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畑の近くの線路の騒音は相続税で減価できる?評価額10%減のポイント

2025-02-10
目次

畑や土地を相続したとき、近くに線路があると「騒音で価値が下がるのでは?」と気になりますよね。実は、相続税の計算において、線路の騒音や振動を理由に土地の評価額を下げられる可能性があります。この記事では、畑の近くの線路による騒音が相続税評価でどのように考慮されるのか、10%の評価減を受けるための具体的な条件や注意点について、わかりやすく解説していきます。

線路近くの土地評価と「利用価値が著しく低下している宅地」

相続税を計算する際、土地の評価は非常に重要です。特に線路沿いの土地は、電車が通るたびに騒音や振動が発生するため、住環境や利用価値に影響が出ることがあります。このような土地は、国税庁が定める「利用価値が著しく低下している宅地」に該当する可能性があり、評価額を減額できる特例があります。この特例が適用されると、最大で10%の評価減が認められることがあるんです。畑も「宅地」ではありませんが、宅地並みの評価をする農地であれば、この特例の対象になる可能性があります。

「利用価値が著しく低下している宅地」とは?

国税庁の財産評価基本通達では、周辺の土地と比べて利用価値が著しく低い土地について、評価減を認めています。具体的には、以下のような土地が例として挙げられています。

具体例 内  容
高低差のある土地 道路との高低差が著しいもの
地盤に凹凸のある土地 地盤が著しくデコボコしているもの
振動の甚だしい土地 工場や線路の近くで振動がひどいもの
その他の要因がある土地 騒音、日照阻害、悪臭、忌み施設(墓地など)が近くにあるもの

線路沿いの畑や土地は、この中の「振動の甚だしい宅地」や「騒音」に該当する可能性があるということですね。

評価減の計算方法

もし「利用価値が著しく低下している宅地」と認められた場合、評価額は次のように計算されます。
計算式:通常の評価額 – (利用価値が低下している部分の面積に対応する評価額 × 10%)
例えば、土地全体の評価額が3,000万円で、その全域で騒音の影響が認められる場合、3,000万円 × 10% = 300万円の評価減となり、最終的な評価額は2,700万円になります。これにより、相続税の負担を軽減できる可能性があるのです。

畑(農地)でも適用できるの?

この評価減は「宅地」という言葉が使われていますが、宅地に限定されるわけではありません。宅地並みの評価をする農地(市街化区域内の農地など)や山林、雑種地についても、同様の条件を満たせば10%の評価減が適用できる可能性があります。ですので、相続したのが畑であっても、諦める必要はありません。ただし、純粋な農地として評価される場合は適用が難しいケースもあるため、専門家への相談がおすすめです。

騒音による評価減が認められるための具体的な条件

線路が近いからといって、必ず10%の評価減が認められるわけではありません。税務署に認めてもらうためには、いくつかの重要なポイントをクリアする必要があります。ここでは、その具体的な条件を詳しく見ていきましょう。

条件1:路線価に騒音の影響が反映されていないこと

最も重要なポイントは、「路線価」にすでに騒音による価値の低下が織り込まれていないかという点です。路線価とは、道路に面する土地1平方メートルあたりの評価額のことで、国税庁が毎年公表しています。線路沿いの道路の路線価が、周辺の他の道路の路線価と比べて明らかに低く設定されている場合、すでに騒音の影響が考慮済みと判断され、追加の評価減は認められにくくなります。

確認ポイント 内  容
近隣の路線価との比較 線路から離れた同様の条件の土地の路線価と比べて、対象地の路線価が低くないか確認します。
同一路線価内の位置 同じ路線価が設定されている道路内で、対象地が線路に最も近い端にある場合、路線価の中心的な土地とは状況が異なるため、減価が認められる可能性があります。

条件2:騒音の程度が客観的な基準を超えていること

「うるさい」という主観的な感覚だけでは、評価減の根拠としては不十分です。客観的なデータで騒音の程度を示す必要があります。明確な法律上の基準はありませんが、過去の裁決例では、環境省が定める騒音に係る環境基準が参考にされています。

例えば、住居系の地域では昼間で60デシベル以下、夜間で55デシベル以下といった基準値があります。実際に騒音計で測定し、電車通過時の騒音がこれらの基準を恒常的に超えていることを証明できれば、有力な証拠となります。

条件3:取引価格への影響が認められること

騒音が実際に土地の市場価値、つまり取引価格に影響を与えていることも重要な要素です。周辺の類似した土地の売買事例を調べ、線路沿いの土地がそうでない土地に比べて10%以上安く取引されているといった事実があれば、評価減の説得力が増します。また、固定資産税評価額で「鉄道騒音補正」などの減額補正が行われている場合も、取引価格に影響があると認められやすい有利な材料となります。

評価減を主張するための準備と手続き

実際に騒音による評価減を相続税申告で主張するためには、しっかりとした準備が必要です。ここでは、どのような資料を用意し、どういった手順で進めればよいのかを解説します。

必要な資料の収集

税務署を納得させるためには、客観的な証拠資料が不可欠です。以下のような資料を準備しましょう。

  • 騒音測定データ:専門業者に依頼するか、自分で騒音計を用意して測定します。時間帯や曜日を変えて複数回測定し、電車の通過時刻と騒音レベルを記録した報告書を作成します。
  • 現地の写真や地図:土地と線路の位置関係がわかる写真や、周辺の路線価図など。
  • 近隣の取引事例:不動産業者などに協力を依頼し、線路沿いの土地とそうでない土地の売買価格がわかる資料を集めます。
  • 固定資産税評価証明書:騒音による減額補正がされているか確認します。

