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生命保険は遺産分割の対象外?知っておくべき相続の基本と注意点

2026-01-31
目次

ご家族が亡くなられた際、「生命保険金は遺産分割でどう扱われるの?」と疑問に思う方は少なくありません。実は、生命保険金は原則として遺産分割の対象にはなりません。しかし、これにはいくつかの例外があり、また相続税の計算では考慮する必要があるなど、知っておくべき大切なポイントがあります。この記事では、生命保険金と遺産分割の関係、例外となるケース、そして相続税について、わかりやすく解説していきますね。

生命保険金は原則として遺産分割の対象外です

まず大切な原則からお話ししますね。被相続人(亡くなった方)の死亡によって支払われる生命保険金は、基本的に遺産分割協議の対象にはなりません。これは、保険金が誰のお金と見なされるか、という法律上の考え方に基づいています。具体的に見ていきましょう。

生命保険金は「受取人固有の財産」だから

生命保険金が遺産分割の対象外である最大の理由は、それが「受取人に指定された人、固有の財産」とされているからです。生命保険は、保険契約に基づいて保険会社から受取人に直接支払われるものです。つまり、亡くなった方の財産(相続財産)を相続人が分け合う「遺産分割」とは、そもそも性質が異なるんですね。そのため、特定の相続人が受取人に指定されていれば、その方が全額を受け取ることになり、他の相続人と分ける必要はありませんし、遺産分割協議書に記載する必要もありません。

「みなし相続財産」との違いを理解しよう

ここで少しややこしいのが、「みなし相続財産」という言葉です。生命保険金は、遺産分割の対象となる「民法上の相続財産」ではありませんが、税金の計算においては「相続税法上のみなし相続財産」として扱われます。この違いがとても重要です。

法律上の扱い 説 明
民法上の相続財産 遺産分割の対象となる財産です。生命保険金は原則としてこれに含まれません
相続税法上のみなし相続財産 相続税の課税対象となる財産です。生命保険金はこれに含まれます

つまり、「遺産分割では分けなくてよいけれど、相続税の計算には含めなければならない」と覚えておくと分かりやすいですよ。

要注意!生命保険金が遺産分割の対象になる例外ケース

原則として遺産分割の対象外である生命保険金ですが、例外的に遺産分割の際に考慮されるケースがあります。知らずにいると、相続トラブルの原因になる可能性もあるため、しっかり確認しておきましょう。

保険金が著しく高額で不公平が生じる場合

受け取った生命保険金の額が非常に大きく、他の相続財産のほとんどを占めるような場合、相続人の間で著しい不公平が生じると判断されることがあります。このようなケースでは、判例(最高裁決定 平成16年10月29日)により、その生命保険金は「特別受益」に準ずるものとして扱われる可能性があります。
特別受益とは、特定の相続人が生前に受けた多額の贈与などのことで、遺産分割の際にその分を考慮して公平を図る制度です。例えば、遺産総額が5,000万円で、そのうち4,500万円が特定の相続人Aさんを受取人とする生命保険金だった場合、他の相続人が受け取れる財産はごくわずかになってしまいます。こうした極端なケースでは、保険金も遺産に含めて分割計算(持ち戻し計算)をすべき、と判断されることがあるのです。

保険金の受取人が指定されていない場合

生命保険の契約時に受取人が指定されていない場合や、「法定相続人」とだけ定められている場合も注意が必要です。この場合、保険会社の約款(契約のルール)に従って支払われますが、一般的には法定相続人が法定相続分に応じて保険金を受け取ることになります。例えば、相続人が配偶者と子2人であれば、配偶者が1/2、子がそれぞれ1/4ずつ受け取る、といった形です。これは遺産分割協議の結果ではなく、保険契約に基づいて各人が固有の財産として受け取るものですが、結果的に分割される形になります。

指定された受取人が先に亡くなっている場合

保険金の受取人に指定されていた方が、被相続人よりも先に亡くなっていた場合はどうなるのでしょうか。この場合、保険法という法律の規定により、亡くなった受取人の相続人全員が保険金を受け取る権利を持ちます。例えば、受取人だった長男が既に亡くなっており、長男に妻と子がいれば、その妻と子が保険金を受け取ることになります。この際の分割割合は、法定相続分とは異なり、原則として均等割りとなりますので注意が必要です。

生命保険金と相続税の関係を徹底解説

先ほどお話しした通り、生命保険金は相続税の課税対象です。しかし、国は遺された家族の生活保障という生命保険の役割を考慮して、税制上の大きなメリットを用意してくれています。それが「非課税限度額」です。

生命保険金の非課税限度額

相続人が受け取る死亡保険金には、一定の金額まで相続税がかからない非課税枠が設けられています。この非課税限度額は、以下の計算式で求められます。

500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

例えば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人いる場合、500万円 × 3人 = 1,500万円までが非課税となります。もし3,000万円の保険金を受け取ったとしても、課税対象となるのは1,500万円を超える部分の1,500万円だけです。これは預貯金で財産を残す場合に比べて、非常に大きな節税メリットと言えます。

非課税限度額の計算で注意すべきポイント

非課税限度額を計算する際の「法定相続人の数」には、いくつか注意点があります。

  • 相続放棄した人も数に含める:相続放棄をした人がいても、その人がいなかったものとはせず、法定相続人の数に含めて計算します。
  • 養子の数には制限がある:被相続人に実子がいる場合、法定相続人の数に含められる養子は1人までです。実子がいない場合は2人までとなります。

具体例でわかる!相続税の計算方法

実際に簡単な例で見てみましょう。

  • 被相続人:父
  • 法定相続人:母、長男、長女(合計3人)
  • 死亡保険金:3,000万円(受取人は母)

この場合、非課税限度額は「500万円 × 3人 = 1,500万円」です。
母が受け取った保険金のうち、1,500万円までは非課税となり、残りの「3,000万円 – 1,500万円 = 1,500万円」が他の相続財産と合算され、相続税の課税対象となります。

相続放棄をしても生命保険金は受け取れる?

