税理士法人プライムパートナーズ

相続と贈与、不動産登記費用が安いのはどっち?税金の違いを徹底比較!

2025-03-21
目次

親から子へ不動産を引き継ぐとき、「相続」と「生前贈与」どちらの方法が良いのか悩みますよね。特に気になるのが登記費用などのコスト。実は、どちらを選ぶかで費用が大きく変わることがあるんです。この記事では、不動産の相続と贈与で登記費用はどう変わるのか、税金の違いを中心に分かりやすく解説していきます。

相続と贈与、不動産登記費用の基本的な違い

不動産の名義を親から子へ変更する際には、法務局で「所有権移転登記」という手続きが必要です。この手続きにかかる費用は、主に「登録免許税」という税金と、司法書士に依頼する場合の報酬で構成されます。相続と贈与では、特にこの登録免許税の税率が大きく異なるため、総額に差が生まれるんです。

登記費用の内訳とは?

不動産の登記費用は、大きく分けて2つあります。1つは国に納める税金である「登録免許税」。もう1つは、手続きを専門家にお願いする場合の「司法書士報酬」です。その他、戸籍謄本や住民票などを取得するための実費もかかります。費用の大部分を占めるのが登録免許税なので、ここの違いが総額の差に直結します。

費用の計算の基礎になる「固定資産税評価額」

登録免許税を計算する上で基準となるのが、不動産の「固定資産税評価額」です。これは、売買価格(時価)とは異なり、市町村が固定資産税を計算するために定めている評価額のこと。毎年送られてくる固定資産税の納税通知書に記載されている「価格」または「評価額」の欄で確認できますよ。

【比較】登録免許税は相続と贈与でこんなに違う!

それでは、相続と贈与で登録免許税が具体的にどれくらい違うのか見ていきましょう。税率が5倍も違うので、不動産の評価額によっては数十万円単位で差が出ることがあります。

相続の場合の登録免許税

相続を原因とする所有権移転登記の場合、登録免許税の税率は「固定資産税評価額 × 0.4%」です。例えば、評価額が2,000万円の不動産であれば、登録免許税は8万円になります。

贈与の場合の登録免許税

一方、贈与を原因とする所有権移転登記の場合、税率は「固定資産税評価額 × 2.0%」となります。相続のなんと5倍です。同じく評価額2,000万円の不動産で計算すると、登録免許税は40万円にもなります。

登録免許税の比較まとめ

原因 税率
相続 固定資産税評価額の0.4%
贈与 固定資産税評価額の2.0%

このように、登録免許税だけを見ると、相続の方が圧倒的に費用を抑えられることがわかりますね。

登記費用以外にかかる税金も要チェック!

不動産を引き継ぐとき、登記費用だけで判断するのは少し早いです。なぜなら、他にも大きな税金がかかる可能性があるからです。特に「不動産取得税」と「贈与税」「相続税」の違いは、どちらの方法を選ぶか決める上でとても重要です。

不動産取得税の違い

不動産取得税は、不動産を取得したときにかかる都道府県の税金です。相続の場合は非課税ですが、贈与の場合は原則として課税されます。税率は原則として固定資産税評価額の3%(土地・住宅の場合)なので、これも大きな負担になりますね。ただし、一定の要件を満たす居住用不動産の贈与などでは軽減措置があります。

相続税と贈与税の違い

最も大きな違いが、相続税と贈与税です。
相続税は、亡くなった方の財産総額が基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を超える場合にかかります。遺産の総額によっては相続税がかからないケースも多いです。
一方、贈与税は、財産をもらった側にかかる税金で、暦年贈与の場合、年間110万円の基礎控除を超えた部分に課税されます。税率が相続税より高めに設定されているため、高額な不動産の贈与では税負担が非常に重くなることがあります。

【シミュレーション】2,000万円の不動産を引き継ぐ場合の費用

では、実際に固定資産税評価額2,000万円の土地・建物を子ども1人が引き継ぐケースで、登記費用やその他の税金を比較してみましょう。※司法書士報酬やその他実費は含まず、税金のみで比較します。

相続で引き継ぐ場合

登録免許税 2,000万円 × 0.4% = 8万円
不動産取得税 0円 (非課税)
相続税 他の財産と合わせて基礎控除額以下なら0円
合計(税金のみ) 8万円~

贈与で引き継ぐ場合(暦年贈与)

登録免許税 2,000万円 × 2.0% = 40万円
不動産取得税 2,000万円 × 1.5%(※土地の軽減税率適用と仮定)= 30万円
贈与税 (2,000万円 – 110万円) × 45% – 265万円 = 585.5万円(※特例税率)
合計(税金のみ) 約655.5万円~

※贈与税の計算は簡略化しています。実際には土地と建物の評価額やその他の条件で変動します。
このシミュレーションを見ると、税金面では相続の方が圧倒的に有利なことがわかりますね。

贈与でも費用を抑える方法はある?

