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相続で財産隠し?他の相続人が隠している遺産の調査方法と対処法

2026-05-10
目次

「父が亡くなったけど、兄が提示してきた遺産の額がどうも少ない気がする…」「もしかして、財産の一部を隠しているのでは?」そんな不安を抱えていませんか?残念ながら、相続の場面で一部の相続人が自分の取り分を多くするために、財産隠しを行うケースは少なくありません。しかし、泣き寝入りする必要はありません。この記事では、相続での財産隠しが疑われる場合にどうすればよいか、隠された財産を見つけるための調査方法から、発覚後の具体的な対処法まで、わかりやすく解説します。

もしかして財産隠し?遺産隠しが疑われるケース

まずは、どのような状況で「財産隠し」を疑うべきか、具体的なケースを見ていきましょう。ご自身の状況と照らし合わせてみてください。

提示された遺産が明らかに少ない

故人(被相続人)が生前に「〇〇銀行に1,000万円くらいの貯金がある」と話していたのに、いざ相続が始まったら数百万円しか提示されなかったり、故人の収入や生活ぶりから考えて、残された財産が不自然に少なかったりする場合です。特に、故人と同居していた相続人が財産管理をしていたケースでよく見られます。

特定の相続人が財産の開示を拒む

「財産はこれだけです」と言い張って、通帳や証券会社の取引明細などの開示を頑なに拒否するケースも注意が必要です。相続財産は、遺産分割協議が終わるまで相続人全員の共有財産です。他の相続人には、どのような財産がどれだけあるのか知る権利があります。非協力的な態度には、何か隠したい理由があるのかもしれません。

故人の口座から不審な出金がある

故人が入院していたり、認知症で判断能力が低下していたりした時期に、口座から多額の現金が引き出されている場合も、財産隠しの可能性があります。亡くなる直前や亡くなった直後の混乱に乗じて、こっそり預金を引き出しているケースも考えられます。通帳の履歴を確認し、使途不明金がないかチェックすることが大切です。

隠された相続財産を見つけるための調査方法

財産隠しの疑いがある場合、感情的に相手を問い詰めても解決はしません。まずは冷静に、客観的な証拠を集めるための財産調査を行いましょう。ご自身でできる調査方法を財産の種類ごとにご紹介します。

預貯金・貸金庫の調査

故人が利用していた可能性のある金融機関(銀行、信用金庫、JAバンクなど)の窓口で、相続人であることを証明する書類(戸籍謄本など)とご自身の本人確認書類を提示すれば、口座の有無を照会できます。口座が見つかれば、「残高証明書」や過去の「取引履歴」を取り寄せましょう。取引履歴は、過去10年分までさかのぼって請求することが可能です。これにより、不審な出金がないか確認できます。また、貸金庫の契約の有無も忘れずに確認しましょう。

不動産の調査

故人が不動産を所有していたかどうかは、不動産が存在する市区町村の役所で「名寄帳(なよせちょう)」を取得することで確認できます。名寄帳とは、その市区町村内にある、ある一人の名義の不動産を一覧にしたものです。これにより、他の相続人が開示していない不動産の存在が明らかになることがあります。

株式など有価証券の調査

故人の自宅に証券会社からの郵便物などがあれば、その証券会社に問い合わせて「取引残高報告書」などを請求できます。どの証券会社を利用していたかわからない場合は、「証券保管振替機構(ほふり)」に情報開示請求を行うことで、故人が口座を開設していた証券会社を調べることが可能です。

遺産分割協議の後に財産隠しが発覚したら?

すべての財産が開示されたと思って遺産分割協議書に署名・捺印してしまった後に、新たな財産が見つかることもあります。その場合の対処法について解説します。

遺産分割協議をやり直すことはできる?

一度成立した遺産分割協議をやり直すことは、原則として簡単ではありません。しかし、相続人全員が合意すれば、協議をやり直すことは可能です。また、財産隠しが意図的な「詐欺(民法第96条)」や、重要な財産がないと誤解させられた「錯誤(民法第95条)」にあたる場合は、遺産分割協議の取り消しを主張できる可能性があります。

新たに見つかった財産だけで再度協議する

協議全体をやり直すのではなく、後から見つかった財産についてのみ、改めて遺産分割協議を行うという方法もあります。こちらの方が、他の相続人の同意を得やすいかもしれません。遺産分割協議書を作成する際に、「後日、本協議書に記載のない遺産が発見された場合は、別途協議を行う」といった一文を入れておくと、その後の手続きがスムーズに進みます。

話し合いで解決しない場合は法的手続きへ

当事者間の話し合いで解決しない場合は、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることができます。調停は、調停委員という中立な第三者を交えて話し合いを進める手続きです。調停でも話がまとまらなければ、自動的に「遺産分割審判」に移行し、裁判官が分割方法を決定します。

