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相続でもめないための生前準備!家族円満のための具体的な方法を解説

2025-05-16
目次

大切な家族が亡くなった後、財産をめぐって関係がこじれてしまう…。そんな悲しい「争続」は、誰にでも起こりうる問題です。「うちは財産が多くないから大丈夫」と思っていても、トラブルは金額の大小だけが原因ではありません。この記事では、相続でもめないために、元気なうちから準備できることを具体的に、そして分かりやすくお話ししていきますね。少しの準備で、未来の家族の絆を守ることができますよ。

なぜ相続トラブルは起こるの?よくある原因を知ろう

相続が「争続」になってしまうのには、いくつかの典型的なパターンがあります。まずは、どんなことでトラブルが起きやすいのかを知ることから始めましょう。原因がわかれば、事前に対策を立てやすくなりますよ。

遺産の分け方が不明確

相続トラブルで最も多いのが、遺産の分け方に関するものです。特に、現金のようにきれいに割り切れない不動産(自宅や土地など)が遺産の大部分を占める場合、「誰が住むのか」「売却するのか」「売却するならいくらで?」といった点で意見が対立しやすくなります。誰がどの財産を相続するのか、生前に意向が示されていないと、相続人たちの話し合いは難航しがちです。

誰が相続人かわからない

相続手続きを進める中で、これまで知らなかった相続人が現れるケースもトラブルの原因になります。例えば、亡くなった方に離婚歴があり前妻との間に子がいた場合や、認知している子がいた場合などです。戸籍を調べて初めてその存在を知った家族にとっては、心情的にも遺産分割協議をスムーズに進めるのが難しくなってしまいます。

「不公平感」からくる対立

「長男だけ大学の学費や家の購入資金を援助してもらっていた」「私がずっと親の介護を一身に引き受けてきたのに」といった、特定の相続人への生前贈与や、特定の相続人による介護などの貢献(寄与分)も、不公平感を生み、トラブルの火種になります。こうした過去の経緯に対する不満が、相続をきっかけに噴出してしまうのです。

もめないための準備①:遺言書を作成する

相続トラブルを防ぐために、最も効果的で重要なのが「遺言書」の作成です。遺言書は、ご自身の財産を誰に、どのように渡したいかを明確に示すことができる法的な文書です。遺言書があれば、原則としてその内容通りに遺産が分けられるため、相続人同士での話し合い(遺産分割協議)が不要になり、争いを未然に防ぐことができます。

遺言書の種類と特徴

遺言書には主に2つの種類があります。それぞれにメリット・デメリットがあるので、ご自身の状況に合わせて選ぶことが大切です。

種類 特  徴
自筆証書遺言 全文、日付、氏名を自分で書き、押印して作成する遺言書です。手軽で費用がかからないのがメリットですが、形式に不備があると無効になるリスクがあります。また、発見されない、紛失する、誰かに書き換えられるといった心配もあります。(※法務局での保管制度を利用すると、これらのリスクを軽減できます。)
公正証書遺言 公証役場で公証人に作成してもらう遺言書です。法律の専門家である公証人が関与するため、形式不備で無効になる心配がほとんどありません。原本が公証役場に保管されるため、紛失や改ざんのリスクもなく、最も確実でトラブルになりにくい方法です。ただし、作成に費用がかかります。

公正証書遺言がおすすめな理由

多少費用はかかりますが、相続トラブルを本気で防ぎたいのであれば、公正証書遺言の作成を強くおすすめします。公証人が内容を確認してくれるため法的に確実ですし、家庭裁判所での「検認」という手続きも不要で、相続開始後の手続きがスムーズに進みます。作成費用は財産の価額によって決まっており、例えば財産が3,000万円から5,000万円の場合の手数料は29,000円が目安となります。

遺留分に配慮しよう

遺言書は絶大な効力がありますが、一つだけ注意点があります。それは「遺留分」です。遺留分とは、兄弟姉妹を除く法定相続人(配偶者、子、親など)に法律で保障された最低限の遺産の取り分のことです。例えば「全財産を長男に」という遺言書を書いたとしても、他の兄弟は自分の遺留分を主張(遺留分侵害額請求)することができます。これが新たなトラブルにならないよう、遺言書を作成する際は、他の相続人の遺留分にも配慮した内容にすることが円満相続のコツです。

もめないための準備②:財産の内容を明確にする

相続が始まったとき、相続人がまず困るのが「財産がどこにどれだけあるのかわからない」ということです。財産の全体像が不明確だと、相続手続きが進められないだけでなく、「誰かが財産を隠しているのでは?」といった疑心暗鬼を生む原因にもなります。

財産目録を作成しよう

元気なうちに、ご自身の財産を一覧にした「財産目録」を作成しておきましょう。難しいものではなく、エンディングノートなどに書き留めておくだけでも十分です。以下の内容を整理しておくと、残された家族はとても助かります。

プラスの財産 ・預貯金(銀行名、支店名、口座番号)
・不動産(自宅、土地などの所在地)
・有価証券(証券会社名、銘柄)
・生命保険(保険会社名、証券番号)
マイナスの財産 ・借金、ローン(借入先、残高)
・未払いの税金など

特に、借金などのマイナスの財産もきちんと伝えておくことが重要です。財産を相続すると、借金も引き継ぐことになるため、相続放棄を検討する期間(相続開始を知った時から3か月以内)に判断できるよう、正確な情報が必要です。

