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生活保護受給者が死亡したら?相続財産の扱いや保護費の返還義務を解説

2026-03-18
目次

ご家族が亡くなられた際、その方が生活保護を受給されていた場合、相続の手続きはどうなるのだろうと不安に思われるかもしれませんね。一般的な相続とは少し違う注意点があり、特に「遺された財産はどうなるの?」「これまで受給した保護費を返さなければいけないの?」といった疑問が多いかと思います。この記事では、生活保護受給者死亡時における相続財産の取り扱いと保護費の返還義務について、わかりやすく丁寧にご説明しますね。

生活保護受給者が亡くなったときの相続の基本

まず、生活保護を受けていた方が亡くなった場合の相続について、基本的なポイントを押さえておきましょう。通常の相続と同じ部分もあれば、生活保護ならではの特別なルールもありますので、一つひとつ確認していきましょうね。

生活保護の受給権は相続できない

まず大切なこととして、生活保護を受ける権利(受給権)は相続できません。これは、生活保護がその人個人の生活を支えるための制度であり、亡くなった方だけに認められた「一身専属権(いっしんせんぞくけん)」という性質を持つからです。そのため、ご家族が亡くなったからといって、その方の生活保護受給権を他のご家族が引き継ぐことはできない、と覚えておいてくださいね。

預貯金などは通常通り相続財産になる

一方で、亡くなった方が残された預貯金や不動産、有価証券などの財産は、通常の相続と同じように相続人が引き継ぐことになります。これを「相続財産」と呼びます。ご家族が亡くなったことを金融機関に伝えると、その方の銀行口座は凍結され、相続手続きが完了するまで預金の引き出しなどができなくなります。手続きを進めるためには、誰が相続人になるのかを確定させる必要があります。

相続人自身が生活保護受給者の場合はどうなる?

もし、相続人となるご自身が生活保護を受給している場合、遺産を相続することで状況が変わることがあります。まとまった預貯金や不動産などを相続すると、「ご自身の資産で生活できる」と判断され、生活保護の支給が停止されたり、廃止されたりする可能性があるのです。生活保護は、利用できる資産がないことが受給の条件だからですね。相続が発生した場合は、必ず担当のケースワーカーに正直に相談することが大切ですよ。

相続人に課される保護費の返還義務とは?

多くの方が心配されるのが、これまで支給された生活保護費の返還についてです。原則として、正しく受給していた保護費を返還する必要はありません。しかし、特定のケースでは、亡くなった方に代わって相続人が返還義務を負うことがあります。どのような場合に返還が必要になるのか、見ていきましょう。

収入や資産を偽って不正受給していた場合

生活保護法第78条では、嘘の申請や不正な手段で保護費を受け取っていた場合の返還義務について定めています。例えば、下記のようなケースが該当します。

  • アルバイトなどの収入があるのに申告していなかった
  • 所有している土地や車などの資産を隠して申請していた
  • 年金収入を少なく申告していた

このような不正受給が亡くなった後に発覚した場合、その返還義務は相続人に引き継がれることになります。

資力があるのに受給を続けていた場合

生活保護法第63条では、急な収入などによって生活できるだけの資力ができたにもかかわらず、保護費を受け取っていた場合の返還義務を定めています。申請時には本当に生活に困窮していても、その後、状況が変わることもありますよね。

  • 生命保険金や損害賠償金を受け取った
  • 遺産相続によってまとまった財産を得た
  • 遡って年金が支給された

このような収入があった場合、速やかに福祉事務所に申告する義務があります。もし申告せずに保護費を受け取り続け、その方が亡くなった場合、相続人がその分を返還しなくてはなりません。

保護費の返還金額と時効について

もし返還義務が発生した場合、具体的にいくら、いつまでに返さなければならないのでしょうか。返還金額の計算方法や時効についても知っておくと、いざという時に落ち着いて対応できますよ。

返還金額の計算方法

返還しなくてはならない金額は、その理由によって異なります。基本的には過剰に受け取ってしまった分が対象となりますが、悪質な不正受給と判断された場合は、さらに加算金が課されることもあります。

ケース 返還金額
資力ができたのに受給を続けていた場合(生活保護法第63条) 受け取った保護費に相当する金額の範囲内で、実施機関が定める額
収入や資産を偽って不正受給した場合(生活保護法第78条) 受け取った保護費の全額または一部 + 徴収額の最大40%に相当する加算金

特に不正受給の場合はペナルティが大きくなることがありますので、注意が必要です。

返還の時効と支払い方法

保護費の返還を求める権利は、5年で時効を迎えます。しかし、福祉事務所から支払い通知が届いた場合、時効は中断しますので、「5年待てば大丈夫」ということにはなりません。通知が届いたら、誠実に対応することが大切です。支払いは一括が原則ですが、どうしても難しい場合は分割払いの相談に応じてくれることもありますので、まずは福祉事務所に連絡してみましょう。通知を無視していると、督促状が送られてきたり、最終的には財産を差し押さえられたりする可能性もあります。

返還の免除は可能?

