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生命保険の受取人は子供?配偶者?相続税で損しない選び方

2025-06-06
目次

「生命保険の受取人は、とりあえず配偶者にしておこう」と考えていませんか?実はその選択、相続税の面では損をしてしまう可能性があります。配偶者には「配偶者の税額軽減」という強力な制度があるため、生命保険の非課税枠を有効に活用できないことがあるのです。今回は、なぜ子供を受取人にした方が有利な場合があるのか、具体的なケースを交えながら、誰を受取人にすべきか分かりやすく解説します。

生命保険金にかかる税金と非課税枠の基本

まず、なぜ生命保険が相続対策として有効なのか、基本的な仕組みからおさらいしましょう。生命保険の死亡保険金は、亡くなった方の財産ではありませんが、税法上「みなし相続財産」として扱われ、相続税の課税対象となります。しかし、残された家族の生活を守るという大切な役割があるため、税制上の特別な優遇措置が設けられているのです。

死亡保険金は「みなし相続財産」

被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金は、相続税の課税対象となります。ただし、誰が「契約者(保険料を払う人)」「被保険者(保険の対象になる人)」「受取人(保険金をもらう人)」なのかによって、かかる税金の種類が変わるため注意が必要です。

契約形態 かかる税金
契約者:夫 / 被保険者:夫 / 受取人:妻・子 相続税
契約者:夫 / 被保険者:妻 / 受取人:夫 所得税
契約者:夫 / 被保険者:妻 / 受取人:子 贈与税

このように、相続税対策として生命保険を活用する場合は、契約者と被保険者を同一人物にしておくことが大前提となります。

生命保険金の非課税枠とは?

相続税対策における生命保険の最大のメリットが、この「生命保険金の非課税枠」です。相続人が死亡保険金を受け取る場合に限り、一定額までが非課税になります。この非課税限度額の計算式は非常に重要なので、覚えておきましょう。

【生命保険の非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の数】

例えば、法定相続人が配偶者と子供2人の合計3人であれば、500万円 × 3人 = 1,500万円までが非課税となります。仮に3,000万円の死亡保険金を受け取ったとしても、課税対象となるのは1,500万円だけで済むのです。この非課税枠をいかに有効に使うかが、節税のポイントになります。

受取人が配偶者だと相続税で損するって本当?

「配偶者が保険金を受け取れば、相続税はかからないから安心」と思いがちですが、ここに落とし穴があります。配偶者には、生命保険の非課税枠とは別に、もっと強力な税金の軽減制度が用意されているからです。

配偶者には強力な「配偶者の税額軽減」がある

配偶者が遺産を相続する場合、「配偶者の税額軽減(通称:配偶者控除)」という制度を利用できます。これは、夫婦で協力して築いた財産であることや、残された配偶者の今後の生活保障を目的とした制度です。具体的には、以下のいずれか多い金額まで、配偶者が相続した財産には相続税がかかりません。

  • 1億6,000万円
  • 配偶者の法定相続分相当額

ほとんどのケースで、配偶者はこの制度を使うことで相続税の納税額がゼロになります。つまり、配偶者は生命保険の非課税枠を使わなくても、もともと相続税がかからない可能性が高いのです。

具体例で比較!受取人が配偶者の場合と子供の場合

それでは、受取人の違いでどれだけ納税額に差が出るのか、簡単なモデルケースで見てみましょう。

【前提】
・被相続人:夫
・相続人:妻、子供1人(法定相続人2人)
・遺産総額:現金1億円、死亡保険金2,000万円
・生命保険の非課税枠:500万円 × 2人 = 1,000万円

ケース1:受取人が配偶者 ケース2:受取人が子供
配偶者は保険金2,000万円(うち1,000万円非課税)と現金の一部を相続。「配偶者の税額軽減」で相続税は0円。子供は残りの現金を相続し、相続税を納税 子供が保険金2,000万円を受け取り、非課税枠1,000万円を有効活用。配偶者は現金1億円を相続し、「配偶者の税額軽減」で相続税は0円

この場合、ケース2の方が子供の課税対象財産が1,000万円減るため、家族全体で支払う相続税額を抑えることができます。せっかくの非課税枠を、もともと納税がゼロになる可能性が高い配偶者が使ってしまうのは、非常にもったいないと言えるのです。

二次相続まで考えるとさらに差がつく

相続は一度きりではありません。多くの場合、一次相続(今回の相続)の後に、二次相続(残された配偶者が亡くなった時の相続)が発生します。一次相続で配偶者が多くの財産を相続すると、その財産は二次相続の際に子供たちに引き継がれ、課税対象となります。二次相続では「配偶者の税額軽減」は使えませんし、法定相続人も減るため、税負担が重くなりがちです。

生命保険金を子供が直接受け取ることで、配偶者の財産を過度に増やすことなく、二次相続の負担を軽減する効果も期待できるのです。

子供を受取人にするメリット

子供を生命保険金の受取人に設定することには、節税以外にも多くのメリットがあります。ここでは主なメリットを3つご紹介します。

生命保険の非課税枠を最大限に活用できる

最大のメリットは、やはり節税効果です。「配偶者の税額軽減」という強力なカードを持つ配偶者に代わり、納税義務が発生しやすい子供が非課税枠を利用することで、家族トータルでの納税額を最小限に抑えることができます。これは、相続対策の基本戦略とも言えるでしょう。

