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相続した非上場株式、どうする?保険活用で会社に譲渡する方法

2025-03-06
目次

ご家族が経営されていた会社の株式を相続したけれど、どうすればいいかお困りではありませんか?非上場株式は、上場株式のように市場で自由に売買できないため、現金化が難しく、高額な相続税の納税資金に頭を悩ませるケースが少なくありません。そんなとき、とても有効な選択肢となるのが「発行会社に株式を譲渡(買い取ってもらう)」という方法です。そして、その買取資金を会社が準備するために「生命保険」が大きな力を発揮します。この記事では、相続した非上場株式を発行会社へ譲渡する際の流れと、その資金準備における生命保険の活用法について、わかりやすく解説していきますね。

相続した非上場株式の悩みと発行会社への譲渡

会社のオーナー経営者などが亡くなった場合、その方が保有していた自社の株式(非上場株式)は相続財産となります。しかし、この非上場株式は、相続人にとって嬉しい財産であると同時に、大きな悩みの種になることも多いのが実情です。

なぜ非上場株式の相続は大変?

非上場株式の相続が大変な理由は、主に2つあります。1つ目は「換金性の低さ」です。上場株式であれば証券取引所でいつでも売却できますが、非上場株式にはそうした市場がありません。買い手を見つけるのが非常に困難で、すぐに現金化することが難しいのです。2つ目は「評価額の高さ」です。業績が良い会社ほど株式の評価額は高くなり、それに伴って相続税も高額になります。「手元に現金はないのに、多額の相続税だけが発生してしまった…」という事態に陥りやすいのが、非上場株式の相続なのです。

「発行会社への譲渡(自己株式取得)」という選択肢

この問題を解決する有効な手段が、相続した株式をその株式を発行した会社自身に買い取ってもらう方法です。これを「自己株式の取得」や「金庫株制度」と呼びます。会社に買い取ってもらうことで、相続人は株式を現金化でき、その資金を相続税の支払いに充てることができます。後継者以外の相続人にとっては、経営に関与するつもりがない株式を円満に手放す良い機会にもなります。

相続税の納税資金としての活用

たとえば、非上場株式の相続税評価額が1億円で、相続税が2,000万円かかるとします。相続人が手元に2,000万円の現金を持っていなくても、会社に株式の一部または全部を2,000万円で買い取ってもらえれば、その売却代金で納税することができます。これにより、相続人は他の財産を売却したり、借金をしたりすることなく、スムーズに納税義務を果たすことができるのです。

発行会社への譲渡における税金の特例

「会社に株式を売ると、税金が高くなるのでは?」と心配される方もいらっしゃるかもしれません。通常、個人が自分が持つ非上場株式を発行会社に譲渡すると、利益の一部が「みなし配当」とされ、給与など他の所得と合算して課税される総合課税の対象となります。この場合、税率は最大で55%にもなり、大きな負担となります。しかし、ご安心ください。相続によって取得した株式の場合、特別な税金の優遇措置が用意されています。

知っておきたい「みなし配当課税の特例」

相続によって取得した非上場株式を発行会社に譲渡する場合、一定の要件を満たせば、先ほどの「みなし配当」課税が適用されず、すべて「譲渡所得」として扱われる特例があります。譲渡所得は他の所得とは分けて税金を計算する「申告分離課税」の対象となり、税率は所得税・復興特別所得税・住民税を合わせて20.315%で済みます。最大55%の税率と比べると、税負担が大きく軽減されることがお分かりいただけるかと思います。

特例を受けるための5つの要件

この有利な特例を受けるためには、以下の5つの要件をすべて満たす必要があります。大切なポイントなので、しっかり確認しておきましょう。

要件 内  容
①非上場株式であること 証券取引所に上場していない会社の株式であること。
②相続または遺贈により取得した自社株 亡くなった方から相続や遺言によって取得した株式であること。
③発行会社への譲渡 その株式を発行した会社自身に譲渡(売却)すること。
④相続税の負担があること その株式を取得した相続人が、相続税を納める義務があること。
⑤相続開始後3年10ヶ月以内に譲渡 相続が開始した日(亡くなった日)の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(つまり相続開始から3年10ヶ月以内)に譲渡すること。

