家族が亡くなったとき、悲しみの中で様々な手続きを行わなければなりませんが、その一つに「準確定申告」があります。準確定申告とは、亡くなった方の代わりに所得税の確定申告を行う手続きです。しかし、「準確定申告は誰が申告するの?」「うちの場合は必要なの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。この記事では、準確定申告を申告する人や、申告が必要なケース、手続きの流れについて、具体的な金額や要件を交えながらわかりやすく解説します。
準確定申告とは?誰が申告するのか
準確定申告とは、亡くなった方(被相続人)の1月1日から死亡した日までの所得を計算し、所得税の申告と納税を行う手続きのことです。それでは、この準確定申告は誰が申告するのでしょうか。原則として、亡くなった方の相続人または包括受遺者が申告を行います。相続人が複数いる場合は、全員が連名で申告書に署名して共同で提出するのが一般的です。ただし、各相続人が別々に申告書を提出することも認められていますが、その場合は他の相続人に申告内容を通知する義務があります。手続きをスムーズに進めるためには、相続人の中から代表者を決めてまとめて申告を行うことをおすすめします。
申告手続きができる人と連名での申告
準確定申告の手続きができるのは、民法で定められた法定相続人と、遺言によって財産の割合を指定されて譲り受けた包括受遺者です。相続人が2人以上いる場合、原則として全員が連名で申告を行います。具体的には、通常の確定申告書に加えて「準確定申告書の付表」という書類を作成し、そこに相続人全員の氏名、住所、マイナンバーなどを記載します。もし相続人の中に相続放棄をした人がいる場合、その人は初めから相続人ではなかったことになるため、準確定申告を行う義務はなく、連名で署名する必要もありません。
準確定申告が必要なケースと不要なケース
準確定申告は、すべての人に必要なわけではありません。亡くなった方の生前の収入の状況によって、申告が必要なケースと不要なケースに分かれます。また、申告義務はなくても、医療費控除などを適用することで払いすぎた税金が戻ってくるため、申告したほうがよいケースもあります。それぞれのケースについて、具体的な基準を見ていきましょう。
確定申告が絶対に必要なケース
亡くなった方が生前に確定申告をする義務があった場合、相続人が代わりに準確定申告を行わなければなりません。具体的には、以下のような要件に当てはまる場合です。
| 収入の種類 | 具体的な要件 |
|---|---|
| 給与所得 | 給与の収入金額が2,000万円を超える場合 |
| 給与所得(副業あり) | 1か所から給与を受け取り、副業などの他の所得が20万円を超える場合 |
| 公的年金等 | 公的年金等の収入金額が400万円を超える場合 |
| 公的年金等(副収入あり) | 公的年金等が400万円以下で、他の所得が20万円を超える場合 |
| 事業・不動産所得 | 個人事業主や不動産賃貸による所得があり、納めるべき税金がある場合 |
| 一時所得・譲渡所得 | 生命保険の満期金や不動産の売却などで、一定の利益が出た場合 |
これらの要件に1つでも該当する場合は、必ず準確定申告を行いましょう。
準確定申告をしたほうがよいケース
申告の義務がなくても、準確定申告をすることで源泉徴収された所得税が還付される(戻ってくる)可能性があります。以下の要件に当てはまる場合は、申告を検討してみましょう。
| 還付が期待できるケース | 具体的な内容 |
|---|---|
| 年末調整を受けていない | 年の途中で亡くなり、勤務先で年末調整が行われていない場合 |
| 医療費控除を受けられる | 亡くなった年の1月1日から死亡日までに支払った医療費が10万円を超える場合 |
| その他の控除を受けられる | 配偶者控除、扶養控除、生命保険料控除などの適用漏れがある場合 |
還付申告は義務ではありませんが、払いすぎた税金を取り戻すことができるため、領収書や源泉徴収票を確認してみることをおすすめします。
準確定申告が不要なケース
上記の「必要なケース」や「したほうがよいケース」に該当しない場合、準確定申告は不要です。具体的には、亡くなった方が1か所からのみ給与を受け取っており、給与収入が2,000万円以下で年末調整が済んでいる場合や、公的年金等の収入が400万円以下でその他の所得が20万円以下である場合などが挙げられます。また、前述の通り、ご自身が相続放棄をした場合も、準確定申告を行う義務はありません。
準確定申告の期限はいつまで?