「亡くなった親に借金があったので相続放棄をしたい。でも、生命保険金だけは受け取りたい…」こういったケースは少なくありません。結論から言うと、これは可能です。ただし、大きな注意点があります。

受け取れるけど注意!非課税枠が使えなくなります

相続放棄をしても、自分が受取人に指定されている生命保険金は「受取人固有の財産」なので受け取ることができます。これは、相続財産ではないからです。
しかし、相続放棄をした人は税法上「相続人」とは見なされなくなるため、生命保険金の非課税枠を使うことができません。つまり、受け取った保険金の全額が相続税の課税対象となってしまうのです。これは非常に大きなデメリットなので、相続放棄をする前に慎重に検討する必要があります。

生命保険を活用した賢い生前対策

生命保険は、その特性を理解して活用することで、円満な相続と節税のための強力なツールになります。生前対策としての主なメリットをご紹介します。

遺産分割のトラブルを回避できる

「特定の誰かに確実に財産を渡したい」という場合に生命保険は非常に有効です。例えば、家業を継ぐ長男や、特に介護でお世話になった長女など、特定の相続人に多くの財産を残したい場合、その人を保険金の受取人に指定しておくことで、遺産分割協議を経ずに直接財産を渡すことができます。原則として遺留分(相続人が最低限受け取れる遺産の割合)の計算対象にもならないため、争いを未然に防ぐ効果が期待できます。

納税資金の準備ができる

相続税は、原則として相続開始から10ヶ月以内に現金で一括納付しなければなりません。遺産が不動産ばかりで、すぐに現金化できない場合、納税資金の確保が大きな問題となります。生命保険に加入しておけば、死亡後すぐに現金を受け取れるため、スムーズな納税資金の準備が可能になります。

相続税の節税効果が期待できる

これまでお話ししてきた「500万円 × 法定相続人の数」の非課税枠を最大限に活用することで、大きな節税効果が生まれます。同じ金額を預貯金で残す場合と比べて、課税対象となる財産を減らすことができるのです。

財産の残し方 課税対象額(法定相続人3人の場合)
現金・預金 1,500万円 1,500万円
生命保険金 1,500万円 0円(非課税限度額1,500万円の範囲内)

まとめ

今回は、生命保険金と遺産分割の関係について解説しました。最後に大切なポイントをまとめます。

  • 生命保険金は、原則として遺産分割の対象外で、受取人固有の財産です。
  • ただし、保険金が著しく高額な場合など、例外的に遺産分割で考慮されることがあります。
  • 遺産分割の対象外でも、相続税の課税対象にはなります。
  • 相続税には「500万円 × 法定相続人の数」という強力な非課税枠があり、節税に有効です。
  • 相続放棄をしても保険金は受け取れますが、非課税枠は適用されません

生命保険は、残されたご家族への想いを形にできる素晴らしい仕組みです。その特性を正しく理解し、生前から準備しておくことで、円満な相続の実現につながります。もしご自身のケースで不安な点があれば、専門家に相談してみることをお勧めします。

参考文献

国税庁 No.4114 相続税の課税対象になる死亡保険金

生命保険と遺産分割に関するよくある質問

Q. なぜ生命保険金は遺産分割の対象外なのですか?

A. 死亡保険金は、保険契約に基づき「受取人固有の財産」とされるためです。亡くなった方の財産(相続財産)ではないため、原則として遺産分割協議の対象にはなりません。

Q. 生命保険金は相続税の対象になりますか?

A. はい、「みなし相続財産」として相続税の課税対象となります。ただし、「500万円 × 法定相続人の数」で計算される非課税枠があり、税負担が軽減される場合があります。

Q. 特定の相続人だけが高額な保険金を受け取ると不公平ではありませんか?

A. はい、保険金の額が他の相続財産と比較して著しく大きいなど、相続人間で著しい不公平が生じる場合、例外的に「特別受益」とみなされ、遺産分割で考慮されることがあります。

Q. 生命保険金は遺留分の計算に含まれますか?

A. 原則として、遺留分(相続人が最低限受け取れる遺産の割合)を計算する際の基礎財産には含まれません。ただし、「特別受益」と判断されるような極端なケースでは考慮される可能性があります。

Q. 保険金の受取人が「相続人」とだけ指定されている場合はどうなりますか?

A. 受取人が個人名でなく「相続人」と指定されている場合、その保険金は法定相続人が法定相続分に応じて受け取ることになります。この場合も受取人固有の財産となり、遺産分割の対象外です。

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