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森林簿で「その他常緑広葉樹/将来樹種スギ」?立木の相続税評価を解説

2025-12-14
目次

ご家族から山林を相続されたとき、「森林簿」を見てみたら「林況:その他常緑広葉樹、将来樹種:スギ」と書かれていて、どう評価すればいいの?と戸惑ってしまうことがありますよね。現状と将来の樹種が違う場合、どちらを基準にすれば良いのか、評価方法が複雑に感じられるかもしれません。この記事では、そんな少し特殊なケースの森林の立木の相続税評価について、基本から分かりやすく解説していきます。

まずは基本!森林の立木の相続税評価とは?

山林を相続した場合、土地である「山林」そのものと、そこに生えている「立木(りゅうぼく)」は、別々の財産として評価する必要があります。立木の価値は、樹木の種類や年齢、山の状態によって大きく変わるため、国が定めたルールに沿って正しく評価額を計算し、相続税を申告しなければなりません。ここでは、その評価の基本となる考え方を見ていきましょう。

なぜ立木を評価する必要があるの?

立木は、木材として売却できる可能性があるため、財産的な価値があると見なされます。特に、スギやヒノキといった商業的に価値の高い樹木で構成される森林は、高額な財産になることもあります。そのため、相続財産としてきちんと評価し、申告することが法律で義務付けられているんです。ただし、手入れされておらず、売却価値がほとんどないような山林の立木は、評価の対象外となる場合もあります。

評価の基本は「標準価額比準方式」

森林の立木の評価で主に使われるのが「標準価額比準方式」です。これは、国税庁が樹種や樹齢ごとに定めた「1ヘクタールあたりの標準価額」を基に、その森林の個別の状況(土地の肥沃度、木の密集度、搬出しやすさなど)を考慮して評価額を計算する方法です。この計算のために、「森林簿」という森林のカルテのような書類が非常に重要になります。

評価に必要な「森林簿」ってどんな書類?

「森林簿」は、市区町村や都道府県の林務担当部署で取得できる、森林の現況を記録した公的な台帳です。ここには、所在地や面積のほか、評価に不可欠な「樹種」「林齢(樹齢)」といった情報が記載されています。相続税評価を行う上での、最も基本的な資料となりますので、まずはこの森林簿を手に入れることから始めましょう。

林況「その他常緑広葉樹」将来樹種「スギ」の評価ポイント

今回のケースのように、森林簿に「林況:その他常緑広葉樹」「将来樹種:スギ」と記載されている場合、評価の判断に迷いますよね。これは、現状は広葉樹が主体の森林(天然林など)だけれど、将来的にスギの人工林として育てていく計画がある、という状態を示しています。相続税の評価は、原則として相続開始日(亡くなった日)の現況で判断します

評価の基準は「現在の樹種」

相続税評価では、将来の計画ではなく、相続開始時点での森林の状況が最も重要です。したがって、将来樹種がスギであっても、現況が「その他常緑広葉樹」であれば、原則として「その他常緑広葉樹」として評価を進めます。スギとして評価してしまうと、現状よりも高い評価額になってしまう可能性があるので注意が必要です。

「その他常緑広葉樹」はどう評価する?

スギやヒノキのような主要な樹種は、国税庁が「標準価額表」で価額を定めています。しかし、「その他常緑広葉樹」のような、いわゆる「雑木林」は、この標準価額表に記載がありません。このような「主要樹種以外の立木」は、売買実例価額や、林業の専門家(精通者)の意見価格などを参考にして評価することになります。

具体的な評価方法

主要樹種以外の立木の評価は、ケースバイケースの判断が求められます。

評価の考え方 具体的な内容
売買実例を参考にする 近隣で似たような雑木林が売買された事例があれば、その取引価額を参考にします。
精通者の意見を聞く 地域の森林組合や林業関係者など、その山の価値に詳しい専門家に意見を求め、評価額の参考にします。
財産価値がないと判断する場合 手入れがされておらず、木材としての市場価値がほとんどないと判断される場合は、評価額を0円とすることもあります。

実務上は、固定資産税評価額などを参考にしたり、税理士が地域の森林組合に照会したりして、評価額を決定していくことが多いです。

将来樹種「スギ」の扱いはどうなる?

では、森林簿に記載されている「将来樹種:スギ」は、評価に全く影響しないのでしょうか? 基本的には現況で評価しますが、状況によっては考慮すべき点もあります。

すでにスギが植えられている場合

「その他常緑広葉樹」が主体でも、将来のために既にスギの苗木が部分的に植えられている(植栽されている)ケースもあります。その場合、植えられているスギについては、別途評価が必要になる可能性があります。例えば、まだ若いスギ(幼齢木)であれば、その植栽にかかった費用(苗木代や植え付け費用)を基に評価することがあります。これは「費用価額方式」と呼ばれる方法です。

評価の際には現地の確認も重要

森林簿の情報はあくまで台帳上のデータです。そのため、可能であれば実際に現地を確認し、森林の状況を把握することも大切です。森林簿の記載と実際の状況が異なっていることもあり得ます。広葉樹林の中に、どの程度のスギが育っているのかを確認することで、より実態に即した適切な評価につながります。

