税理士法人プライムパートナーズ

生前贈与に必須!
贈与契約書の書き方とトラブル回避の全知識

2025-08-09
目次

「親から子へ資金援助をしたい」「将来の相続税対策として生前に財産を渡しておきたい」など、生前贈与を検討される方が増えています。しかし、ただ財産を渡すだけでは、後々「そんなつもりじゃなかった」というトラブルや、予期せぬ税金の問題が発生する可能性があります。そこで非常に重要になるのが「贈与契約書」です。この記事では、なぜ贈与契約書が必要なのか、具体的な書き方から注意点まで、誰にでも分かりやすく解説していきます。

贈与契約書ってそもそも何?なぜ必要なの?

贈与契約書とは、財産を「あげた人(贈与者)」と「もらった人(受贈者)」の間で、「いつ、誰が、誰に、何を、どのように贈与したか」という契約内容を明確にするための書面です。法律上、贈与は口約束でも成立しますが、後々のトラブルを防ぎ、贈与の事実を客観的に証明するために、贈与契約書の作成は絶対に欠かせません。契約書がないと、思わぬ落とし穴にはまってしまうことがあるんです。

将来の相続トラブルを防ぐため

贈与契約書がないと、贈与した事実やその金額が曖昧になりがちです。例えば、お父様が亡くなった後、他の兄弟から「兄さんだけお父さんからこっそり多額のお金をもらっていたはずだ。不公平だ!」と疑われてしまうかもしれません。このような時、贈与契約書があれば、「この日に、この金額の贈与を受けた」という明確な証拠を示せるため、相続人間の無用な争いを防ぎ、円満な遺産分割につながります。

税務調査への備え

税務署は、人が亡くなった後の相続税調査で、故人や家族の預金口座の動きを過去何年にもわたって詳しく調べます。その際、使途が不明な大きな金額の移動があると、「これは隠していた財産(名義預金)ではないか?」「毎年同じ額を渡しているが、これはまとめて贈与する約束(定期贈与)だったのでは?」と指摘されることがあります。もしそうなると、生前贈与が認められず、高額な相続税贈与税が課されてしまうリスクがあります。贈与契約書は、そのお金の動きが正当な「贈与」であったことを証明する、非常に強力な武器になるのです。

不動産の名義変更(登記)に必要

土地や建物などの不動産を生前贈与した場合、その不動産の名義を贈与者から受贈者へ変更する手続き(所有権移転登記)を法務局で行う必要があります。この登記手続きの際に、登記の原因を証明する書類として贈与契約書の提出が求められます。あらかじめ準備しておくことで、手続きがスムーズに進みます。

【ひな形付き】贈与契約書の書き方|5つの必須項目

贈与契約書に法律で定められた決まった形式はありませんが、契約書として有効にするためには、以下の5つの項目を必ず盛り込む必要があります。誰が見ても内容がはっきりと分かるように書くことが大切です。

  • 誰が(贈与者):財産をあげる人の住所と氏名
  • 誰に(受贈者):財産をもらう人の住所と氏名
  • いつ(贈与日):贈与契約を結んだ日付
  • 何を(贈与財産):贈与する財産の具体的な内容(金額、不動産の情報など)
  • どのように(贈与方法):贈与を実行する方法(銀行振込など)

これらの項目を踏まえ、具体的なひな形を見ていきましょう。

現金(預金)を贈与する場合の契約書ひな形

最も一般的な現金を贈与する場合のシンプルなひな形です。

贈与契約書

贈与者 〇〇 〇〇(以下「甲」という。)と受贈者 △△ △△(以下「乙」という。)は、本日、以下のとおり贈与契約を締結する。

第1条(贈与)
甲は乙に対し、自己の所有する金銭 110万円 を贈与することを約し、乙はこれを承諾した。

第2条(贈与の履行)
甲は乙に対し、前条の金銭を令和〇年〇月〇日までに、乙名義の下記預金口座に振り込む方法により引き渡すものとする。
金融機関名:〇〇銀行 〇〇支店
口座種別:普通預金
口座番号:1234567
口座名義:△△ △△

