度は必ず届出書と申告が必要

暦年課税を選ぶべき人と向いているケース

特別な手続きが不要で使いやすい暦年課税ですが、どのような人にとって有利になるのでしょうか。具体的なケースを見ていきましょう。

長期間かけてコツコツ贈与したい人

暦年課税の最大のメリットは、毎年110万円の非課税枠がリセットされることです。そのため、10年や20年といった長期間にわたって少しずつ財産を移転できる人にとても向いています。例えば、毎年110万円を10年間贈与し続ければ、無税で1,100万円もの財産を渡すことができます。早くから計画的に生前贈与を始められる年齢の方におすすめです。

子どもや孫など複数の人に贈与したい人

暦年課税の110万円の非課税枠は、「もらう人1人あたり」で計算されます。つまり、贈与する相手が多ければ多いほど、無税で渡せる金額の合計は大きくなります。子ども3人にそれぞれ毎年110万円ずつ贈与すれば、1年間で合計330万円の財産を減らすことができ、将来の相続税対策として非常に高い効果を発揮します。法定相続人ではないお孫さんやお嫁さんなどに贈与したい場合にもぴったりです。

相続時精算課税を選ぶべき人と向いているケース

一方で、相続時に精算が必要となる相続時精算課税は、どのような目的を持つ人に向いているのでしょうか。

まとまった資金を一度に援助したい人

マイホームの購入資金や起業の資金など、短期間で大きなお金を援助してあげたい場合は、相続時精算課税が適しています。暦年課税で一度に2,000万円を贈与すると多額の贈与税がかかってしまいますが、相続時精算課税の2,500万円の特別控除を利用すれば、贈与するタイミングでは税金がかからずにまとまったお金を渡すことができます。

将来値上がりする可能性が高い財産を渡したい人

相続時精算課税を利用して贈与した財産は、相続が発生した際、「贈与した時点の金額」で相続財産に足し戻されます。そのため、今後の開発で値上がりが予想される土地や、業績が伸びて株価が上がりそうな自社株など、将来価値が高くなる財産を贈与するのに向いています。贈与時の低い評価額で固定されるため、将来の相続税を節約する効果が期待できます。

収益を生む不動産を贈与したい人

毎月家賃収入が入ってくるアパートやマンションをお持ちの場合も、相続時精算課税が活躍します。収益不動産を早めに子どもへ贈与してしまえば、その後に入ってくる家賃収入はすべて子どもの財産になります。親の財産として蓄積され続けるのを防ぐことができるため、結果的に親の相続財産を増やさずに済むという大きなメリットがあります。

2024年からの税制改正で変わった重要なポイント

生前贈与を考える上で絶対に知っておかなければならないのが、2024年1月1日に施行された税制改正です。これにより、これまでの常識が大きく変わりました。

暦年課税の相続財産への加算が3年から7年に延長

暦年課税には、財産をあげた人が亡くなる直前に駆け込みで贈与しても、一定期間の贈与分は相続財産に足し戻されて相続税がかかるというルールがあります。これまでこの期間は「亡くなる前3年間」でしたが、改正により「亡くなる前7年間」へと段階的に延長されました。つまり、より早い段階から計画的に贈与を始めておかないと、せっかくの節税効果が薄れてしまうことになります。(ただし、延長された4年間分については合計100万円を控除できるという救済措置があります。)

相続時精算課税にも年110万円の基礎控除が新設

今回の改正で最も注目されているのが、相続時精算課税に年間110万円の基礎控除が新設されたことです。これにより、相続時精算課税を選んだ後でも、年間110万円以下の贈与であれば贈与税がかからず、申告も不要になりました。さらに素晴らしいことに、この110万円以下の部分は将来の相続財産に足し戻されることもありません。まとまったお金を贈与できるメリットを残しつつ、毎年コツコツ非課税で贈与することもできるようになったため、非常に使い勝手の良い制度に生まれ変わりました。

