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生命保険の受取人は誰にすべき?税金で損しないための最適な選び方

2025-06-30
目次

生命保険を契約するとき、誰を受取人にするか、深く考えずに決めていませんか?実は、生命保険の受取人を誰にするかで、受け取るときにかかる税金の種類や金額が大きく変わることがあるんです。大切な家族に少しでも多くの資産を残すためには、受取人の指定はとても重要です。この記事では、誰を受取人にできるのかという基本から、税金で損をしないためのポイント、そしてライフステージに合わせた最適な受取人の選び方まで、わかりやすく解説していきますね。

生命保険の受取人は誰にできる?基本的な範囲を知ろう

生命保険は、万が一のことがあったときに残された家族の生活を守るための大切な仕組みです。そのため、死亡保険金の受取人に指定できる人には、一定の範囲が定められています。誰でも自由自在に指定できるわけではないので、まずは基本のルールから確認しましょう。

原則は配偶者と2親等以内の血族

多くの保険会社では、生命保険の受取人になれる範囲を「原則として、配偶者および2親等以内の血族」としています。血族とは、血のつながりのある親族のことで、具体的には以下の人が当てはまります。

  • 配偶者:法律上の婚姻関係にある夫または妻
  • 1親等の血族:父母、子(養子を含む)
  • 2親等の血族:祖父母、兄弟姉妹、孫

まずは、この範囲内で誰に保険金を残したいかを考えるのが基本となります。

事実婚や同性パートナーでも受取人になれる?

最近では、家族の形も多様化しています。そのため、保険会社によっては、戸籍上の関係だけではなく、生活の実態を考慮してくれるケースも増えてきました。事実婚の相手や同性のパートナーなど、法律上の親族ではない人を生命保険の受取人として指定できる場合があります。
ただし、そのためには「生計を同一にしている期間が一定以上あること」や「他に法律上の配偶者がいないこと」など、保険会社が定める条件を満たす必要があります。希望する場合は、必ず事前に保険会社に確認しましょう。

税制上の注意点

事実婚の相手など、法律上の相続人(法定相続人)ではない人を受取人に指定できた場合でも、税金面での注意が必要です。死亡保険金を受け取る際には、「500万円 × 法定相続人の数」という非課税枠がありますが、この特典は法定相続人でなければ利用できません。そのため、税金の負担が大きくなる可能性があることを覚えておきましょう。

受取人によって税金が変わる!3つのパターンを徹底解説

ここが一番大切なポイントです。生命保険金を受け取るときにかかる税金は、「契約者(保険料を払う人)」「被保険者(保険の対象になる人)」「受取人(保険金を受け取る人)」の3者が誰であるかによって、相続税所得税贈与税のいずれかに変わります。どの税金になるかで、手元に残る金額が大きく変わってしまうので、しっかり理解しておきましょう。

【相続税】最も一般的で有利なパターン

最も一般的なのが、相続税の対象となるケースです。これは、夫が自分の万が一に備えて、妻や子に保険金を残すような場合です。

契約形態 契約者(夫)= 被保険者(夫)→ 受取人(妻・子)
ポイント 「500万円 × 法定相続人の数」という生命保険独自の非課税枠が使えます。例えば法定相続人が妻と子2人の合計3人なら、500万円 × 3人 = 1,500万円までが非課税になります。

残された家族の生活保障という目的から、税制上も優遇されている最もおすすめの形です。

【所得税】保険料を払った人が受け取るパターン

次に、所得税の対象となるケースです。これは、夫が妻の保険の保険料を支払い、妻が亡くなったときに夫自身が保険金を受け取るような場合です。

契約形態 契約者(夫)→ 被保険者(妻)→ 受取人(夫)
ポイント 受け取った保険金は「一時所得」扱いになります。課税対象額は「(受け取った保険金額 – 支払った保険料総額 – 特別控除50万円)÷ 2」で計算され、他の所得と合算して税額が決まります。

支払った保険料を差し引けるため、一概に不利とは言えませんが、相続税の非課税枠は使えません。

【贈与税】税負担が最も重くなりやすいパターン

最も注意が必要なのが、贈与税の対象となるケースです。これは、契約者、被保険者、受取人がすべて別人になる場合です。

契約形態 契約者(夫)→ 被保険者(妻)→ 受取人(子)
ポイント 夫から子へ財産が贈与されたとみなされ、贈与税の対象になります。贈与税は基礎控除が年間110万円しかなく、税率も高いため、3つのパターンの中で最も税負担が重くなる可能性があります。

特別な意図がない限り、この契約形態は避けるのが賢明です。

死亡保険金にかかる税金の種類まとめ

税金の種類 契約者・被保険者・受取人の関係
相続税 契約者 = 被保険者
所得税 契約者 = 受取人
贈与税 契約者、被保険者、受取人がすべて異なる

【ケース別】誰を受取人にするのが最適?

