株式投資をされている方で、利益と損失を相殺する損益通算のために確定申告を考えている方も多いのではないでしょうか。しかし、確定申告をすることで、後期高齢者医療保険の窓口負担割合が上がってしまうのではないかと心配になりますよね。この記事では、株式の損益通算が医療費の負担割合に与える影響や、注意すべきポイントについて優しく分かりやすく解説していきます。
株式の譲渡損益通算と確定申告の基本
株式の損益通算とは何か
株式投資を行っていると、利益が出る口座と損失が出る口座に分かれることがありますよね。このとき、複数の口座の利益と損失を合算して税金の計算をすることを損益通算と呼びます。損益通算を行うことで、払いすぎた税金が戻ってくるという嬉しいメリットがあります。
確定申告が不要なケースと必要なケース
証券会社で源泉徴収ありの特定口座を選んでいる場合、税金の計算や納付は自動で行われるため、基本的には確定申告は不要です。これを申告不要制度と呼びます。しかし、複数の証券会社の口座間で損益通算をしたい場合や、今年の損失を翌年以降に繰り越したい場合には、ご自身で確定申告を行う必要があります。
損益通算や繰越控除のための確定申告のメリット
確定申告をして損益通算を行う最大のメリットは、税金の負担を減らせることです。たとえば、A口座で50万円の利益、B口座で30万円の損失があった場合、何もしなければ50万円に対して税金がかかりますが、確定申告で相殺すれば20万円に対してのみ税金がかかることになり、払いすぎた税金が還付されます。
後期高齢者医療制度の自己負担割合の決まり方
自己負担割合の判定基準
後期高齢者医療保険で病院の窓口で支払う割合は、皆様の前年の所得などをもとに毎年判定されます。負担割合は1割、2割、3割の3段階に分かれています。
| 自己負担割合 | 判定基準の目安 |
|---|---|
| 3割負担 | 住民税課税所得が145万円以上の方など |
| 2割負担 | 住民税課税所得が28万円以上145万円未満で、年金収入等の合計が単身200万円以上の方など |
| 1割負担 | 住民税課税所得が28万円未満の方や、上記に当てはまらない方 |
判定の対象となる所得とは
負担割合を判定する際のもとになる住民税課税所得には、年金や給与のほかに、確定申告をした株式の譲渡所得や配当所得も含まれます。申告不要制度を利用して確定申告をしなかった株式の所得は、この計算には含まれないという点がとても重要なポイントになります。
自己負担割合が切り替わるタイミング
自己負担割合は、毎年8月1日に新しい割合へと切り替わります。判定に使われるのは、前年1月から12月までの所得です。そのため、今年確定申告をした株式の所得は、その年の8月から翌年7月までの医療費の負担割合に影響を与えることになります。
株式の確定申告が自己負担割合に与える影響
利益が出ている口座を申告した場合のリスク
複数の口座を合算した結果、トータルで利益が出ている場合、その利益分が皆さまの所得に上乗せされます。その結果、住民税課税所得が増加し、負担割合が1割だった方が2割や3割に上がってしまうリスクがあります。税金が少し戻ってきても、毎月の医療費の負担が大きく増えてしまう可能性があるため注意が必要です。
損失のみを申告した場合の影響
利益よりも損失のほうが大きく、翌年に損失を繰り越すためだけに確定申告をする場合はどうでしょうか。この場合、株式による所得はゼロ円またはマイナスとなるため、基本的には所得金額は増えません。したがって、所得基準で判定される負担割合が直接上がることは少ないと言えます。
損益通算によって所得がゼロやマイナスになる場合
利益と損失を相殺して所得がゼロになった場合も、所得金額自体は増えません。しかし、後ほど詳しくご説明する収入による判定の際には、株式の売却代金そのものが計算に含まれてしまうという大きな落とし穴がありますので、油断は禁物です。
基準収入額適用申請と株式の売却収入
基準収入額適用申請とは
もし住民税課税所得が145万円以上になり、一度3割負担と判定されてしまっても、実際の収入が一定額未満であれば1割または2割負担に変更してもらえる制度があります。これを基準収入額適用申請と呼びます。