本契約の成立を証するため、本書を2通作成し、甲乙それぞれ署名押印の上、各1通を保有するものとする。

令和〇年〇月〇日

(甲)贈与者
住所:東京都千代田区〇〇一丁目〇番〇号
氏名:〇〇 〇〇 ㊞

(乙)受贈者
住所:東京都新宿区〇〇一丁目〇番〇号
氏名:△△ △△ ㊞

不動産を贈与する場合の契約書ひな形

不動産の場合は、法務局で取得できる登記事項証明書(登記簿謄本)を見ながら、情報を正確に記載することが非常に重要です。

不動産贈与契約書

贈与者 〇〇 〇〇(以下「甲」という。)と受贈者 △△ △△(以下「乙」という。)は、本日、以下のとおり不動産贈与契約を締結する。

第1条(贈与)
甲は乙に対し、自己の所有する下記表示の不動産(以下「本件不動産」という。)を贈与することを約し、乙はこれを承諾した。

【土地の表示】
所在:東京都渋谷区〇〇一丁目
地番:〇〇番〇
地目:宅地
地積:150.00平方メートル

【建物の表示】
所在:東京都渋谷区〇〇一丁目〇〇番地〇
家屋番号:〇〇番〇
種類:居宅
構造:木造スレート葺2階建
床面積:1階 60.00平方メートル、2階 50.00平方メートル

第2条(所有権移転登記)
甲は乙に対し、本契約締結後、速やかに本件不動産の所有権移転登記手続きを行うものとし、登記手続きに要する費用(登録免許税等)は乙の負担とする。

第3条(公租公課の負担)
本件不動産に関する固定資産税・都市計画税は、所有権移転登記の日を基準とし、その日までの分を甲が、その翌日以降の分を乙が負担する。

本契約の成立を証するため、本書を2通作成し、甲乙それぞれ署名押印の上、各1通を保有するものとする。

令和〇年〇月〇日

(甲)贈与者
住所:東京都千代田区〇〇一丁目〇番〇号
氏名:〇〇 〇〇 ㊞

(乙)受贈者
住所:東京都渋谷区〇〇一丁目〇番〇号
氏名:△△ △△ ㊞

贈与契約書を作成するときの6つのポイント

贈与契約書をより確実なものにするために、作成時に気をつけたいポイントを6つご紹介します。

パソコン作成でもOK!でも署名は手書きで

契約書はパソコンで作成しても、手書きで作成しても、どちらでも法的な効力は変わりません。しかし、贈与者と受贈者本人が内容に合意したことの証明として、最後の署名欄は自筆で書くことを強くおすすめします。

印鑑は実印がベスト

法律上は認印でも問題ありませんが、契約の信頼性を高めるためには、市区町村に登録した実印を使用し、お互いの印鑑証明書を添付しておくと万全です。金融機関の手続きなどで求められることもあります。もちろん、スタンプ式の印鑑(シャチハタなど)は避けましょう。

不動産贈与の場合は収入印紙が必要

不動産の贈与契約書には、200円の収入印紙を貼付して消印(割印)を押す必要があります。これは印紙税法で定められています。一方、現金の贈与契約書には収入印紙は不要です。

契約書は2通作成し、お互いに保管する

作成した契約書は、贈与者用と受贈者用の2通を作成します。そして、2通の契約書が同じものであることを証明するために、両方の書類にまたがるように割印を押しましょう。その後、各自が1通ずつ大切に保管します。

贈与の証拠は契約書以外にも残す

契約書だけでなく、実際に贈与が行われた証拠もセットで残すことが重要です。現金を贈与する場合は、手渡しではなく銀行振込を利用しましょう。通帳に「いつ、誰から、誰へ、いくら」送金されたかが記録として残るため、客観的な証拠となります。また、贈与されたお金が入っている通帳や印鑑は、必ずもらった側(受贈者)が自分で管理してください。贈与した側が管理を続けていると「名義預金」とみなされる原因になります。

贈与相手が未成年者の場合

贈与を受ける人が18歳未満の未成年者である場合、一人で有効な契約を結ぶことができません。そのため、親権者などの法定代理人が代わりに契約に合意する必要があります。契約書には、受贈者本人の署名に加えて、法定代理人の署名・捺印も必要になります。

注意!生前贈与で失敗しないためのポイント

贈与契約書を完璧に作っても、生前贈与のルールを知らないと、せっかくの対策が無駄になってしまうことがあります。特に注意すべき点を確認しましょう。

年間110万円の基礎控除と定期贈与

贈与税には、もらった人一人あたり年間110万円までの基礎控除額があります。この範囲内であれば贈与税はかからず、申告も不要です。しかし、毎年110万円を10年間にわたって贈与するなど、同じ時期に同じ金額を繰り返していると、税務署から「初めから1,100万円を贈与する約束(定期贈与)だった」とみなされる可能性があります。その場合、合計額である1,100万円に対して贈与税が課されてしまいます。このリスクを避けるためにも、毎年きちんと贈与契約書を作成し、贈与する日や金額を少し変えるなどの工夫をすることが有効です。

死亡前7年以内の贈与は相続税の対象に(生前贈与加算)

税制改正により、2024年1月1日以降の贈与については、亡くなる前7年以内に相続人(子や配偶者など)へ行われた贈与は、相続財産に加算して相続税を計算するルール(生前贈与加算)になりました。(改正前は3年以内でした。)つまり、亡くなる直前に慌てて贈与をしても、相続税対策としての効果が薄れてしまうのです。そのため、生前贈与は健康で元気なうちから計画的に、そして早めに始めることがとても重要です。