森林の立木評価の具体的な計算手順

ここでは、仮に評価対象の森林が主要樹種(スギなど)だった場合の、一般的な「標準価額比準方式」の計算の流れをご紹介します。「その他常緑広葉樹」の場合は精通者意見価額などによりますが、基本的な評価の仕組みを知っておくことは大切です。

計算式を確認しよう

森林の主要な立木の評価額は、以下の計算式で算出されます。

立木の評価額 = 1haあたりの標準価額 × 森林の状況に応じた調整率 × 面積

この「森林の状況に応じた調整率」が少し複雑です。

調整率を決める3つの要素

調整率は、以下の3つの要素を掛け合わせて算出します。これらの情報は森林簿から読み取ることができます。

要素 内容
地味級(ちみきゅう) 土地の肥沃度(木の育ちやすさ)です。「上級(1.3)」「中級(1.0)」「下級(0.6)」などで判定します。
立木度(りゅうぼくど) 木の密集度合いです。「密(1.0)」「中庸(0.8)」「疎(0.6)」などで判定します。
地利級(ちりきゅう) 木材の搬出しやすさです。林道からの距離などで1級~12級に区分され、それぞれに割合が定められています。

これらの級を組み合わせて「総合指数」を求め、標準価額に乗じて評価額を計算します。

注意したい保安林の評価

相続した山林が「保安林」に指定されている場合、評価額を減額できる可能性があります。保安林は、水源の確保や災害防止などの公益的な目的のために、木の伐採が制限されている森林です。

保安林なら評価額が下がる?

はい、伐採が自由にできないということは、財産価値がその分制限されていると考えられます。そのため、通常の評価額から、制限の度合いに応じて一定の割合を控除(減額)することができます。

控除割合はどのくらい?

控除できる割合は、伐採の制限内容によって異なります。これは、都道府県の農林事務所などで取得できる「保安林台帳」で確認できます。

伐採の制限区分 控除割合
禁伐(一切の伐採が禁止) 80%
単木選伐 70%
択伐 50%
一部皆伐 30%

例えば、通常の評価額が100万円で、「禁伐」の指定がある保安林なら、100万円 × 80% = 80万円を控除でき、評価額は20万円となります。これは大きな減額ですので、必ず確認しましょう。

まとめ

今回は、森林簿で「林況:その他常緑広葉樹、将来樹種:スギ」と記載されている、少し特殊なケースの立木の相続税評価について解説しました。

ポイントは、相続税評価はあくまで「相続開始日の現況」で行うということです。したがって、将来樹種がスギでも、現況が「その他常緑広葉樹」であれば、それを基準に評価します。

「その他常緑広葉樹」のような主要樹種以外の立木は、標準価額表に記載がないため、売買実例や精通者意見価額を参考に評価額を決定します。この評価は専門的な判断が必要となるため、ご自身で判断に迷う場合は、相続に詳しい税理士などの専門家へ相談することをおすすめします。正確な評価を行い、適切な相続税申告をすることが大切です。

参考文献

財産評価基本通達 第2節 立竹木|国税庁

森林の相続税評価(林況と将来樹種が異なる場合)のよくある質問まとめ

Q. 森林簿の現在の樹種(林況)と将来の樹種が違う場合、相続税評価はどちらを基準にしますか?

A. 相続税の財産評価は、相続開始日(被相続人が亡くなった日)の現況で判断します。そのため、森林簿の「林況の樹種」である「その他常緑広葉樹」を基準に評価します。「将来樹種」は計画であり、現在の評価には直接影響しません。

Q. 林況が「その他常緑広葉樹」の場合、立木はどのように評価するのですか?

A. スギやヒノキのような主要樹種と異なり、「その他常緑広葉樹」のような雑木林は、固定資産税評価額に国税庁が定める一定の倍率を乗じて評価する方法(倍率方式)が一般的です。

Q. 将来樹種が「スギ」だと、評価額は上がりますか?

A. いいえ、原則として上がりません。あくまで相続開始時点の現況が「その他常緑広葉樹」であれば、その価値で評価します。将来スギを植える計画があるというだけでは、評価額に影響しません。

Q. 森林簿の記載が古く、実際の状況と違うようです。どうすればよいですか?

A. 森林簿はあくまで参考資料です。実際の状況と異なる場合は、現地調査を行い、現況に基づいて評価する必要があります。森林組合や林業の専門家に相談し、現況を正確に把握することが重要です。

Q. 「その他常緑広葉樹」の森林でも、評価が高くなるケースはありますか?

A. はい、あります。例えば、市街地近郊にあるなど宅地としての価値が見込まれる場合や、林道沿いでアクセスが良い場合などは、立木の価値とは別に土地(山林)自体の評価が高くなる可能性があります。

Q. 森林の相続税評価について、誰に相談すればよいですか?

A. 森林の評価は専門知識が必要です。相続税に詳しい税理士はもちろん、地域の森林組合や林業コンサルタントといった専門家に相談することをおすすめします。

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