相続や贈与で畑などの農地を受け継ぐとき、線路の近くなどで電車の騒音がひどい場合、「この畑の評価額を少しでも安くできないかな」と悩むことはありませんか。実は、特定の条件を満たすことで評価額を下げられるケースがあります。この記事では、騒音による畑の評価減について、市街地農地と純農地という種類の違いを踏まえて、わかりやすく解説していきますね。
畑の評価額は騒音で下げられる?
結論からお伝えしますと、畑であっても騒音を理由に評価額を下げられる可能性はあります。ただし、すべての畑が無条件で安くなるわけではなく、国税庁が定めているルールをクリアしなければなりません。どのような考え方で減額が行われるのか、具体的に見ていきましょう。
利用価値が著しく低下している宅地の評価とは
相続税の計算では、利用価値が著しく低下している宅地の評価というルールがあります。これは、周辺の土地と比べて著しく使い勝手が悪い場合、本来の評価額から10パーセントを減額できるという制度です。このルールは宅地だけでなく、宅地と同じように評価をする一部の農地にも適用されることがあります。
線路近くの畑における騒音での10パーセント減額要件
線路の近くに畑があり、電車が通るたびにひどい騒音や振動がある場合、この10パーセントの減額が認められるケースがあります。ただし、単に「うるさい」というだけでは足りません。その騒音が原因で、取引される金額に明確な悪影響が出ていると認められることが必要になります。
環境省の騒音基準との関係
騒音の程度を客観的に証明するためには、環境省が定めている環境基準(昼間で60デシベル以下、夜間で50デシベル以下など)を超える騒音が発生しているかどうかが一つの目安になります。市販の騒音計などを使って実際にデシベル数を測定し、基準を大きく上回っているデータを用意することが、減額を認めてもらうための大切な準備となります。
市街地農地と純農地で異なる減価の考え方
畑の評価額を計算する際、その畑がどこにあるかによって計算方法が大きく異なります。大きく分けると「市街地農地」と「純農地」があり、騒音による減額の扱いもこの二つで全く違うのです。それぞれの特徴を整理していきましょう。
| 農地の分類 | 騒音による10パーセント減額の適用 |
|---|---|
| 市街地農地 | 宅地比準方式で計算するため、条件を満たせば適用の可能性あり |
| 純農地 | 倍率方式で計算し、農業用の土地であるため原則として適用は困難 |
市街地農地の評価方法と減価の適用
市街地農地とは、住宅街の中など市街化区域にある畑のことです。この場合、その畑がもし宅地だったらいくらになるかという「宅地比準方式」で計算し、そこから1平方メートルあたりの宅地造成費を差し引きます。基本のベースが宅地と同じになるため、騒音がひどければ利用価値が著しく低下している宅地の評価を適用して、10パーセント減額できる可能性があるのです。
純農地の評価方法での減価の壁
一方で純農地とは、市街地から離れた農業専用の地域にある畑のことです。こちらは「倍率方式」と呼ばれ、固定資産税評価額に国税局が定めた倍率を掛けて計算します。純農地はあくまで農業を行うための土地ですので、「騒音があるから農作物が育たない」といった特別な事情がない限り、騒音を理由にした減額を主張するのは非常に難しいのが現実です。
固定資産税評価額に騒音が加味されているかの確認
もし倍率方式の地域であっても、固定資産税評価額そのものに騒音のマイナス要素がすでに含まれている場合があります。市区町村の役所が固定資産税の基準を決める際、線路沿いであることを理由に評価を下げていれば、相続税の計算でさらに減額を重ねることは二重の控除になってしまうため認められません。
騒音による評価減を主張するための客観的証拠
税務署に対して「この畑は騒音で価値が下がっている」と納得してもらうためには、客観的な証拠をしっかり揃える必要があります。どのような証拠を集めればよいのか、具体的な方法をご紹介しますね。
騒音計を用いた具体的な測定データの取得
感覚的なうるささではなく、数値による証明が不可欠です。騒音計を使用して、電車が通過する時間帯に何デシベルの音が出ているのかを記録しましょう。測定時間や天候、日時などを詳細に記録したレポートを作成し、環境省の基準である60デシベルなどを超えていることを明記すると説得力が増します。
路線価に騒音が考慮されているかの確認方法
市街地農地の場合、面している道路の路線価を確認します。その路線価が、周辺の道路の路線価(例えば1平方メートルあたり30万円など)に比べて、すでに線路沿いであることを理由に1割ほど安く設定(例えば27万円など)されている場合、すでに騒音が加味されていると判断されます。この場合は追加での10パーセント減額はできません。
