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未収家賃に相続税はかかる?課税される・されないケースの違い

2026-01-09
目次

ご家族が残してくれたアパートやマンションなどの賃貸物件。ありがたい資産ですが、もし家賃を滞納している入居者がいたら…。「この未収家賃って、相続財産になるの?」「もしかして相続税がかかるの?」と不安になりますよね。実は、未収家賃は相続税の課税対象になる場合とならない場合があるんです。その違いを知らないと、思わぬ税金を支払うことになるかもしれません。この記事では、未収家賃と相続税の関係について、具体例を交えながら優しく解説していきますね。

未収家賃が相続税の課税対象になる理由

まず大切なポイントとして、未収家賃も相続財産の一部になる可能性がある、ということを知っておきましょう。現金や預貯金、不動産だけでなく、故人が持っていた「お金を受け取る権利」も財産とみなされるからです。未収家賃は、まさしく「滞納されている家賃を受け取る権利(債権)」なので、相続財産に含まれ、相続税の課税対象となるのです。これは国税庁が定める財産の評価ルールにも明記されています。

相続税の課税対象となる「未収家賃」の定義

ただし、全ての未払い家賃が対象になるわけではありません。相続税の課税対象となる「未収家賃」には、次の2つの条件を両方満たす必要があります。

  1. 相続開始日(故人が亡くなった日)までに、支払期日が来ていること
  2. 相続開始日時点で、その家賃がまだ支払われていないこと

この2つの条件がそろって初めて、相続財産として計上する必要が出てきます。つまり、一番のポイントは「支払期日」がいつか、ということなんです。

回収できるかどうかにかかわらず課税対象に

ここで少し注意したいのが、未収家賃は「実際に回収できるかどうか」にかかわらず、原則として課税対象になるという点です。例えば、入居者と連絡が取れず、回収が難しい状況であっても、税金の計算上は財産として計上しなければなりません。これは、相続人にとって「手元にお金はないのに、税金の負担だけが増えてしまう」という厳しい状況につながる可能性があるので、しっかり覚えておきましょう。

未収家賃の相続税評価額は?

では、未収家賃はいくらの財産として評価されるのでしょうか。これはとてもシンプルで、原則として「滞納されている家賃の合計額」がそのまま評価額となります。例えば、月10万円の家賃が3ヶ月分滞納されていれば、10万円 × 3ヶ月 = 30万円が相続財産に加算されることになります。

支払い期日がカギ!未収家賃になる・ならないケース

未収家賃に相続税がかかるかどうかは、賃貸借契約書に書かれている「支払期日」と「故人が亡くなった日(相続開始日)」の関係で決まります。家賃の支払い方法には大きく分けて「後家賃」と「前家賃」の2つのパターンがあるので、それぞれ見ていきましょう。

【後家賃方式】当月分を当月末に支払う契約の場合

「後家賃」は、例えば「10月分の家賃は10月31日までに支払う」という契約です。この場合、相続が10月16日に発生したと仮定して考えてみましょう。

状況 相続税の扱い
9月分の家賃(支払期日:9月30日)が未払い 支払期日が相続開始日より前なので未収家賃として課税対象になります。
10月分の家賃(支払期日:10月31日) 支払期日が相続開始日より後なので、未収家賃にはならず課税対象外です。

このケースでは、亡くなった10月分の家賃は、支払期日がまだ来ていないため相続財産には含まれません。

【前家賃方式】翌月分を当月末に支払う契約の場合

「前家賃」は、例えば「11月分の家賃は10月31日までに支払う」という、より一般的な契約です。同じく、相続が10月16日に発生したと仮定します。

状況 相続税の扱い
10月分の家賃(支払期日:9月30日)が未払い 支払期日が相続開始日より前なので未収家賃として課税対象になります。
11月分の家賃(支払期日:10月31日) 支払期日が相続開始日より後なので、未収家賃にはならず課税対象外です。

どちらの方式でも、相続開始日時点で支払期日が到来しているかどうかが判断の分かれ目になる、ということがお分かりいただけたでしょうか。

相続開始日以降に発生する家賃はどうなる?

故人が亡くなった後、つまり相続開始日の翌日以降に支払期日が到来する家賃は、相続財産にはなりません。これは、その賃貸物件を相続した相続人の「不動産所得」となります。したがって、相続税ではなく、相続人が翌年に確定申告で納める所得税の対象となりますので、混同しないようにしましょう。

相続税がかからない!注意すべき2つのポイント

ここまで未収家賃が課税対象になるケースを見てきましたが、逆に対象にならないケースや、勘違いしやすいポイントについて整理しておきましょう。

ポイント1:相続発生時に支払期日が来ていない家賃

繰り返しになりますが、これが最も重要なポイントです。相続開始日までに支払期日が到来していない家賃は、相続税の課税対象にはなりません。例えば、10月16日に亡くなった場合、10月1日から15日までの分の家賃を日割りで計算して相続財産に加える、といった必要は一切ありません。あくまで「支払期日が到来したか否か」だけで判断します。

ポイント2:前もって受け取った家賃(前受家賃)は債務控除できない

未収家賃とは逆のケースで、例えば「来月分の家賃を今月中に前もって受け取っていた」場合、これを「前受家賃」といいます。この前受家賃を、故人が負っていた借金(債務)と同じように考えて、相続財産全体から差し引く「債務控除」ができるのでは?と思うかもしれません。しかし、原則として前受家賃は債務控除の対象にはなりません。なぜなら、賃貸契約は相続人が引き継ぐため、受け取った家賃を入居者に返す義務はないからです。これは間違いやすいポイントなので注意してくださいね。