財産隠しへの対処で知っておきたい注意点

財産隠しの問題に取り組む際には、いくつか知っておくべき重要なポイントがあります。これらを知らないと、せっかくの権利を失ってしまう可能性もあります。

財産を取り戻す権利には時効がある

隠された財産を取り戻す権利や、遺産分割協議を取り消す権利には時効があります。時効が成立してしまうと、権利を主張できなくなるため、迅速な対応が必要です。

権利の種類 時効の期間
不当利得返還請求権(隠された財産の返還請求) ①権利を行使できると知った時から5年
②権利を行使できる時から10年
遺産分割協議の取消権(詐欺・錯誤による) ①追認をすることができる時(騙されたと気づいた時など)から5年
②行為の時(遺産分割協議の時)から20年

相続税の修正申告が必要になる

隠されていた財産が見つかり、相続財産の総額が増えた結果、基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合は、相続税の申告が必要になります。すでに申告を済ませている場合は、税務署に対して「修正申告」を行い、追加で納税しなければなりません。申告が遅れると、過少申告加算税や延滞税が課される可能性があるので注意しましょう。

遺産隠しは犯罪?警察は介入してくれる?

財産隠しは、刑法の「横領罪」や「窃盗罪」にあたる可能性があります。しかし、配偶者や親子、同居の親族間でのこれらの犯罪は、刑が免除される「親族相盗例(しんぞくそうとうれい)」という特例が適用されるため、警察に相談しても「民事不介入」を理由に、捜査してもらえないことがほとんどです。そのため、基本的には民事上の手続きで解決を目指すことになります。

財産隠しを未然に防ぐための生前対策

将来、ご自身の相続で子どもたちが揉めないように、元気なうちから対策をしておくことも非常に重要です。財産隠しという悲しい争いを防ぐための方法をご紹介します。

財産目録を作成しておく

ご自身の財産について、預貯金、不動産、有価証券、生命保険、借金などを一覧にした「財産目録」を作成し、保管場所を家族に伝えておきましょう。財産の全体像が明確になっていれば、特定の相続人が財産を隠すことは難しくなります。

公正証書遺言を作成する

誰にどの財産を相続させるか明確にするために、遺言書を作成することが最も有効な対策の一つです。特に、公証役場で作成する「公正証書遺言」は、原本が公証役場に保管されるため、偽造や隠匿のリスクが極めて低く、信頼性が高い方法です。作成の際に財産目録を添付するため、財産の把握にもつながります。

まとめ

相続における財産隠しは、残された家族の間に大きな溝を作ってしまう悲しい問題です。もし財産隠しの疑いを感じたら、まずは感情的にならず、冷静に財産調査を行い、客観的な証拠を集めることから始めましょう。そして、当事者同士での話し合いが難しいと感じたら、一人で抱え込まず、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。専門家の力を借りることで、法的な観点から適切なアドバイスを受けられ、ご自身の正当な権利を守ることにつながります。

参考文献

国税庁 No.4102 相続税がかかる場合

国税庁 令和4事務年度における相続税の調査等の状況について

相続の財産隠しに関するよくある質問まとめ

Q.他の相続人が財産を隠している疑いがあります。まず何をすべきですか?

A.まずは遺産分割協議の場で、心当たりがないか他の相続人に確認しましょう。それでも開示されない場合は、弁護士などの専門家に相談し、相続財産調査を依頼することを検討します。

Q.自分で相続財産を調べる方法はありますか?

A.はい、可能です。故人の預貯金は金融機関への照会、不動産は法務局での名寄帳の取得、有価証券は証券会社への照会などで調査できます。ただし、専門的な手続きが必要な場合もあります。

Q.財産隠しが発覚した場合、どのようなペナルティがありますか?

A.財産を隠した相続人は、相続権を失う「相続欠格」に該当する可能性があります。また、遺産分割協議が無効になったり、他の相続人から損害賠償を請求されたりすることもあります。

Q.遺産分割協議が終わった後に財産が見つかった場合はどうなりますか?

A.意図的な財産隠しがあった場合、遺産分割協議の無効を主張し、やり直しを求めることができます。隠されていた財産について、改めて分割を請求することが可能です。

Q.財産隠しを証明するための証拠にはどのようなものがありますか?

A.故人の預金通帳の取引履歴、郵便物、確定申告書、保険証券、固定資産税の納税通知書などが証拠になり得ます。不審な資金移動や、知らない財産の存在を示す書類がないか確認しましょう。

Q.財産隠しの問題はどこに相談すればよいですか?

A.法的な対応が必要になるケースが多いため、相続問題に詳しい弁護士に相談するのが最も確実です。財産調査から遺産分割協議の交渉、法的手続きまで一貫してサポートしてもらえます。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。

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