制度を利用する前に知っておきたい注意点

どちらの制度を選ぶにしても、後から「失敗した」と後悔しないために、事前に理解しておくべき注意点があります。

相続時精算課税を選ぶと暦年課税には戻せない

相続時精算課税は、税務署に届出書を提出して選択します。一度この制度を選択してしまうと、同じ人からの贈与については一生涯、暦年課税に戻すことはできません。今後どのような頻度や金額で財産を渡していくのか、長期的な視点でじっくり検討してから選択する必要があります。

贈与者が違えば2つの制度を併用できる

暦年課税と相続時精算課税は、財産をあげる人(贈与者)ごとに選ぶことができます。例えば、「お父さんからの贈与はまとまった金額なので相続時精算課税を選ぶけれど、お母さんからの贈与は毎年少しずつなので暦年課税のままにする」といったように、贈与者が違えば2つの制度を併用することが可能です。ご家族の資産状況に合わせて柔軟に使い分けましょう。

贈与した土地には小規模宅地等の特例が使えない

相続税には、亡くなった方が住んでいた土地や事業をしていた土地を相続する際、その土地の評価額を最大80%も減額できる「小規模宅地等の特例」という非常に有利な制度があります。しかし、生前贈与で受け取った土地には、暦年課税であっても相続時精算課税であっても、この特例を使うことができません。ご自宅の土地などを贈与してしまうと、かえって税負担が重くなってしまうケースもあるため、不動産の贈与は特に慎重に判断してください。

まとめ

暦年課税と相続時精算課税は、それぞれに違った魅力と注意点があります。長期間かけて多くの人に財産を分けたい方は暦年課税が向いていますし、まとまった資金の援助や値上がりが予想される財産を渡したい方は相続時精算課税が適しています。さらに2024年の税制改正により、相続時精算課税にも年間110万円の非課税枠ができたことで、選択肢の幅が大きく広がりました。ご自身の財産額やご家族の状況、いつまでにどれくらいの財産を渡したいかを見つめ直し、後悔のない最適な制度を選んでみてくださいね。

参考文献

国税庁:No.4103 相続時精算課税の選択

国税庁:No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

国税庁:No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

暦年課税と相続時精算課税のよくある質問まとめ

Q.暦年課税と相続時精算課税は併用できますか?

A.同じ贈与者(財産をあげる人)からは併用できませんが、贈与者が違えば併用可能です。例えば、父親からの贈与には相続時精算課税を選び、母親からの贈与は暦年課税のままにするといった使い分けができます。

Q.相続時精算課税を選んだ後、暦年課税に戻すことはできますか?

A.一度相続時精算課税を選択すると、その贈与者からの贈与については一生涯、暦年課税に戻すことはできません。将来の贈与計画をよく考えた上で慎重に選択する必要があります。

Q.孫への贈与はどちらの制度が有利ですか?

A.孫が法定相続人でない場合、亡くなる前7年以内の贈与であっても原則として相続財産に足し戻されないため、暦年課税を使って毎年110万円以内で贈与するのが有利になるケースが多いです。

Q.2024年の税制改正で暦年課税はどう変わりましたか?

A.財産をあげた人が亡くなる前に行われた贈与が相続財産に加算される期間が、これまでの3年間から7年間へと段階的に延長されました。そのため、より早い段階から生前贈与を始めることが重要になりました。

Q.相続時精算課税の新しい110万円の基礎控除とは何ですか?

A.2024年の改正により、相続時精算課税を選んでいても年間110万円以下の贈与であれば無税となり、申告も不要になりました。さらに、この110万円以下の部分は将来の相続財産にも加算されないという大きなメリットがあります。

Q.不動産を贈与する際に気をつけることはありますか?

A.生前贈与で取得した土地には、相続税の計算時に土地の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」が使えなくなります。ご自宅の土地などを贈与する場合は税負担が増える可能性があるため注意が必要です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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