ここまで見ると「贈与は費用が高すぎる…」と感じるかもしれませんが、特定の条件を満たすことで税金の負担を軽くできる特例制度があります。状況によっては贈与を選んだ方が良いケースもあるんですよ。

相続時精算課税制度の活用

相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から18歳以上の子や孫へ贈与する際に利用できる制度です。累計2,500万円までの贈与には贈与税がかからず、超過分に一律20%の税率が適用されます。さらに、2024年からは年間110万円の基礎控除も新設され、この分は相続財産に加算されません。この制度を使えば、贈与時の税負担を大きく減らせる可能性がありますが、一度選択すると暦年贈与に戻れないなどの注意点があります。

夫婦間の居住用不動産の贈与の特例(おしどり贈与)

婚姻期間が20年以上の夫婦間で、居住用の不動産やその購入資金を贈与する場合に利用できる特例です。最高2,000万円までの控除が受けられます。暦年贈与の110万円の基礎控除と併用できるので、合計2,110万円まで贈与税がかからずに不動産を配偶者に贈与できます。この特例を使えば、不動産取得税はかかりますが、贈与税と登録免許税の負担を抑えることが可能です。

まとめ

不動産の登記費用、特に登録免許税だけを比較すると、贈与(2.0%)よりも相続(0.4%)の方が5倍も安くなります。さらに、不動産取得税も相続ではかかりません。しかし、贈与税や相続税といった全体の税負担や、「将来の相続トラブルを避けたい」「値上がりする前に渡したい」といったご家庭ごとの事情によって、どちらが最適かは変わってきます。

「うちの場合はどっちがいいんだろう?」と迷ったら、単純な費用比較だけでなく、ご家族の状況や将来の見通しを含めて総合的に判断することが大切です。専門家である司法書士や税理士に相談して、ご自身にとって最適な方法を見つけてくださいね。

参考文献

国税庁 No.7191 登録免許税の税額表

国税庁 No.4103 相続時精算課税の選択

不動産の相続・贈与登記に関するよくある質問

Q. 不動産の名義変更、相続と贈与で登記費用はどっちが安いですか?

A. 一般的に、相続の方が安くなります。登録免許税の税率が、相続は固定資産税評価額の0.4%なのに対し、贈与は2%と5倍の差があるためです。

Q. 相続登記にかかる費用の内訳を教えてください。

A. 主に、国に納める「登録免許税」、手続きを依頼する「司法書士報酬」、戸籍謄本などの「必要書類の取得費用」の3つがかかります。

Q. 生前贈与で不動産を登記する際の費用はどのくらいかかりますか?

A. 相続と同様に「登録免許税」「司法書士報酬」「必要書類の取得費用」がかかりますが、登録免許税の税率が2%と高額になります。また、贈与税や不動産取得税も別途かかる場合があります。

Q. 登録免許税は、相続と贈与でどれくらい税率が違いますか?

A. 相続による所有権移転登記の税率は不動産の固定資産税評価額の0.4%です。一方、贈与による所有権移転登記の税率は2.0%です。

Q. 登記を自分ですれば、司法書士費用は節約できますか?

A. はい、ご自身で手続きを行えば司法書士報酬はかかりません。ただし、手続きが複雑で時間がかかるため、専門家である司法書士に依頼するのが一般的です。

Q. 登記費用以外に、相続と贈与でかかる税金の違いは何ですか?

A. 相続の場合は「相続税」、贈与の場合は「贈与税」がかかる可能性があります。また、贈与の場合は不動産取得税も課税されますが、相続の場合は非課税です。

事務所概要
社名
税理士法人プライムパートナーズ
住所
〒107-0052
東京都港区赤坂5丁目2−33
IsaI AkasakA 17階
電話番号
対応責任者
税理士 島本 雅史

本記事は正確な情報提供を心掛けておりますが、執筆時点の情報に基づいているため、法改正や人的ミス、個別のケースにより適用が異なる可能性があります。最新の情報や具体的なご相談については、お気軽に弊法人の税理士までお問い合わせください。