その他の利用価値が低下する要因
騒音以外にも、畑の評価額を下げることができる要因はいくつかあります。もし該当するものがあれば、併せて減額を検討することができますので、代表的なものを見てみましょう。
| 減額の要因 | 具体的な状況の例 |
|---|---|
| 高低差 | 道路よりも畑が著しく高い、または低い場合 |
| 忌み施設 | すぐ隣に墓地や火葬場などがある場合 |
道路との著しい高低差がある場合
畑が面している道路と比べて、極端に高い場所や低い場所にある場合も、10パーセント減額の対象になります。擁壁の工事が必要になったり、出入りが難しかったりするためです。ただし、この場合も周辺の土地全体が同じような傾斜地であれば、すでに路線価に反映されているため対象外となります。
墓地などの忌み施設が隣接する場合
お墓やごみ焼却場などがすぐ隣にある場合も、取引価格に悪影響を与えるとみなされ、10パーセント減額の対象になることがあります。畑であっても市街地農地として宅地並みの評価を受ける場合は、将来家を建てる際のマイナス要因となるため、減額が認められやすくなります。
税務署に否認されないための注意点
評価額を下げて申告しても、後から税務署の調査で「その減額は認められません」と否認されてしまうと、足りなかった税金に加えてペナルティの税金を支払うことになってしまいます。そうならないための注意点をお伝えします。
過去の国税不服審判所の裁決事例に学ぶ
過去の事例を見ると、線路から20メートル以内で60デシベル以上の騒音があり、周辺の分譲価格が10パーセント以上下落している客観的証拠があったケースでは減額が認められています。一方で、「路線価にすでに騒音が反映されている」として否認されたケースも多くあります。周辺の路線価との比較は必ず行いましょう。
事前のしっかりとした調査と準備
騒音による10パーセント減額は、国税庁の財産評価基本通達に明記されているわけではなく、利用価値が著しく低下しているという個別の事情を主張する形になります。そのため、現地の写真、騒音測定データ、役所での調査結果などを丁寧にまとめ、申告書に添付することがとても重要です。
まとめ
畑の評価額は、騒音を理由に10パーセント下げられる可能性があります。ただし、適用が考えられるのは主に「市街地農地」であり、「純農地」では難しいのが実情です。また、減額を認めてもらうためには、環境基準を超える騒音の測定データなどの客観的な証拠を用意し、かつ路線価にその騒音がまだ反映されていないことを証明する必要があります。判断が難しい部分も多いため、迷ったときは無理に自己判断せず、客観的なデータを集めることから始めてみてくださいね。
参考文献
国税庁 No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価
騒音による畑の評価減のよくある質問まとめ
Q. 畑の評価額は騒音で下げることはできますか?
A. はい、条件を満たせば下げることは可能です。周辺の土地と比べて利用価値が著しく低下していると認められる場合、評価額から10パーセントを減額できる制度があります。
Q. 純農地でも騒音による減額はできますか?
A. 純農地での減額は原則として困難です。純農地は農業用の土地として倍率方式で評価されるため、騒音が農作物の栽培に著しい悪影響を与えない限り、適用は厳しいと考えられます。
Q. 市街地農地なら必ず騒音で減額されますか?
A. 必ずしも減額されるわけではありません。面している道路の路線価にすでに騒音のマイナス要因が加味されている場合は、重複して減額することはできません。
Q. 騒音があることをどのように証明すればよいですか?
A. 騒音計などを使用して具体的なデシベル数を測定し、環境省が定める騒音の環境基準(昼間60デシベル以下など)を超えている客観的なデータを用意することが有効です。
Q. 騒音以外にも畑の評価額が下がる要因はありますか?
A. はい、道路との著しい高低差がある場合や、すぐ隣に墓地や火葬場などの忌み施設がある場合にも、利用価値が低下しているとして10パーセントの減額対象になることがあります。
Q. 路線価に騒音が考慮されているか確認する方法は?
A. 対象の畑が面している路線価と、少し離れた周辺の路線価を比較します。周辺よりも1割程度低く設定されている場合は、すでに騒音が考慮されている可能性が高いと判断されます。