生活保護法第80条には、やむを得ない事情がある場合に返還を免除できるという規定がありますが、実際に免除が認められることはほとんどありません。例えば、相続人自身も生活に困窮しているといった事情があっても、多くの場合、免除ではなく分割での支払いを求められます。返還義務を免れるのは非常に難しいと考えておいた方がよいでしょう。

返還義務や借金があるなら相続放棄も検討しよう

亡くなった方に保護費の返還義務があったり、他に借金があったりする場合、相続財産よりも負債の方が多いということも考えられます。そのような場合は、相続放棄という手続きを検討するのがよいでしょう。相続放棄をすれば、プラスの財産もマイナスの財産もすべて引き継がなくて済みます。

相続放棄の手続きと期限

相続放棄をするには、「ご自身が相続人であることを知った時から3ヶ月以内」に、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行う必要があります。この3ヶ月という期間は「熟慮期間」と呼ばれ、とても重要です。この期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄はできなくなってしまいますので、迅速な対応が求められます。

【要注意】相続放棄できなくなるケース

相続放棄を考えている場合に、絶対にやってはいけないことがあります。それは、亡くなった方の財産を勝手に使ったり、処分したりすることです。例えば、亡くなった方の預貯金をご自身の生活費に使ったり、車を売却したりすると、「相続する意思がある(単純承認)」とみなされ、後から相続放棄ができなくなってしまいます。ただし、亡くなった方の財産から葬儀費用を支払うことは例外的に認められていますが、その場合も必ず領収書を保管し、社会通念上妥当な範囲の金額にとどめるようにしましょう。

相続放棄しても発生する費用

「相続放棄をすれば、もう何も支払わなくていい」と思われるかもしれませんが、実はそうではない費用もあります。相続人としての義務はなくなっても、ご親族として対応が必要になるケースがあるのです。

葬儀費用 – 葬祭扶助制度の活用

葬儀費用は、原則として喪主を務める方が負担します。相続放棄をしても、この事実は変わりません。もし、葬儀費用を支払うことが経済的に難しい場合は、自治体の「葬祭扶助制度」を利用できる可能性があります。この制度は、生活に困窮している方が最低限度の葬儀(火葬のみの直葬など)を行えるよう、費用を補助してくれるものです。支給額は自治体によって異なりますが、大人で20万円前後が一般的です。利用するには、葬儀を行う前に福祉事務所への申請が必要ですので、覚えておいてくださいね。

アパートの退去費用や遺品整理費用

亡くなった方がアパートなどの賃貸物件に住んでいた場合、その部屋の原状回復費用や家賃の精算、そして遺品整理にかかる費用が発生します。これらの費用は、相続人が負担するのが一般的です。相続放棄をした場合、法律上の支払い義務はなくなりますが、現実的には大家さんとの関係や保証人としての責任から、親族が対応せざるを得ないことが多いです。遺品の中に価値のあるものがあっても、勝手に売却すると相続放棄ができなくなる可能性があるので、取り扱いには十分注意してくださいね。

まとめ

生活保護受給者が死亡した場合の相続では、まず亡くなった方の財産状況(預貯金などのプラスの財産と、保護費の返還義務や借金などのマイナスの財産)を正確に把握することが何よりも大切です。その上で、相続するのか、それとも相続放棄を選択するのかを慎重に判断する必要があります。特に、保護費の返還義務については、福祉事務所に問い合わせて確認することが不可欠です。ご自身での判断が難しいと感じたら、専門家に相談することも一つの方法ですよ。不安な気持ちを一人で抱え込まず、適切な窓口に相談しながら、一つひとつ丁寧に進めていきましょうね。

参考文献

生活保護受給者死亡時の相続と保護費返還のよくある質問まとめ

Q.生活保護を受けていた親が亡くなりました。遺産を相続できますか?

A.はい、相続できます。生活保護受給者の財産であっても、法定相続人が相続する権利があります。ただし、相続した財産によっては、過去に支給された保護費の返還を求められる場合があります。

Q.生活保護受給者の遺産を相続した場合、保護費の返還義務はありますか?

A.はい、返還義務が生じる可能性があります。生活保護法第63条に基づき、相続財産を限度として、それまで支給された保護費の全部または一部を返還するよう福祉事務所から求められることがあります。

Q.どのような場合に保護費を返還する必要があるのですか?

A.故人が申告していなかった預貯金や不動産などが見つかった場合や、相続した財産が最低生活費に充てるべき性質のものだったと判断された場合に返還が求められます。

Q.返還する保護費の金額はどのように決まりますか?

A.返還額は、相続した財産の価額が上限となります。それまでに支給された保護費の総額を超える金額を請求されることはありません。具体的な金額は福祉事務所が判断します。

Q.遺産よりも借金の方が多いです。相続放棄すれば返還義務はなくなりますか?

A.はい、家庭裁判所で相続放棄の手続きが受理されれば、プラスの財産も借金も相続しないことになるため、原則として保護費の返還義務も負うことはありません。

Q.葬儀費用はどうなりますか?遺産から支払うのでしょうか?

A.遺産で葬儀費用をまかなえる場合は、まず遺産から支払います。遺産がない、または不足する場合、福祉事務所に申請することで必要最低限の葬儀(火葬など)のための葬祭扶助が支給されることがあります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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