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特別受益がある遺産分割はどう進める?計算方法とプロセスを解説

2025-07-15
目次

ご家族が亡くなり遺産分割の話になったとき、「そういえば、長男だけお父さんから家を買うお金を1,000万円ももらっていたな…」なんてことはありませんか?このように、一部の相続人だけが亡くなった方(被相続人)から生前に特別な援助を受けていると、他の相続人との間に不公平が生まれてしまいますよね。この不公平をなくし、円満に遺産分割を進めるためのルールが「特別受益」です。今回は、特別受益がある場合の遺産分割のプロセスや計算方法について、わかりやすく解説していきますね。

特別受益とは?相続における公平のためのルール

特別受益とは、一部の相続人が被相続人から受けた「特別な利益」のことを指します。相続人どうしの公平を図るために、この特別受益を一度相続財産に加算し直して(これを「持ち戻し」と言います)、各相続人の取得分を計算する仕組みになっています。これにより、生前に多くの財産をもらっていた相続人は、その分だけ相続での取り分が少なくなり、全体のバランスが取れるようになっているんですよ。

特別受益の「持ち戻し」とは?

「持ち戻し」と聞くと難しく感じるかもしれませんが、考え方はシンプルです。亡くなった方が残した財産に、生前に贈与した財産(特別受益)を足し合わせて、それを「みなし相続財産」とします。そして、この「みなし相続財産」を元に、各相続人の法定相続分を計算します。最後に、特別受益を受けた相続人は、計算された相続分から自分がもらった特別受益の額を差し引く、という流れです。こうすることで、生前に財産を受け取っていなかった他の相続人との公平性を保つことができるんです。

特別受益になるもの、ならないもの

では、具体的にどのようなものが特別受益に当たるのでしょうか。すべての生前贈与が対象になるわけではなく、「遺産の前渡し」といえるかどうかがポイントになります。代表的な例を表にまとめてみました。

特別受益になる可能性が高いもの 特別受益にならない可能性が高いもの
遺贈(遺言による贈与) 扶養の範囲内とみなされる生活費の援助
婚姻や養子縁組のための持参金、支度金 少額のお祝い金やお小遣い
生計の資本としての贈与
・住宅購入資金(例:1,000万円の援助)
・事業の開業資金(例:500万円の援助)
・大学の学費(他の兄弟と比べて著しく高額な私立医学部の学費など)
・不動産そのものの贈与
生命保険金や死亡退職金(原則として受取人固有の財産とされます)

生命保険金は基本的には特別受益にはなりませんが、保険金の額が遺産総額に対して非常に大きいなど、著しく不公平なケースでは、例外的に特別受益とみなされることもあります。

特別受益に時効はあるの?

特別受益の持ち戻し計算自体には、法律上の時効はありません。たとえ30年前の贈与であっても、それが特別受益に該当し、証拠があれば持ち戻しの対象となります。ただし、遺産分割が完了してしまうと、後から特別受益を主張するのは難しくなります。また、後ほど説明する「遺留分」を計算する際の特別受益は、「相続開始前10年以内」のものに限られるというルールがあるので、混同しないように注意しましょう。

特別受益がある場合の遺産分割プロセス

特別受益がある場合の遺産分割は、どのような流れで進めるのでしょうか。具体的なステップを見ていきましょう。

ステップ1:相続財産と特別受益の調査

まずは、亡くなった方が残した相続財産をすべてリストアップします。預貯金、不動産、株式などを正確に把握しましょう。それと同時に、どの相続人が、いつ、いくらくらいの特別受益を受けていたのかを調査します。預金通帳の取引履歴や不動産の登記簿謄本、贈与契約書など、客観的な証拠を集めることが非常に重要です。ここで事実関係をはっきりさせておくことが、後の話し合いをスムーズに進めるカギになります。

ステップ2:特別受益の持ち戻し計算

次に、具体的な計算を行います。少し複雑ですが、例を見るとイメージしやすいですよ。

【計算例】

  • 被相続人:父
  • 相続人:母、長男、次男の3人
  • 相続財産:6,000万円
  • 長男への特別受益:1,000万円(住宅購入資金)

1. みなし相続財産を計算する
相続財産 6,000万円 + 特別受益 1,000万円 = 7,000万円

2. 法定相続分で各人の相続分を計算する
・母(配偶者):7,000万円 × 1/2 = 3,500万円
・長男(子):7,000万円 × 1/4 = 1,750万円
・次男(子):7,000万円 × 1/4 = 1,750万円

3. 特別受益を受けた人は、その分を差し引く
・母の具体的相続分:3,500万円
・長男の具体的相続分:1,750万円 – 1,000万円 = 750万円
・次男の具体的相続分:1,750万円

このように、長男は生前に1,000万円を受け取っているため、その分、相続での取り分が少なくなります。これにより、次男との公平が保たれるわけです。

ステップ3:遺産分割協議

上記の計算結果をもとに、相続人全員で「誰がどの財産をどれだけ取得するか」を話し合います。これが遺産分割協議です。全員が合意したら、「遺産分割協議書」という書類を作成し、全員が署名・捺印をします。この書類は、不動産の名義変更や預貯金の解約手続きなどに必要となる大切な書類です。

特別受益の価額はいつの時点で評価する?

