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民法と税法で違う?法定相続割合を徹底解説!知らないと損する相続のルール

2025-06-02
目次

相続手続きを進める上で、「法定相続割合」という言葉をよく耳にしますよね。実はこの割合、遺産分割の話し合いで使われる「民法」上のものと、相続税の計算で使われる「税法」上のものとで、考え方が少し違うことがあるんです。この違いを知らないと、思わぬところで損をしてしまうかもしれません。この記事では、民法と税法それぞれの法定相続割合について、わかりやすく解説していきます。

そもそも法定相続割合って何?民法のルールを理解しよう

まずは基本から押さえましょう。民法で定められている法定相続割合は、故人(被相続人)が遺言を残さずに亡くなった場合に、誰がどれくらいの割合で財産を受け継ぐかの目安となるものです。これはあくまで「目安」なので、相続人全員が納得すれば、違う割合で分けることもできますよ。

誰が相続人になるの?法定相続人の順位

財産を相続できる人は法律で決まっていて、「法定相続人」と呼ばれます。法定相続人には優先順位があります。亡くなった方の配偶者は、常に法定相続人になります。それ以外の方は、以下の順位で配偶者と一緒に相続人になります。

順位 対象者
第1順位 子(子が亡くなっている場合は孫などの直系卑属)
第2順位 父母(父母が亡くなっている場合は祖父母などの直系尊属)
第3順位 兄弟姉妹(兄弟姉妹が亡くなっている場合は甥・姪)

上の順位の人が一人でもいる場合、下の順位の人は相続人になれません。例えば、お子さんがいれば、ご両親や兄弟姉妹は相続人にはならないんですね。

具体的な割合は?ケース別の法定相続割合

法定相続人の組み合わせによって、相続できる割合は変わってきます。ここでは、主なケースごとの割合を表で見てみましょう。

相続人の組み合わせ 各相続人の法定相続割合
配偶者と子 配偶者:1/2、子:1/2(子が複数いる場合は1/2を均等に分ける)
配偶者と父母(直系尊属) 配偶者:2/3、父母:1/3(父母ともにいる場合は1/3を均等に分ける)
配偶者と兄弟姉妹 配偶者:3/4、兄弟姉妹:1/4(複数いる場合は1/4を均等に分ける)

配偶者がいない場合は、その順位の相続人が全ての財産を相続します。例えば、相続人が子2人だけなら、それぞれの相続分は1/2ずつになります。

法定相続割合は絶対じゃない!遺産分割協議の重要性

民法の法定相続割合は、あくまで遺産分割の目安です。相続人全員で話し合って合意する「遺産分割協議」を行えば、法定相続割合と異なる分け方をすることも可能です。「長男が多く相続する」「介護をしてくれた長女に多めに分ける」など、ご家庭の事情に合わせて柔軟に決めることができます。ただし、相続人全員の合意が必要な点には注意しましょう。

税法上の法定相続割合とは?相続税計算のルール

次に、相続税を計算するときの「税法上の法定相続割合」について見ていきましょう。これは、実際に誰がいくら財産をもらったかとは関係なく、相続税の総額を計算するために、法律上のルールとして使われるものです。少しややこしく感じるかもしれませんが、相続税の仕組みを理解する上でとても大切なポイントです。

なぜ税法上の考え方が必要なの?

相続税には「基礎控除」という非課税枠(3,000万円+600万円×法定相続人の数)があります。また、税率も財産の額に応じて変わります。もし、実際に財産をもらった人やその金額だけで税金を計算すると、分け方次第で税額が大きく変わってしまい、不公平が生じる可能性があります。そこで、税法では「もし法定相続分どおりに財産を分けたら」と仮定して一旦税金の総額を計算し、それを実際の取得割合に応じて配分するという、二段階の計算方法をとっているのです。

民法と税法で違う!「法定相続人」の数え方

ここが一番重要なポイントです。民法と税法では、「法定相続人」の数え方に違いが生じることがあります。特に注意が必要なのが「養子」と「相続放棄」のケースです。

ケース1:養子縁組をした場合の人数の違い

民法上では、養子の人数に制限はありません。何人でも養子にすることができ、全員が実子と同じ法定相続人として扱われます。しかし、相続税法上では、基礎控除の計算に含められる養子の数に上限が設けられています。これは、相続税対策のためだけにむやみに養子を増やすことを防ぐためです。