不動産贈与にかかる税金

不動産を生前贈与すると、贈与税のほかに不動産取得税登録免許税という税金がかかります。これらの税金は、相続で不動産を取得した場合に比べて税率が高く設定されているため、予想以上に高額になることがあります。安易に不動産を贈与する前に、税金の負担額を試算しておくことが大切です。

税金の種類 贈与の場合
不動産取得税 課税(固定資産税評価額の原則3~4%)
登録免許税 課税(固定資産税評価額の2%)

贈与税の非課税特例を活用しよう

生前贈与には、高額な財産を贈与しても税金がかからなくなる特例制度がいくつか用意されています。うまく活用すれば、大きな節税効果が期待できます。

特例制度の名称 概    要
相続時精算課税制度 原則60歳以上の父母や祖父母から18歳以上の子や孫への贈与が、累計2,500万円まで非課税になる制度。ただし、贈与者が亡くなった際に相続財産に加算して相続税で精算する。
夫婦間の居住用不動産の贈与(おしどり贈与) 婚姻期間20年以上の夫婦間で、居住用不動産またはその購入資金を贈与した場合、最大2,000万円まで非課税になる制度。
住宅取得等資金の贈与 父母や祖父母から住宅の新築・取得などのための資金贈与を受けた場合、最大1,000万円まで非課税になる制度。
教育資金の一括贈与 30歳未満の子や孫へ教育資金を一括で贈与した場合、最大1,500万円まで非課税になる制度。

これらの特例にはそれぞれ細かい要件があり、適用を受けるためには必ず贈与税の申告が必要です。利用を検討する場合は、事前に専門家へ相談することをおすすめします。

贈与契約書は専門家に依頼すべき?

ここまで見てきたように、贈与契約書はポイントを押さえればご自身で作成することも可能です。しかし、贈与する財産が高額な場合や不動産が含まれる場合、また税金の特例を使いたい場合などは、記載内容が複雑になります。少しでも不安があるなら、税理士や司法書士などの専門家に作成を依頼するのが安心です。専門家であれば、法的に不備のない契約書を作成してくれるだけでなく、ご家庭の状況に合わせた最適な生前贈与の方法や節税対策についてもアドバイスをしてくれます。

まとめ

生前贈与を行う上で、贈与契約書は「言った言わない」のトラブルを防ぎ、税務署に対して贈与の事実を証明するための、いわば「お守り」のような存在です。作成のポイントを押さえ、贈与の記録をしっかりと残すことで、安心して財産を次の世代に引き継ぐことができます。ただし、生前贈与には贈与税や相続税の複雑なルールが絡んできます。安易な自己判断で思わぬ失敗をしないためにも、大切な財産を守るために、一度専門家に相談してみてはいかがでしょうか。


【参考文献】

生前贈与と贈与契約書のよくある質問まとめ

Q. 生前贈与で贈与契約書はなぜ必要ですか?ないとどうなりますか?

A. 贈与があったことの明確な証拠となり、後のトラブル(相続人間の争いや税務調査)を防ぐために必要です。口約束だけの贈与は、税務署に否認されたり、他の相続人から無効を主張されたりするリスクがあります。

Q. 贈与契約書は自分で作成できますか?

A. はい、ご自身で作成することも可能です。ただし、記載内容に不備があると無効になるリスクもあるため、不安な場合は専門家(司法書士や税理士)に相談することをおすすめします。

Q. 贈与契約書には最低限何を記載すればよいですか?

A. 最低限、「誰が(贈与者)」「誰に(受贈者)」「いつ」「何を(金額や不動産の詳細)」「どのように贈与したか」を明確に記載します。加えて、贈与者と受贈者双方の署名・捺印が必要です。

Q. 贈与契約書に収入印紙は必要ですか?

A. 現金や預貯金の贈与契約書には収入印紙は不要です。ただし、不動産の贈与契約書には、契約金額に応じた収入印紙を貼る必要があります。

Q. 年間110万円以下の贈与でも贈与契約書は作ったほうがいいですか?

A. はい、作成することを強くおすすめします。110万円以下なら贈与税はかかりませんが、毎年同じ時期に同じ金額を贈与していると「連年贈与」とみなされ、将来的に課税対象となる可能性があります。契約書はその都度の贈与であることを証明する証拠になります。

Q. 贈与契約書を作成するタイミングはいつが良いですか?

A. 贈与を実行する前、または同時に作成するのが理想的です。例えば、お金を振り込むのであれば、その日付以前に契約書を作成し、日付を記載しておくのが最も安全です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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