税理士法人プライムパートナーズ

死亡前7年以内の贈与は相続税対象!暦年贈与の相続時加算を徹底解説

2026-05-07
目次

「亡くなる前に贈与すれば相続税がかからない」と思っていませんか?実は、2024年1月1日からの税制改正で、亡くなる前7年以内に行われた特定の贈与は、相続税の計算に含めなければならなくなりました。これを「生前贈与加算」といいます。知らずにいると、せっかくの生前対策が無駄になってしまうかもしれません。この記事では、新しくなった生前贈与加算の仕組みや対象者、注意点を誰にでも分かるように優しく解説していきますね。

死亡前7年以内の暦年贈与は相続税の対象に!生前贈与加算とは?

生前贈与加算とは、亡くなる直前に財産を贈与して、意図的に相続税を安くしようとする「駆け込み贈与」を防ぐためのルールです。亡くなった方(被相続人といいます)から、亡くなる前の一定期間内に「暦年贈与」で財産をもらっていた場合、その財産の価額を相続財産に足し戻して、相続税を計算し直す必要があります。このルールが、2024年から大きく変わりました。

2024年1月1日からの税制改正で「3年」から「7年」へ延長

これまで、相続財産に加算されるのは「亡くなる前3年以内」の贈与だけでした。しかし、2024年1月1日以降の贈与からは、この期間が段階的に延長され、最終的に「亡くなる前7年以内」になります。いつ亡くなったかによって、加算される期間が変わるため、少し複雑に感じるかもしれませんが、以下の表で確認してみてくださいね。

亡くなった日(相続開始日) 相続財産に加算される贈与の期間
~2026年12月31日 亡くなる前3年以内
2027年1月1日~2030年12月31日 2024年1月1日から亡くなった日までの間
2031年1月1日~ 亡くなる前7年以内

このように、すぐさま7年になるわけではなく、少しずつ期間が延びていくイメージです。

延長された4年間には100万円の控除がある

期間が7年に延長されたことで、負担が大きくなるのでは?と心配になりますよね。でも、安心してください。少しだけ配慮された仕組みがあります。新しく加算対象となった「亡くなる前3年を超え7年以内」の4年間に行われた贈与については、合計100万円までは相続財産に加算しなくてもよい、というルールが設けられました。つまり、この4年間の贈与額の合計が100万円以下であれば、今回の改正の影響は受けないということになります。

なぜルールが変わったの?

このルール変更の背景には、「資産移転の時期によって税金の有利・不利が生まれないようにしよう」という考え方があります。元気なうちに早くから贈与を始める人と、亡くなる直前に慌てて贈与する人で、税金の負担に大きな差が出ないように、より公平な仕組みを目指して改正が行われました。

【誰が対象?】生前贈与加算の対象者となる人・ならない人

「自分は生前贈与加算の対象になるの?」と気になりますよね。実は、亡くなった方から生前に贈与を受けていた人すべてが対象になるわけではありません。誰が対象になるのか、ならないのかをはっきりさせておきましょう。

対象者になるのは「相続や遺贈で財産をもらった人」

生前贈与加算の対象になるのは、亡くなった方から贈与を受けた人のうち、相続や遺言によって財産を受け取った人です。具体的には、以下のような方々が当てはまります。

  • 法定相続人:配偶者やお子さんなど、法律で定められた相続人。
  • 遺言で財産をもらった人(受遺者):遺言書によって財産を譲り受けた人。相続人ではない親族や、友人なども含まれます。
  • みなし相続財産を受け取った人:生命保険金や死亡退職金などを受け取った人。これらは厳密には相続財産ではありませんが、税金の計算上は相続財産とみなされます。

