法人の確定申告の時期になると、作成しなければならない書類がたくさんありますよね。その中でも「法人概況説明書とはどのような書類なのだろう」と疑問に感じる方も多いのではないでしょうか。この記事では、法人概況説明書の役割や具体的な書き方、提出方法について、初めての方にもわかりやすく解説していきます。
法人概況説明書の基本と提出の目的
まずは、法人概況説明書がどのような書類なのか、その基本的な概要と提出する目的について確認していきましょう。
法人事業概況説明書とはどのような書類か
法人事業概況説明書とは、法人の名称や納税地、事業内容、従業員数、経理の状況などを記載し、確定申告書に添付して税務署に提出する書類のことです。以前は税務署からのお願いとして提出が求められていましたが、2006年の法改正によって提出が義務付けられました。会社の1年間の状況を税務署に伝えるための、いわばプロフィールのような役割を果たしています。
提出が義務付けられている法人の条件
原則として、すべての法人が確定申告を行う際に提出しなければなりません。ただし、法人の資本金の規模によって提出する書類の名称が少し異なります。
| 法人の資本金規模 | 提出する書類の名称 |
|---|---|
| 資本金1億円未満の法人 | 法人事業概況説明書 |
| 資本金1億円以上の法人 | 会社事業概況書 |
多くの中小企業は資本金が1億円未満ですので、法人事業概況説明書を作成して提出することになります。
税務署が法人事業概況説明書を必要とする理由
税務署がこの書類の提出を求める主な理由は、法人の事業概況を的確に把握するためです。税務署の担当者が会社へ税務指導を行ったり、税務調査の対象を選定したりする際に、この書類に記載された内容が参考にされます。例えば、売上の推移や従業員数、現金の管理状況などを確認することで、会社の規模や実態を事前に理解することができるのです。
法人概況説明書の提出時期と具体的な提出方法
続いて、法人概況説明書をいつ、どこへ、どのように提出すればよいのかを具体的にご説明します。
提出期限と提出先の税務署
法人事業概況説明書の提出期限は、法人税の確定申告書の提出期限と同じです。原則として、決算日の翌日から2ヶ月以内となります。例えば、3月31日が決算日の場合は、5月31日が提出期限です。提出先は、会社の本社所在地を管轄している税務署になります。
電子申告や郵送などの提出方法
提出方法には、主に以下の3つの方法があります。ご自身の会社に合った方法を選んでください。
| 提出方法 | 具体的な手順と注意点 |
|---|---|
| e-Tax(電子申告) | 国税庁のシステムを利用してインターネット経由で送信します。 |
| 郵送による提出 | 控えが必要な場合は、控え用の用紙と切手を貼った返信用封筒を同封します。 |
| 税務署の窓口へ持参 | 所轄税務署の受付窓口に直接提出します。 |
郵送で提出する際、ホチキス留めはせずに確定申告書に挟み込んで提出するのが一般的なルールです。
提出しなかった場合のペナルティの有無
法人事業概況説明書は法律によって提出が義務付けられていますが、万が一提出し忘れてしまっても、罰金などの直接的なペナルティは設けられていません。しかし、提出しないままでいると税務署から提出を促す連絡が来る可能性が非常に高いため、必ず確定申告書と一緒に提出するようにしましょう。
法人概況説明書の具体的な書き方(表面)
ここからは、実際の用紙に沿って具体的な書き方を見ていきましょう。まずは1枚目にあたる表面の記載項目について解説します。
事業内容や支店・子会社の状況
事業内容の欄には「小売業」や「建設業」などの事業種目と、具体的な内容を簡潔に記載します。支店や子会社がある場合は、国内と海外に分けてそれぞれの数を記載します。海外に支店や子会社がある場合は、従業員数が多いものから2か所を選び、所在国や出資割合などを具体的に記入します。
期末従業員等の状況や経理の状況
従業員に関する項目と、経理の管理体制について記載する重要な欄です。
| 記載項目 | 具体的な書き方のポイント |
|---|---|
| 期末従業員等の状況 | 常勤役員や従業員(事務員、販売員など)の人数を記載します。代表者の家族は別枠で数えます。 |
| 経理の状況 | 現金や通帳の管理者が誰であるか、消費税の当期課税売上高(千円単位)などを記載します。 |
特に経理の状況欄は、税務署が現金の管理体制を確認するポイントになるため、正確に記載することが大切です。