未収家賃が相続税額に与える影響【計算シミュレーション】

それでは、実際に未収家賃があると相続税額はどのくらい変わるのでしょうか。簡単なモデルケースでシミュレーションしてみましょう。

前提条件

以下の条件で計算します。

  • 遺産総額:2億円
  • 相続人:妻、子ども2人(計3人)
  • 法定相続分で分割
  • 基礎控除額:3,000万円+(600万円×3人)=4,800万円

未収家賃がない場合の相続税

まず、未収家賃が全くない場合の相続税の総額を計算します。

課税遺産総額:2億円 – 4,800万円 = 1億5,200万円
この課税遺産総額を法定相続分で分けると、妻が7,600万円、子どもが一人あたり3,800万円となります。これをもとに相続税の総額を計算すると、約2,700万円になります。(実際には、ここから配偶者の税額軽減などの控除が適用されます)

400万円の未収家賃があった場合の相続税

次に、遺産のなかに400万円の未収家賃が見つかった場合です。遺産総額は2億400万円になります。

課税遺産総額:2億400万円 – 4,800万円 = 1億5,600万円
同様に計算すると、相続税の総額は約2,800万円となります。

手元に現金がないのに納税負担が増えるリスク

シミュレーションの結果、400万円の未収家賃があるだけで、相続税の総額が100万円も増加しました。未収家賃はまだ回収できていない、つまり手元に現金がない状態です。それにもかかわらず、納税額だけが増えてしまうため、相続人が納税資金の準備に困ってしまうというリスクがあるのです。

回収不能な未収家賃の相続税対策

入居者が夜逃げしてしまったり、自己破産してしまったりと、どうしても家賃の回収が見込めないケースもあります。そんな未収家賃にまで相続税を払うのは納得がいかないですよね。そうした場合の対策も知っておきましょう。

【生前対策】貸倒損失として処理する

一番良いのは、故人が生前のうちに、回収不能な未収家賃を不動産所得の経費である「貸倒損失(かしだおれそんしつ)」として処理しておくことです。ただし、単に「滞納されている」というだけでは認められません。内容証明郵便で督促したり、裁判所に支払督促の申し立てをしたりと、回収努力を尽くしたにもかかわらず回収できない、という客観的な事実が必要になります。

【相続後の対策】回収不能を証明し評価額を減額する

相続が発生してしまった後でも、諦める必要はありません。その未収家賃が回収困難であることを税務署に客観的に証明できれば、相続財産としての評価額を減額、あるいはゼロとして申告することが認められる場合があります。証明のためには、入居者の破産手続き開始決定通知書や、弁護士に依頼しても回収できなかったという報告書などが有効な資料となります。

敷金を未収家賃に充当する

もう一つの方法として、入居時に預かっている敷金を未収家賃の支払いに充てる「充当」があります。これにより、少なくとも敷金の範囲内で未収額を減らすことができます。ただし、敷金を充当してしまうと、それを理由に賃貸契約を解除することが難しくなる場合もあるため、慎重な判断が必要です。

まとめ

今回は、未収家賃と相続税の関係について解説しました。最後にポイントをまとめておきますね。

  • 未収家賃は、相続開始日までに支払期日が到来していれば、原則として相続税の課税対象になります。
  • 支払期日が到来していない家賃は課税対象外で、日割り計算も不要です。
  • 回収が難しい未収家賃は、回収不能であることを証明できれば評価額を減額できる可能性があります。
  • 未収家賃は、手元に現金がないまま納税負担だけが増えるリスクがあるため、生前のうちからきちんと管理しておくことが大切です。

賃貸物件の相続では、未収家賃の他にも複雑な評価や手続きが必要になることが多くあります。もし少しでも判断に迷ったり、不安に感じたりした場合は、相続に詳しい税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4155 相続税の税率

国税庁 相続税の申告のしかた

未収家賃と相続税に関するよくある質問まとめ

Q. 未収家賃は相続税の対象になりますか?

A. はい、対象になります。被相続人が亡くなった時点で発生していた未収家賃は、お金を請求する権利(債権)として相続財産に含まれるため、相続税の課税対象となります。

Q. 相続税の対象になるのは、いつの時点の未収家賃ですか?

A. 相続開始日(被相続人が亡くなった日)までに支払期日が到来していた家賃が対象です。亡くなった日より後に発生した家賃は相続財産ではなく、不動産を相続した人の所得(所得税の対象)となります。

Q. 回収できない滞納家賃にも相続税がかかるのですか?

A. 原則は課税対象ですが、入居者に支払い能力がなく、回収できる見込みが全くないと証明できる場合は、評価額をゼロにできる可能性があります。

Q. 未収家賃の相続税評価額はどのように決まりますか?

A. 原則として、滞納されている家賃の額面金額そのものが評価額となります。ただし、訴訟費用など回収にかかる費用が見込まれる場合や、一部回収不能と判断される場合は、その金額を差し引いて評価します。

Q. 相続放棄をすれば、未収家賃にかかる相続税もなくなりますか?

A. はい、かかりません。相続放棄をすると、未収家賃というプラスの財産を受け取る権利も放棄することになるため、相続税の課税対象から外れます。

Q. 被相続人が亡くなった後に発生した家賃の扱いはどうなりますか?

A. 亡くなった後に発生した家賃は、相続財産には含まれません。その不動産を相続した相続人の「所得」となり、相続税ではなく所得税の対象となります。

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