準確定申告には厳密な期限が定められています。この期限を過ぎてしまうと、本来納めるべき税金に加えて、ペナルティとして加算税や延滞税が課される可能性があるため、十分に注意が必要です。
原則は相続開始から4ヶ月以内
準確定申告の期限は、相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から4ヶ月以内と定められています。通常の確定申告(翌年の2月16日から3月15日)とは期限が異なる点に注意してください。例えば、4月15日に亡くなった場合、準確定申告の期限は8月15日となります。もし、税金を納める必要があるのにもかかわらず、この4ヶ月の期限を過ぎてしまうと、無申告加算税(納付税額に対して15%や20%の割合)や延滞税といった罰則が科されることになります。
前年分の申告前に亡くなった場合
亡くなった方が、前年分の確定申告を終える前に亡くなった場合はどうなるのでしょうか。例えば、通常の確定申告の期間中である2月10日に亡くなったとします。この場合、前年分の所得と、亡くなった年の1月1日から2月10日までの本年分の所得の両方について準確定申告が必要です。このときの期限は、前年分・本年分ともに相続の開始があったことを知った日の翌日から4ヶ月以内となります。通常の確定申告の期限である3月15日を過ぎていても問題ありませんが、2回分の申告が必要になることを覚えておきましょう。
準確定申告の具体的な手続きの流れ
準確定申告を誰が申告するかが決まり、必要なケースに該当することがわかったら、具体的な手続きを進めていきます。ここでは、手続きの全体的な流れと必要書類、提出先について解説します。
手続きの流れと必要書類
準確定申告の手続きは、書類の収集から始まり、申告書の作成、提出、そして納税(または還付金の受け取り)という流れで進みます。まずは以下の必要書類を手元に準備しましょう。
| 必要書類 | 備考 |
|---|---|
| 確定申告書 | 通常の確定申告書と同じ用紙を使用します |
| 確定申告書付表 | 相続人が2人以上いる場合に全員の情報を記載します |
| 源泉徴収票・支払調書 | 給与や年金、その他の収入を証明する書類です |
| 控除の証明書 | 生命保険料の控除証明書や医療費の領収書など |
| 委任状 | 相続人の代表者が還付金を一括で受け取る場合に必要です |
| 本人確認書類 | 申告を行う相続人のマイナンバーカードや身分証明書 |
これらの書類をもとに、亡くなった方の所得と控除を計算して申告書を作成します。
申告書等の提出先
作成した準確定申告書や付表などの提出先は、申告をする相続人の住所地を管轄する税務署ではなく、亡くなった方(被相続人)の死亡当時の住所地を管轄する税務署です。提出方法には、税務署の窓口へ直接持参する方法、郵送する方法、そしてパソコンやスマートフォンからe-Tax(電子申告)を利用して送信する方法があります。e-Taxを利用する場合は、相続人全員の署名が入った「準確定申告の確認書」をPDF等で添付して、代表者が送信する手順となります。
準確定申告における注意点
準確定申告を行う際には、いくつか気をつけなければならないポイントがあります。計算を間違えたり、手続きに不備があると、後から修正が必要になることもあるため、以下の点に注意して進めましょう。
所得控除の対象となる期間
準確定申告で医療費控除や生命保険料控除などの所得控除を受ける場合、対象となるのは亡くなった日までに支払いが済んでいるものに限られます。亡くなった後に相続人が支払った医療費や未払いの入院費用などは、準確定申告の所得控除には含めることができません。ただし、亡くなった後に支払った医療費などは、相続税の計算をする際に債務控除として遺産総額から差し引くことができます。
還付金は相続税の課税対象になる
準確定申告を行った結果、払いすぎた税金が戻ってくる(還付金を受け取る)場合、その還付金は相続財産として扱われます。つまり、亡くなった方の財産の一部とみなされるため、相続税の課税対象になる点に注意が必要です。還付金がある場合は、相続税の申告書を作成する際に財産として計上することを忘れないようにしましょう。なお、還付金の受け取り方法は、相続人それぞれの口座に分けて振り込んでもらう方法と、代表者がまとめて受け取る方法があります。
まとめ
準確定申告は、亡くなった方の代わりに所得税の申告と納税を行う重要な手続きです。「準確定申告は誰が申告するのか」という疑問の答えは、原則として相続人全員となります。亡くなった方に2,000万円を超える給与収入があったり、個人事業を営んでいたりした場合は申告が必須です。また、医療費控除などで還付を受けられる場合もあります。期限は相続開始から4ヶ月以内と短いため、必要書類を早めに集めて準備を進めることが大切です。不安な場合は、相続税に強い専門家に相談しながら、確実な申告を心がけましょう。
参考文献
国税庁:No.2022 納税者が死亡したときの確定申告(準確定申告)
準確定申告のよくある質問まとめ
Q.準確定申告は誰が申告するのですか?
A.原則として、亡くなった方の相続人または包括受遺者が申告します。相続人が複数いる場合は、全員の連名で申告書を提出するのが一般的です。
Q.準確定申告の期限はいつまでですか?
A.相続の開始があったことを知った日(通常は亡くなった日)の翌日から4ヶ月以内です。通常の確定申告の期限とは異なるため注意が必要です。
Q.亡くなった親が年金暮らしでしたが準確定申告は必要ですか?
A.公的年金等の収入が400万円以下で、その他の所得が20万円以下の場合は準確定申告の義務はありません。ただし、医療費が多かった場合などは還付申告をすると税金が戻ってくることがあります。
Q.相続放棄をした場合でも準確定申告をしなければなりませんか?
A.相続放棄をした人は初めから相続人ではなかったことになるため、準確定申告を行う義務はありません。申告書に連名で署名する必要もありません。
Q.準確定申告で戻ってきた還付金は誰のものになりますか?
A.還付金は相続財産として扱われるため、相続人全員の共有財産となります。また、還付金は相続税の課税対象になるため、相続税申告の際に財産に含める必要があります。
Q.準確定申告書はどこの税務署に提出すればよいですか?
A.申告を行う相続人の住所地ではなく、亡くなった方(被相続人)の死亡当時の住所地を管轄する税務署に提出します。