これらの人が、亡くなる前7年以内に贈与を受けていた場合、その贈与額を相続財産に足して相続税を計算する必要があります。

対象者にならないのは「財産を一切もらわなかった人」

一方で、生前に贈与は受けたけれど、亡くなったときには相続財産を一切受け取らなかった人は、生前贈与加算の対象にはなりません。例えば、以下のようなケースです。

  • 相続放棄をした人:家庭裁判所で正式に相続放棄の手続きをした人。
  • 相続人以外で、遺言や生命保険金でも財産をもらわなかった人:代表的なのが「お孫さん」です。お孫さんは通常、法定相続人ではありません。そのため、遺言でお孫さんに財産を遺す指定がなく、生命保険金の受取人にもなっていなければ、亡くなる直前に贈与を受けていても、その分は相続財産に加算されません。このため、お孫さんへの贈与が相続税対策として注目されているのです。

【何が対象?】相続財産に加算される贈与・されない贈与

次に、どのような贈与が加算の対象になるのか、具体的な財産の種類を見ていきましょう。すべての贈与が対象となるわけではなく、特例などを使っている場合は対象外となることもあります。

加算されるのは「暦年贈与」の財産

相続財産に加算されるのは、「暦年贈与」という方法で行われた贈与です。暦年贈与は、1年間に110万円までなら贈与税がかからないという、最も一般的な贈与の方法です。ここでとても大切なポイントがあります。

年間110万円の非課税枠を使って贈与税が0円だった贈与も、加算の対象になります。

例えば、亡くなる1年前に父親からお子さんへ100万円を贈与した場合、贈与税はかかりませんが、父親が亡くなった際には、この100万円を相続財産に足し戻して相続税を計算する必要があるのです。また、加算するときの財産の価額は、相続が起きた時ではなく、贈与を受けた時点での価額で計算します。

加算されない非課税の特例

生前贈与には、特定の目的のための贈与を非課税にする特例制度がいくつかあります。これらの特例を使って贈与された財産の非課税部分は、生前贈与加算の対象にはなりません。安心して活用できる主な特例をまとめました。

特例の名前 内容
贈与税の配偶者控除(おしどり贈与) 婚姻期間20年以上の夫婦間で、自宅やその購入資金を贈与した場合に最大2,000万円まで非課税になる制度です。
住宅取得等資金の贈与の非課税措置 父母や祖父母から、住宅の新築や購入のための資金を贈与された場合に、最大1,000万円まで非課税になる制度です。
教育資金の一括贈与の非課税措置 30歳未満の子や孫へ教育資金を一括で贈与した場合に、最大1,500万円まで非課税になる制度です。
結婚・子育て資金の一括贈与の非課税措置 18歳以上50歳未満の子や孫へ結婚・子育て資金を一括で贈与した場合に、最大1,000万円まで非課税になる制度です。

これらの特例は、生前贈与加算の影響を受けずに大きな金額を渡せる有効な手段です。

要注意!相続時精算課税制度との違いは?

生前贈与の制度には、「暦年課税」のほかに「相続時精算課税制度」という、もう一つの選択肢があります。この二つは仕組みが全く違うので、混同しないように注意が必要です。違いを表で比べてみましょう。

項目 暦年課税(生前贈与加算の対象)
非課税枠 年間110万円まで
相続税への影響 亡くなる前7年以内の贈与は相続財産に加算される
制度の選択 手続き不要(自動的にこちらが適用)
項目 相続時精算課税制度
非課税枠 生涯で2,500万円まで + 年間110万円の基礎控除
相続税への影響 贈与の時期にかかわらず、2,500万円の枠で贈与した分はすべて相続財産に加算される(年間110万円の基礎控除分は加算不要)
制度の選択 税務署への届出が必要。一度選択すると暦年課税には戻れない

一番大きな違いは、相続時精算課税制度は「贈与の時点では税金の支払いを先送りし、最終的に相続の時に精算する」という考え方である点です。そのため、いつ贈与したかに関係なく、特別控除2,500万円を使って贈与した財産は、すべて相続財産に加算されます。暦年贈与の「7年ルール」とは根本的に異なる仕組みだと覚えておきましょう。

改正後の生前贈与で注意すべきポイント

生前贈与加算の期間が7年に延長されたことで、これからの生前対策ではいくつか気をつけるべきポイントがあります。大切な財産をスムーズに引き継ぐために、ぜひ押さえておいてください。

