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相続で揉めないためには?円満解決に導く生前の準備と死後の対策

2025-06-11
目次

「うちは財産も少ないし、家族仲も良いから大丈夫」と思っていても、いざ相続が始まると、お金が絡むことで思わぬトラブルに発展することがあります。大切な家族との関係を壊さないためにも、相続で揉めないための対策はとても重要です。このブログでは、相続トラブルが起こる原因から、具体的な予防策、もし揉めてしまった場合の対処法まで、分かりやすく解説していきますね。

遺産相続で揉めてしまうのは決して珍しくない

「相続」が「争族」になってしまうという言葉があるように、遺産分割をめぐるトラブルは決して他人事ではありません。裁判所の統計を見ても、毎年1万件以上の遺産分割に関する調停や審判が行われています。大切なのは、どんな家庭にも起こりうる問題だと認識し、早めに備えておくことです。

遺産額の大小は関係ない

驚くかもしれませんが、家庭裁判所に持ち込まれる遺産分割事件のうち、遺産総額が5,000万円以下のケースが全体の約76%を占めています。特に1,000万円以下のケースだけでも約33%にのぼります。このデータからも、「お金持ちだけの問題」ではないことがよくわかりますよね。財産が少ないからこそ、分け方で揉めやすいという側面もあるのです。

なぜ家族間で揉めてしまうのか

相続で揉める原因は、単純にお金の分け方だけではありません。そこには、長年にわたる家族間の感情的なしこりが関係していることが多いんです。例えば、「親の介護を自分だけが頑張ったのに…」「兄は昔、家を建てる時に援助してもらっていたじゃないか」といった不公平感が、相続をきっかけに噴出してしまうのです。お金の問題だけでなく、感情の問題が絡み合うからこそ、解決が難しくなってしまいます。

相続で揉めやすい家族の5つの特徴

ご自身の家族が当てはまっていないか、少しチェックしてみてください。もし当てはまる項目があれば、より注意深く対策を考えるきっかけになりますよ。

相続人同士の仲が悪い・疎遠になっている

もともと相続人同士の関係が良好でない場合、遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」がスムーズに進まない可能性が高いです。お互いに自分の主張を譲らず、感情的な対立に発展しやすくなります。また、長年連絡を取っていない相続人がいると、話し合いの場を設けること自体が困難になることもあります。

特定の相続人だけが多く援助を受けていた(特別受益)

相続人の中に、被相続人から生前に住宅購入資金や学費、事業資金などの多額の援助を受けていた人がいる場合、これもトラブルの原因になります。これを法律上「特別受益」と呼びます。他の相続人から「その分を考慮して遺産分割をすべきだ」という主張が出て、公平な分け方をめぐって意見が対立することがあります。

特別受益とみなされる可能性のある贈与の例 結婚や養子縁組のための持参金、支度金
マイホーム購入資金の援助
高額な学費(医学部の学費など)
事業を始めるための開業資金
特別受益とみなされにくい贈与の例 一般的な金額のお祝い金(入学祝、結婚祝など)
生活費の援助
一般的な金額の学費

遺産のほとんどが実家などの不動産

相続財産が現金や預貯金であれば、法定相続分に応じてきっちり分けることも可能です。しかし、遺産の大部分が実家や土地といった不動産の場合、簡単に分割することができません。「誰が住むのか」「売却して分けるのか」「誰かが相続して、他の相続人にお金を払う(代償分割)のか」など、分け方を決めるのが難しく、それぞれの希望が食い違うことで揉めてしまうケースが非常に多いです。

親の介護負担に大きな偏りがあった(寄与分)

特定の相続人が長年にわたって被相続人の介護を一身に引き受けていた場合、「自分の貢献分を遺産に上乗せしてほしい」と考えるのは自然な気持ちですよね。これを法律上「寄与分」と呼びます。しかし、その貢献度を客観的な金額で評価するのは非常に難しく、他の相続人の理解が得られずにトラブルになることがあります。