被相続人の状況 税法上、法定相続人の数に含められる養子の人数
実子がいる場合 1人まで
実子がいない場合 2人まで

例えば、実子が2人いる方が養子を3人迎えた場合、民法上の法定相続人は合計5人(配偶者を含めれば6人)ですが、相続税の基礎控除を計算する上での法定相続人は、養子1人のみを含めた3人(配偶者を含めれば4人)として計算されます。

ケース2:相続放棄をした人がいる場合

誰かが相続を放棄すると、民法上はその人は初めから相続人ではなかったことになり、次の順位の人に相続権が移ることがあります。例えば、子が全員相続放棄をすると、次の順位である父母が相続人になります。しかし、相続税法上の基礎控除の計算では、この相続放棄はなかったものとして扱います。つまり、相続放棄をした人も法定相続人の数に含めて計算するのです。

これは、相続放棄によって意図的に法定相続人の数を増やし、基礎控除額を大きくして税金を不当に安くすることを防ぐためのルールです。実際の相続人は変わっても、税金の計算上の人数は変わらない、と覚えておきましょう。

まとめ

いかがでしたでしょうか。民法と税法では、「法定相続割合」や「法定相続人」の考え方が異なる場面があることをご理解いただけたかと思います。

  • 民法の法定相続割合: 遺産分割の際の「目安」。相続人全員の合意があれば変更可能。
  • 税法上の法定相続割合: 相続税の総額を計算するための「ルール」。養子や相続放棄の扱いに注意が必要。

この違いを正しく理解していないと、遺産分割はスムーズに進んでも、相続税の計算でつまずいてしまう可能性があります。特に、養子縁組をされている方や、相続放棄を検討している方がいる場合は注意が必要です。ご自身のケースで不安な点があれば、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

参考文献:
国税庁 No.4132 相続人の範囲と法定相続分
国税庁 No.4170 相続人の中に養子がいるとき
国税庁 No.4152 相続税の計算

法定相続割合(民法・税法)に関するよくある質問まとめ

Q. 民法と税法で「法定相続割合」は違うのですか?

A. はい、意味合いが異なります。民法上の法定相続割合は「実際に遺産を分ける際の目安となる割合」です。一方、税法上の法定相続割合は「相続税の総額を計算するためだけに使う、仮の割合」です。実際の遺産分割とは関係なく、税金を計算するために用いられます。

Q. 民法上の法定相続割合を教えてください。

A. 相続人の組み合わせによって割合は変わります。
・配偶者と子:配偶者 1/2、子 1/2
・配偶者と親:配偶者 2/3、親 1/3
・配偶者と兄弟姉妹:配偶者 3/4、兄弟姉妹 1/4
※子や親、兄弟姉妹が複数いる場合は、その中でさらに均等に分けます。

Q. なぜ相続税の計算で、法定相続割合を使うのですか?

A. 相続税の公平性を保つためです。相続税は、実際の分割割合に関わらず「法定相続人が法定相続分で取得した」と仮定して税金の総額を計算します。これにより、誰が多く財産を相続したかによって税金の総額が変わるのを防ぎ、誰が相続しても納税額の合計が同じになるようにしています。

Q. 相続税の計算で「法定相続人の数」が重要なのはなぜですか?

A. 相続税の基礎控除額(非課税枠)が「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で決まるからです。また、生命保険金や死亡退職金の非課税限度額も法定相続人の数で決まります。法定相続人が多いほど非課税枠が大きくなり、税負担が軽くなります。

Q. 相続放棄した人がいても、税法上の法定相続人の数に含めますか?

A. はい、含めます。相続税の基礎控除額などを計算する際、相続放棄がなかったものとして法定相続人の数を数えます。ただし、相続放棄した本人は相続人ではないため、その人の分の非課税枠(生命保険金など)は使えません。

Q. 遺言がある場合、法定相続割合はどうなりますか?

A. 遺言書の内容が法定相続割合よりも優先されます。したがって、遺産は原則として遺言書に書かれた通りに分割します。ただし、兄弟姉妹以外の法定相続人には「遺留分」という最低限の取り分が保障されており、遺言によってこの権利が侵害された場合は、その分を請求することが可能です。

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