特別受益の対象が不動産や株式など、価値が変動するものだった場合、「いつの時点の価値で計算するの?」という疑問が生まれますよね。これはとても重要なポイントで、原則として「相続開始時(亡くなった時点)」の価額で評価します。

財産の種類 評価の考え方
現金 贈与時の金額を、相続開始時の貨幣価値に換算して評価します。(消費者物価指数などを参考にします)
不動産 贈与されたのが20年前でも、相続開始時の時価(市場価格)で評価します。
株式 不動産と同様に、相続開始時の株価で評価します。

例えば、20年前に1,000万円で贈与された土地が、相続開始時には3,000万円に値上がりしていた場合、持ち戻し計算で使う価額は3,000万円となります。

故人が「持ち戻しをしなくていい」と言っていたら?

被相続人が生前に「長男にあげた家のお金は、遺産分割のときに考慮しなくていいよ」という意思表示をしている場合があります。これを「持ち戻し免除の意思表示」といいます。この意思表示は、遺言書に記載するのが一般的ですが、口頭や手紙などでも有効とされることがあります。この意思表示があれば、原則としてその贈与は特別受益として扱われず、持ち戻し計算は行いません。

持ち戻し免除があっても注意すべき「遺留分」

ただし、持ち戻し免除の意思表示も万能ではありません。他の相続人には、法律で保障された最低限の取り分である「遺留分」という権利があります。持ち戻しを免除した結果、他の相続人の遺留分を侵害してしまうようなケースでは、遺留分を侵害された相続人は、多くの財産を受け取った相続人に対して、侵害された分のお金を請求(遺留分侵害額請求)することができます。遺留分の計算においては、被相続人が亡くなる前10年間に行われた相続人への特別受益は、持ち戻し免除の意思表示があっても遺留分算定の基礎財産に加えられることになりますので、注意が必要です。

話し合いがまとまらない場合の対処法

相続人どうしで感情的になってしまい、遺産分割協議がまとまらないことも少なくありません。当事者だけでの解決が難しい場合は、法的な手続きを利用することになります。

遺産分割調停

家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てます。調停では、裁判官と調停委員という中立な第三者が間に入り、各相続人の主張を聞きながら、円満な解決を目指して話し合いを進めてくれます。あくまで話し合いなので、強制力はありませんが、専門家が関わることで冷静に話し合えるケースが多いです。

遺産分割審判

調停でも合意に至らなかった場合は、自動的に「遺産分割審判」という手続きに移行します。審判では、裁判官がそれぞれの主張や提出された証拠などを考慮して、最終的に「このように遺産を分けなさい」という判断を下します。この審判には法的な拘束力があり、相続人はその内容に従うことになります。

まとめ

特別受益がある場合の遺産分割は、相続人間の公平を保つためにとても大切な手続きです。しかし、何が特別受益にあたるかの判断や、具体的な計算、証拠集めなど、専門的な知識が必要になる場面も多く、トラブルに発展しやすいテーマでもあります。もし、「これって特別受益になるのかな?」「話し合いがうまくいかない…」とお困りの場合は、一人で悩まずに、弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。専門家の力を借りることで、スムーズで円満な解決につながるはずですよ。

参考文献

特別受益がある場合の遺産分割に関するよくある質問まとめ

Q. そもそも「特別受益」とは何ですか?

A. 一部の相続人が、被相続人(亡くなった方)から生前に受けた特別な利益(生前贈与など)のことです。相続人間の公平を保つために、この利益を相続財産に加えて計算します。

Q. どのようなものが特別受益にあたりますか?

A. 主に、結婚や養子縁組のための持参金や支度金、マイホーム購入資金の援助、事業を始めるための資金援助、高額な学費(医学部など)などが該当します。

Q. 特別受益はどのように遺産分割で計算するのですか?

A. 特別受益の額を相続財産に足し戻して(これを「みなし相続財産」と呼びます)、その総額を元に各相続人の法定相続分を計算します。特別受益を受けた相続人は、その分を先に受け取ったものとして最終的な取得分から差し引かれます。

Q. 遺産分割で特別受益を主張するにはどうすればいいですか?

A. まずは相続人全員で行う遺産分割協議で主張します。他の相続人が認めない場合は、特別受益があったことを示す証拠を提示する必要があります。協議で合意できなければ、家庭裁判所での遺産分割調停や審判へと進みます。

Q. 特別受益を証明するにはどのような証拠が必要ですか?

A. 銀行の振込明細、贈与契約書、不動産の登記簿謄本、被相続人の日記やメモ、メールのやり取りなどが証拠になり得ます。客観的に贈与の事実がわかる資料が重要です。

Q. 10年以上前の生前贈与も特別受益になりますか?

A. はい、原則として相続開始前10年以内の贈与が特別受益の持ち戻しの対象となります。ただし、相続人全員の合意があれば、10年より前の贈与も考慮して遺産分割を行うことは可能です。

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税理士 島本 雅史

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