ご家族から土地を相続することになったけれど、「特定工作物」という言葉を聞いて、どういう意味なのか、相続税にどう影響するのか不安に感じていませんか?相続財産の中でも土地は評価が難しく、特に専門用語が出てくると戸惑ってしまいますよね。この記事では、特定工作物が一体何なのか、そしてそれが土地の相続税評価額にどのように関係してくるのかを、できるだけ専門用語をかみ砕いて、優しく解説していきます。
特定工作物って一体なに?
まず、「特定工作物」という言葉そのものについてご説明しますね。これは、都市計画法という法律で定められている言葉で、私たちの身の回りにある特定の施設や設備を指します。土地の評価を考える上で、この言葉が時々登場するため、まずは基本的な意味合いを知っておくことが大切です。
都市計画法における「工作物」の定義
「工作物」と聞くと難しく感じますが、簡単に言うと「土地に人工的に作られた施設や構造物」のことです。例えば、煙突、広告塔、高架水槽、擁壁(ようへき)などがこれにあたります。家やビルなどの「建築物」とは区別されているのがポイントです。相続税の評価では、土地の上にある建物だけでなく、こうした工作物も財産として評価されることがあります。
「特定工作物」の2つの種類
工作物の中でも、周辺地域に大きな影響を与える可能性のある特定のものを「特定工作物」と呼び、2つの種類に分けられています。どのようなものが該当するのか、具体例を見てみましょう。
| 第一種特定工作物 | 周辺の環境悪化をもたらすおそれがある工作物です。具体的には、コンクリートプラントやアスファルトプラントなどが該当します。 |
| 第二種特定工作物 | 大規模な集客施設など、広大な土地を必要とする工作物です。こちらの方が、土地の評価で関わってくることが多いです。 |
特に、第二種特定工作物には以下のようなものが含まれます。
- ゴルフコース
- 1ヘクタール(10,000㎡)以上の野球場、庭球場、陸上競技場、遊園地、動物園などの運動・レジャー施設
- 1ヘクタール以上の墓園
なぜ相続税評価で重要になるの?
「特定工作物」という言葉が相続税の文脈で重要になるのは、主に「地積規模の大きな宅地の評価」という特例の適用を判断する場面です。この特例は、広い土地の評価額を下げてくれる節税効果の高い制度なのですが、適用できるかどうかを判断する条件の一つに、この特定工作物が関わってくることがあるのです。特に「市街化調整区域」にある広い土地を相続した場合には、深く関係してきます。
土地の相続税評価額の基本
特定工作物との関係を見る前に、まずは土地の相続税評価の基本について簡単におさらいしましょう。土地の評価方法は、主に「路線価方式」と「倍率方式」の2つがあります。
路線価方式とは
市街地にある土地の多くは、この方式で評価されます。国税庁が定めた道路ごとの価格(路線価)を基に、土地の形状や接道状況などを考慮して評価額を計算します。計算式は以下のようになります。
評価額 = 路線価 × 各種補正率 × 土地の面積(㎡)
路線価は、国税庁のウェブサイトで公開されている「路線価図」で確認できます。
倍率方式とは
路線価が定められていない郊外や農村部の土地は、この方式で評価します。土地の固定資産税評価額に、国税庁が定める一定の倍率を掛けて計算します。
評価額 = 固定資産税評価額 × 倍率
この倍率は「評価倍率表」で確認することができます。
特定工作物と「地積規模の大きな宅地の評価」
ここからが本題です。特定工作物は、先ほど触れた「地積規模の大きな宅地の評価」という特例の適用条件に深く関わってきます。この特例を正しく理解することが、節税への第一歩です。
「地積規模の大きな宅地の評価」とは?
これは、一定の面積を超える広い土地について、その相続税評価額を減額できる制度です。なぜ広い土地は評価額が安くなるのでしょうか?それは、広い土地を住宅地として利用しようとすると、分譲するために道路を新設したり、公園を作ったりする必要が出てくるからです。これらの部分は売ることができないため、その分、土地全体の価値が下がると考えられているのです。この経済的な価値の減少を、相続税評価額に反映させるのがこの特例の趣旨です。
適用を受けるための面積要件
この特例が適用できる土地の面積は、地域によって決められています。ご自身の土地がどちらに該当するか確認してみてください。
| 三大都市圏 | 500㎡以上の土地 |
| それ以外の地域 | 1,000㎡以上の土地 |
※三大都市圏とは、首都圏整備法に規定する既成市街地または近郊整備地帯、近畿圏整備法に規定する既成都市区域または近郊整備区域、中部圏開発整備法に規定する都市整備区域を指します。
適用除外となるケース
ただし、広い土地であれば何でも適用できるわけではありません。以下の4つのケースに該当する場合は、原則としてこの特例は使えません。
- 市街化調整区域に所在する宅地(ただし例外あり)
- 都市計画法の用途地域が工業専用地域に指定されている宅地
- 指定容積率が400%(東京都の特別区は300%)以上の地域にある宅地
- 大規模工場用地に該当する土地
この中でも特に重要なのが、1番目の「市街化調整区域」です。ここで特定工作物が関係してきます。
【重要】市街化調整区域と特定工作物の関係
「地積規模の大きな宅地の評価」の適用除外とされる「市街化調整区域」ですが、実は例外的に適用が認められるケースがあります。その例外ルールを理解する上で、特定工作物の知識が役立ちます。
原則、市街化調整区域は適用できない
市街化調整区域とは、簡単に言うと「市街化を抑制し、自然環境などを守るためのエリア」です。そのため、原則として新しい建物を建てることが厳しく制限されています。特例の趣旨である「戸建て住宅を分譲するための開発」が想定しにくいため、この特例の対象から外されているのです。
開発許可が得られる区域という「例外」
しかし、市街化調整区域内であっても、都市計画法第34条第10号や第11号の規定によって、例外的に宅地分譲のための開発行為が許可されるエリアが存在します。もし相続した土地がこのようなエリアにあれば、市街化調整区域内でも「地積規模の大きな宅地の評価」を適用できる可能性があるのです。これは非常に大きな節税ポイントになります。
第二種特定工作物と開発許可
ここで特定工作物が登場します。都市計画法第34条では、開発許可の要件を定めていますが、その条文の中に「主として第二種特定工作物の建設の用に供する目的で行う開発行為を除く」という一文があります。これは何を意味するのでしょうか?
