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相続した上場株式・投資信託の売却、税金はいくら?節税のコツも解説

2025-02-21
目次

親御さんなどから大切な資産として上場株式や投資信託を相続したけれど、いざ売却しようとすると「税金ってどうなるの?」と不安になりますよね。手続きも複雑そうで、何から手をつけていいかわからない、という方も多いのではないでしょうか。この記事では、相続した上場株式や投資信託を売却したときにかかる税金の計算方法や、知っておくとお得な特例、確定申告のポイントまで、わかりやすく丁寧にご説明していきます。

相続した上場株式や投資信託を売却するとかかる税金

相続した上場株式や投資信託を売却して、もし利益が出た場合には税金がかかります。この利益のことを「譲渡所得」と呼び、この譲渡所得に対して「所得税」「住民税」「復興特別所得税」が課税されます。これらをまとめて「譲渡所得税」と呼ばれることが多いです。もし売却して損失が出た場合には、この譲渡所得税はかかりません。

税金の対象となる「譲渡所得」とは?

譲渡所得は、売却によって得られた利益のことです。計算式は以下のようになります。

譲渡所得 = 売却価格 - (取得費 + 譲渡費用)

「売却価格」は、文字通り株式や投資信託が売れた金額です。「取得費」は、亡くなった方(被相続人)がその株式などを購入したときの価格のことで、「譲渡費用」は売却するために証券会社に支払った手数料などのことです。この計算式でプラスになった金額が、税金の計算対象となります。

税率はどのくらい?

上場株式や投資信託を売却して得た利益(譲渡所得)にかかる税率は、合計で20.315%です。これは不動産のように所有期間の長さで税率が変わることはなく、一律です。税率の内訳は以下の表のようになっています。

税金の種類 税率
所得税 15%
復興特別所得税 0.315% (所得税の2.1%)
住民税 5%
合計 20.315%

「取得費」はどうやって調べる?

税金の計算でとても重要になるのが「取得費」です。これは、あなたが相続した株式や投資信託を、亡くなった方(被相続人)がいくらで購入したかという金額です。被相続人が利用していた証券会社の「取引報告書」や「取引残高報告書」などで確認することができます。もし、これらの書類が見つからない場合は、証券会社に問い合わせてみることをお勧めします。どうしても取得費がわからない場合は、「売却価格の5%」を概算取得費として計算することもできますが、実際の取得費よりかなり低くなることが多く、税金の負担が大きくなってしまう可能性があるので注意が必要です。

相続した株式・投資信託の「取得費」の重要ポイント

先ほども触れましたが、譲渡所得の計算において「取得費」は税額を大きく左右する非常に大切な要素です。ここで、相続した資産ならではの取得費の考え方について、もう少し詳しく見ていきましょう。

故人(被相続人)の取得費と取得時期を引き継ぐ

相続で株式や投資信託を受け継いだ場合、その資産の取得費は相続した時点の時価(相続開始日の株価)ではなく、亡くなった方が最初に購入したときの価格を引き継ぎます。同様に、いつ取得したかという「取得時期」も引き継がれます。例えば、お父様が30年前に100万円で購入した株式をあなたが相続し、売却した場合、取得費は100万円、取得時期は30年前ということになります。このルールを知らないと、税金の計算を間違えてしまう可能性があるので、しっかり覚えておきましょう。

取得費がわからない場合の対処法

昔に購入した株式などで、どうしても取得費を証明する書類が見つからない場合があります。その際の最終手段として、「概算取得費」というルールが用意されています。これは、売却した金額の5%を取得費とみなす方法です。例えば、1,000万円で売却した場合、取得費は50万円として計算します。

ただし、この方法はあくまで最終手段です。もし実際の取得費が50万円よりも高かった場合(例えば200万円だった場合)、概算取得費を使うと利益が過大に計算され、支払う税金も高くなってしまいます。まずは諦めずに、被相続人が利用していた証券会社に取引履歴を問い合わせるなどして、できる限り実際の取得費を探す努力をすることが大切です。

税負担を軽くする!知っておきたい特例

相続した株式や投資信託を売却する際には、税金の負担を軽減できる特例があります。特に重要なのが「取得費加算の特例」です。ご自身の状況に当てはまるか、ぜひ確認してみてください。

取得費加算の特例

この特例は、相続税を支払った方が利用できる可能性のある、非常に有利な制度です。簡単に言うと、支払った相続税の一部を、売却した株式や投資信信託の「取得費」に上乗せできるというものです。取得費が増えれば、その分、利益である譲渡所得が圧縮され、結果として譲渡所得税を節税することができます。

この特例を利用するためには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  • その株式や投資信託を相続したことで、相続税を納税していること。
  • 相続が開始された日の翌日から、3年10ヶ月以内に売却していること。

取得費に加算できる金額は、納めた相続税の全額ではなく、売却した資産が相続財産全体に占める割合に応じて計算されます。計算は少し複雑なので、利用を検討する際は税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

