ご家族から相続した土地が「特定街区」というエリアにあったら、どうしますか?「なんだか難しそう…」「相続税が高くなるの?」と不安に思われるかもしれませんね。特定街区は、都市の再開発などを目的とした特別なルールが定められたエリアで、その特殊性から土地の相続税評価額に大きな影響を与えることがあります。しかし、ポイントさえ押さえれば、適切な評価額を知ることができ、場合によっては相続税を抑えることも可能なんです。今回は、特定街区とは何か、そして相続税評価額にどう影響するのかを、わかりやすく解説していきます。
特定街区とは?基本を優しく解説します
まずは、「特定街区」という言葉自体に馴染みがない方も多いと思いますので、基本からご説明しますね。特定街区は、都市計画法という法律に基づいて定められるエリアのことで、簡単に言うと「街の景観を良くしたり、もっと便利にするために、特別なルールを適用する地域」のことです。
特定街区の目的と大きな特徴
特定街区の主な目的は、市街地の再開発をスムーズに進め、合理的で健全な土地の高度利用と、美しい都市景観をつくり出すことです。一番大きな特徴は、一般的な建築ルールに縛られない点にあります。通常の土地には、用途地域ごとに「建ぺい率(敷地面積に対する建築面積の割合)」や「容積率(敷地面積に対する延床面積の割合)」、「建物の高さ」といったルールが細かく決められていますが、特定街区ではこれらの制限が適用されません。その代わり、その街区のプロジェクトごとに、オーダーメイドのルールが都市計画で定められます。これにより、超高層ビルや大規模な商業施設など、自由度の高い建築が可能になるのです。
どんな場所が特定街区に指定されるの?
特定街区は、主に都市の機能更新や魅力向上を目指す場所で指定されます。具体的には、以下のようなエリアが挙げられます。
- 駅前の大規模な再開発エリア
- 超高層のオフィスビルや商業施設が集中するビジネス街
- 歴史的な景観と近代的な建物を調和させる必要があるエリア
例えば、東京駅周辺の丸の内エリアや新宿副都心など、皆さんが知っているようなランドマーク的な建物が立ち並ぶ場所の多くが、この特定街区制度を活用して整備されています。
「特定街区」と「高度利用地区」はどう違うの?
特定街区とよく似た制度に「高度利用地区」があります。どちらも土地の有効活用を促す目的は同じですが、少し違いがあります。特定街区が個別のプロジェクト単位で、より柔軟なルールを設定するのに対し、高度利用地区はもう少し広い範囲で、主に容積率の緩和などによって土地の高度利用を図る制度です。違いを簡単に表にまとめてみました。
| 制度名 | 主な特徴 |
| 特定街区 | 個別の街区ごとに容積率や高さなどをオーダーメイドで定める。オフィス街や商業地など大規模開発向け。 |
| 高度利用地区 | 区域内の建築物に対し、容積率や建ぺい率などを一律に定め、土地の共同化を促す。住宅街の再開発などにも適用される。 |
特定街区にある土地の相続税評価額はどう計算する?
それでは、本題である相続税評価額の計算方法について見ていきましょう。特定街区にある土地だからといって、全く異なる特別な計算方法があるわけではありません。基本は他の土地と同じです。
原則は「路線価方式」で評価
市街地にあるほとんどの土地と同じように、特定街区内の土地も、国税庁が定めた「路線価」を基準に評価します。路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1平方メートルあたりの価格のことで、毎年公表されています。この路線価に土地の面積を掛け、土地の形状などに応じた補正を行うことで評価額を算出するのが基本です(路線価方式)。特定街区という特殊性は、この路線価や、その後の補正計算の中で考慮されることになります。
特定街区で定められた「容積率」の考え方
特定街区では、非常に高い容積率が認められていることが多く、これが土地の価値を大きく左右します。例えば、容積率が1,000%を超えるようなケースも珍しくありません。基本的に、この高い利用価値は路線価に織り込まれていると考えられます。そのため、「容積率が高いから、路線価で計算した評価額にさらに上乗せ評価が必要」ということにはなりません。ただし、評価する土地が、その指定された高い容積率を十分に活かせないような条件(例えば、間口が狭い、不整形地であるなど)を持っている場合は、その点を考慮して評価額を減額できる可能性があります。
評価額に影響を与える「都市計画で定められた制限」
特定街区のメリットばかりが注目されがちですが、都市計画によって特別な「制限」が課せられることもあります。例えば、以下のような制限です。
- 壁面の位置の制限:建物の壁を道路から一定距離後退させる(セットバック)義務
- 高さの最高限度:周辺環境との調和のため、一定以上の高さの建物を建てられない
- 公開空地の設置義務:敷地内に誰でも通れる広場や緑地を設けなければならない
これらの制限は、土地の所有者が自由に土地を利用することを妨げる要因となるため、相続税評価額を計算する上で減額の対象となる可能性があります。
特定街区の土地評価で見逃せない減額ポイント
特定街区の土地は価値が高いと思われがちですが、前述したような「制限」に着目することで、評価額を下げられるケースがあります。ここでは、特に注意して確認したい減額ポイントをご紹介します。
利用上の制約は評価減につながる可能性
都市計画によって定められた「公開空地の設置義務」や「壁面の位置の制限」は、その部分を所有者が自由に使えないことを意味します。例えば、公開空地は一般に開放しなければならず、そこに物を置いたり、駐車場として利用したりすることはできません。こうした利用上の制約は、土地全体の価値を下げる要因とみなされ、その制約の度合いに応じて評価額を減額できることがあります。この評価は専門的な判断が必要なため、必ず専門家に相談しましょう。
都市計画道路の予定地になっていませんか?