予期せぬ相続人が現れた

亡くなった方に、前妻(前夫)との間に子どもがいたり、認知している子どもがいたりするケースです。これまで知らされていなかった相続人が突然現れると、遺産分割協議は非常に複雑になります。面識のない人同士で財産の分け方を話し合うことになるため、感情的な対立も生まれやすく、話し合いが難航する原因となります。

揉めないための生前の対策【被相続人向け】

相続トラブルを防ぐために最も効果的なのは、財産を残す側(被相続人)が生前にしっかりと準備をしておくことです。残された家族が困らないように、できることから始めてみましょう。

最も有効な対策は「遺言書」の作成

相続トラブルを防ぐための最も強力な武器が「遺言書」です。法的に有効な遺言書があれば、原則としてその内容が法定相続よりも優先されます。誰に、どの財産を、どれだけ渡すかを明確に指定できるため、相続人同士が遺産分割協議をする必要がなくなり、争いの種を摘み取ることができます。「付言事項」として、なぜそのような分け方にしたのか、家族への感謝の気持ちなどを書き添えておくと、相続人たちの納得感も得やすくなりますよ。

遺言書の種類とおすすめは?

遺言書にはいくつか種類がありますが、主に使われるのは「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」です。それぞれにメリット・デメリットがありますが、確実性を重視するなら「公正証書遺言」をおすすめします。

遺言書の種類 メリット・デメリット
自筆証書遺言 【メリット】
・費用がかからない
・いつでも手軽に作成できる
【デメリット】
・形式不備で無効になるリスクがある
・紛失、改ざんのリスクがある
・家庭裁判所での「検認」手続きが必要
公正証書遺言 【メリット】
・公証人が作成するため無効になるリスクが低い
・原本が公証役場で保管され安全
・家庭裁判所での「検認」が不要
【デメリット】
・作成に費用と手間がかかる
・証人が2人必要

2020年からは法務局で自筆証書遺言を保管してくれる制度も始まりましたが、内容の有効性を保証するものではありません。揉め事を確実に防ぎたいなら、専門家である公証人が関与する公正証書遺言が最も安心です。

生命保険を活用する

死亡保険金は、原則として受取人固有の財産とみなされ、遺産分割の対象外となります。そのため、「この子に確実にこの金額を渡したい」という場合に非常に有効な手段です。また、保険金は「500万円 × 法定相続人の数」までは相続税が非課税になるというメリットもあります。相続税の納税資金や、葬儀費用などに充てるためのお金を特定の相続人に残したい場合にも活用できます。

揉めないための相続開始後のポイント【相続人向け】

万が一、遺言書がないまま相続が開始してしまった場合でも、相続人同士が協力することで円満な解決を目指すことは可能です。以下のポイントを意識してみてください。

まずは相続財産を正確に把握する

遺産分割の話し合いを始める前に、まずはどのような財産がどれだけあるのかを全員で正確に把握することが大切です。預貯金や不動産といったプラスの財産だけでなく、借金などのマイナスの財産も必ず調査しましょう。財産の全体像が不明なまま話し合いを始めても、疑心暗鬼が生まれるだけです。もしマイナスの財産の方が多い場合は、相続開始を知った時から3ヶ月以内に「相続放棄」を検討する必要があります。

相続人全員で冷静に話し合う場を持つ

遺産分割協議は、相続人全員の参加が必須です。一人でも欠けていると、その協議は無効になってしまいます。全員が集まり、感情的にならず、お互いの希望や事情に耳を傾ける姿勢が重要です。すぐに結論を出そうと焦らず、時間をかけてでも全員が納得できる着地点を探していくことが、円満解決への近道です。

