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相続した不動産を売却したい方へ!手続き・税金・注意点を完全ガイド

2026-01-21
目次

ご親族から大切な不動産を相続したものの、「自分は住まないし、どうしよう…」とお悩みではありませんか?相続した不動産は、所有しているだけで固定資産税などの維持費がかかります。もし利用する予定がないのであれば、売却して現金化するのも一つの賢い選択です。とはいえ、手続きは複雑ですし、税金も気になりますよね。この記事では、相続した不動産を売却する際の具体的な手続きの流れから、知っておきたい税金の話、そして損をしないための注意点まで、わかりやすく解説していきます。初めての方でも安心して進められるよう、一つひとつ丁寧に説明しますので、ぜひ最後までご覧くださいね。

相続した不動産を売却するまでの全ステップ

相続した不動産の売却は、通常の不動産売却とは少し手順が異なります。まずは相続の発生から売却代金を受け取るまでの全体像を把握しましょう。大きく分けると、以下の4つのステップで進んでいきます。

相続人の確定と遺産分割協議

まず最初に行うべきことは、有効な遺言書の有無を確認することです。遺言書があれば、原則としてその内容に従って相続が進められます。もし遺言書がない場合や、遺言書に記載のない財産がある場合は、誰が相続人になるのかを確定させる必要があります。戸籍謄本などを集めて法定相続人全員を明らかにした後、相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」を行います。
不動産のように簡単に分けられない財産は、売却してその代金を分ける「換価分割」という方法がよく選ばれます。この方法なら、相続人の間で公平に財産を分けることができ、後のトラブルを防ぎやすくなりますよ。

相続登記(名義変更)は必須の手続き

遺産分割協議で不動産を誰が相続するかが決まったら、次に行うのが「相続登記」です。これは、不動産の名義を亡くなった方(被相続人)から相続人へ変更する手続きのことです。この相続登記をしないと、不動産を売却することはできません。
さらに、2024年4月1日から相続登記は義務化されました。相続で不動産の取得を知った日から3年以内に登記を申請しないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。ご自身のためにも、不動産を相続したら速やかに相続登記を済ませましょう。手続きが複雑で不安な方は、司法書士に依頼するのが一般的です。

不動産会社を選んで売却活動をスタート

無事に相続登記が完了し、不動産の名義がご自身のものになったら、いよいよ売却活動の開始です。まずは、信頼できる不動産会社を探し、物件の価値を査定してもらいましょう。複数の会社に査定を依頼して、査定額や担当者の対応を比較検討するのがおすすめです。
売却を依頼する不動産会社が決まったら、「媒介契約」を結び、販売活動が始まります。購入希望者が見つかれば、価格などの条件交渉を経て「売買契約」を締結。その後、買主から売買代金の残りを受け取る「決済」と同時に、不動産の「引き渡し」を行い、売却手続きは完了となります。

相続不動産の売却にかかる税金と費用

不動産を相続してから売却するまでには、さまざまな税金や費用がかかります。どのような費用がどのタイミングで必要になるのか、あらかじめ知っておくと安心です。

売却時にかかる主な税金

相続した不動産を売却する過程では、主に以下の税金が発生します。特に売却で利益が出た場合の譲渡所得税は金額が大きくなることもあるので、しっかり確認しておきましょう。

税金の種類 内  容
登録免許税 相続登記(名義変更)の際に法務局に納める税金です。税額は、不動産の固定資産税評価額の0.4%です。
印紙税 不動産の売買契約書に貼る印紙代です。契約金額に応じて税額が異なり、例えば1,000万円超5,000万円以下の契約なら1万円です(軽減措置適用後)。
譲渡所得税 不動産を売却して得た利益(譲渡所得)に対してかかる税金で、所得税と住民税を合わせたものです。

譲渡所得税の計算方法

譲渡所得税を理解する上で最も重要なのが「譲渡所得」の計算です。計算式は以下の通りです。

譲渡所得 = 売却価格 ー (取得費 + 譲渡費用)