手続きも忘れずに

この特例の適用を受けるためには、株式を譲渡する時までに「相続財産に係る非上場株式をその発行会社に譲渡した場合のみなし配当課税の特例に関する届出書」という書類を作成し、発行会社(株式を買い取る会社)に提出する必要があります。会社側もその届出書を税務署に提出する必要があるため、事前に会社とよく連携しておくことが大切です。

会社側の課題:株式の取得資金をどう準備するか

相続人にとってはメリットの大きい自己株式の取得ですが、会社側には大きな課題があります。それは「株式を買い取るための資金をどうやって準備するか」という点です。特に、株式の評価額が高額な場合、会社は数千万円、場合によっては数億円もの現金を準備しなければなりません。この資金準備には、法律上の制約も関係してきます。

財源規制(分配可能額)の壁

会社が自己株式を買い取ることは、株主への利益の分配(配当)と同じような性質を持つため、会社法という法律で厳しいルールが定められています。これを「財源規制」といい、会社は原則として「分配可能額」の範囲内でしか自己株式を取得できません。分配可能額は、大まかに言うと、会社の利益の蓄積である「利益剰余金」から計算されます。つまり、会社に十分な利益の蓄積がなければ、たとえ現金があっても株式を買い取ることができないのです。また、純資産の額が300万円を下回る場合も、自己株式の取得はできません。

資金不足が引き起こす問題

仮に分配可能額の条件をクリアしていても、実際に多額の現金が会社から流出することには変わりありません。もし、会社の運転資金や将来の設備投資のために蓄えていた資金を使ってしまうと、その後の事業運営に支障をきたす恐れがあります。また、手元資金が減少したり、金融機関から借入れをして資金を調達したりすると、会社の財務体質が悪化し、取引先や金融機関からの信用(与信)が低下するリスクも考えられます。

解決策としての生命保険の活用

この会社側の「取得資金」と「分配可能額」という2つの大きな課題を、一挙に解決できる非常に有効な方法が、生命保険の活用です。具体的には、会社が契約者となり、経営者(被相続人となる方)を被保険者とする生命保険に加入します。

なぜ生命保険が有効なの?

経営者が万が一亡くなられた際に、会社が死亡保険金を受け取ることには、次の2つの大きなメリットがあります。

  1. 株式の取得資金を確保できる
    保険金は、通常、請求から数週間程度で迅速に支払われます。これにより、会社は相続発生後すぐに、株式を買い取るためのまとまった現金を確保できます。事業用の資金を切り崩す必要も、新たに借り入れをする必要もありません。
  2. 分配可能額(買取枠)を増やすことができる
    会社が受け取った死亡保険金は、会計上「雑収入」として利益計上されます。これにより、会社の利益剰余金が増加し、結果として自己株式を取得できる上限額である「分配可能額」も増えることになります。つまり、保険金を活用することで、「買い取るためのお金」と「買い取ることが法的に許される枠」の両方を同時に準備できるのです。

具体的な保険契約のカタチ

この仕組みを活用するための生命保険の契約形態は、以下の通りです。

契約者 法人(株式を発行している会社)
被保険者 経営者(将来、被相続人となる方)
死亡保険金受取人 法人(株式を発行している会社)

この契約形態により、経営者に相続が発生したタイミングで、会社がスムーズに保険金を受け取り、相続人からの株式買取に備えることができます。

必要な保険金額の考え方

では、いくらの保険金を設定すればよいのでしょうか。まず基本となるのは、買い取りを予定している株式の評価額です。例えば、評価額3億円分の株式を買い取る計画なら、3億円がひとつの目安になります。ただし、会社が受け取った保険金は利益として扱われるため、法人税が課税されます。そのため、税金分を考慮して、実際に必要な買取資金額よりも少し多めに保険金額を設定しておくことが賢明です。例えば、実効税率が約30%と仮定すると、必要な資金額の1.4倍程度の保険金(3億円 ÷ (1-0.3) ≒ 4.2億円)があれば、税金を支払った後でも十分な資金を手元に残すことができます。

