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有価証券の贈与と相続の違いは?NISA・一般口座の株式相続を徹底解説

2024-12-21
目次

ご家族に大切な資産である有価証券をどう引き継ぐか、お悩みではありませんか?「生前に渡す『贈与』と、亡くなった後に引き継ぐ『相続』では、何が違うの?」「一般口座とNISA口座で、株式の相続方法に違いはあるの?」といった疑問は多いものです。特にNISA口座の扱いは少し特殊で、知らないと損をしてしまう可能性も。この記事では、有価証券の贈与、そして一般口座・NISA口座それぞれの株式相続について、税金や手続きの違いを優しく解説していきます。

有価証券の「贈与」と「相続」の基本的な違い

まず、有価証券を誰かに引き継ぐ方法として「贈与」と「相続」がありますが、この二つは根本的に異なります。一番大きな違いは、資産を渡すタイミングです。贈与は生きている間に、相続は亡くなった後に行われます。それに伴い、かかる税金の種類やルールも変わってきます。

贈与と相続にかかる税金と基礎控除額

資産を無償で受け取った場合、基本的には税金がかかります。贈与の場合は「贈与税」、相続の場合は「相続税」の対象となります。それぞれに「この金額までなら税金はかかりませんよ」という非課税の枠(基礎控除)が設けられていますが、その金額が大きく異なります。

種類 内容
贈与税 1年間(1月1日~12月31日)に贈与された財産の合計額が110万円を超えた場合にかかります。これは「暦年課税」という制度の基礎控除額です。
相続税 亡くなった方の遺産総額から基礎控除額を引いた金額にかかります。基礎控除額は「3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)」で計算されます。

例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の合計3人いる場合、相続税の基礎控除額は3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円となります。贈与税の基礎控除額と比べると、非常に大きいことがわかりますね。

有価証券の贈与とは?

有価証券の贈与とは、株式や投資信託などを保有している人が、生きている間に無償で別の人に譲り渡すことを指します。贈与する人(贈与者)と受け取る人(受贈者)の間で「あげます」「もらいます」という合意(贈与契約)があれば成立します。その後、証券会社で名義変更の手続きを行うことで、有価証券の所有権が正式に移ります。

有価証券の相続とは?

有価証券の相続とは、保有していた方が亡くなった(被相続人)場合に、その有価証券を配偶者や子供などの相続人が引き継ぐことをいいます。誰がどの有価証券を相続するかは、遺言書があればその内容に従い、なければ相続人全員での話し合い(遺産分割協議)によって決められます。

有価証券の「贈与」について知っておきたいこと

生前に有価証券を贈与する場合、特に注意したいのがNISA口座の扱いです。NISA口座は利益が非課税になるお得な制度ですが、そのメリットをそのまま引き継ぐことはできません。

NISA口座の株式は贈与できる?

結論から言うと、NISA口座に入っている株式を、NISA口座のまま贈与することはできません。NISAの非課税メリットは、あくまで口座名義人本人一代限りのものだからです。
もしNISA口座内の株式を贈与したい場合は、一度、贈与者の課税口座(特定口座や一般口座)に株式を移し替える(払い出す)必要があります。そして、その課税口座から受贈者の課税口座へ移管手続きを行う流れになります。
このとき注意したいのが、課税口座に移した時点での時価が、その株式の新しい「取得価額」になるという点です。つまり、贈与後に株価が値上がりして売却した場合、その値上がり益には通常通り約20%の税金がかかります。

生前贈与のメリット・デメリット

有価証券の生前贈与には、良い点と注意すべき点があります。
メリットとしては、ご自身の意思で「誰に」「いつ」「何を」渡すかを決められる点です。また、将来の相続財産を前もって減らしておくことで、相続税の負担を軽減する対策にもなり得ます。
一方でデメリットは、年間110万円の基礎控除を超えると贈与税がかかる点です。また、相続が開始する前の一定期間内(現在は3年、法改正により段階的に7年に延長)に行われた贈与は、相続財産に持ち戻して相続税を計算する「生前贈与加算」というルールがあるため、注意が必要です。

一般口座の株式を「相続」する場合

次に、亡くなった方が一般口座や特定口座で保有していた株式を相続するケースを見ていきましょう。手続きの流れや税金の計算方法がポイントになります。

相続税評価額の計算方法

相続税を計算するためには、まず株式の価値(評価額)を決めなければなりません。上場株式は日々価格が変動するため、相続人の負担が不当に重くならないよう、以下の4つの価格の中から最も低い価格を選んで評価することができます。

評価の基準日 価格
① 死亡日の終値 亡くなったその日の取引所の最終価格。
② 死亡した月の終値の月平均額 亡くなった月の、毎日の終値を平均した価格。
③ 死亡した月の前月の終値の月平均額 亡くなった月の、前の月の毎日の終値を平均した価格。
④ 死亡した月の前々月の終値の月平均額 亡くなった月の、2ヶ月前の毎日の終値を平均した価格。

株価が下落傾向にある時期に相続が発生した場合などは、過去の月の平均額を選ぶことで、相続税評価額を抑えられる可能性があります。

相続した株式の取得価額はどうなる?