主要科目や代表者に対する報酬の記載方法
主要科目の欄には、決算書に基づいて売上高や仕入高、役員報酬などの金額を記載します。ここでの金額はすべて千円単位で記入する点に注意してください。また、代表者に対する報酬等の金額欄は、同族会社の場合にのみ、同じく千円単位で記載します。貸倒引当金の控除前の金額を書くなど、細かいルールがありますので決算書を見ながら慎重に転記しましょう。
法人概況説明書の具体的な書き方(裏面)
次に、2枚目にあたる裏面の記載項目について解説します。主に事業の詳細や毎月の売上などを記入します。
事業形態や主な設備等の状況
事業形態の欄では、2種類以上の事業を行っている場合の兼業の状況や、同業他社と比べた際の特徴などを記載します。売上区分として、現金売上と掛売上の割合も記入します。主な設備等の状況欄には、事業で使用している店舗や倉庫、機械装置などの名称、面積、台数などを具体的に書き込みます。
月別の売上高等の状況と税理士の関与状況
裏面で特に時間のかかる項目が、月別の売上高等の状況です。
| 記載する項目 | 記入時の注意点 |
|---|---|
| 売上・仕入・人件費など | 決算月ごとに、千円単位で正確に記載します。 |
| 源泉徴収税額 | この項目だけは千円単位ではなく、円単位で記載します。 |
また、税理士の関与状況欄には、決算や申告の作成を依頼している税理士の氏名や事務所の所在地、関与している業務の内容を記載します。
出資関係図の添付が必要なケース
法人が、他の法人と完全支配関係(株式の100%を保有しているなど)にある場合は、法人事業概況説明書に加えて出資関係図を添付して提出する必要があります。決算期末時点での資本関係を、グループの最上位者を頂点として図式化し、各法人の名称や資本金の額などをわかりやすく記載します。
補助金や給付金申請時の注意点
法人事業概況説明書は税務署に提出するだけでなく、国や自治体の制度を利用する際にも必要になることがあります。
控えが必要になる具体的なケース
過去には新型コロナウイルス感染症関連の給付金などを申請する際、売上の減少を証明する書類として、税務署の受付印が押された法人事業概況説明書の控えの提出が求められました。今後も事業再構築に関する補助金などで求められるケースがあるため、提出時は必ず控えを作成して手元に保管しておくことをおすすめします。
金額が一致しない場合の対処法
補助金の申請時に、決算書の売上高と法人事業概況説明書の月別売上高の合計額が一致せず、不備として指摘されることがあります。これは、月別の売上高を千円未満切り捨てで記載するため、端数のズレが生じるのが原因です。その場合は、書類の書き方の性質上どうしても端数のズレが生じるものであることを、担当窓口へ丁寧に説明することで解決できるケースがほとんどです。
まとめ
法人概況説明書とは、会社の1年間の事業内容や経理の状況を税務署に報告するための大切な書類です。記載項目が多くて最初は戸惑うかもしれませんが、決算書や帳簿を見ながら一つずつ埋めていけば、決して難しいものではありません。千円単位と円単位の違いや、控えをしっかりと保管しておくことなど、今回ご紹介したポイントを押さえて、スムーズに確定申告の準備を進めてくださいね。
参考文献
法人概況説明書とはに関するよくある質問まとめ
Q.法人概況説明書とは何ですか?
A.法人の事業内容、従業員数、経理の状況などを記載し、確定申告書と一緒に税務署へ提出する義務のある書類です。
Q.提出しなかった場合、罰金などのペナルティはありますか?
A.提出しなくても直接的な罰金などのペナルティはありませんが、税務署から提出を促す連絡が来る可能性が高いため必ず提出しましょう。
Q.提出期限はいつまでですか?
A.法人税の確定申告書の提出期限と同じで、原則として決算日の翌日から2ヶ月以内となっています。
Q.金額を記入する際の単位は何ですか?
A.売上や仕入などの主要科目は千円単位で記入しますが、月別の源泉徴収税額の欄だけは円単位で記入する点に注意が必要です。
Q.補助金の申請で法人概況説明書の控えが必要な場合、どうすればいいですか?
A.提出時に必ず控え用の用紙を用意し、受付印をもらって保管しておきましょう。電子申告の場合は受信通知が控えの代わりになります。
Q.すべての法人が同じ書類を提出するのですか?
A.資本金1億円未満の法人は「法人事業概況説明書」を提出しますが、資本金1億円以上の法人は「会社事業概況書」を提出します。