これは、「ゴルフコースや大規模なレジャー施設(第二種特定工作物)を作るための開発は、一般的な宅地分譲の開発とは性質が違うので、この例外規定の対象にはしませんよ」という意味です。つまり、相続した広大な土地が市街化調整区域にあって、そこがゴルフ場や遊園地として利用されている場合、たとえ開発許可が得られるエリアだとしても、「地積規模の大きな宅地の評価」という節税の特例は使えない、ということになります。
自分の土地に特定工作物がある場合の注意点
もし相続した土地の上にゴルフコースや大規模な駐車場、運動施設など、特定工作物に該当する可能性があるものがある場合、評価にはさらに注意が必要です。
構築物としての評価
土地の評価とは別に、ゴルフコースの造成やアスファルト舗装、フェンス、クラブハウスなどの施設自体も「構築物」として独立した相続財産になります。これらは土地や建物とは別に評価額を算出し、相続財産として計上しなければなりません。申告漏れになりやすいポイントなので、注意しましょう。
評価方法
構築物の相続税評価は、原則として次の計算式で求められます。
評価額 =(その構築物の再建築価額 - 建築時から相続時までの償却費の合計額)× 70%
「再建築価額」とは、相続の時点でその構築物をもう一度作るとしたらいくらかかるか、という金額です。実際の計算は非常に複雑で専門的な知識が必要になります。
専門家への相談が不可欠
ここまでご説明したように、特定工作物が関わる土地の評価は、適用できる特例の判断や構築物自体の評価など、非常に複雑な論点が絡み合います。ご自身で判断するのは難しく、もし評価を誤ってしまうと、税金を払いすぎてしまったり、逆に過少申告となって後から追徴課税を受けたりするリスクがあります。特定工作物が関係する土地を相続した場合は、必ず相続税を専門とする税理士に相談することをおすすめします。
まとめ
最後に、今回の内容をまとめますね。
- 特定工作物とは、都市計画法で定められたゴルフコースや大規模な運動施設などのことです。
- 特定工作物そのものが土地の評価額を直接変えるわけではありませんが、「地積規模の大きな宅地の評価」という節税特例の適用判断に影響します。
- 特に、市街化調整区域にある広い土地の場合、第二種特定工作物の敷地になっていると、この特例が使えなくなるため注意が必要です。
- 特定工作物自体も「構築物」として相続財産となり、別途評価が必要です。
- 評価が非常に複雑なため、相続財産に特定工作物やそれが建設されている土地が含まれる場合は、必ず税理士などの専門家に相談しましょう。
特定工作物が関わる土地の相続は、専門的な知識が求められる難しい分野です。しかし、正しく理解し、専門家の力を借りることで、適切な相続税申告と節税につなげることができます。この記事が、皆さまの不安を少しでも和らげる一助となれば幸いです。
参考文献
特定工作物と土地の相続税評価に関するよくある質問
Q.相続税評価における「特定工作物」とは何ですか?
A.相続税法上の特定工作物とは、土地の評価額に影響を与える特定の構築物や設備を指します。例えば、ゴルフ場の造成費、遊園地の構築物、大規模な庭園設備(池や庭石など)、アスファルト舗装された大規模駐車場などが該当します。
Q.土地に特定工作物があると、相続税評価額はどうなりますか?
A.特定工作物がある土地は、その工作物の再建築価額から経過年数に応じた減価償却費を引いた金額の70%相当額を、土地の自用地評価額に加算して評価します。そのため、通常の土地よりも評価額が高くなる可能性があります。
Q.特定工作物の評価は、どのように計算されるのですか?
A.特定工作物の評価額は、「(その工作物の再建築価額 - 償却費の合計額)× 70%」という計算式で算出されます。この評価額が、土地自体の評価額に上乗せされます。
Q.自宅の庭にある池や庭石も特定工作物になりますか?
A.個人の住宅の庭にあるような一般的な池や庭石は、通常「庭園設備」として家屋の評価に含まれるため、特定工作物には該当しないケースがほとんどです。事業用の大規模な庭園などが対象となります。
Q.特定工作物がある土地を相続する際の注意点は何ですか?
A.土地の評価額が想定よりも高額になり、相続税の負担が大きくなる可能性がある点に注意が必要です。評価方法が複雑なため、相続が発生した際は速やかに専門家へ相談し、正確な評価額を確認することをおすすめします。
Q.特定工作物の評価額を減らす方法はありますか?
A.特定工作物自体の評価額を直接減らすことは困難です。しかし、土地全体の評価において小規模宅地等の特例など、他の制度を適用することで相続税の負担を軽減できる場合があります。適用要件については専門家にご確認ください。