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東京都の休眠法人は均等割が免除?預金だけでも届出は必要?

2025-11-24
目次

「会社を設立したけど、今は事業活動をしていない…」「預金口座が残っているだけの休眠法人だけど、税金はかかるの?」そんな疑問をお持ちではありませんか?特に東京都に会社があると、何もしなくても毎年法人住民税の均等割がかかってしまうことがあります。この記事では、東京都の休眠法人が均等割を免除してもらうための手続きや、預金だけある場合の注意点について、分かりやすく解説しますね。

休眠法人とは?廃業やみなし解散との違い

事業活動を止めている会社の選択肢として「休眠」がありますが、似たような言葉に「廃業」や「みなし解散」もあります。まずは、それぞれの言葉の意味と違いをしっかり理解しておきましょう。

休眠法人とは事業活動を停止している会社のこと

休眠法人とは、登記上は会社として存在しているものの、事業活動を完全に停止している状態の会社を指します。法的には活動を「お休み」しているだけなので、いつでも事業を再開できるのが大きな特徴です。将来的にまた事業を行う可能性がある場合や、解散・清算手続きの手間や費用をかけずに一旦様子を見たい場合に選ばれることが多い方法です。

廃業・解散との違い

廃業や解散は、会社そのものを法的に消滅させるための手続きです。株主総会での決議や、法務局での解散登記、清算手続きなど、時間も費用もかかります。一度廃業・解散してしまうと、同じ会社で事業を再開することはできません。もしまた事業を始めたくなったら、新たに会社を設立し直す必要があります。休眠はあくまで一時停止、廃業・解散は完全終了というイメージですね。

みなし解散とは

株式会社の場合、最後の登記から12年間、役員変更などの登記手続きを一切行わないと、法務局から「この会社はもう事業をやっていないのでは?」と判断され、職権によって解散させられてしまうことがあります。これを「みなし解散」と呼びます。休眠しているからといって何年も放置していると、意図せず会社が解散扱いになってしまう可能性があるので、注意が必要ですよ。

区分 状態
休眠 事業活動を停止しているが、法人は存続。届出をすればいつでも事業再開が可能。
廃業・解散 法的な手続きを経て法人を消滅させること。事業再開はできず、新規設立が必要。
みなし解散 12年間登記がない場合に強制的に解散させられること。3年以内なら会社継続の登記が可能。

東京都の休眠法人は均等割が免除される?

それでは本題の、東京都にある休眠法人の税金についてです。活動していなくても、税金の支払い義務はあるのでしょうか?

原則として均等割は課税される

法人が存在する限り、たとえ利益がゼロ(赤字)であっても、法人住民税の「均等割」という税金は原則として課税されます。これは、法人が所在する自治体の行政サービス(道路の整備やごみ処理など)の維持費を、広く負担してもらうためのもので、いわば「会費」のようなものです。そのため、会社の利益に関わらず、資本金等の額や従業員数に応じて一定額を納める必要があります。

東京都の均等割の金額

東京都23区内に事務所がある場合、最も規模の小さい会社(資本金1,000万円以下、従業員50人以下)でも、法人都民税の均等割は最低でも年間7万円(都民税分2万円+特別区民税分5万円)がかかります。何もしなければ、毎年この金額を払い続けなければなりません。

資本金等の額 都内の従業者数
1,000万円以下 50人以下の場合:70,000円
1,000万円超 1億円以下 50人以下の場合:180,000円

「休眠届」で均等割は免除される?

結論からお伝えすると、東京都では所定の手続きを行えば、均等割が免除される可能性が非常に高いです。これは法律で「免除する」と明確に定められているわけではなく、各自治体の裁量による運用なのですが、東京都では事業を完全に停止している実態が確認できれば、免除の取り扱いをしてくれることがほとんどです。何もしなければ毎年7万円かかるところ、簡単な届出だけで支払いが不要になるのは大きなメリットですよね。

預金だけある休眠法人の注意点

「事業はしていないけれど、会社の銀行口座に預金だけ残っている」というケースはとても多いと思います。この場合、均等割の免除に影響はあるのでしょうか。

預金利息も「所得」になる

休眠中でも、銀行口座に預金があればわずかながら利息がつきますよね。この預金利息は、税法上、法人の「所得」として扱われます。所得が発生するということは、厳密には法人税の申告義務が発生する可能性があるということです。

預金利息があっても均等割免除は認められる?

「利息という所得があるなら、事業活動をしているとみなされて均等割の免除が認められないのでは?」と心配になるかもしれません。ですが、ご安心ください。実務上は、預金利息が年間で数十円~数百円程度発生しているだけであれば、事業活動とはみなされず、休眠状態として認めてもらえることがほとんどです。ただし、数千万円以上の預金があって多額の利息収入がある場合や、預金以外の資産(有価証券や不動産など)から配当や家賃収入がある場合は、休眠とは認められず、均等割も課税される可能性が高くなります。