生命保険を活用する

生命保険金は、受取人に指定された人の固有の財産となり、原則として遺産分割の対象にはなりません。そのため、「介護でお世話になった長女に多めに財産を残したい」「他の相続人には知られずに特定の人にお金を渡したい」といった場合に有効な手段です。また、保険金はすぐに現金化できるため、葬儀費用やお墓の購入費用、相続税の納税資金としても役立ちます。ただし、相続税の計算上は「みなし相続財産」として扱われ、非課税限度額「500万円 × 法定相続人の数」を超えた分は課税対象になるので注意しましょう。

もめないための準備③:家族で話し合う

遺言書や財産目録の準備とあわせて、ぜひ行っていただきたいのが、家族とのコミュニケーションです。財産のことや将来のことを、元気なうちにご自身の言葉で伝えておくことは、書類だけでは伝わらない「想い」を共有する大切な機会になります。

話し合いのきっかけ

お金の話は切り出しにくいかもしれませんが、「最近、終活のテレビ番組を見たんだけど…」「友人が相続で大変だったみたいで…」といった身近な話題をきっかけに、少しずつ話を始めてみてはいかがでしょうか。いきなり財産の話をするのではなく、まずは「将来どうしたいか」「家族にどうしてほしいか」という想いを伝えることから始めると、家族も受け入れやすくなります。

話し合うべき内容

話し合いでは、財産の分け方だけでなく、様々なことを共有しておくと良いでしょう。例えば、「この家は誰に住み続けてほしい」「お墓は誰が守っていってほしい」「介護が必要になったらどうしたいか」など、具体的な希望を伝えておくことで、残された家族が判断に迷うことが少なくなります。なぜそのような遺産分割にしたいのか、その理由や想いを伝えることが、家族の納得感につながります。

相続税の基本を知っておこう

「うちは相続税がかかるほど財産がない」と思っている方も多いかもしれませんが、基礎知識として知っておくと安心です。相続税は、すべての相続にかかるわけではなく、遺産の総額が「基礎控除額」を超えた場合にのみ発生します。

相続税の基礎控除額

相続税の基礎控除額は、以下の計算式で算出されます。
3,000万円 + (600万円 × 法定相続人の数)

例えば、法定相続人が配偶者と子2人の合計3人だった場合、基礎控除額は「3,000万円 + (600万円 × 3人) = 4,800万円」となります。遺産の総額がこの金額以下であれば、相続税はかからず、申告も原則不要です。

配偶者の税額軽減

配偶者には、非常に大きな税金の優遇措置があります。これは「配偶者の税額軽減」という制度で、配偶者が相続した財産が「1億6,000万円」または「配偶者の法定相続分相当額」のどちらか多い金額までであれば、相続税がかからないというものです。この特例のおかげで、多くの場合、配偶者が相続する際に相続税の負担はありません。ただし、この特例を利用するためには、相続税がかからない場合でも税務署への申告が必要なので注意してくださいね。

まとめ

相続でもめないために最も大切なことは、元気なうちから準備を始めることです。何から手をつけていいかわからないかもしれませんが、まずは今回お話しした3つのポイントを意識してみてください。

1. 遺言書を作成して、意思を明確に残す。
2. 財産目録を作成して、財産の全体像を明らかにする。
3. 家族と話し合い、想いを共有する。

これらの準備は、残された家族への最後の、そして最大の思いやりです。ご自身の想いをしっかりと形にして、大切な家族がこれからも仲良く過ごせるように、今日からできることを一つずつ始めてみませんか。

参考文献

国税庁「No.4152 相続税の計算」

国税庁「No.4158 配偶者の税額の軽減」

日本公証人連合会「遺言」

相続でもめないための準備に関するよくある質問

Q.遺言書は絶対に作成しないといけませんか?

A.法的な義務ではありませんが、相続トラブルを防ぐために最も有効な手段の一つです。ご自身の意思で財産の分け方を指定できるため、相続人が複数いる場合や、特定の相続人に多く財産を遺したい場合などには作成を強くお勧めします。

Q.遺言書にはどんな種類がありますか?

A.主に「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」があります。自筆証書遺言は手軽に作成できますが、形式の不備で無効になるリスクがあります。公正証書遺言は費用がかかりますが、公証人が作成に関与するため最も確実で安全な方法です。

Q.相続財産を把握するために何をすればよいですか?

A.まずは「財産目録」を作成しましょう。預貯金、不動産、有価証券、生命保険、借金などのプラス・マイナスの財産をすべてリストアップします。これにより、相続人が財産の全体像を正確に把握でき、後の手続きがスムーズになります。

Q.生前贈与をしておいた方が良いのでしょうか?

A.相続税対策として有効な場合がありますが、注意が必要です。年間110万円までの贈与は非課税ですが、それを超えると贈与税がかかります。また、相続開始前一定期間内の贈与は相続財産に加算されるルールもあるため、計画的に行うことが重要です。

Q.「遺留分」とは何ですか?

A.遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に法律上保障された最低限の遺産の取り分のことです。遺言書で遺留分を侵害する内容を指定することは可能ですが、侵害された相続人は遺留分侵害額請求権を行使できるため、トラブルの原因になり得ます。

Q.家族と相続について、いつ・どのように話し合えばよいですか?

A.親が元気で判断能力がはっきりしているうちに話し合うのが理想です。財産の話から切り出すのではなく、「今後の家族のために」「みんなが困らないように」といった視点で、まずは想いを共有することから始めるのが良いでしょう。

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