特定街区の計画と同時に、街区内やその周辺で道路の新設・拡幅が計画されていることがあります。もし相続した土地の一部が「都市計画道路予定地」にかかっている場合、その部分は将来、道路として収用される可能性があり、建築にも厳しい制限がかかります。具体的には、原則として2階建て以下の木造や鉄骨造などの簡易な建物しか建てられなくなります。この厳しい建築制限は大きな減額要因となり、「都市計画道路予定地の評価減」という特例を適用して評価額を最大50%まで下げられる可能性があります。
特定街区の土地評価はなぜ専門家への相談が必須なのか
ここまでご説明してきたように、特定街区の土地評価は非常に複雑で、専門的な知識が不可欠です。ご自身で判断するのは難しく、リスクも伴います。
都市計画の内容を正確に読み解く専門知識
特定街区の評価を正しく行うには、まずその街区に定められた都市計画の内容を正確に読み解く必要があります。市役所などで「都市計画決定告知書」などの資料を取得し、容積率や高さ制限、壁面の位置の制限といった細かいルールを一つひとつ確認し、それが評価対象の土地にどう影響するかを判断しなければなりません。これには、都市計画法や建築基準法に関する深い知識が求められます。
税理士の経験で評価額が大きく変わることも
土地の評価、特に特定街区のような特殊な土地の評価は、担当する税理士の知識や経験によって結果が大きく異なることがあります。減額要因を見逃してしまうと、本来よりも高い相続税を納めることになりかねません。逆に、土地評価に精通した相続専門の税理士に依頼すれば、あらゆる可能性を検討し、最も適正で、かつ納税者に有利な評価額を算出してくれるはずです。大切な財産を守るためにも、相続、特に不動産評価に強い税理士を選ぶことが非常に重要です。
まとめ
今回は、特定街区と土地の相続税評価額への影響について解説しました。最後に、大切なポイントをもう一度おさらいしましょう。
- 特定街区とは、市街地再開発などのために、建築ルールがオーダーメイドで定められた特別なエリアです。
- 相続税評価額は、原則として路線価方式で計算しますが、特定街区ならではの高い容積率や、逆に課せられた利用制限が評価に影響します。
- 「公開空地の設置義務」や「都市計画道路予定地」といった利用上の制限は、評価額の大きな減額要因になる可能性があります。
- 評価は非常に専門的で複雑なため、必ず土地評価に強い相続専門の税理士に相談することが、適正な評価と節税への鍵となります。
もしご自身の土地が特定街区にあるとわかったら、まずは焦らずに専門家へ相談することから始めてみてください。それが、納得のいく相続手続きへの第一歩となるはずです。
参考文献
特定街区と相続税評価額のよくある質問まとめ
Q.特定街区とは何ですか?
A.都市計画法に基づき、街並みの整備や有効な土地利用を促進するために指定される特別なエリアです。容積率や高さ制限などの規制が緩和される代わりに、建築物のデザインや配置に一定のルールが設けられます。
Q.土地が特定街区に指定されると、相続税評価額は高くなりますか?
A.容積率の緩和などにより土地の利用価値が高まるため、評価額が上昇する傾向にあります。ただし、建築デザインの制限なども考慮されるため、必ずしも高くなるとは限りません。個別の評価が必要です。
Q.特定街区内の土地の相続税評価額はどのように計算するのですか?
A.基本的には路線価方式または倍率方式で評価しますが、特定街区の指定による利用価値の増減(容積率の緩和や建築制限など)を個別に評価し、補正を加える場合があります。
Q.特定街区に指定されるメリットとデメリットは何ですか?
A.メリットは容積率緩和などにより土地の高度利用が可能になる点です。デメリットは、建築物のデザインや壁面の位置などに制限が加わり、自由な建築が難しくなる可能性がある点です。
Q.自分の土地が特定街区に含まれているか確認する方法はありますか?
A.お住まいの市区町村役場の都市計画を担当する部署(都市計画課など)で確認できます。また、自治体のウェブサイトで公開されている都市計画図で調べることも可能です。
Q.特定街区の評価で専門家に相談した方が良いのはなぜですか?
A.特定街区の評価は、容積率の緩和や建築制限といったプラス・マイナス両面の要因を総合的に判断する必要があり複雑です。適正な評価額を算出するために、土地評価に詳しい専門家への相談をおすすめします。