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未分割不動産所得の確定申告とは?遺産分割後の修正申告不要の解説

2025-11-08
目次

相続が発生し、遺産分割協議が長引いている間にも、賃貸アパートやマンションからは毎月家賃収入が入ってきますよね。このような「未分割遺産」から生じる不動産所得について、確定申告をどうすればいいのか迷ってしまう方はとても多いです。本記事では、未分割期間中の不動産所得の申告方法や、遺産分割が確定した後に修正申告が必要なのかどうかについて、具体的な金額を交えながら優しく分かりやすく解説していきます。

未分割遺産の不動産所得はどうなる?確定申告の基本ルール

遺産分割協議が終わっていない状態の賃貸不動産は、民法の規定により相続人全員の共有財産として扱われます。そのため、家賃収入も特定の誰かのものではなく、相続人全員で分かち合うことになります。

家賃収入は誰のもの?法定相続分で分けるのが原則

遺産が未分割の間、不動産から生じる家賃収入は法定相続分に応じて各相続人に帰属します。例えば、お父様が亡くなり、お母様と子ども2人(長男・長女)が相続人であるとします。このアパートから月額120万円(年間1,440万円)の家賃収入がある場合、法定相続分(配偶者2分の1、子ども各4分の1)で計算すると、それぞれの不動産収入は以下の表のようになります。

相続人(法定相続分) 年間の不動産収入の目安
お母様(2分の1) 720万円
長男(4分の1) 360万円
長女(4分の1) 360万円

このように、実際に口座へ入金されていなくても、それぞれの相続人が自身の取り分を不動産所得として確定申告しなければなりません。

不動産所得を計上するタイミングと計算方法

家賃収入を計上する時期は、原則として賃貸借契約書に定められた「支払日」となります。たとえば「当月分の家賃は前月末日までに支払う」という契約であれば、その期日が来た時点で収入として計上します。まだ入居者から支払われていない未収家賃であっても、期日が到来していれば収入に計上する必要があるのでご注意ください。

青色申告や経費の取り扱いに関する注意点

亡くなったお父様が青色申告をしていたとしても、その青色申告者の地位を自動的に引き継ぐことはできません。相続人が青色申告の特別控除(最大65万円など)を受けたい場合は、新たに税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。また、固定資産税や修繕費などの必要経費についても、家賃収入と同様に法定相続分で按分して申告するのが基本です。

遺産分割が確定!過去の確定申告はどうなるの?

長い話し合いの末、ようやく遺産分割協議が成立し、長男がアパートを単独で相続することに決まったとします。このとき「過去の家賃もすべて長男のものになるから、申告をやり直さなきゃいけないの?」と疑問に思うかもしれません。

分割確定後も過去の修正申告は不要です

結論からお伝えすると、遺産分割が確定したことを理由に、未分割期間中の過去の確定申告を修正申告することはできません。民法上、遺産分割の効果は相続開始時に遡るとされていますが、家賃のような利益は遺産そのものではなく、日々発生する新たな財産とみなされます。税務上も、分割成立前の所得は各相続人に帰属したまま確定するため、更正の請求や修正申告を行う必要はありません。

確定した日以降の家賃収入の取り扱い

遺産分割協議が完了した日以降に発生する家賃収入については、確定した所有者(この場合は長男)が全額を自身の不動産所得として申告することになります。月の中途で遺産分割が成立した場合は、その日を境にして日割りで計算を行うか、実務上はキリの良い月末などで区切って申告を切り替えることが多いです。

遺言書がある場合や相続放棄をした人がいる場合

相続の状況によっては、法定相続分で分けるという原則に当てはまらないケースもあります。ここでは代表的な2つのケースを見ていきましょう。

遺言書で不動産の相続人が決まっているケース

亡くなった方が「アパートは長男に相続させる」という遺言書を遺していた場合、相続開始の時点からその不動産は長男のものとして扱われます。したがって、そもそも未分割という状態にはならず、亡くなった日以降の家賃収入はすべて長男の不動産所得となり、長男だけが確定申告を行います。