贈与の証拠をしっかり残す

税務署から「これは贈与ではなく、亡くなった方の名義を借りていただけの預金(名義預金)ですね」と判断されないように、贈与の事実を証明できる証拠を残すことが非常に重要です。

  • 贈与契約書を作成する:「いつ、誰が、誰に、何を」贈与したかを書面で残しましょう。毎年作成するのが理想です。
  • 銀行振込を利用する:手渡しではなく、贈与者と受贈者の口座間で送金することで、お金の動きが客観的な記録として残ります。

これらの対策は、贈与が確かに成立していたことを証明する上でとても有効です。

早めの贈与計画がより重要に

加算される期間が3年から7年へと長くなったため、より早く、より計画的に生前贈与を始めることの重要性が増しました。例えば、60代のうちから少しずつ贈与を始めておけば、7年という期間を過ぎて相続財産に加算されない財産を増やしていくことができます。元気なうちから家族で話し合い、長期的な視点で計画を立てることが大切です。

相続人以外への贈与も検討する

先ほども触れましたが、相続や遺贈で財産を受け取らない「お孫さん」への贈与は、生前贈与加算の対象外です。そのため、相続税対策として非常に有効な手段の一つとなります。お子さんへの贈与と並行して、お孫さんへの贈与も検討してみることで、より効果的に財産を次の世代へ引き継ぐことができるかもしれません。

まとめ

今回は、2024年から新しくなった生前贈与加算のルールについて解説しました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。

  • 2024年1月1日以降の贈与から、生前贈与加算の期間が亡くなる前3年から7年に延長されました。
  • 対象となるのは、相続や遺言で財産を受け取った人です。相続人ではないお孫さんなどは原則対象外です。
  • 年間110万円以下の贈与税がかからない贈与も加算の対象になるので注意が必要です。
  • 延長された4年間の贈与については、合計100万円の非課税枠が設けられています。
  • 今後の対策としては、贈与契約書などで証拠を残し、早めに計画を立てることがより重要になります。

生前贈与は相続税対策としてとても有効ですが、ルールを正しく理解していないと思わぬ税金がかかってしまうこともあります。ご自身の状況に合わせて最適な方法を選ぶために、もし不安や疑問があれば、専門家である税理士に相談してみることをおすすめします。

参考文献

国税庁 No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)

国税庁 令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし

国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

暦年贈与の相続時加算に関するよくある質問まとめ

Q.亡くなる前の贈与は、すべて相続税の対象になるのですか?

A.いいえ、すべてではありません。亡くなる前7年以内に行われた特定の贈与が「相続時加算」の対象となり、相続税が課税されます。

Q.亡くなる前7年以内の贈与が相続税の対象になるのはいつからですか?

A.2024年(令和6年)1月1日以降の贈与から適用されます。それ以前は亡くなる前3年以内の贈与が対象でした。加算期間は段階的に延長されます。

Q.相続時加算の対象になるのは誰への贈与ですか?

A.相続や遺贈によって財産を取得した人(相続人など)への贈与が対象です。相続人以外への贈与は、原則として加算の対象外です。

Q.年間110万円の非課税枠内の贈与なら、相続時加算の対象になりませんか?

A.いいえ、非課税枠内の贈与であっても、亡くなる前7年以内に行われたものであれば相続時加算の対象となります。ただし、加算対象となった贈与財産の合計額から100万円を控除できます。

Q.「亡くなる前7年」とは具体的にいつからいつまでですか?

A.相続が開始した日(亡くなった日)から遡って7年前の日までの期間に行われた贈与を指します。例えば、2031年4月1日に亡くなった場合、2024年4月1日から2031年3月31日までの贈与が対象です。

Q.加算対象の贈与について贈与税を払っていた場合はどうなりますか?

A.すでに納めた贈与税額は、計算された相続税額から控除することができます。そのため、税金の二重払いにはなりません。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /
士業の先生向け専門家AI
士業AI【税務】
\ 相続の不安、専門家にまずは無料相談 /