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相続で不動産事業を引き継ぐ方へ!消費税の納税義務と簡易課税

2025-08-28
目次

ご家族が亡くなられ、貸店舗や貸駐車場などの不動産賃貸事業を引き継いだ場合、相続税だけでなく消費税の納税義務についても確認が必要です。これまでご自身が会社員や免税事業者だったとしても、引き継いだ事業の売上規模によっては、思わぬ消費税の負担が発生することがあります。この記事では、不動産所得から消費税が生じている場合の納税義務の判定方法や、申告における原則課税と簡易課税の選び方についてわかりやすく解説します。

相続した年の消費税の納税義務の判定基準

相続があった年の消費税の納税義務は、ご自身ではなく亡くなられた方(被相続人)の基準期間における課税売上高を確認して判定します。

被相続人の基準期間の課税売上高が1,000万円を超える場合

亡くなられた方の基準期間(通常は前々年)の課税売上高が1,000万円を超えている場合、事業を引き継いだ相続人は、相続があった日の翌日からその年の12月31日まで消費税の課税事業者となります。ご自身がこれまで事業を行っていなかった場合でも申告が必要になります。

被相続人の課税売上高 相続人の納税義務(相続した年)
1,000万円を超える 相続日の翌日から課税事業者

被相続人の基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合

亡くなられた方の基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば、原則として引き継いだ相続人もその年は免税事業者となります。ただし、相続人ご自身がすでに消費税の課税事業者を選択している場合は、引き続き消費税を納める義務があります。

被相続人の課税売上高 相続人の納税義務(相続した年)
1,000万円以下 原則として免税事業者

遺産分割が終わっていない未分割期間の消費税の取り扱い

不動産などの遺産分割が確定していない場合、相続人全員が法定相続分に応じて事業を共同で引き継いだとみなされます。そのため、課税売上高の判定も、亡くなられた方の1,000万円の課税売上高に、それぞれの法定相続分の割合を掛けて計算した金額で行うことになります。

相続があった年の翌年と翌々年の納税義務の判定

相続があった年の翌年や翌々年については、相続した年とは納税義務の判定方法が変わります。ご自身の売上と亡くなられた方の売上を足して計算する必要があります。

被相続人と相続人の基準期間の課税売上高を合算するルール

相続があった年の翌年以降は、相続人ご自身の基準期間の課税売上高と、亡くなられた方の基準期間の課税売上高の合計額が1,000万円を超えるかどうかで判定します。どちらか一方が1,000万円以下でも、合算して1,000万円を超えれば課税事業者となります。

基準期間における課税売上高の具体的な計算方法

たとえば、亡くなられた方の基準期間の課税売上高が600万円、相続人ご自身の基準期間の課税売上高が500万円だったとします。この場合、合計すると1,100万円となり1,000万円を超えるため、相続の翌年以降は消費税の納税義務が発生します。

合算する売上高 具体的な金額例
被相続人の課税売上高 600万円
相続人の課税売上高 500万円
合計額(判定基準) 1,100万円(課税事業者となる)

相続人が行う消費税の申告は原則課税か簡易課税か?

消費税の計算方法には、実際の経費にかかった消費税を差し引く原則課税と、売上から一定の割合で計算する簡易課税があります。事業を引き継いだ際、どちらを選ぶかで納税額が大きく変わることがあります。

簡易課税制度を選択するための届出と期限

簡易課税制度を利用するには、適用を受けたい年の12月31日までに消費税簡易課税制度選択届出書を税務署に提出する必要があります。亡くなられた方が簡易課税を選んでいたとしても、その効力は相続人には引き継がれないため、ご自身で改めて書類を提出しなければなりません。

免税事業者が事業を承継した場合の簡易課税の特例

ご自身がもともと免税事業者だった場合、または会社員などで事業を行っていなかった場合、特例が用意されています。相続があった年の12月31日までに届出書を提出すれば、相続を開始したその年からすぐに簡易課税を適用することができます。

相続人の状況 簡易課税の適用開始時期
免税事業者・未開業 届出により相続した年から適用可能

すでに課税事業者である相続人が引き継いだ場合の注意点

ご自身がすでに基準期間の課税売上高1,000万円を超える課税事業者である場合は注意が必要です。この特例は使えず、届出書を提出しても簡易課税が適用されるのは翌年からとなります。引き継いだ年は原則課税で申告しなければならないケースがあるため、早めの確認が大切です。

