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権利金の授受が慣行の地域とは?相続税評価での具体的な判断基準を解説

2025-10-26
目次

土地の貸し借りに関わる「権利金」。相続税の計算で重要になる「借地権」の評価ですが、「権利金の授受が慣行となっている地域」かどうかが大きなポイントになります。でも、その地域が具体的にどこなのか、どうやって判断すればいいのか、少し分かりにくいですよね。この記事では、その判断方法を具体的に、そして分かりやすく解説していきます。

そもそも権利金・借地権とは?

まず、基本からおさらいしましょう。土地を借りて建物を建てる際、地主さんに支払うお金には「地代」と「権利金」があります。この「権利金」を支払う慣行がある地域では、「借地権」という権利に財産的な価値があるとみなされます。

権利金とは?

権利金は、土地を借りる権利(借地権)を設定するための一時金です。礼金のようなもので、一度支払うと返ってこないのが一般的です。この権利金のやり取りがあるかどうかで、その土地の相続税評価が変わってくるんです。

借地権とは?

借地権は、建物の所有を目的として、地代を支払って他人の土地を利用する権利のことです。相続が発生した場合、この借地権も相続財産として評価され、相続税の課税対象になることがあります。

なぜ「権利金の慣行」が重要なのか?

相続税のルールでは、「借地権の取引慣行があると認められる地域以外の地域にある借地権の価額は評価しない」とされています。つまり、権利金の授受が慣行となっていない地域では、借地権は財産として評価されず、相続税がかからないのです。だからこそ、この「慣行があるかどうか」の判断がとても大切になります。

「権利金の授受が慣行となっている地域」の具体的な判断方法

「うちの近所では権利金なんて聞いたことがない」と感じていても、税務上の判断は個人の感覚とは異なります。実は、国税庁が公表している資料で明確に判断できるんです。

路線価図で確認する方法

まず確認したいのが「路線価図」です。路線価図には、道路に面する土地1平方メートルあたりの評価額(路線価)が記載されています。この路線価を示す数字の横に、AからGまでのアルファベット記号が付いているかどうかがポイントです。

路線価図の「借地権割合」を示す記号

路線価の数字の横にあるアルファベットは「借地権割合」を示しています。例えば「55E」と書かれていたら、路線価は55,000円で、借地権割合は50%(Eは50%を示す)ということです。このアルファベット記号がある地域は、「借地権の取引慣行があると認められる地域」と判断されます。逆に、数字しか書かれていない場合は、慣行がない地域となります。

記号 借地権割合
A 90%
B 80%
C 70%
D 60%
E 50%
F 40%
G 30%

評価倍率表で確認する方法

路線価が定められていない地域では、「評価倍率表」を使って土地の評価額を計算します。この評価倍率表にも「借地権割合」の欄があります。この欄に「50」などの数字が記載されていれば、それは借地権の取引慣行がある地域です。もし、この欄が「-(ハイフン)」や空欄になっていれば、取引慣行がない地域と判断できます。

借地権の取引慣行がないと判断される地域とは?

路線価図や評価倍率表で借地権割合が示されていない地域が、「借地権の取引慣行がない地域」です。このような地域では、土地を借りていても、その借地権は相続税の評価上「ゼロ」として扱われます。

評価されない借地権の具体例

例えば、地方の山林や農村部の一部など、土地の貸し借りで権利金を受け取る習慣が根付いていない地域が該当します。国税庁が公表する財産評価基準書で借地権割合が設定されていないエリアは、具体的に取引慣行がないと国が認めている場所と言えるでしょう。

注意点:「権利金を払っていない」=「慣行がない」ではない

ここで注意したいのは、「個人的に権利金を支払っていない」からといって、必ずしも「取引慣行がない」とは言えない点です。あくまで判断基準は、国税庁が公表している財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)に基づきます。たとえその地域で権利金の授受が実際には少なくても、借地権割合が設定されていれば、税務上は「慣行がある地域」として扱われてしまうのです。

借地権の価額はどうやって計算するの?