では、具体的に自分の場合は誰を受取人にするのが良いのでしょうか。ライフステージ別の一般的な考え方をご紹介します。

配偶者がいる場合

家計を支えている方が亡くなった場合、残された配偶者の生活が最も大きな影響を受けます。そのため、まずは配偶者を受取人に指定するのが一般的です。これにより、当面の生活費や住宅ローンの返済などに充てることができます。

子どもがいる場合

子どもを受取人にすることももちろん可能です。特に教育資金として残したい場合などに考えられます。ただし、子どもが未成年の場合、親権者(または未成年後見人)が保険金を管理することになります。手続きが複雑になる可能性もあるため、注意が必要です。
子どもが複数いる場合は、「長男に60%、長女に40%」のように、受け取る割合を指定することもできます。

独身の場合

独身の方の場合は、ご自身の万が一の際に経済的に支えたい人、あるいは葬儀費用などで迷惑をかけたくない人を受取人に指定します。多くの場合はを指定しますが、兄弟姉妹を指定することも可能です。誰にどのくらいのお金を残したいかによって決めるとよいでしょう。

生命保険の受取人を変更したいときの手続き

結婚、出産、離婚、家族との死別など、ライフステージは時間とともに変化します。それに合わせて、保険の受取人も見直すことが大切です。「昔入った保険の受取人が、離婚した元配偶者のままだった…」なんてことがないように、定期的に確認しましょう。

変更手続きの基本的な流れ

受取人の変更は、保険会社に連絡すれば、比較的簡単な手続きで行えます。

  1. 保険会社のコールセンターや担当者に連絡し、受取人変更の意思を伝える。
  2. 送られてくる変更請求書などの書類に必要事項を記入する。
  3. 必要書類を添えて保険会社に返送する。
  4. 保険会社での手続きが完了すれば、変更は終了です。

受取人変更時の注意点

受取人を変更する際には、いくつか注意点があります。

  • 被保険者の同意が必要:契約者が受取人を変更する際には、必ず被保険者の同意を得る必要があります。勝手に変更することはできません。
  • 変更できないタイミング:被保険者が亡くなるなど、保険金の支払事由が発生してしまった後では、受取人を変更することはできません。

受取人が先に亡くなってしまったらどうなる?

もし、保険金の受取人に指定していた人が、被保険者よりも先に亡くなってしまったら、保険金はどうなるのでしょうか。この場合、何もしないと、亡くなった受取人の法定相続人全員が保険金を受け取ることになります。例えば、受取人を妻にしていたところ、その妻が先に亡くなった場合、妻の相続人(妻の親や兄弟姉E妹など)が保険金を受け取る可能性があり、本来渡したかった人(自分の子など)に渡らないケースも考えられます。受取人が亡くなった場合は、速やかに新しい受取人に変更する手続きを行いましょう。

まとめ

生命保険の受取人を誰にするかは、あなたの想いを形にするための非常に重要な選択です。そして、その選択が税金という形で、家族が受け取る金額に直接影響します。

一番のポイントは、「契約者=被保険者」とすることで、税制上最も有利な相続税の対象にし、生命保険の非課税枠を最大限活用することです。そして、結婚や出産といったライフイベントがあった際には、必ず保険の内容を見直し、その時々の状況に最も合った人を受取人に変更することを忘れないでください。

この記事を参考に、ご自身の保険契約を一度確認してみてはいかがでしょうか。大切な人へ、あなたの想いを最適な形で残せるように準備しておきましょう。

参考文献

国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

国税庁 No.1615 遺族の方が支払を受ける個人年金

国税庁 No.4402 贈与税がかかる場合

生命保険の受取人に関するよくある質問

Q.生命保険の受取人は誰にすればいいですか?

A.一般的には、配偶者や子供、親など生計を共にする家族を指定します。万が一の際に経済的に困る人を第一に考えましょう。

Q.受取人の範囲に決まりはありますか?

A.原則として、配偶者および2親等以内の血族(親、子、兄弟姉妹、祖父母、孫など)が一般的です。保険会社によっては範囲が異なる場合があります。

Q.独身の場合、受取人は誰にすべきですか?

A.ご両親や兄弟姉妹を指定することが多いです。ご自身の葬儀費用などを誰かに負担してもらうことを想定して決めると良いでしょう。

Q.事実婚のパートナーや恋人を受取人にできますか?

A.保険会社や同居期間などの条件によっては指定できる場合があります。ただし、戸籍上の親族に比べて手続きが複雑になる可能性があるため、保険会社への確認が必要です。

Q.生命保険の受取人は後から変更できますか?

A.はい、被保険者の同意があれば、契約後いつでも変更できます。結婚や出産など、ライフステージの変化に合わせて見直すことが重要です。

Q.受取人を複数人に設定することは可能ですか?

A.はい、可能です。複数人を指定する場合は、それぞれの受取割合(例:配偶者50%、長男25%、長女25%など)も決める必要があります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
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電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。