保険活用による自社株買取のメリットまとめ

これまでご説明してきたように、生命保険を活用した自社株の買取準備は、相続人、会社、そして将来の経営にとって多くのメリットをもたらします。最後に、その利点を3つに整理しておきましょう。

メリット①:後継者の納税資金問題を解決

最大のメリットは、相続人(特に事業を継ぐ後継者)が個人的に多額の納税資金を準備する必要がなくなる点です。相続財産の大部分が自社株である場合でも、会社に買い取ってもらうことで納税資金を確保でき、安心して事業承継に臨むことができます。

メリット②:株式の分散を防ぎ、経営を安定させる

相続人が複数いる場合、株式が分散してしまうと、経営の意思決定がスムーズにいかなくなる可能性があります。後継者以外の相続人が持つ株式を会社が生命保険金を元手に買い取ることで、株式を後継者に集約し、安定した経営基盤を築くことができます。これは、いわゆる「お家騒動」を防ぐことにも繋がります。

メリット③:計画的かつスムーズな資金準備が可能

会社の預金などで資金を準備しようとすると、業績によっては計画通りに進まないこともあります。生命保険であれば、保険料を支払い続けることで、将来必要な資金を計画的に、そして確実に準備することができます。また、死亡保険金は受取人である会社の固有の財産となるため、遺産分割協議の影響を受けずに、迅速に現金化して株式買取の資金に充てられるという点も大きな強みです。

まとめ

相続によって非上場株式を取得した際の納税や現金化の問題は、多くのご家庭や会社にとって深刻な課題です。しかし、「発行会社への譲渡」と「生命保険の活用」を組み合わせることで、この課題に対する非常に有効な解決策を講じることができます。相続人にとっては納税資金の確保、会社にとっては円滑な事業承継の実現という、双方にとってのメリットを生み出します。
大切なのは、経営者がお元気なうちから、自社株の評価額を把握し、将来の相続を見据えて計画的に準備を始めることです。生命保険の活用を含め、事業承継や相続対策は専門的な知識が必要となりますので、税理士などの専門家に相談しながら、ご自身の会社やご家族にとって最適な方法を検討してみてはいかがでしょうか。

参考文献

非上場株式の相続と保険活用に関するよくある質問

Q. 非上場株式を会社に売却すると、税金はどれくらいかかりますか?

A. 通常は給与などと合算され高い税率(最大55%)がかかる可能性がありますが、相続で取得した株式を相続開始から3年10ヶ月以内に発行会社へ譲渡するなどの要件を満たせば、「みなし配当課税の特例」が適用され、税率約20%の譲渡所得課税で済みます。

Q. 会社が株式を買い取るためのお金はどこから出すのですか?

A. 基本的には会社の内部留保(利益剰余金)から捻出しますが、まとまった資金を準備するのは簡単なことではありません。そのため、経営者を被保険者とする法人契約の生命保険に加入し、その死亡保険金を株式の買取資金に充てる方法が非常に有効です。

Q. なぜ生命保険を使うと良いのですか?

A. 経営者の万一の際に、会社が死亡保険金を受け取ることで、①株式を買い取るための現金を迅速に確保できる、②受け取った保険金は利益として計上されるため、会社法で定められた買取上限額(分配可能額)が増える、という2つの課題を同時に解決できるからです。

Q. 誰でも「みなし配当課税の特例」を使えますか?

A. いいえ、この特例を利用できるのは、相続または遺贈によって非上場株式を取得し、かつ相続税を納める義務のある人が、相続開始から3年10ヶ月以内にその株式を発行会社へ譲渡する場合など、いくつかの要件をすべて満たす必要があります。

Q. 会社が株式を買い取れる金額に上限はありますか?

A. はい、会社法により、会社が自己株式を買い取れる金額は「分配可能額」の範囲内に制限されています。これは主に、会社の利益の蓄積である「利益剰余金」の額に基づいて計算されます。

Q. 買取資金として、保険金はいくらくらい準備すればよいですか?

A. 買い取りたい株式の評価額が基本となります。ただし、会社が受け取る保険金には法人税がかかるため、その税金分を見越して少し多めに設定すると安心です。例えば、必要な買取資金の1.4倍程度の保険金額が一つの目安になります。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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