税理士への相談の重要性

「利用価値が著しく低下している宅地」の評価は、判断が非常に難しい専門的な分野です。資料を揃えても、税務署との交渉には専門知識と経験が必要になります。特に土地評価に詳しい相続専門の税理士に相談することで、評価減が認められる可能性を正確に判断し、適切な申告書の作成や意見書の添付を行ってもらえます。自分で判断せずに、まずは専門家に相談することをおすすめします。

過去の裁決事例から見る判断のポイント

実際に騒音による評価減が認められたケースと、認められなかったケースがあります。過去の国税不服審判所の裁決事例を見て、どのような点が判断の分かれ目になるのかを知っておきましょう。

評価減が認められた事例

評価減が認められた事例には、以下のような共通点が見られます。

  • 新幹線の高架線に隣接:騒音・振動だけでなく、日照や眺望への影響も考慮され、合計20%の評価減が認められたケース。
  • 路線価に騒音が未反映:周辺の路線価と比較し、騒音要因が路線価に織り込まれていないことが明確で、かつ騒音が環境基準を超えていたケース。
  • 固定資産税で減価補正:固定資産税の評価で、すでに騒音による減価補正が行われていたケース。

これらの事例から、複数の客観的な証拠を積み重ねることが重要だとわかります。

評価減が認められなかった事例

一方で、評価減が認められなかった事例の多くは、「すでに路線価に騒音の影響が反映されている」と判断されたケースです。

例えば、線路沿いの道路の路線価が、線路から一本入った道路の路線価よりも1割程度低く設定されている場合などです。このような場合、国税庁は「路線価を設定する時点で騒音による価値の低下は考慮済みである」と主張するため、そこからさらに10%の評価減を認めてもらうのは非常に困難になります。路線価図を注意深く確認することが、最初のステップとして非常に重要です。

畑の近くの線路騒音に関する注意点

畑(農地)の場合、宅地とは少し異なる注意点があります。評価減を検討する際には、これらのポイントも押さえておきましょう。

農地の種類による違い

相続した畑がどの種類の農地に分類されるかによって、評価方法が異なり、騒音減価の適用の可否も変わってきます。

農地の種類 騒音減価の適用の可能性
市街化区域農地 宅地への転用が想定されているため、宅地と同様に騒音減価が適用できる可能性が高いです。
市街化調整区域農地 原則として宅地転用ができないため、純農地として評価されます。この場合、騒音による減価は認められにくい傾向にあります。

まずは、相続した畑がどの区域にあるかを確認することが大切です。

騒音以外の減価要因も検討する

線路沿いの土地は、騒音や振動以外にも評価を下げる要因を抱えていることがあります。例えば、高圧線が上空を通っている(高圧線下地の評価減)、土地の一部が線路敷として利用されている、日照が悪いなど、他の減価要因がないかも合わせて確認しましょう。複数の要因があれば、それぞれ評価に反映させることで、より適切な評価額を算出できる可能性があります。

まとめ

畑の近くの線路の騒音は、相続税評価において「利用価値が著しく低下している宅地」として10%の評価減が認められる可能性があります。しかし、そのためには「路線価に騒音の影響が反映されていないこと」や「騒音の程度が客観的基準を超えていること」など、厳しい条件をクリアし、それを客観的な資料で証明する必要があります。特に路線価の分析は重要で、すでに減価が織り込まれているケースも少なくありません。判断が難しいため、土地評価に強い相続専門の税理士に相談し、評価減の可能性があるかどうかを慎重に検討することをおすすめします。適切な評価を行うことで、払い過ぎの相続税を防ぎましょう。

参考文献

国税庁 No.4617 利用価値が著しく低下している宅地の評価

線路近くの土地評価に関するよくある質問まとめ

Q.線路の近くにある畑は、必ず評価額が下がりますか?

A.必ず下がるわけではありません。路線価に騒音の影響がすでに反映されている場合や、騒音の程度が基準値以下の場合などは、評価減が認められないことがあります。

Q.騒音の測定は自分で行っても大丈夫ですか?

A.ご自身で騒音計を使って測定することも可能ですが、測定方法の信頼性を高めるためには、専門業者に依頼するのが確実です。測定日時、天候、測定場所などを詳細に記録した報告書が重要になります。

Q.評価減の特例が使えるのは宅地だけですか?

A.いいえ、宅地だけではありません。市街化区域内農地のように宅地並み評価を行う農地や、山林、雑種地でも、条件を満たせば10%の評価減が適用される可能性があります。

Q.路線価に騒音の影響が反映されているかは、どうやって確認すればいいですか?

A.対象地の路線価と、線路から離れた近隣の土地の路線価を比較します。対象地の路線価が明らかに低い場合は、すでに騒音の影響が考慮されている可能性が高いです。

Q.評価減を主張するのに一番大事なことは何ですか?

A.客観的な証拠です。騒音測定データ、近隣の取引事例、公的な評価(固定資産税評価など)といった、第三者が納得できる資料を揃えることが最も重要です。

Q.税理士に相談するメリットは何ですか?

A.土地評価の専門知識を基に、評価減の可能性を正確に判断してもらえます。また、税務署への説得力のある意見書の作成や、申告手続きを任せられるため、時間と労力を節約し、より確実に評価減を認められる可能性が高まります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。