消費税の申告で忘れがちな届出書とインボイス制度

事業を引き継いだ際には、消費税に関連するさまざまな手続きを速やかに行う必要があります。期限を過ぎると不利になることもあるため、主な手続きを確認しておきましょう。

消費税課税事業者選択届出書の提出と効力

あえて課税事業者になりたい場合(修繕費などで消費税の還付を受けたい場合など)は、消費税課税事業者選択届出書を提出します。これも簡易課税と同様に、亡くなられた方の届出の効力は引き継がれないため、相続があった年の12月31日までに提出することで、その年から適用を受けることができます。

適格請求書発行事業者の死亡届出書と登録申請

亡くなられた方がインボイス発行事業者だった場合、登録番号は個人に紐づいているため引き継げません。速やかに適格請求書発行事業者の死亡届出書を提出し、相続人ご自身が適格請求書発行事業者の登録申請書を提出する必要があります。亡くなった日の翌日から4ヶ月以内であれば、亡くなられた方の登録番号をみなし期間として利用できる特例があります。

必要な手続き 提出期限の目安
適格請求書発行事業者の死亡届出書 速やかに提出
適格請求書発行事業者の登録申請書 亡くなった日の翌日から4ヶ月以内

相続による事業承継で消費税の負担を減らすポイント

引き継いだ不動産事業の消費税を正しく計算し、無駄な税金を払わないためのポイントを整理しましょう。

原則課税と簡易課税の有利・不利の具体的な判定方法

不動産賃貸業の場合、簡易課税のみなし仕入率は40パーセント(第6種事業)または50パーセント(第5種事業)となります。大規模な修繕を行い、支払った消費税が多額になる年は原則課税が有利になり、経費が少ない年は簡易課税が有利になる傾向があります。今後の修繕計画を踏まえて慎重に選びましょう。

基準期間の課税売上高を正確に把握する重要性

消費税の納税義務や簡易課税の要件(課税売上高5,000万円以下)は、すべて基準期間の課税売上高で決まります。亡くなられた方の過去の確定申告書や帳簿を確認し、店舗や駐車場の家賃など消費税がかかる売上(課税売上)の正確な金額を1円単位で把握することが、正しい判断の第一歩となります。

まとめ

相続で不動産事業を引き継いだ場合、亡くなられた方の売上規模によって、年の途中からいきなり消費税の課税事業者になることがあります。また、簡易課税を選ぶための届出やインボイス制度の登録など、相続人ご自身で改めて行わなければならない手続きが多く存在します。提出期限が決まっているものが多いため、相続が発生したらできるだけ早く売上の状況を確認し、必要に応じて専門家に相談しながら確実に手続きを進めていきましょう。

参考文献

国税庁 No.6602 相続で事業を引き継いだ場合の納税義務について
国税庁 No.6501 納税義務の免除
国税庁 No.6531 新規開業又は法人の新規設立のとき

相続と消費税のよくある質問まとめ

Q. 相続した年の消費税の納税義務はどうやって判定しますか?

A. 亡くなられた方の基準期間(前々年)の課税売上高が1,000万円を超えているかどうかで判定します。超えている場合、相続のあった日の翌日からその年の12月31日まで消費税の納税義務が発生します。

Q. 亡くなった親が簡易課税を選んでいれば、引き継ぐ子どもも自動的に簡易課税になりますか?

A. 自動的には引き継がれません。亡くなられた方の届出の効力は相続人に及ばないため、簡易課税を利用したい場合は、適用を受けたい年の12月31日までに相続人ご自身で新たに消費税簡易課税制度選択届出書を提出する必要があります。

Q. 会社員で免税事業者ですが、事業を引き継いだ年から簡易課税を選べますか?

A. 選ぶことができます。これまで事業を行っていなかった方や免税事業者だった方は、相続があった年の12月31日までに届出を行うことで、事業を引き継いだその年から簡易課税を適用できる特例があります。

Q. 相続があった翌年以降の消費税の判定はどうなりますか?

A. 相続があった年の翌年および翌々年は、相続人ご自身の基準期間の課税売上高と、亡くなられた方の基準期間の課税売上高を合算し、その合計額が1,000万円を超えるかどうかで納税義務を判定します。

Q. 不動産の遺産分割が終わっていない場合、消費税の申告はどうすればいいですか?

A. 遺産分割が確定するまでの未分割期間は、各相続人が法定相続分に応じて共同で事業を引き継いだとみなされます。そのため、亡くなられた方の課税売上高に法定相続分を掛けた金額で、それぞれの納税義務を判定します。

Q. 亡くなった方がインボイス登録事業者だった場合、その登録番号を使えますか?

A. 登録番号はそのまま使い続けることはできません。適格請求書発行事業者の死亡届出書を提出し、新たに相続人ご自身で登録申請を行う必要があります。ただし、亡くなった日の翌日から4ヶ月間はみなし期間として特例が認められています。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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