取得費とは、亡くなった方がその不動産を購入したときの代金や手数料のことです。相続の場合、この被相続人の取得費と所有期間を引き継ぐことになります。所有期間が5年を超えるかどうかで税率が大きく変わる(長期譲渡所得:約20%、短期譲渡所得:約39%)ため、親御さんがいつ購入したかがとても重要になります。
譲渡費用とは、売却のために直接かかった費用のことで、不動産会社に支払う仲介手数料や印紙税などが含まれます。

不動産売却にかかるその他の費用

税金の他にも、以下のような費用がかかる場合があります。

費用の種類 内容の目安
仲介手数料 不動産会社に支払う成功報酬です。法律で上限が定められており、「売買価格×3%+6万円+消費税」が一般的です。
司法書士への報酬 相続登記や、売却時の抵当権抹消登記などを依頼した場合に支払います。5万円~15万円程度が目安です。
その他 土地の境界を確定させるための「測量費」や、古い家を取り壊す場合の「解体費」などが状況に応じて必要になります。

知らないと損!相続不動産売却で使える節税特例

相続した不動産の売却では、税金の負担を軽くできる特例がいくつか用意されています。適用できれば数百万円単位で税金が変わることもありますので、ご自身が使えるものがないか必ずチェックしてくださいね。

相続税の取得費加算の特例

この特例は、不動産を相続した際に相続税を納めた方が利用できます。相続開始の翌日から3年10ヶ月以内にその不動産を売却した場合、納めた相続税の一部を譲渡所得の計算上、「取得費」に加算できるというものです。取得費が大きくなる分、譲渡所得が圧縮され、結果的に所得税・住民税を節税することができます。

被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

通称「空き家特例」と呼ばれる、非常にメリットの大きい制度です。亡くなった方が一人で住んでいた家などを相続し、空き家になったその家を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。つまり、売却益が3,000万円までなら譲渡所得税がかからなくなります。ただし、適用には下記のような細かい要件があります。

  • 昭和56年5月31日以前に建築された家屋であること
  • マンションなどの区分所有建物ではないこと
  • 相続開始から3年が経過する年の年末までに売却すること
  • 売却代金が1億円以下であること
  • 一定の耐震基準を満たすか、家を取り壊して更地で売却すること

※令和6年1月1日以降の譲渡で、相続人が3人以上の場合は控除額が2,000万円になります。

マイホームを売ったときの3,000万円特別控除

この特例は、亡くなった方と同居していた相続人がその家を相続し、その後も住み続けていた家を売却する場合などに適用できる可能性があります。ご自身が住んでいたマイホームを売却した際に、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度です。空き家特例とは対象となる状況が異なりますので、ご注意ください。

相続不動産を売却するときの注意点

相続不動産の売却は、通常の売却以上に気を付けたいポイントがいくつかあります。事前に知っておくことで、相続人間のトラブルや思わぬ税金の発生を防ぎましょう。

共有名義での売却は相続人全員の同意が必須

遺産分割協議の結果、不動産を複数の相続人の「共有名義」にすることがあります。この共有名義の不動産を売却する場合、共有者全員の同意がなければ売買契約を結ぶことができません。「売却すること」への同意はもちろん、「いくらで売るか」という価格についても全員の合意が必要です。一人でも反対する方がいると話が進まなくなってしまうため、事前にしっかりと話し合い、意思を統一しておくことが何よりも大切です。

取得費がわからない場合の対処法

譲渡所得税の計算で重要な「取得費」ですが、何十年も前に親御さんが購入した不動産だと、売買契約書が見つからず購入価格がわからないケースが少なくありません。取得費が不明な場合、法律では「売却価格の5%」を概算取得費として計算することになります。しかし、これでは取得費が非常に低く計算されてしまい、譲渡所得税が高額になってしまう可能性があります。
契約書がなくても、当時のパンフレットや通帳の出金履歴、住宅ローンの契約書などが取得費を証明する資料になることもあります。諦めずに探してみましょう。

売却期限は「3年以内」がひとつの目安

先ほどご紹介した「取得費加算の特例」や「空き家特例」は、どちらも相続が始まってから約3年以内という期限が設けられています。これらの強力な節税メリットを活かすためには、相続が発生したら早めに売却の準備を始めることが重要です。不動産売却は、査定から引き渡しまで半年以上かかることも珍しくありません。期限を意識して、計画的に進めていきましょう。