均等割を免除してもらうための手続き

それでは、実際に均等割を免除してもらうための具体的な手続きについて見ていきましょう。難しい手続きではないので、ご自身でも十分対応できますよ。

提出する書類

均等割の免除を受けるためには、以下の機関に「休眠します」という旨の届出を提出する必要があります。提出先は、国(税務署)と都道府県(都税事務所)の2か所です。

提出先 提出する主な書類
税務署(国税) 異動届出書、給与支払事務所等の廃止届出書
東京都都税事務所(地方税) 異動届出書

※東京都23区内に本店がある法人の場合、市区町村役場への届出は不要で、都税事務所への提出のみで手続きが完了します。

異動届出書の書き方のポイント

「異動届出書」には、「異動事項等」という欄があります。ここの「休業」の項目にチェックを入れるか、あるいは「その他」の欄に「休眠」と記載し、休眠を開始する年月日を記入します。届出書の備考欄などに「〇年〇月〇日より事業を休止し休眠状態となります」と一言添えておくと、より丁寧で分かりやすいでしょう。

手続きのタイミングと注意点

届出書を提出する際に、窓口で「休眠の届出を提出しますが、これで法人住民税の均等割は課税されなくなるという認識でよろしいでしょうか?」と口頭で確認しておくことを強くお勧めします。担当者の方から「はい、結構です」という言質をもらっておけば、後から「納税通知書が届いた」といったトラブルを防ぐことができ、安心です。

休眠法人のその他の義務とデメリット

無事に均等割が免除されても、法人格が存続している以上、いくつかの義務は残ります。これらを忘れていると思わぬペナルティを受ける可能性があるので、しっかり確認しておきましょう。

税務申告の義務

原則として、休眠中でも毎年の法人税の確定申告は必要です。特に、過去に赤字(繰越欠損金)があり、将来事業を再開した際にその赤字を黒字と相殺したいと考えている場合は重要です。青色申告の承認を受けている法人が2期連続で期限内に申告をしないと、その承認が取り消されてしまいます。青色申告のメリットを維持したい場合は、所得がゼロであっても必ず毎年申告を行いましょう。

役員変更登記の義務

株式会社の役員(取締役や監査役)には任期があります。一般的な株式会社では最長で10年です。休眠中であってもこの任期は経過していくため、任期が満了すれば役員が同じ人であっても「重任」の登記をする必要があります。この登記を怠ると、代表者個人に対して最大で100万円の過料(罰金のようなもの)が科される可能性がありますので、忘れないようにしましょう。

みなし解散のリスク

先ほども触れましたが、最後の登記から12年が経過すると「みなし解散」の対象となってしまいます。事業を継続する意思がある場合は、少なくとも役員の任期ごとに変更登記を行うことで、みなし解散を避けることができます。

まとめ

東京都に本店があり、預金口座だけが残っている休眠法人の場合、税務署と都税事務所に「異動届出書」を提出することで、法人住民税の均等割(年間最低7万円)が免除される可能性が高いです。わずかな預金利息がある程度では、この免除が受けられなくなる心配はほとんどありません。

ただし、均等割が免除されても、法人であることには変わりないため、以下の義務は残ります。

  • 毎年の税務申告(特に青色申告を維持したい場合)
  • 任期満了に伴う役員変更登記

これらの義務を怠ると、青色申告の承認が取り消されたり、過料が科されたりするリスクがあります。もし将来的に事業を再開する可能性が全くないのであれば、費用はかかりますが、正式に解散・清算手続きを行うことも選択肢の一つです。ご自身の会社の状況に合わせて、最適な方法を選んでくださいね。

参考文献

法人事業税・法人都民税|仕事と税金|東京都主税局

No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁

東京都の休眠会社と均等割りに関するよくある質問まとめ

Q.東京都で休眠届を出せば、法人住民税の均等割りは必ず免除されますか?

A.いいえ、休眠届を税務署に提出しただけでは免除されません。東京都の都税事務所へ別途「事業を行っていない旨の申告」を行うことで、免除される場合があります。

Q.東京都で均等割りの免除を受けるには、具体的にどのような手続きが必要ですか?

A.税務署へ「異動届出書(休眠届)」を提出後、東京都の管轄都税事務所へ「法人事業税・法人都民税の申告書(第6号様式)」で、事業年度が終了するごとに「事業を行っていない」旨の申告(均等割申告)が必要です。

Q.会社に預金が残っている状態でも、休眠会社として均等割りの免除は受けられますか?

A.はい、東京都では事業活動を行っていなければ、預金や僅かな預金利息がある状態でも均等割りの免除対象となる場合があります。ただし、最終的な判断は都税事務所が行います。

Q.休眠の届出をしたら、いつから均等割りは免除されるのですか?

A.都税事務所に「事業を行っていない旨の申告」を行い、それが受理された事業年度分から免除の対象となります。届出前の期間に遡って免除されることはありません。

Q.休眠中の会社は、毎年確定申告をする必要がありますか?

A.税務署に対しては、2期連続で期限内に申告がない場合、青色申告が取り消される可能性があります。都税事務所への均等割り免除申請のためにも、事業を行っていない旨の申告(第6号様式)を毎年提出することが推奨されます。

Q.休眠届を出すことのデメリットや注意点はありますか?

A.均等割りが免除されるメリットはありますが、事業を再開する際に手続きが必要になることや、2期連続で無申告だと青色申告が取り消されるデメリットがあります。また、12年間登記がないと「みなし解散」となる可能性もあります。

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