大切な方が亡くなられた後、様々な手続きに追われる中で「準確定申告」という言葉を耳にした方も多いのではないでしょうか。「期限が4ヶ月と聞いたけど、間に合わなかったらどうしよう…」と不安に感じていませんか?この記事では、準確定申告の期限に間に合わない場合のペナルティや、具体的な対処法について、分かりやすく解説していきます。万が一の時に備えて、ぜひ最後までお読みくださいね。
準確定申告の基本|期限は「4ヶ月以内」です
まず、基本となる準確定申告の期限について確認しておきましょう。準確定申告は、亡くなられた方(被相続人)の所得税の申告手続きのことで、相続人が代わりに行います。この申告と納税の期限は、非常に重要なのでしっかり押さえておきましょう。
具体的な期限の計算方法
準確定申告の期限は、「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」と定められています。例えば、6月10日に亡くなったことを知った場合、その翌日の6月11日から数えて4ヶ月後の10月10日が申告と納税の期限となります。
もし、申告期限の日が土曜日、日曜日、祝日にあたる場合は、その次の平日が期限日となります。例えば、10月10日が土曜日であれば、期限は10月12日(月曜日)になります。
「相続の開始があったことを知った日」っていつのこと?
「相続の開始があったことを知った日」というのは、多くの場合、故人が亡くなられた「死亡日」を指します。ご家族がすぐに亡くなったことを知るのが一般的だからですね。
しかし、故人と疎遠であったり、孤独死などで後から死亡の事実を知った場合は、その「死亡の事実を知った日」が基準となります。この場合は、死亡日から4ヶ月ではないので注意が必要です。
前年分の確定申告も期限は同じ4ヶ月です
もし故人が、1月1日から3月15日までの間に亡くなられた場合、前年分の確定申告を終えていない可能性があります。通常の確定申告期間は翌年の2月16日から3月15日までだからです。
このようなケースでは、相続人は「亡くなった年の所得(準確定申告)」と「前年分の所得(確定申告)」の2年分の申告を行う必要があります。そして、この2つの申告期限は、どちらも同じく「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」となりますので、忘れないようにしましょう。
準確定申告の期限に間に合わないとどうなる?2つのペナルティ
もし準確定申告の期限に間に合わなかった場合、残念ながらペナルティとして追加の税金が課せられてしまう可能性があります。本来支払う必要のないお金を納めることにならないよう、どのようなペナルティがあるのかを具体的に見ていきましょう。
無申告加算税|申告しなかったことへのペナルティ
無申告加算税は、正当な理由なく期限内に申告をしなかった場合に課されるペナルティです。納付すべき税額に対して、申告のタイミングによって異なる税率がかけられます。税務署から指摘される前に自主的に申告することで、税率を低く抑えることができます。
申告のタイミング | 税 率 |
税務調査の通知前に自主的に申告した場合 | 納付税額の5% |
税務調査の通知後、調査前に申告した場合 | 納付税額50万円以下の部分は10% 50万円超の部分は15% |
税務調査後に申告した場合 | 納付税額50万円以下の部分は15% 50万円超の部分は20% |
延滞税|納税が遅れたことへのペナルティ
延滞税は、納税が期限に遅れたことに対する利息のようなペナルティです。法定納期限の翌日から実際に納付した日までの日数に応じて計算されます。こちらも1日でも早く納付することが大切です。
期 間 | 税率(年率)※令和6年現在 |
納期限の翌日から2ヶ月以内 | 2.4% |
納期限の翌日から2ヶ月を超えた日以降 | 8.7% |
※延滞税の税率は、その時々の金利の状況によって変動します。
期限がギリギリ!今すぐできる対処法
「もう期限まで時間がない!」と焦っている方もいらっしゃるかもしれません。ですが、諦めないでください。期限ギリギリでもできることがあります。
まずは概算で期限内に申告する
完璧な書類が揃っていなくても、まずは概算の金額で期限内に申告書を提出することを強くおすすめします。無申告になってしまうと、先ほどご説明した無申告加算税が課せられてしまいます。申告さえしておけば、このペナルティを避けることができるのです。
少し乱暴に聞こえるかもしれませんが、無申告のリスクを考えれば、まずは申告するというアクションが何よりも重要です。
後から「修正申告」で正しい内容に訂正する
概算で申告した後は、できるだけ早く正しい所得や税額を計算し直し、「修正申告」という手続きを行いましょう。修正申告をすることで、正しい税額に訂正することができます。もし、最初に納めた税額が多すぎた場合は還付され、少なかった場合は追加で納付することになります。
すでに期限を過ぎてしまった場合の対処法
もし、うっかりしていて準確定申告の期限を過ぎてしまった場合でも、決して放置してはいけません。ペナルティを最小限に抑えるために、すぐに行動しましょう。
1日でも早く申告・納税する
期限を過ぎてしまったら、気づいた時点ですぐに申告と納税を済ませてください。延滞税は日割りで計算され、時間が経てば経つほど金額が増えていってしまいます。1日でも早く行動することが、余計な負担を減らす一番の方法です。
自主的な申告でペナルティが軽くなることも
先ほどの無申告加算税の表でもお伝えした通り、税務署から「申告されていませんよ」という指摘を受ける前に、ご自身から自主的に申告すれば、無申告加算税の税率が5%に軽減されます。ペナルティを少しでも軽くするために、できるだけ早く手続きを進めましょう。