相続放棄をした人の不動産所得の取り扱い

もし次男が相続放棄をした場合、次男は「初めから相続人ではなかった」ものとして扱われます。そのため、次男には未分割期間中の家賃収入を受け取る権利がなく、確定申告をする必要もありません。次男の法定相続分は他の相続人に移るため、残された相続人の割合で家賃収入を按分して申告します。

未分割期間中の不動産所得を申告する際の実務上の工夫

法律や税務の原則は法定相続分での按分ですが、実際に毎年全員で経費や収入を細かく計算して申告するのは大変な手間がかかります。

遺産分割協議で家賃の帰属先を決める方法

実務上は、遺産分割協議の中で「未分割期間中の家賃収入はすべて長男が取得する」と合意することがよくあります。ただし、税務上はあくまで法定相続分でいったん各人に帰属したものを長男に渡したとみなされるため、そのままでは相続人間での贈与とみなされ、贈与税がかかってしまうリスクがあります。

代償分割を活用して贈与税のリスクを防ぐ

贈与税のリスクを防ぐためには、家賃収入の精算を「代償分割」として遺産分割協議書に明記する方法が有効です。「長男が家賃を全額取得する代わりに、お母様と長女には別の預貯金から多く配分する」といった形で調整すれば、贈与税の対象となることを避けることができます。

よくある疑問:被相続人が亡くなる前の家賃はどうする?

不動産所得の計算において、亡くなった日を境にして「誰の所得になるか」をしっかりと区別することが大切です。

亡くなる前の家賃は準確定申告の対象です

被相続人が亡くなる前日までに発生した家賃収入は、被相続人自身の所得となります。これについては、相続人が代わりに準確定申告を行わなければなりません。準確定申告の期限は、相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月以内と短いため、早めの準備が必要です。

相続開始日に支払日を迎えている未収家賃の扱い

たとえば、家賃の支払期日が毎月末日で、お父様が10月15日に亡くなったとします。この場合、9月末日が支払期日だった9月分の未収家賃は「亡くなる前に発生した収入」として準確定申告に含めるとともに、相続財産として相続税の対象にもなります。10月分以降の家賃が未分割期間の所得として扱われます。

まとめ

未分割遺産から生じる不動産所得は、遺産分割が完了するまでの間、各相続人が法定相続分に応じて確定申告をしなければなりません。そして最も重要なポイントは、遺産分割が確定した後であっても、過去の確定申告を修正申告する必要はないということです。確定日以降の家賃から、新たな所有者が全額を申告するように切り替わります。遺産分割協議書の書き方一つで贈与税のリスクを回避できるなど、税務上の落とし穴もありますので、迷ったときは専門家への相談も検討してみてください。

参考文献

国税庁 No.1376 不動産所得の収入計上時期

国税庁 No.6602 相続で事業を引き継いだ場合の納税義務について

未分割の不動産所得に関するよくある質問まとめ

Q.未分割遺産の不動産所得は誰が確定申告しますか?

A.遺産分割が確定するまでの間は、各相続人が法定相続分に応じて不動産所得を按分し、それぞれが確定申告を行うのが原則です。

Q.遺産分割が完了した後、過去の不動産所得について修正申告は必要ですか?

A.遺産分割が確定しても、未分割期間中の所得の帰属には影響しないため、過去にさかのぼって修正申告や更正の請求を行う必要はありません。

Q.まだ実際に家賃を受け取っていなくても確定申告は必要ですか?

A.はい、必要です。家賃収入は口座への入金状況に関わらず、賃貸借契約で定められた支払日が到来した時点で収入として計上しなければなりません。

Q.亡くなった方が青色申告をしていた場合、自動的に引き継げますか?

A.自動的には引き継げません。相続人が青色申告の適用を受けたい場合は、新たに税務署へ青色申告承認申請書を提出する必要があります。

Q.相続放棄をした人は未分割期間中の不動産所得を申告する必要がありますか?

A.相続放棄をした人は初めから相続人でなかったとみなされるため、不動産所得を受け取る権利はなく、確定申告をする必要もありません。

Q.被相続人が亡くなる前の家賃収入はどう扱えばよいですか?

A.亡くなる前日までに発生した家賃収入は被相続人の所得となるため、相続人が代わりに、相続を知った日の翌日から4ヶ月以内に準確定申告を行う必要があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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