| 世帯の状況 | 収入判定基準(年間の収入額) |
|---|---|
| 単身世帯 | 383万円未満 |
| 2人以上の世帯 | 520万円未満 |
株式の売却代金が「収入」に含まれる落とし穴
ここが一番気をつけたいポイントです。確定申告をすると、株式の利益ではなく売却した金額そのものが上記の収入基準額の計算に含まれてしまいます。たとえ損益通算で大赤字になっていても、売却金額がプラスとして合算されるため、基準の383万円をあっという間に超えてしまい、3割負担が確定してしまうケースが多く見受けられます。
確定申告をしない「申告不要制度」の活用
このような事態を防ぐためには、源泉徴収ありの特定口座を利用し、あえて確定申告をしない申告不要制度を選ぶことが有効です。申告しなければ、どれだけ多額の株式を売却しても、その売却代金は医療保険の収入判定には一切含まれません。
確定申告をするべきかどうかの判断ポイント
税金の還付額と医療費の増加額の比較
確定申告をするかどうかは、損益通算によって戻ってくる税金の額と、医療費の窓口負担が増えることによるマイナスを比較して決めることが大切です。特に、病院に通う頻度が高い方は、医療費が2割や3割に上がることで、年間数十万円も負担が増えてしまうことがあります。
高額療養費制度や保険料への影響も考慮
負担割合だけでなく、医療費の上限を定める高額療養費制度の自己負担限度額や、毎月納める後期高齢者医療の所得割額も、確定申告によって所得が増えることで上がってしまう可能性があります。目先の税金還付だけでなく、全体のお財布への影響を総合的に考える必要があります。
申告不要を選択する際の手続きと注意点
源泉徴収ありの特定口座であれば、何もしなければ自動的に申告不要となります。もし一度確定申告をしてしまっても、住民税の納税通知書が送達される前であれば、申告方法を変更できる場合がありますので、お住まいの市区町村の窓口に早めに相談してみてくださいね。
まとめ
株式の損益通算のための確定申告は、税金が戻ってくるメリットがある一方で、後期高齢者医療保険の自己負担割合や保険料が上がってしまうリスクを伴います。とくに、基準収入額適用申請においては、損失が出ていても売却収入そのものが合算されてしまう点には十分な注意が必要です。ご自身の医療費の状況や戻ってくる税金額をしっかりと比較し、確定申告をするかどうかを慎重に判断してくださいね。
後期高齢者医療保険と株式の確定申告のよくある質問まとめ
Q.株式の譲渡損失だけを確定申告した場合、医療保険の負担割合は上がりますか?
A.損失のみの申告であれば所得金額は増えないため基本的には上がりません。ただし、課税所得145万円以上で収入判定を行う場合、売却収入が含まれてしまう点に注意が必要です。
Q.損益通算をして利益と損失を相殺し、所得がゼロになった場合はどうなりますか?
A.所得金額自体は増えないため所得による判定基準には影響しません。しかし基準収入額適用申請の際には株式の売却代金が収入としてカウントされ、負担割合に影響する場合があります。
Q.源泉徴収ありの特定口座であれば、確定申告しなくてもよいのですか?
A.はい、源泉徴収ありの特定口座であれば確定申告は不要です。申告しなければ医療保険の判定対象となる所得や収入には一切含まれませんのでご安心ください。
Q.確定申告をして医療費の窓口負担が2割から3割に上がる基準を教えてください。
A.住民税課税所得が145万円以上になると現役並み所得者として3割負担となります。確定申告により株式の利益が加算され、この基準を超えると負担割合が上がる可能性があります。
Q.株式の配当金だけを確定申告した場合も負担割合に影響はありますか?
A.総合課税や申告分離課税で配当金を確定申告した場合も所得金額に加算されるため、後期高齢者医療保険の自己負担割合や保険料が上がる可能性があります。
Q.確定申告をした後で、やはり申告不要に変更することはできますか?
A.住民税の納税通知書が送達される前であれば、申告不要制度を選択する手続きが可能な場合があります。期限に十分注意してお住まいの市区町村の窓口にご相談ください。