納税資金をスムーズに準備できる

相続税は、原則として相続開始を知った日の翌日から10か月以内に現金で一括納付しなければなりません。しかし、遺産が不動産ばかりで、すぐに使える現金がないというケースも少なくありません。死亡保険金は、預貯金口座のように凍結されることなく、受取人が単独で請求手続きを行えば、比較的短期間で現金を受け取れます。これにより、子供が納税資金の準備で困る事態を防ぐことができます。

遺産分割のトラブルを避けやすい

死亡保険金は、民法上「受取人固有の財産」とされており、原則として遺産分割協議の対象にはなりません。そのため、「この子に確実に財産を遺したい」という想いを形にすることができます。他の相続人の同意を得ることなく、指定した子供に直接資金を渡せるため、遺産分割で揉めるリスクを減らす効果も期待できます。

子供を受取人にする際の注意点

多くのメリットがある一方で、子供を受取人にする際にはいくつか注意すべき点もあります。後々のトラブルを避けるためにも、しっかり確認しておきましょう。

子供が複数いる場合は受取人をどうするか?

子供が複数いる場合、特定の子供一人だけを受取人にすると、他の子供から「不公平だ」という不満が出てしまう可能性があります。このような事態を避けるため、子供たち全員を受取人として、受取割合を均等に設定することが可能です。保険会社に相談し、適切な設定を行いましょう。

子供が未成年の場合

受取人に指定した子供が未成年の場合、子供自身で保険金の請求手続きを行うことはできません。その場合は、親権者(通常は生存している親)や、未成年後見人が代理で手続きを行うことになります。手続きが少し複雑になる可能性があることを覚えておきましょう。

孫を受取人にするときの注意点

「子供を飛び越えて孫に財産を渡したい」と考える方もいるかもしれません。しかし、孫を受取人にする場合は注意が必要です。孫は原則として法定相続人ではないため、生命保険の非課税枠を使うことができません。さらに、相続税が2割加算されるペナルティも課せられます。節税目的で孫を受取人にすることは、かえって納税額を増やしてしまう結果になりかねません。

配偶者を受取人にした方が良いケースもある

これまで子供を受取人にするメリットを強調してきましたが、もちろん、配偶者を受取人にした方が良いケースも存在します。ご家庭の状況に合わせて最適な選択をすることが大切です。

相続税がかからない場合

遺産の総額が、相続税の基礎控除額「3,000万円 + 600万円 × 法定相続人の数」を下回る場合、そもそも相続税の申告・納税は必要ありません。この場合は、節税を気にする必要はないため、純粋に残された配偶者の生活保障を第一に考えて受取人を決めるのが良いでしょう。

配偶者の生活資金が心配な場合

遺産の多くが不動産で、配偶者がすぐに使える現金が少ない場合や、高齢で今後の生活費や医療費に不安がある場合は、配偶者を受取人にしておくのが安心です。すぐに現金化できる死亡保険金は、当面の生活資金として非常に心強い支えになります。

子供に多額の現金を渡すのが不安な場合

お子様がまだ若く、金銭感覚が未熟であったり、浪費癖があったりして、まとまった大金を一度に渡すことに不安を感じる場合もあるでしょう。このようなケースでは、まずは配偶者が受け取り、そこから計画的に子供へ資金援助をするという形も考えられます。

まとめ

生命保険の受取人を誰にするかは、相続税対策の成否を分ける重要なポイントです。一般的には、「配偶者の税額軽減」という強力な制度を使える配偶者ではなく、納税が必要になる可能性のある子供を受取人にする方が、家族全体の相続税を抑えられるケースが多くあります。さらに、二次相続まで見据えると、その効果はより大きくなります。

ただし、これはあくまで税金面でのセオリーです。ご家庭の財産状況や家族構成、そして何よりも「誰にどのように財産を遺したいか」という想いによって、最適な答えは変わってきます。今回の内容を参考に、ご自身の家族にとって最良の選択は何かをじっくり考えてみてください。もし判断に迷うようでしたら、専門家へ相談することも検討しましょう。

参考文献

生命保険の受取人に関するよくある質問

Q.生命保険の受取人は誰にするのが一番節税になりますか?

A.一般的には、相続税の納税が発生しやすい子供を受取人にする方が、生命保険の非課税枠を有効活用でき、家族全体の節税につながるケースが多いです。

Q.配偶者が生命保険金を受け取っても、配偶者控除で相続税はかからないんですよね?

A.はい、その通りです。「配偶者の税額軽減」により、配偶者が受け取った財産が1億6,000万円または法定相続分以下であれば、相続税はかかりません。だからこそ、非課税枠は他の相続人に使った方が効果的と言えます。

Q.子供が複数いる場合、受取人はどうすればいいですか?

A.子供たち全員を均等な割合で受取人に指定することができます。特定の子供だけを受取人にすると不公平感が生じる可能性があるため、複数人を指定するのが一般的です。

Q.孫を受取人にすると非課税枠は使えますか?

A.いいえ、お孫さんは法定相続人ではないため、原則として生命保険の非課税枠は使えません。さらに相続税が2割加算されるため注意が必要です。ただし、お子さんが亡くなっていてお孫さんが代襲相続人になる場合は例外です。

Q.死亡保険金は遺産分割の対象になりますか?

A.いいえ、死亡保険金は受取人固有の財産とされるため、原則として遺産分割協議の対象にはなりません。そのため、遺産分割がまとまる前でもすぐに受け取ることができます。

Q.受取人は後から変更できますか?

A.はい、保険契約者であれば、被保険者の同意を得ることで、保険会社の所定の手続きを経て受取人を変更することが可能です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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