もし、お持ちの土地が「借地権の取引慣行がある地域」に該当した場合、借地権の価額を計算する必要があります。計算方法はとてもシンプルです。

借地権の評価額の計算式

借地権の評価額は、以下の計算式で求められます。
借地権の価額 = 自用地としての価額 × 借地権割合
「自用地としての価額」とは、その土地を更地として評価した金額のことです。これに、路線価図や評価倍率表で確認した借地権割合(30%〜90%)を掛け合わせます。

具体的な計算例

例えば、自用地としての評価額が5,000万円の土地で、路線価図に「C」と記載されていた場合を考えてみましょう。借地権割合「C」は70%なので、計算は以下のようになります。
5,000万円 × 70% = 3,500万円
この場合、借地権の価額は3,500万円として相続財産に計上することになります。

貸している側の土地(貸宅地)の評価は?

逆に、あなたが土地を貸している地主さんの場合、その土地(貸宅地)の評価額はどうなるのでしょうか。これも借地権の考え方とセットで理解しておくと便利です。

貸宅地の評価額の計算式

貸宅地の評価額は、自用地としての評価額から借地権の価額を差し引いて計算します。
貸宅地の価額 = 自用地としての価額 - 借地権の価額
これを言い換えると、以下のようになります。
貸宅地の価額 = 自用地としての価額 × (1 - 借地権割合)
借地人に土地の利用を制限されている分、評価額が減額される仕組みです。

具体的な計算例

先ほどと同じく、自用地評価額が5,000万円、借地権割合が70%の土地の場合で計算してみましょう。
5,000万円 × (1 - 70%) = 5,000万円 × 30% = 1,500万円
この土地は、貸宅地として1,500万円で評価されることになります。

まとめ

今回は、「権利金の授受が慣行となっている地域」の具体的な判断方法について解説しました。ポイントは、個人の感覚や実際の取引の有無ではなく、国税庁が公表している「路線価図」や「評価倍率表」で借地権割合が定められているかどうかで判断するという点です。相続財産の評価は、専門的な知識が必要な場面も多いです。ご自身の土地がどちらに該当するのか、まずは国税庁のウェブサイトで確認してみてくださいね。もし不安な点があれば、専門家に相談することをおすすめします。

参考文献

No.4613 貸宅地の評価|国税庁

No.5730 権利金の認定課税について|国税庁

財産評価基準書 路線価図・評価倍率表|国税庁

権利金と地域に関するよくある質問まとめ

Q.権利金の授受が慣行となっている地域はどこですか?

A.主に首都圏や関西圏などの都市部、特に商業地や繁華街で権利金の授受が慣行となっています。ただし、同じ地域内でも場所によって慣行は異なります。

Q.権利金がない地域はありますか?

A.地方都市や郊外では、権利金なしの物件が多く見られます。また、最近では都市部でも空き店舗の増加などを背景に、権利金を設定しないケースも増えています。

Q.なぜ地域によって権利金の慣行が違うのですか?

A.権利金は、その場所で営業する権利(営業上の利益)の対価とされています。そのため、集客力が高く、営業利益が見込める商業地や繁華街では慣行が根強く、そうでない地域では慣行がない傾向にあります。

Q.関東と関西で権利金の慣行に違いはありますか?

A.大きな違いはありませんが、呼び方や商習慣が異なる場合があります。例えば、関西では権利金と似た性質を持つ「保証金」や「敷引」といった慣行が一般的です。契約内容を個別に確認することが重要です。

Q.権利金の相場は地域によってどのくらい違いますか?

A.権利金の相場は立地や繁盛度に大きく左右されるため、地域によって数倍から数十倍の違いが出ることがあります。明確な相場はなく、個別の物件ごとに交渉で決まるのが一般的です。

Q.インターネットで地域の権利金の慣行を調べる方法はありますか?

A.地域の不動産会社のウェブサイトや、事業用物件専門のポータルサイトで物件情報を検索すると、権利金の有無やおおよその金額感を把握することができます。「〇〇(地域名) 店舗 権利金」などのキーワードで検索するのが有効です。

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