相続した株式を将来売却する際、利益(譲渡所得)を計算するために必要になるのが「取得価額」です。一般口座や特定口座の株式を相続した場合、亡くなった方(被相続人)がその株式を購入したときの価格をそのまま引き継ぎます。
もし被相続人がいつ、いくらで買ったか分からない場合は、売却した金額の5%を「概算取得費」として計算することも認められています。

NISA口座の株式を「相続」する場合

NISA口座で保有していた株式の相続は、一般口座の場合と大きく異なる点があります。ここが最も重要なポイントですので、しっかり確認しましょう。

NISA口座の非課税メリットは引き継げない

贈与の時と同じく、NISA口座のまま相続することはできません。被相続人が亡くなった時点でNISA口座はその役割を終え、非課税の恩恵も終了します。
相続が発生すると、NISA口座内の株式は被相続人の課税口座(特定口座または一般口座)に払い出されます。その後、相続人が自身で開設した課税口座へと移管手続きを進めることになります。相続人のNISA口座に直接移すことはできないので、この点はしっかり覚えておきましょう。

相続時の取得価額の考え方

ここが一般口座の相続との最大の違いです。NISA口座の株式を相続した場合、相続人が引き継ぐ取得価額は、被相続人が購入した価格ではなく、被相続人が亡くなった日の終値になります。
これは大きなメリットとなる可能性があります。例えば、被相続人が100万円で買った株が、亡くなった日に150万円になっていたとします。この場合、相続人の取得価額は150万円となります。もし相続後すぐに150万円で売却しても、利益は0円となり、譲渡所得税はかかりません。被相続人が生前に得ていた50万円の含み益は、実質的に非課税で引き継げることになるのです。

相続税の評価額は一般口座と同じ

取得価額のルールは特殊ですが、相続税を計算する際の評価額については、一般口座の株式と同じルールが適用されます。つまり、先ほど説明した4つの価格(死亡日の終値、死亡月・前月・前々月の月平均終値)の中から最も低いものを選んで申告することができます。

贈与・相続の違いを一覧で比較!

これまで解説してきた内容を、分かりやすく表にまとめてみました。それぞれの違いを整理してみましょう。

項目 有価証券の贈与
タイミング 生前
かかる税金 贈与税
基礎控除 年間110万円(暦年課税)
NISA口座の扱い NISA口座のままでは不可。課税口座への移管が必要。
取得価額の引継ぎ 受贈者が贈与時の時価で取得。
項目 一般口座の株式相続
タイミング 死後
かかる税金 相続税
基礎控除 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
NISA口座の扱い – (対象外)
取得価額の引継ぎ 被相続人の取得価額を引き継ぐ。
項目 NISA口座の株式相続
タイミング 死後
かかる税金 相続税
基礎控除 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
NISA口座の扱い NISA口座のままでは不可。課税口座への移管が必要。
取得価額の引継ぎ 死亡日の時価が新たな取得価額となる。

まとめ

有価証券の贈与と相続は、手続きや税金において大きな違いがあります。特に、一般口座とNISA口座の株式相続では、将来売却する際の税金に関わる「取得価額」のルールが全く異なるという点は、非常に重要です。
NISA口座の非課税メリットはあくまでも一代限りで、相続人がその恩恵を引き継ぐことはできません。しかし、相続時の取得価額が死亡日の時価になることで、結果的に含み益に対する所得税が非課税になるという別のメリットが生まれます。
生前に贈与するか、相続で引き継ぐか、またNISA口座をどう活用するかは、ご自身の資産状況やご家族の希望によって最適な方法が変わってきます。もし手続きや税金のことで不安な点があれば、税理士などの専門家に相談してみることをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.1463 株式等を譲渡したときの課税(申告分離課税)

国税庁 No.1464 譲渡した株式等の取得費

国税庁 株式等の譲渡所得等の申告のしかた(令和6年分)

有価証券の贈与・相続に関するよくある質問まとめ

Q.生前に株式を贈与する場合と、相続で渡す場合の違いは何ですか?

A.贈与は生前に行う意思表示で、年間110万円の基礎控除を超える部分に贈与税がかかります。一方、相続は亡くなった後に財産が引き継がれることで、相続税の対象となります。適用される税金の種類と非課税枠が異なります。

Q.株式を贈与または相続するときの評価額はどう決まりますか?

A.上場株式の場合、贈与日または亡くなった日の終値など4つの価格のうち、最も低い価格で評価されます。これにより、税負担を抑えられる可能性があります。

Q.NISA口座の株式は相続できますか?

A.はい、相続財産として相続できます。ただし、NISAの非課税メリットは引き継げず、相続人は自身の課税口座(一般口座または特定口座)に株式を移管することになります。

Q.相続したNISA口座の株式を売却したら税金はかかりますか?

A.はい、かかります。相続人が自身の課税口座に移した後に売却して利益が出た場合、通常の株式売却と同様に約20%の譲渡所得税が課税されます。

Q.一般口座とNISA口座の株式で相続手続きに違いはありますか?

A.金融機関での手続き自体に大きな違いはありません。ただし、NISA口座の株式は非課税のまま引き継ぐことはできず、相続人の課税口座に移管されるという点が大きな違いです。

Q.株式の贈与と相続、どちらが得ですか?

A.一概には言えません。資産全体の状況、将来の株価、贈与税と相続税の税率などを総合的に考慮する必要があります。専門家へ相談することをおすすめします。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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