確定申告は必要?手続きの基本

株式や投資信託を売却した後、気になるのが確定申告です。利用している証券口座の種類によって、手続きが必要かどうかが変わってきます。

確定申告が必要になるケース

以下のようなケースでは、ご自身で確定申告を行う必要があります。

  • 利益(譲渡所得)が出た場合で、「一般口座」や「源泉徴収なしの特定口座」で取引した場合。
  • 「取得費加算の特例」など、税金の特例を利用したい場合。
  • 複数の証券会社での取引の損益を通算したい場合。

一方で、「源泉徴収ありの特定口座」で売却し、利益が出て、かつ特例を利用しない場合は、証券会社が税金を計算して源泉徴収(天引き)してくれますので、原則として確定申告は不要です。ただし、特例を使えば税金が戻ってくる(還付される)可能性もあるので、申告した方が有利かどうかを確認してみるとよいでしょう。

確定申告の時期と方法

確定申告は、株式などを売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。申告方法は、税務署に直接書類を持参・郵送する方法のほか、インターネット経由で申告できる「e-Tax(イータックス)」が便利です。

確定申告で必要な書類

確定申告の際には、以下のような書類が必要になります。事前に準備しておくとスムーズです。

  • 確定申告書
  • 証券会社から交付される「特定口座年間取引報告書」または「取引報告書」
  • マイナンバーカードなどの本人確認書類
  • (取得費加算の特例を使う場合)相続税の申告書の控えなど、相続税額を証明する書類

具体例でわかる!税金計算シミュレーション

ここでは、具体的な例を挙げて、実際にどのくらいの税金がかかるのかをシミュレーションしてみましょう。

ケース1:取得費が判明しており、特例を使わない場合

被相続人が600万円で購入した株式を相続し、1,000万円で売却した場合(譲渡費用10万円)

  • 譲渡所得:1,000万円 – (600万円 + 10万円) = 390万円
  • 税額:390万円 × 20.315% = 792,285円

ケース2:取得費が不明で、概算取得費を使う場合

取得費がわからず、1,000万円で売却した場合(譲渡費用10万円)

  • 概算取得費:1,000万円 × 5% = 50万円
  • 譲渡所得:1,000万円 – (50万円 + 10万円) = 940万円
  • 税額:940万円 × 20.315% = 1,909,610円

※ケース1と比べると、税額が100万円以上も高くなってしまうことがわかります。

ケース3:取得費加算の特例を使う場合

ケース1の条件に加え、相続税を支払い、取得費に100万円を加算できる場合

  • 譲渡所得:1,000万円 – (600万円 + 10万円 + 100万円) = 290万円
  • 税額:290万円 × 20.315% = 589,135円

※特例を使うことで、税額を約20万円も抑えることができました。

まとめ

相続した上場株式や投資信託の売却に関する税金について、ポイントをまとめます。

  • 売却して利益が出ると、その利益(譲渡所得)に対して20.315%の税金がかかります。
  • 税額を計算する上で最も重要なのは「取得費」です。亡くなった方がいくらで買ったかしっかり調べましょう。
  • 相続税を支払った方は、3年10ヶ月以内の売却で「取得費加算の特例」が使えないか確認しましょう。
  • 利益が出た場合や特例を使う場合は、原則として確定申告が必要です。

税金の計算や特例の適用は複雑に感じられるかもしれません。もしご自身での判断に不安がある場合は、税務署や税理士などの専門家に相談することをおすすめします。大切な資産を上手に管理するために、正しい知識を身につけていきましょう。

参考文献

国税庁 No.1464 譲渡した株式等の取得費

国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続した上場株式・投資信託売却時の税金のよくある質問まとめ

Q.相続した株式や投資信託を売却すると、税金はかかりますか?

A.はい、売却して利益(譲渡所得)が出た場合、所得税と住民税がかかります。

Q.税率はどのくらいですか?

A.売却益(譲渡所得)に対して、所得税15.315%(復興特別所得税を含む)と住民税5%の合計20.315%です。

Q.亡くなった人がいつ買ったかわからないのですが、取得費はどう計算しますか?

A.取得費が不明な場合は、売却代金の5%を「概算取得費」として計算できます。実際の取得費がわかる資料があれば、そちらを使用することも可能です。

Q.相続税を支払ったのですが、株式売却の税金が安くなる制度はありますか?

A.はい、「取得費加算の特例」があります。相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却すれば、支払った相続税の一部を取得費に加算でき、税負担を軽減できます。この特例の適用には確定申告が必要です。

Q.株式を売却したら確定申告は必要ですか?

A.原則として確定申告が必要です。「源泉徴収ありの特定口座」で売却し、特例を使わない場合は不要なこともありますが、「取得費加算の特例」を適用するためには必ず確定申告を行う必要があります。

Q.故人のNISA口座の株式を相続しました。売却益は非課税になりますか?

A.いいえ、非課税にはなりません。NISAの非課税メリットは相続できず、株式は課税口座に移されます。相続した時点の時価が新しい取得価額となり、それを超える売却益には課税されます。

事務所概要
社名
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