売却後の確定申告を忘れずに行いましょう

相続した不動産を売却して利益(譲渡所得)が出た場合は、必ず確定申告が必要です。税金の特例を使って納税額がゼロになったとしても、その特例の適用を受けるためには申告が必須ですので、忘れないようにしましょう。

確定申告が必要になるケース

確定申告が必要になるのは、主に以下の2つのケースです。

  1. 譲渡所得の計算結果がプラスになった場合
  2. 「取得費加算の特例」や「空き家特例」などの特例を利用する場合

特例を利用した結果、計算上の所得がマイナスになったりゼロになったりしても、申告をしなければ特例は適用されません。つまり、「特例を使いたいなら確定申告はセット」と覚えておきましょう。

確定申告の時期と方法

確定申告は、不動産を売却した翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。申告書は税務署で入手できるほか、国税庁のホームページにある「確定申告書等作成コーナー」を利用すれば、自宅のパソコンやスマートフォンで作成から提出(e-Tax)まで完結できて便利です。
申告の際には、売買契約書の写しや、仲介手数料などの経費の領収書、登記簿謄本などが必要になりますので、事前に準備しておきましょう。

まとめ

相続した不動産を売却する際には、相続登記から始まり、不動産会社選び、売却活動、そして税金の申告まで、多くの手続きが必要になります。特に、相続人が複数いる場合の遺産分割協議や、税金の特例の適用要件など、専門的な知識が求められる場面も少なくありません。
この記事でご紹介した流れや注意点を参考に、まずはご自身の状況を整理してみてください。そして、手続きの中で少しでも不安なことや分からないことがあれば、一人で抱え込まずに、司法書士や税理士、信頼できる不動産会社といった専門家に相談することが、スムーズで後悔のない売却への一番の近道です。大切な資産だからこそ、慎重に、そして計画的に進めていきましょうね。

参考文献

国税庁 No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

国税庁 No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

国税庁 No.3302 マイホームを売ったときの特例

国税庁 No.3270 相続や贈与によって取得した土地・建物の取得費と取得の時期

国税庁 不動産等を売却した方へ|確定申告特集

相続不動産売却のよくある質問まとめ

Q.相続した不動産を売却したいのですが、まず何から始めればよいですか?

A.まずは相続登記(名義変更)が必要です。不動産の所有者を亡くなった方から相続人に変更する手続きで、これを行わないと売却できません。その後、不動産会社に査定を依頼し、売却活動へと進みます。

Q.相続不動産の売却にはどのような書類が必要ですか?

A.主に、登記済権利証(または登記識別情報)、固定資産税納税通知書、本人確認書類、実印、印鑑証明書などが必要です。相続登記の際には、被相続人の戸籍謄本や遺産分割協議書なども必要になります。

Q.不動産を売却して利益が出た場合、税金はかかりますか?

A.はい、売却益(譲渡所得)に対して譲渡所得税と住民税がかかります。ただし、相続した不動産の場合、「取得費加算の特例」や「空き家の3,000万円特別控除」など、税負担を軽減できる特例が利用できる場合があります。

Q.不動産売却にはどのような費用がかかりますか?

A.主な費用として、不動産会社に支払う仲介手数料、売買契約書に貼る印紙税、登記費用などがあります。また、売却益が出た場合は譲渡所得税・住民税もかかります。事前に概算を把握しておくことが重要です。

Q.兄弟など相続人が複数いる場合、売却はどのように進めればよいですか?

A.相続人全員で遺産分割協議を行い、売却について合意し「遺産分割協議書」を作成する必要があります。全員の合意と協力がなければ売却手続きは進められません。

Q.相続した不動産を売却するのに最適なタイミングはありますか?

A.税金の特例の適用期限(例:相続開始から3年10ヶ月以内など)や、不動産市場の動向を考慮することが重要です。空き家のまま放置すると維持費もかかるため、早めに専門家へ相談し計画を立てることをお勧めします。

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