準確定申告の期限に関するよくある質問
最後に、準確定申告の期限に関してよくいただくご質問にお答えします。
Q. 期限を過ぎたら還付申告もできなくなりますか?
A. いいえ、そんなことはありません。医療費控除の適用などで税金が戻ってくる「還付申告」の場合は、準確定申告の期限である4ヶ月を過ぎても申告できます。還付申告の期限は、亡くなられた年の翌年1月1日から5年間です。
ただし、還付されたお金は相続財産の一部と見なされます。そのため、相続税の申告(期限は10ヶ月以内)が必要な場合は、それに間に合うように早めに準確定申告を済ませておくことをおすすめします。
Q. 準確定申告の期限は延長できますか?
A. 原則として、準確定申告の期限を延長することはできません。「書類集めに時間がかかった」「仕事が忙しかった」といった個人的な理由では延長は認められないのです。
ただし、災害などのやむを得ない特別な理由がある場合に限り、その理由がなくなった日から2ヶ月以内の範囲で期限が延長される制度があります。これはあくまで例外的な措置となります。
まとめ
今回は、準確定申告の期限に間に合わない場合のペナルティと対処法について解説しました。
大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 準確定申告の期限は「相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内」
- 期限に遅れると「無申告加算税」や「延滞税」といったペナルティがある
- 期限ギリギリなら、まずは概算で申告し、後から修正申告をする
- 期限を過ぎてしまったら、1日でも早く自主的に申告する
ご家族が亡くなられた直後は、精神的にも時間的にも余裕がないことと思います。しかし、準確定申告は必ず行わなければならない大切な手続きです。もしご自身での対応が難しいと感じたら、税理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。この記事が、皆さまの不安を少しでも和らげるお役に立てれば幸いです。
参考文献
No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)|国税庁
準確定申告の期限に関するよくある質問
Q.準確定申告の期限(相続の開始を知った日の翌日から4ヶ月)に間に合わないと、どうなりますか?
A.期限内に申告と納税をしない場合、延滞税や無申告加算税といったペナルティが課される可能性があります。できるだけ早く申告・納税することが重要です。
Q.期限を過ぎてしまった場合のペナルティ(加算税・延滞税)について教えてください。
A.期限後に申告すると「無申告加算税」、納税が遅れると「延滞税」が課されます。ただし、税務署から指摘される前に自主的に申告すれば、ペナルティが軽減される場合があります。
Q.準確定申告の期限を延長することはできますか?
A.原則として、準確定申告の期限延長は認められていません。災害など、やむを得ない理由がある場合に限り、個別の申請によって延長が認められるケースがあります。
Q.申告を忘れていました。まず何をすればよいですか?
A.気づいた時点ですぐに申告と納税の準備を始めてください。1日でも早く手続きをすることで、延滞税などのペナルティを最小限に抑えることができます。
Q.準確定申告をしないと、税務署にバレますか?
A.はい、税務署はさまざまな情報から所得を把握しているため、無申告は発覚する可能性が非常に高いです。ペナルティが重くなる前に、必ず申告を行いましょう。
Q.準確定申告と相続税申告の期限の違いは何ですか?
A.準確定申告は亡くなった方の「所得税」の申告で、期限は4ヶ月以内です。一方、相続税申告は相続財産にかかる税金の申告で、期限は10ヶ月以内と定められています。