話し合いがまとまらない場合の期限に注意

遺産分割協議自体に期限はありませんが、相続税の申告・納付には「被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内」という期限があります。もし、この期限までに遺産分割がまとまらないと、「配偶者の税額軽減」や「小規模宅地等の特例」といった税負担を大きく軽減できる特例が使えなくなってしまう可能性があります。その場合、一旦法定相続分で分割したものとして多額の税金を納め、後から分割が決まった際に修正申告をする、という手間と金銭的な負担が生じるので注意が必要です。

もし揉めてしまったら?専門家への相談も選択肢に

当事者同士での話し合いがどうしても難しい場合は、第三者である専門家の力を借りるのも一つの有効な方法です。感情的な対立が深まる前に、早めに相談することをおすすめします。

法的な交渉は弁護士へ

相続人間の意見が対立し、交渉が難航している場合は、弁護士に相談しましょう。弁護士は代理人として、法的な観点からあなたの主張を整理し、相手方との交渉を行ってくれます。当事者同士で話すと感情的になってしまう場合でも、弁護士が間に入ることで冷静な話し合いが進み、解決につながることが多くあります。

相続税や不動産登記は税理士・司法書士へ

相続税の申告が必要な場合は税理士、不動産の名義変更(相続登記)が必要な場合は司法書士が専門家となります。それぞれ役割が異なりますので、状況に応じて相談先を選びましょう。多くの弁護士は、必要に応じて税理士や司法書士と連携して対応してくれます。

まとめ

相続で揉めないために最も大切なことは、生前の準備と、相続が起こった後の家族間のコミュニケーションです。財産を残す側は、自分の意思を明確にするために遺言書を作成しておくことが、残された家族への最大の思いやりになります。そして相続人となった側は、権利ばかりを主張するのではなく、お互いの立場や気持ちを尊重し、協力して手続きを進めていく姿勢が求められます。このブログが、皆さんの円満な相続の実現に少しでもお役に立てれば幸いです。

参考文献

国税庁 No.4208 相続財産が分割されていないときの申告

法務局 自筆証書遺言書保管制度

相続で揉めないための対策 よくある質問まとめ

Q. 遺言書がないと、なぜ相続で揉めやすいのですか?

A. 遺言書がない場合、法律で定められた相続人全員で遺産の分け方を話し合う「遺産分割協議」が必要になります。この協議がまとまらないと、家庭裁判所での調停や審判に発展し、時間も費用もかかり、親族間の関係が悪化する原因となりやすいためです。

Q. 遺産分割協議がまとまらない場合はどうすればいいですか?

A. 話し合いで合意できない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。調停委員を介して話し合いを進め、それでもまとまらなければ「遺産分割審判」に移行し、裁判官が分割方法を決定します。

Q. 生前にできる相続トラブルの予防策はありますか?

A. はい、あります。主に「遺言書の作成」「生前贈与の活用」「生命保険への加入」などが有効です。誰に何を相続させるか明確にし、事前に財産を渡しておくことで、相続発生後のトラブルを減らすことができます。

Q. 誰が相続人になるのか正確に知る方法はありますか?

A. 亡くなった方(被相続人)の出生から死亡までの連続した戸籍謄本(除籍謄本、改製原戸籍謄本を含む)をすべて集めることで、相続人を法的に確定させることができます。これにより、隠れた相続人が後から現れるといったトラブルを防げます。

Q. 特定の人に財産を多く残したい場合、注意点はありますか?

A. 遺言書で指定することができますが、「遺留分」に注意が必要です。遺留分とは、兄弟姉妹以外の法定相続人に最低限保証されている遺産の取り分です。遺留分を侵害する内容の遺言は、後からトラブルになる可能性があるため、専門家への相談をおすすめします。

Q. 亡くなった人に借金があった場合、どうすればよいですか?

A. 借金などのマイナスの財産も相続の対象となります。財産よりも借金が多い場合などは、相続開始を知った時から3ヶ月以内に家庭裁判所で「相続放棄」の手続きをすることで、借金を相続しない選択ができます。

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